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俺はこの世界でAI《アイ》を叫ぶ  作者: 神無月
1ST:崩壊世界と生き残り
6/7

EP.5「売られた喧嘩と人か否か」

「その片刃刀でどうするつもりだ?」


ラキは冷静に激昂しているラヴィアに問いかける、ラヴィアは唾を吐き答える、


「どうする?、決まってんだろッ!!、テメェを殺すんだよゴルァ!」


そう言った刹那、ラヴィアは足を黒く変色させ過去のラキの閃撃の如く速度で切りかかる、ラキはそれを局所強化も使わず、反射と感覚だけで避ける、その後も二連三連と続く攻撃を避け続け、ラヴィアは徐々にその怒りを増幅させ、ラキは常に冷ややかな視線を浴びせ続ける、


「はぁ、はぁ、テメェ、、何モンだよ、」

『おい、、あのラヴィアの斬撃躱し切ったぞ、、彼奴バケモンだ、』

『どうやって躱したんだ?理解できねぇ、』


ギャラリーや遂にはラヴィア自身もが驚愕の顔をする中、ラキは目の色一つ変えずに静かに近づく、ラヴィアは僅かに怯む様に一歩下がった、


「何なんだよ、お前、、何なんだよッ!!!!」


怯えた猛獣の攻撃の様に隙まみれの一閃がラキを狙う、


「うあぁァ!!!!!」


然しの片刃刀の一閃がラキの身体を引き裂く事は叶わず、ラキの義手に捕まれラキに傷一つ付ける前に片刃刀をがっしりと握っていたラヴィアごと、10mは先にあるラキの向かいの壁に投げつけられる、ガンッ!!、という鈍い音共に鋼鉄の壁が僅かに凹む、


「うがぁ、、あがぁ、あああ、、あ」


投げつけられた骨を折りでもしたのか、蹲り声にならない声で呻いている、ラヴィアの片刃刀は壁にぶつかる衝撃で限界を迎えたのか、静かにポロポロと自壊し始めている、その光景にギャラリーが啞然としていると、ギャラリーの向こうの廊下先から、コツッコツッ!、と駆けて来る足音が聞こえた、


「オイ!!この騒ぎはなんだ!!」


その声の主は総司令としての肩書きの仮面を被ったさっきとは空気が違うウェデリアだった、


「ギャラリー共はさっさと持ち場に戻れ!!問題の主犯格はその場に待機!!分かったらさっさとしろッ!!」


総司令の声に流石のギャラリーもそそくさとその場を散って行く、残ったラキと壁の前に蹲るラヴィアはウェデリアに鋭い目で射抜かれる、


「さて、何があったか説明してもらおうか隻翔セキカ ラヴィア特機種伐部隊長何があった、」


蹲るラヴィアの前へ歩いて行き、見下ろす様にして言った


「その男が、、歯向かって、、、来たので、実力を見せてやろうと、、」


そこまで言と、ウェデリアはため息を吐いた、そしてラヴィアを立ち上がらせると思いっきり頬を殴り飛ばした、


「貴様、何度言えば気が済むのだ、血操武身の違反使用、これで五回目だ、次やったら強行命令で貴様の体内にある血蟲機ナノアボットの機能を強制終了する、わかったか、」

「あがぁ、、了解、、、しました」


ラヴィアは殴られよろよろと立ちすくみながら答える、


「そしてもう一つ、お前じゃああの男を倒す事は不可能だ、」

「そんな事、、ない、、!!、俺なら、」

「いや、不可能だ、、だろ!荒螺木アララギ 良鬼ラキ!!」


唐突に自分の名前を出され虚を突かれた様に目を開くが、それよりもラヴィアの方が目を剥き、怯えや恐怖と言った感情を籠らせた目でラキを見ている、


「ら、、き、?、まさか、、!!ウェデリア総司令を助ける為に片腕を失ったという隻腕の機兵と呼ばれ、若くして艦隊最強の少佐と言われたあの?」


は?、なんだそれ、初めて聞いた、隻腕の機兵?そんな訳ねぇだろちゃんと五体満足の身体があるわ!!まあ、右腕は義手だけど、、

ウェデリアは何故かラヴィアの発言の直後から表情が強張っている、


「ああ、うんそうそう、そのラキだよー(棒)」


ウェデリアはあからさまに目を泳がせながらラキと絶対に目を合わせないようにしている、この馬鹿総司令、ある事無い事色々噂しやがったな、少しは総司令とかって役職に着いて変わったかと思っていたが、どうやら何故か俺だけを甘やかすという理念は変わってないらしい、


「おい、ウェデリア、、」

「・・・ひゃい、」


なんだその返事、ひゃいってなんだ?ひゃいって、まあいいや、


「その変な噂を流すの止めて下さい、正直言って非常に不快です、」

「えー、だってラキは実際に私助けてくれたしぃ、やっぱりカッコよく自慢して上げたいじゃない?」

「そのカッコよくとやらが俺はとっても恥ずかしいんです、少しは理解してください、」

「ええーどうしよっかなぁー」


この馬鹿変わってねぇ、!!ブラコンの姉か此奴は、って姉弟じゃねぇよ!!もういいやじゃあこう言う時の為のあれ試してみるか、


「わかりました、止める気がないなら、俺はウェデリアとの会話及び今後一切の関係を切ります、」


それを聞いた瞬間、ウェデリアの顔が焦り始める、


「わかった!!止める!止めます!!だからお願いお義姉ちゃんを嫌いにならないでぇ!!」

「止めるのはわかったがお前は別に俺の姉でもなんでもねぇだろうがァ!!誤解招く言い方やめろォ!!」


そう言いながら人目を気にせず、半泣きの顔でくっつきに来るウェデリアを躱しているのを、周りの人々は驚きの顔で見ていた、


『あの総司令をあんな無下に、』

『総司令のあんな姿、あたし初めて見ました』

『クソ、実に羨ま、、けしからん!!』


そんなこんなありながら何とかウェデリアを正気に戻し、何故か俺は戦闘訓練会場に呼ばれた、


「それでは今回の戦闘訓練ではいつもとは違い私の戦闘の動きだけでなく、ゲストのラキ君にも協力してもらう、」

「・・・・は?」


何故こうなった、どうしてこうなった、周りの俺への視線が何か怖い、周りの訓練兵は何故かラキを凝視するように見る者がたくさんいた、それは何故か?


『彼奴ってあれだよな、、』

『ああ、さっきウェデリア総司令にデレつかれてたやつだよな、』

『クソ、俺のウェデリア総司令をよくも奪いやがって、俺だって強く──』

『お前の総司令じゃねぇ俺らの総司令だ、だが確かにあんな義手野郎に総司令を奪われたのは癪だな、』


そうウェデリアは総司令であると同時に機伐自警団ランバーポリスのアイドル的存在でもあるのだ、キリっとした美形の顔で黙々と仕事をこなし、美しいボディラインを描く長身のその身体で舞う様に戦うその姿から、裏では機械殺しの戦乙女ワルキューレと呼ばれたりしていて表立って見せる者は少ないが隠れファンが多いのである、


「それでは先ずは一度いつもの様に私が戦闘時の動き方を見せる、よし、捕縛していた人機型ウォリアーを出せ、」


そう言ってウェデリアは訓練兵たちが見ている部屋から強化硬質硝子で造られた箱のような作りの模擬戦闘用訓練場へ入る、訓練場上部に付いた隔壁が開き、両腕を微細炭素繊維ナノカーボンを編み込まれて造られた拘束用バンドで拘束された人機型ウォリアーが降りてくる、


「よし、拘束を外せ、そして外の訓練兵達はしっかりと私の動きを見るように、」


ウェデリアの掛け声と同時に、ピピッ、という機械音が響き人機型ウォリアーに付けていた拘束用バンドが外れ落ちる、その瞬間人機型(ウォリアー)は息を吹き返した様に、即座に両腕の電磁加速式機関銃レールライフル構え、射撃体勢に入る、


「いいか!戦闘の基本は相手の動きや出方を先読みする事だ、特に機械共はほとんどシステムに従った単純な動きしかしない!!」


ウェデリアは説明をしながらその場から飛び避ける、次の瞬間ウェデリアが先程までいた場所に無数の弾丸が撃ち込まれた、


「この様に相手の動きを先読みできれば、機械の攻撃など造作もない、」


その後もウェデリアは訓練場を縦横無尽に飛び回り全ての攻撃をよけ続ける、そしてその間顔色どころか汗の一つも流さずに余裕の表情をこぼしていたのである、


「それではそろそろ、攻撃の仕方を見せる、しっかりと見てしっかりと学べ!!」


そう言うと、ウェデリアはラヴィアの時と同じように右手の人差し指に付けた刃の様な物で左手首を搔っ切った、当然のことながら手首からは血が流れ落ちて、いなかった、手首から湧き出た血は即座にウェデリアの左手の内に集っていき、ラヴィアの時と同じくブヨブヨとした塊になり、その過程を通して細長い棒状に形を変えていく、そして瘡蓋の様にくすんだ茶色になった表面が、バリバリ、と剥がれ落ち中から槍の様な細く長い金属棍の先に途轍もなく鋭い片刃の付いた赤黒い薙刀が現れた、


血操武身ケッソウブシン:将響叡輝ショウキョウエイキ


ウェデリアの手に握られた薙刀は悠然と人機型ウォリアーを見据え、次の瞬間にはウェデリアと共に駆け出す、


「せりゃァアア!!」


ウェデリアの腕の中から薙刀による鋭い一閃が放たれる、その一閃は常人には見えぬ神速の域に入る正に神業であり、団員の中でもほとんどの者には見えなかった、そしてその一閃を喰らった人機型ウォリアーは攻撃を認識するまでの数秒を動いた直後、身体が真っ二つに裂け崩れ落ちた、


「訓練兵諸君!わかったか!」


ウェデリアの戦い方を見ていた訓練兵達は皆一同に思った、


『『なるほど!分からないがなんか凄い!!』』


と、


「よし、それではいつもの私だけではなくゲストにもやってもらおう!ラキ君頼んだ!」

「は?俺ですか?」

「そうだ頼む、」


ええ、何故俺が、そう思い模索していると、周囲から声が上がる、


『おいおい、まさか人機型ウォリアー一人倒すことが出来ねぇのか?』

『弱いから総司令に守ってでも貰うのか??』


ガヤガヤと煽る様な挑発や半分罵倒の様な言葉をかけられたラキの中では、ピシリ、と何かがキレた、


「分かりました、やりましょう、」


ウェデリアが静まる様に言った事で何とか収まったが、ラキは当たり前に訓練兵達には受け入れられていないようだった、訓練場の中に入ると先程と同じく上部隔壁が開きもう一体の拘束された人機型ウォリアーが下ろされて、ガシャン!、と地面に設置された、


「それでは拘束を───」

「ああ、ウェデリア、」

「??、なんだ?」

「俺のタイミングで解除させて下さい、一瞬で終わらせるんで。」

「・・わかった、」


ウェデリアとラキの会話に訓練兵達はラキにキレた、


『ふざけんな!ウェデリア総司令を呼び捨てにしやがって!!!』

『そうだ!!俺らよりもウェデリア総司令との付き合いが長いからって調子乗んな!!』

『調子乗ってる暇あんなら本当に一瞬でやって見せろ!!』


訓練兵達がガチャガチャ喚く中、訓練場内に立ったラキは深呼吸をして身を低く、獲物を狙う獣の様な体勢になり義手の腕を僅かに胴よりも後ろに引いた姿勢で、足を僅かに屈め下半身全体を漆黒よりも深く暗く黒くする、そしてウェデリアに目で合図を送った、


『あんな体勢で殺せる訳ねぇだろ』

『そうだ、あんな、獣じゃないんだから』


訓練兵達はそう言ってラキをバカにする、然し既にラキの集中力は人知を越えた領域にまで達していたため、そんな声は聞こえなかった、


「拘束を解除す──────!!??」


ウェデリアの発言と機械音が重なる瞬間、バンッッ!!!!!、と空気が破裂する音共に強化硬質硝子が、バキリ!、とヒビ入り訓練場の外の空気までもが一瞬途轍もない超振動を起こし訓練兵達は一同全員がその光景や現象に固まってラキを見ている、訓練兵達の目に映っていたのは、降りてきた時と同じ体勢で鎮座している人機型ウォリアー()()とその横で千切れた頭の先を義手で持っているラキの姿だった、


『は??何が起きた??』

『わからねぇ本当に一瞬で、』


訓練兵達が分からないのも無理はない、ラキは機械音をその異常とも言える集中力で即座に聞き取りウェデリアを超える亜光神速の領域でその場を蹴りだした、


その為外気を遮断していた訓練場内のみに存在する空気のラキが元いた場所のみが空気の存在しない一瞬の真空を生み出し、そしてそこに訓練場内の全ての空気が吸い寄せられその真空を刹那の間、訓練場内全ての空気が満たしその空気同士の衝撃音が、バンッッ!!!!!、という破裂を生み出したのだ。


そしてその真空を中心に異常な吸力が発生したため周囲の強化硬質硝子をゆがませヒビが入り、その間もラキの身体はほとんど視覚や聴覚に頼らない本能と野生の感にだけ頼った正しく猛獣の様な身体反射の力で高度に発達した0.0000001コンマすら見逃さない人機型ウォリアー計測機関センサーを越えた動きで首を引き千切りった。


その為周りからは何が起きたか分からない、いや、見えないのだ、何故なら人間とは光の反射を目の内部にある網膜に投影する事で視界を得るという構造をしている、然し一瞬訓練場内の空気は一点に集中し視界を作る為の粒子という粒子が消えていた、その為訓練兵達は訓練場内部の景色を一瞬知覚する事が出来ず、脳が理解出来ない状況を合理的な形に視覚化しようとした結果、正に閃撃、、いや、瞬撃を見たように見せるのである。


訓練兵達が呆然と訓練場内のラキを見る中、ラキはその義手の中に握られる人機型ウォリアーの頭部を掲げ、静かに然し相手を威圧する声で言い放つ、


「俺を馬鹿にした訓練兵共、、俺をそうやって煽れるってことはこれぐらい造作もないってことだよな?」


ラキの目だけで人を射殺せそうなほど鋭く研ぎ澄まされた眼光を前に、口を開く者はいなかった、


「おい、どうした?誰も来ないのか?、誰も俺と同じことが出来ると証明しに来ないのか?、」


そう言って人機型ウォリアーの頭部をリンゴを潰すように、ゴシャリ、と音を立てて握り潰すそのまま床に潰れた頭部を落とすと横で未だ降りてきた時のままの姿で鎮座している人機型ウォリアーの胴体に向き直る、


「そうか、、誰もいないんだな?、だったら、、これ位なら出来るか?」


希薄に笑い黒く変色させた右足で胴体を思いっ切り蹴り飛ばす、バキゴシャベギリ!、えも言えぬ音を響かせ重金属で出来たはずの機械の身体が吹き飛び、強化硬質硝子の透明の壁にぶつかり強化硬質硝子で出来た壁を歪ませる、重金属である筈の身体は、肉で出来た体がぶつかったかのように壁で潰れ砕け部品と機械の蒼い鮮血を散らしながら床へ墜ちる、


「それともこれ位しかできないか?」


ラキの薄かった笑いは不気味な笑みに変わり、義手の5㎜型音速マッハブラ貫徹機関小銃ストライフルを構え最早原型を微かにしかとどめていない人機型ウォリアーの身体にとどめを打つかのように撃ち放つ、グチャリ、と銃声に紛れて肉の千切れる様な音が混ざっていく、訓練兵達はその光景に最早最初の威勢はなく、只々無惨に惨い機械の欠片に変わっていく人機型ウォリアーの死骸に目を向けているしかなかった、


「ラキ、もういいだろう、」


マガジン分を打ち終わり、人機型ウォリアーの死骸へ歩いて行こうとするラキを訓練場の外からウェデリアが制止する、


「・・分かりました、、」


ラキは静かに透明の模擬戦闘訓練場を出た、


「ああ、そうだ!訓練兵諸君、今の俺程度でビビってたらこの世界、生き残れないかもな、この壊れた世界にはお前らが怯えている俺を傷だらけにするような化物だっている、今のお前らはきっとそんなのに会っちまったら即死だろうな、」


捨て台詞の様にそう言い放つと足早に訓練会場を去った、


『なあ、』

『何だ?』

『総司令の言ってた彼奴の話って、あながち間違っていないんじゃねぇか?』

『ああ、俺もそう思う、あの男は、、』

『『()()()()()()』』


ラキが廊下を歩いていると後ろから声が掛かった、


「おーい!ラキ待ってくれ!!」


ラキが振り向くとそこにはライアと呼ばれていた団員がいた、


「・・・誰だ?」

「いや、別に特段折りいった話でもねぇんだけどよ、」

「なら話し掛けるな、」


そのまま立ち去ろうとするラキにライアが追いかけて歩きながら話し続ける、


「そんな邪険にしないでくれよ!」

「知るか、俺はお前みたいな野郎は知らん」

「いや、あんだけド派手に人の腹ぶん殴っといて、そりゃないぜ」


ライアはそう言って苦笑いするが、どうやらラキは本当に覚えていないようで、気色悪いとでも言いたげにライアを睨む、


「オイ、、マジで言ってんのか?」

「だから誰だお前は、」

「ライアだよ!!ライア・ニルストヘリア!!お前をバイクで案内しただろ!!」


そこまで聞いてやっと気付いたのか、納得したように目を僅かに開いた


「ああ、そんな奴いたな」

「そんな奴って、、お前あの痛みさっきまで続いてたんだからな!?」

「知るかっ、それよりもう一人は何処行ったんだ?」

「それよりってお前、、まあいいアルアならまだ医務室だ、どうやらどっかの義手野郎のぶん投げで肋骨を折ってたらしくてな、」


そう言いながら、ラキをジト目で睨む、然し当の本人は其処知らぬ顔で歩き続ける、


「まあいい俺はウェデリアに会いに行く、お前場所は分かるか?ライア・()()()()()()()、」

「お前場所分かんねぇのに行こうとしてたのかよ、分かったよ、今なら多分、甲装巣アーキテック壊伐作戦本部に居るはずだ、付いて来い、、後、()()()()()()()じゃなくて()()()()()()()な!!」


何食わぬ顔でそう言い放ち、ラキを案内する、ラキはぼそりと、訂正するならそんな顔して言うなよ、と言って、後に続いた。


コツコツ、と金属の上を歩く足音を響かせながら歩いて行く中、色々な奴らがラキを見ては、怯える様に直ぐに目を背ける、


「ここだ、」


着いた扉の上にはホログラムで甲装巣アーキテック壊伐作戦本部と書かれている、コンコン、と扉をノックすると中から、いいぞ、という声が返ってきた、ライアは入るように手で促すとそのまま去ってしまった、仕方なく一人で中へ入って行く、幸い今作戦本部にはウェデリアしかいないようだった、


「ラキ、どうした?」

「一つ聞きたい事があります、」

「また改まってなんだ?」


ウェデリアは目を少し丸くして問う、


「先程ラヴィアという男との騒動が起きた際、ウェデリアが言っていた血蟲機ナノアボットとは、何ですか?」


その発言にウェデリアは耳を、ピクリ、と動かし眼差しが厳しく変わる、


「それを知って何になる、」

「知った上で決めます、今はまだどうとも、」


ウェデリアの眼差しに鋭い目つきで返すラキを見て、はぁ、と溜息を吐いたウェデリアは口を開く、


「分かった、良いだろう血蟲機ナノアボットとは何か教えよう、然し此処では少々話しずらい、こっちに来てくれ、」


ウェデリアは手招きをして作戦本部と言われている部屋の奥に付いた扉の奥へ歩く、エレベーターの様になった扉の奥でウェデリアは言う


「此処なら良いだろう、下に向かうがその間に話してやる、」


壁に付いたボタンを押し、下に降り始めるエレベーターの中でウェデリアは話し始める、


血蟲機ナノアボットとは肉体強化機械ナノマシンを改良、改善、を行い造られた肉体強化機械ナノマシンの後継機、次世代肉体強化機械(ナノマシン)と言ってもいい、」

「次世代、、肉体強化機械ナノマシン、、」


ラキが反芻するように口にしている間もウェデリアは続ける、


「そうだ、旧世代機である肉体強化機械ナノマシンの欠点であった体外に出てしまった血液では機能を停止する問題を改善し、体外での活動を可能にした上で形質変異機構ミュータウルシステムという独自開発の物体形質可変機構を組み込んだ事で体外に排出された血液の操作を可能にした上でその血液内物質を組み換え金属等に自由に変更する事が可能になった、そうすることで手に武器を持っていなくとも即座に武装する事が出来るようになった、それが先程の私やラヴィアのやっていた血操武身ケッソウブシンだ、」


そこまで話していると、ゴウンッ、といってエレベーターが止まった、プシューッ!!、と扉が開くと、そこには化学薬品やフラスコ、培養カプセルと言った化学系部品にまみれた研究室の様な場所に着いた、


「そして全ての血蟲機ナノアボットは此処で造られている、そこにある赤色の薬液の入ったトリガー式注射機が血蟲機ナノアボットだ、」


ウェデリアが説明している中ラキは注射機に近寄り手に取りよく見る、


「まあ血蟲機ナノアボットを体内に入れるには被験者は麻酔を打たれて意識が無い内に首筋に入れるのが普通だ、じゃないと肉体強化機械ナノマシンとは比にならない程の激痛が─────」

「分かった、、」

「え?」


ウェデリアの見た先にいたのは今まさに首筋に注射機を突き立てトリガーに指を掛けて押し込む瞬間のラキだった、


「待て!!ラ!?──────」


ウェデリアの制止も間に合わず、プシュッ!!、という音と共に一気に血蟲機ナノアボットがラキの体内に入って行く、


「オイ!!馬鹿!何してる!?意識を持ったままそれを打ち込んでは!!!」

「・・・・何とも無いぞ」

「何?」


ラキは自分の腕や胴体を確認するが異常は無く痛みも無い、


「本当に痛みはないのか?」

「ああ、至って普通だ」


それを聞いたウェデリアは薄く笑いながら言った、


「ははは、、お前は本当に、いつも私驚かせるな、だが血操術はどうだろうな?、経験則だが今まで血蟲機ナノアボットを使った血操術を自分の武器にできる程成長させるまでには、最短でも一ヶ月はかかっている団員がほとんどだ、長い奴は確か一年はかかったからな、」


そう言って成長を見守る親の様にラキを見る、ラキはそれを聞いて対抗意識を持ったのか、何も言わずに突発的に左手首を切った、その行動に驚いているウェデリアを置いてラキは言った、


「なら、無理矢理にでも覚えるまでです、」


ラキの左手首からは、ラヴィアやウェデリアの比ではない量の血が正しく滝の如く勢いで流れ出す、ラキは手首に意識を集中させ血の躍動を冷静に感じる、


「流石にそんな直ぐには、、今すぐに止血しなければ危険だ!!」

「ウェデリアはただ見ていて下さい、直ぐに身に着けます、」

「だから、そんな直ぐには────ッ!?」


ラキを説得しようとするウェデリアの言葉が詰まる、目を閉じ手首に意識を集中させているラキの血が宙に浮いたのだ、蛇が宙を這う様に動くそのさままさしく血を制御し血を操れている証拠だった、


「そんな、、こんな直ぐに動かせるなんて、」


ウェデリアが驚愕する中、蛇の様に宙を揺蕩っていた、血の筋は段々とラキの左腕に絡み付き、薄く広がり左腕全体を覆った、そして、バキバキ、と薄く広がり固まった血の殻が蛹の羽化の様に割れていきその中からラキの左腕全体を覆う巨大な暗黒の拳機ガントレットが現れる、


「はぁ、、はぁ、血操ケッソウ武身ブシン:或虐コクギャク、、、雷帝ライテイ


然しラキの左肩から膝程まであった巨大な拳機ガントレットは直ぐに霧散する様に消える、


「うぁ、」


ラキが倒れそうになるタイミングでウェデリアはやっと気を取り戻し、ラキの身体を支える、


「馬鹿者、血を一気に使いすぎたんだ、、一度休め、」

「はぁ、はぁ、いや、まだ俺は、できる、」

「だめだ、これ以上血を使えば失血死するぞ、一度身体を休めろ取り敢えず一番近い簡易休憩室に送る、」

「いや、俺は、」

「ダメです聞きませぇーん、休むのはお義姉ちゃん命令です、じゃないとずーっとギュー!ってし続けるよ!」

「うぐッ、、分かりました」


そんな抜けた様な話し方でラキに気取られぬ様にしながらウェデリアは考えた、

この短時間で血の操術だけじゃなく武具化までするとは、、、ラキは一体、、何者なんだ、明らかに常人

の域を超えている、人の上限を越えた異常な集中力や筋力、、ラキは、、、いややめておこう、何があってもラキはラキだ、私が守りたい大切な義弟だ、それは変わらないじゃないか、


ウェデリアはそう思いながらラキに肩を貸し簡易休憩室へ急いだ。

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