第18話 どの世界でも博打はいい
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是非そちらでもお読みください。
「ここが闘技場か」
「な、すげぇだろ!! ここで冒険者達がしのぎを削るんだぜ!!」
「なかなかに壮観だな」
俺達はギルドにゴールドゴーレムの素材を任せた後、武闘大会が行われるという闘技場へ来ていた。
ローマのコロッセウムっぽいな。如何にもって感じだ。
とりあえず一通り周囲を見てまわる。もうすぐ武闘大会が行われるということで随分と賑わっていた。
「ここは食い物も美味いぜ!! 酒も美味い! 最高の街だな!」
シズルがさっきからうるさい。お前は食べることと飲むこと以外に興味は無いのか。
そんなことを考えていると、ふと面白いものが目に止まる。
「さぁさぁ!! 今回の優勝者は誰になるのか!! オッズはこの通り!! 一番人気は斧使いのドルクだ!!」
へぇ、博打か。面白そうだな。
俺は叫んでいるおっさんに近づいて声を掛ける。
「なぁおっさん、一番オッズが低いのは誰だ?」
「ん? あぁそりゃ"堅物のモモ"だな。なんだ坊主、堅物に賭けるのか?」
堅物ねぇ。面白そうだな。
「いや、今はまだいい。それよりも、出場選手のステータスは見れないか?」
「あぁ、それなら直接見たほうがいいぜ。丁度開会式前のパドックを行ってるはずだ。賭けれるのは開会式が終わるまでだから急げよ坊主」
完全に競馬じゃねぇか。よく見れば1位と2位と3位の順番の予想とか掛け方が色々あるな。
「ちょっとパドックを見てくる」
「んぁ? ただ歩いてるだけだぜ? オレはここで酒でも飲んでるわ」
「私は付いて行くぞリオ」
俺とスズネは闘技場に入り二階に上がった。
よかった。まだ歩いてるところだ。出場者のステータスはと……へぇ。あれが堅物のモモか。
12人の参加者の中で防御力は一番だが、それ以外のステータスが壊滅的な少女がいた。
出場者が前を通り過ぎるとき、俺は何故か堅物のモモに声を掛けてしまう。
「モモ、お前の未来はきっと明るい。幸運だな。俺がお前の勝利を願ってやる」
その言葉を聞いたモモは、俺の方をジッと見つめたまま歩みを止めてしまった。そして——
「はいっ!! ありがとうございます!!」
少し涙ぐんでいただろうか。知らん人に声かけられたら怖いもんね。ごめんね試合前に。
さて……俺の手持ちの金、何倍に増えるかな?
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私の名前はモモ。小さい頃からVITのステータスだけが高くて、ノロマとか堅物とか呼ばれていました。
誰からも褒められた事も期待されたことも無いまま育ち、何の取り柄も無い私には居場所なんてありませんでした。
ある時、母は言いました。
「闘技大会で勝てるほどの実力があれば、少しは誇れるんだけどねぇ」
その言葉を聞いて、私は私の居場所を得るために闘技大会に出ることを決めました。
ただ、闘技大会に出ようとすると、周りの人達に笑われてしまいました。『訓練用の木が大会に出るのか?』そんな事を面と向かって言われた時は流石に傷つきました。
それでもなんとか闘技大会への出場を決めました。
ただ、パドックが始まり多くの人の目に晒されると、私の心は折れそうでした。皆、私を見る目が蔑んでいるのです。この場から今すぐにでも逃げ出したくなりました。
そんなとき——
「モモ、お前の未来はきっと明るい。幸運だな。俺がお前の勝利を願ってやる」
何処からか声が聞こえたのです。声の主の方を向くと、真っ直ぐな目で私を見つめる人がいました。
生まれて初めてでした。誰かに期待されたのなんて。
こんなにもいいものだったのですね。
レベルは高いですが、決して恵まれたステータスでは無いこの方は、そのステータスの悪さを微塵も感じさせない堂々とした目で私を見続けます。その目に吸い込まれそうで歩くのをやめてしまいました。
——私もああなりたい。
「はいっ!! ありがとうございます!!」
私はお礼を言って再び歩き出します。もう下は向きません。
あの方に近づけるように、まずはこの武闘大会で胸を張って戦います!
それにしても……あの方はどうしてわかったのでしょう。
昨日私のステータスに現れた、【スキル:幸運】に。
モモ
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LV:22
HP:444
MP:111
STR:22 攻撃力
DEX:33 命中力
VIT:555 防御力
AGI:11 俊敏力
INT:33 魔法力
スキル:幸運 LV:1
効果 :割と運がいい
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