第13話 肉壁任せて泥棒作戦
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読みください。
広い草原の奥から迫ってくるのは、大量のモンスター。
その光景はグロテスクだ。
あれと今から衝突するのか……ここにいる冒険者全員馬鹿だな。
まぁ、今回は肉壁になって貰おう。
「モンスターはもう目に見えてるぞ! 経験値は早い者勝ちだ!! お前ら行くぞ!!」
「うおおおおおぉぉぉおお!!」
おうおう、バトルジャンキーに煽られてら。ナイスシズル。肉壁作戦を理解してくれてたみたいだな。ってお前も行くんかい!!
俺とスズネは、モンスターを待ち構えていた場所に二人で取り残された。
「スズネは行かないの?」
「私はリオのそばを離れないからな」
「そっか、じゃぁ逃げようか」
「もちろん、それでもいいぞ」
なんか急に自由になった気がする。俺を縛る知らんおっさんも、酒癖の悪い女も今は目の前のおもちゃに夢中だ。
あれ、そう考えたらなんかイライラしてきた。
なんで俺が他人の意見に縛られなきゃいけないんだ。
そうだ、そもそも俺は俺を見下す奴を許せないから力を得るんだ。誰も逆らえないように。誰にも意見されないように。
あ、ちょっと本気でムカついてきたぞ。これは仕返しがしてやりたい。
そういえばあいつら……経験値が欲しいと言っていたな。
「リオ、その笑い方はやめた方がいいぞ。少し怖い」
おおっと、悪い癖が出てしまった。あいつの愕然とした顔を想像したらつい。
といってももうやることはないんだけどね。既に仕込みは終わってる。
なぁ、お前ら。
——経験値が貰えると思ったか?
モンスターの大行進の前線と対峙する冒険者達。少し押されているようで、後退しながら大行進の勢いを削いでいるようだった。
だが、時間をかけるごとに次々と弱いモンスターから倒れていく。
「なんだ!? 毒でも浴びているのか?」
「いや、ステータス上はそんなことはない! ただ……」
「なんだこれは!? すべてのモンスターのHPが……徐々に減っている!?」
「なんだって!? おいお前ら!! 早くモンスターを狩らないとあいつに全部持ってかれるぞ!!」
「どういうことだシズルさん!!」
「今は黙って倒せ!!」
なんでお前はそっち側なんだ裏切り女。
それにしても……愉快じゃないかぁ?
確か経験値が貰える条件は、敵のHPの10%は削っていることだったはずだ。それ以降は割合に応じて経験値が分配される。
果たしてこの中で……モンスターのHPを10%削れる奴らはどれくらいいるだろうねぇ?
ほらほらほら、お前らがチンタラ後退しながら時間を稼いでくれたおかげで、もうモンスター達は瀕死だよ?
先頭のモンスターは多少攻撃を与えてるようだが、後方は全くじゃないか。それじゃダメだ。
攻撃というのは、すべての者に均一に、そして平等に与えられなければ意味が無いんだよ。
俺がこの能力がぶっ壊れだと思う理由はこれだ。対象が無制限で、どれだけ数が増えようと、すべての対象に平等に持続ダメージを与えられる。
これは決まったな。"肉壁任せて泥棒作戦"。
あいつらに壁は任せて、残りのモンスターは全て俺が頂く。
これには赤いジャケットの怪盗も驚きだろう。
大行進が終わる時には、冒険者達はどこか肩透かしをくらった顔をして戻ってきた。
「なんだったんだあれ……勝手にモンスターが倒れていきやがった……」
「くそっ! 折角経験値を稼げるところだったのに!!」
「お前さっきまでビビってたじゃねぇか。それにしても不思議だな……」
「シズルの姉御はなんか知ってるんじゃ無いか?」
「……」
シズル、お前、後で覚えておけよ?
リオ
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LV:45
HP:980
MP:660
STR:1 攻撃力
DEX:243 命中力
VIT:1 防御力
AGI:580 俊敏力
INT:103 魔法力
スキル:持続ダメージ LV:1
効果 :1秒間に自身のSTR値の攻撃を与え続ける。ON、OFF切り替え可能。永続。防御不可。
付き人:スズネ
裏切り者:シズル
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