商人ギルドに入って冒険者の依頼人になりました
商人ギルドに入った少年が依頼人となって、冒険者ギルドと盗賊ギルドへ行きます。
タリルの初仕事は北の港町ウィサリスに質流れ品を運ぶことだった。
ウィサリスに行くためには2つのルートがある。ジレヴァルの森を通って真っすぐ北に向かう方法と北西のセーラルトの村を経由する方法だ。
ジャンはセーラルトの村を通るようにと指示した。
タリルはセーラルトの村には行ったことがなかったので、セーラルトの村を経由するルートで行くことに決めた。
ジャンは冒険者ギルドに求人を出して、パーティーを組むようにと言った。パーティーの中には護衛としてマリアナも加えるようにと指示した。
タリルは喜んだ。マリアナもやっと隠れてついていかなくても良いので嬉しかった。
タリルの妖気の胸当ては守備範囲が10m以上まで広がっていた。
アイテムとの信頼関係でどんどん進化してるようだ。
荷物は馬車に積んでの移動だった。
馬車を守るのにはタリルだけで接近戦では万全だった。おまけにマリアナもいる。
パーティーに加えるとすれば弓を射ることができるアーチャーで、万が一けが人が出ても治癒魔法が使えて治療できるエルフ。
それともう一人、進路を事前に先行して情報収集を行い、馬車と離れて護衛のできる頭の良いタイプのシーフといったところか。
大勢では移動も不自由だから今回のパーティーは4人ぐらいが良いだろうとタリルは思った。
タリルは治癒魔法を使えるアーチャーを雇うために冒険者ギルドに求人を出して、盗賊ギルドには情報収集に長けたシーフの求人を出すことにした。
タリルは初めに冒険者ギルドへ発注しに行った。
掲示板と受付カウンターには冒険者たちが並び、冒険者ギルドの中は騒がしかった。
年齢は若くても商人ギルドのダノリクムの一員として赴いたタリルとマリアナは、冒険者が並ぶカウンターではなく、丁重に奥の応接室に通された。
「今回のご依頼はどのようなクエストでしょうか?」
主任と思われる金色の長い髪にメガネの女性が応対した。
冒険者ギルドのブルーの制服は清潔感があった。
「主任のエステナと申します。よろしくお願いします。タリル様、マリアナ様、以後お見知りおきを」
挨拶をしてきた主任のエステナはタリルのこともマリアナのことも知っていた。
「北の町ウィサリスへセーラルトの村経由で物資を運びますので、その護衛を一人募集します。ヒールの治癒魔法が使えるアーチャーのエルフを1名で1週間の契約で依頼したいです」
「エルフを募集ですね」
「今回の働きを見て商人ギルドのダノリクムはその後も継続して契約する準備があります。働き次第では報酬もアップしていきます」
「今回のクエストの報酬はいくらですか?」
「相場の倍を支払います」
「それは景気の良いことで。荷物はいわくつきですか?」
メガネを触りながらエステナが探りをいれた。
「ええ、質流れ品でレアアイテムです」
タリルは答えたが、荷物にレアなアイテムなどなかった。
「通常、ウィサリスへの護衛では難易度は☆1の簡単なレベルです。一週間だと5ゴールドといったところです。10ゴールドにしますか?」
「はい。10ゴールドでお願いします。」
エステナが確認したのでタリルが答える。
「その報酬ならプライドの高いエルフでも大丈夫でしょう。心当たりがありますからこちらからエルフに声掛けします。すぐにでも見つかりますよ」
エステナが微笑んだ。
「来週の月曜の朝に出発なので商人ギルドのダノリクムのほうまで来てくださいとお伝えください」
タリルが出発の日時を付け加えた。
「報酬は冒険者ギルドが預かってクエスト完了時に冒険者に後払いします。手数料込みで11ゴールドになります」
タリルが支払いを済ませてマリアナと一緒に商人ギルドの出口に向かった。
「ありがとうございます。またのご依頼をお待ちします」
エステナがギルドのドアを閉めるまで深々とお辞儀をした。
タリルは冒険者ではなく依頼者になった。
冒険者ギルドを出るとタリルとマリアナは盗賊ギルドへ向かった。
ギルドへ入ると若い依頼人に盗賊たちの視線が突き刺さる。
体にぶつかってスリでもしそうな不穏な雰囲気だったが、依頼人の横に長い剣を腰に付けた獣人の護衛がいるを見て、盗賊たちはタリルにちょっかいを出すのをためらっていた。
背の高い支配人らしき男がタリルとマリアナを奥の応接室に通す。
「初めましてタリル様、支配人のコーヴェトルと申します」
護衛のマリアナには従者だと思って挨拶をしなかった。
「今回のご依頼は?」
「北の町ウィサリスへセーラルトの村経由で物資を運びますのでその護衛を一人募集します。拙攻として村や町に入り情報収集の出来る知的なタイプで、遠方から護衛のできるスキルを持ったシーフを希望します」
「それは希少な人材ですね」
コーヴェトルが難しい顔をした。
「報酬はいかほどで?」
「1週間で10ゴールドです」
「それならうってつけの人材がいますよ。多少癖はありますが癖のないシーフなんていやしません」
口をへの字に曲げてコーヴェトルは肩をすくめた。報酬次第で態度が変わるのをタリルは体験した。
「荷物はいわくつきですか?」
「ええ、質流れ品でレアアイテムです」
荷物にレアなアイテムなどなかったが、帰りにレアアイテムを積んで帰ることになるので、この情報は後になって間違いではなくなることになった。
「手数料は2割で先払いです」
12ゴールドを支払うとマリアナと一緒に出口に向かう。
「またの依頼をお待ちしております」
支配人のコーヴェトルが丁寧にお辞儀した。
盗賊ギルドの扉を開けて外に出ると10人ほどの盗賊に囲まれた。顔がハイエナで体はけむくじゃらな獣人の群れだった。
「お兄ちゃん。おとなしく金のはいった袋を全部渡しな」
リーダーらしき男が鋭い目つきで威嚇してくる。
「金ならいくらでもある。くれてやるさ」
「ものわかりがいいじゃねえか。お兄ちゃん長生きするよ」
ハイエナの獣人の男が言い終わりかけたときには、マリアナが腰にかけていた剣をさやから抜いて、10人の盗賊の中に突入していた。
薄い水色に光る氷の聖剣を左下から右上に振りぬくと、10人の盗賊は一瞬で氷の塊になった。
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
ガラスが割れるような音が聞こえる。
マリアナはゆっくりと歩いていき、氷になった獣人を一人づつ拳で粉々に砕いた。
「相手を見て声をかけるんだったな」
マリアナが土の上の氷の破片を見て言った。
赤髪を後ろに束ねたフレームレスのメガネをかけた盗賊が木の上でそれを見ていた。
「こりゃぁ、おっかねぇ!見た目はかわいいけどさぁ、まじで、やばくね」
メガネをかけた盗賊がその場からすっと消えた。
氷の聖剣はジャンがマリアナに護身用にと持たせた。
氷の聖剣は遠方の貴族が宴会の余興に客人に見せるため先祖代々200年所持したが財政難で質入れしたものだ。
薄い水色に光る刀身の色が美しいため貴族が観賞用に美術品として飾っていた。
「素晴らしい剣だ。こうして従者にもたせれば最強の部隊になったろうに。刀は価値の分からないものが持つと実力を発揮できないものだ」
アリアナが氷の剣を上に持ちあげて嘆いた。剣が青く光って喜んでいるように見える。
ジャンが言うには通常なら村1つと交換できる価値があるものだという。
「美しすぎて目立つからさやに入れて持ち歩きなさい。使うときにだけ鞘から出した方が方が良い」
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