隣の国王が煮え切らない態度なので城を破壊した
質屋のタリルがベルコン王に二度と攻めてこないよう言いますが煮え切らないので城を破壊します。
狼の獣人マリアナの前にツキノワグマの戦士が立つと大きな斧を振り上げて襲ってくる。
狼の獣人の女が圧倒的なスピード差でかわすと背後に回り込んで前蹴りをする。土煙をあげてツキノワグマの戦士が前に倒れた。
「貴様! 正々堂々と戦え」
ツキノワグマの戦士が斧を振りかぶった所に狼の獣人の女が懐に飛び込んで腹を殴る。体がくの時になったところで後ろに下がると左手のかぎ爪を振り上げる。
ツキノワグマの胸に五本の傷がついて血が吹きだす。ツキノワグマが斧を捨て素手で殴りあおうとすると、狼の獣人が剣を収めて、さあどこからでも来いと合図した。
ツキノワグマが殴りかかると左手で拳を払って、右の拳を熊の顔面に叩きこむ。ツキノワグマの目が白くなってうつぶせに倒れて動かなくなった。
「熊め、名をあげるチャンスだったのにな」
ライオンの男が不意を突こうとしてマリアナに襲い掛かると腕をつかんでそのまま地面に叩きつける。
ライオンの男が立ち上がると十人になった狼の獣人がライオンを囲んで交互に平手でバシバシと頭を腹を殴りつける。
「いたたたた。おい。やめてくれ。まいった」
ライオンの男があきらめて跪く。
狼の獣人の女のマリアナがサイの戦士を指さして来いと言うと、剣を持ったサイの戦士がマリアナに襲いかかる。
マリアナが刀を抜いてサイの戦士の剣を避けて走り抜ける。狼の獣人の女が後ろを向いたままなので、後ろからサイの戦士がしめたと思って切りかかろうとした。
狼の獣人の女が振り向きざまに剣を水平に振りぬくとサイの獣人が凍り付いてしまう。マリアナは刀を鞘に納めるとゆっくり近づいて左手のかぎ爪でサイの獣人を殴って粉々に砕いた。
ライオンの男が腰を抜かして見ているとミノタウルスの女戦士が指輪を二つ嵌めた左手を前に出して魔法を詠唱する。
「マグニチュード!」
地響きと共に地面が一直線に割れてマグマが地面からあふれだす。
「火と土の魔法のミックスだな。こいつは出来る奴だぞ」
エルフのセレアは自分と同じように属性を混合させるアイデアを見て感心した。
「浄化歩兵!」
マグマの流れが狼の獣人のマリアナにぶつかっていく。狼の獣人が千人に分身してマグマに対して防波堤になる。
「分身魔法。クレーメン将軍のアイテムか」
銀色の鎧を着た歩兵の列が前に歩きだすとマグマが消えていく。
「魔法が消されているだと? 浄化の鎧か! ハーディンを倒したのはおまえなのか」
マリアナが氷の聖剣を持ってミノタウルスに近づいていくと、空の上から透明の階段を降りて来るように近づいてくる少年が見えた。
「マリアナ、こいつは殺さないでおこう」
ラピスラズリ色の服を着た少年が言うと狼の獣人の女が剣を鞘に納めた。
「生かされたって、お前の国には寝返らないぞ」
ミノタウルスの女戦士が言うとライオンの男が頷いた。
「私達の国に寝返らなくていいから、ここに新しい国を作ってくれ」
「この砦にか?」
「砦は壊す。ダフラック川の南のエリアに農地と村を作るからそこに住んでほしい」
タリルが左手に持った杖を前に出すと砦に雷を帯びた弾丸がぶつかってケヴィスンの砦が粉々に飛び散ってなくなった。
「お前たちがこの土地を取り返すんじゃないのか?」
「いや、領主はこの土地を捨てたんだ。私達は商人だ。ここで商い出来ればいい」
「この土地を自由にしていいというなら村を作ろう」
「猫の獣人がたくさん移住してくると思うから、住ませて仕事を与えてくれ」
タリルが言うとすぐにエルフのセレア片手をあげて、荒れ果てた土地を魔法で耕して、広大な畑を作りだした。
「湖と水路を作っておこう」
さらに、エルフのセレアは湖で畑の周囲を囲んで、囲まれた農地の中に水路を張り巡らせる。
「キャスタリア!」
セレアが両手を挙げて詠唱すると農地の北側に低層の村の建物がいくつも出現する。
「領主が放棄した土地ですから自分たちの村として自由にしていいですが、私達と優先的に商売をしていただけるとありがたいですね」
「ああ、逆にこちらからも取引をお願いするよ」
ミノタウルスの戦士が言うとライオンの男と目が覚めたツキノワグマが頷いた。
「交渉成立ですね。村に困ったことあったら助けましょう。オクラスの商人ギルドのタリルまで連絡ください」
「ああ、なにかあったら相談させてくれ」
「オクラスの商人ギルドに依頼してくれれば天気を自在に操れる小さな魔女を紹介しますから、雨も日光も足りなくなってもなんとかできますよ」
「それはありがたいな。小さな魔女をぜひ紹介してくれ」
タリルが分かったと笑顔で答えた後に、真顔になって狼の獣人とエルフを見た。
「マリアナ、セレア、私は質屋です。ベルコン王にはしっかり借りを返してもらいます。脅かされた分、脅し返してから引き揚げます」
ラピスラズリ色の服を着たタリルが南にあるベルコン共和国に向かって歩きだすと狼の獣人が千体に分身して南に進軍していく。
「浄化歩兵がベルコンに向かっていく。何をするつもりだ」
エルフが無言のまま通り過ぎる。氷のような冷めた目でミノタウロスの女戦士のほうを少しだけ見た。美しい顔立ちのせいでより冷たさを感じる。
「キリングムーン!」
エルフが黒い杖を高く上げるとたくさんの月が真昼の空に浮かび上がって南の地平線に向けて落下していく。ズドン! ズドン! ズドン! 地響きがして地面が揺れた。
「こんな狂ったやつのいる町をベルコン王は攻撃させようとしたのか」
ミノタウルスの女戦士が首を横に振った。
カエルの兵士がベルコン王のいる城に帰って来る。
「ベルコン王! ベルコン軍が一瞬で消滅しました」
「誰だ。もうウォルフォードの軍はいないはずだぞ」
「エルフがやってきて一人で七千人の軍を消滅させました」
「生き残りは?」
「私を含めて五人いましたが、氷の狼と一騎打ちしておそらくもう生きてはいないでしょう」
「氷の狼? クレーメン将軍を倒した奴らか」
ベルコン王が立ち上がった瞬間、地響きと共に城が揺れて兵士が現れる。
「ベルコン王! ベルコニアの城郭がエルフの魔法使いに破壊されて、狼の獣人の歩兵が侵入してきています」
「なんと! 今すぐ逃げるぞ」
「ベルコン王、もう逃げ道すらありません」
「衛兵よ。退路を作れ!」
「その衛兵が。氷の人間になって動けません」
王の間のドアが吹き飛んで銀色の鎧を着た狼の獣人が入ってくる。その後ろから緑色の長髪のエルフが入って来た。
「氷の狼! もうここまで来たのか?」
「おまえか。オクラスの町に進軍してきたのは?」
「いや、これは共和国の王が話し合って決めたことだ」
エルフの後からラピスラズリの服を着た少年が入ってくる。
「オクラスの商人ギルド、ダノリクムのタリルです。私達の町に兵を進めたようなのでご挨拶にきました」
「なんの用だ」
「それはこちらのセリフです。なんの用で兵士を進めてきましたか?」
「ウォルフォードもハーディンもいなくなってケヴィスンの砦に兵もいなくなったからな。オクラスもいただこうと会議で決まったのだ」
「そうですか。私は会議なしで、思いたったらいつでも一瞬でここに来れますから、次にオクラスに進軍したら、そうですね。この城と町、ベルコニアをいただきに来ます」
「なんだと? そんな一方的な話があるか」
「あぁ、あとケヴィスンの砦のあった付近に農村が出来ました。あそこも私の友好国になりますから、あそこに進軍してもベルコニアをいただきに来ます」
「そんな交渉は共和国の会議なしでは認められんぞ」
「交渉決裂ですか。ならしょうがない」
タリルがベルコン王に背を向けると氷の狼が氷の聖剣を抜いて大きく振った。城の壁と天井が凍る。それをタリルが杖から空気砲を当てて砕き始めた。
天井が砕け散った空にエルフが両手をかざすと月が七つ浮かんでいる。
「昼に月が出ているだと」
その月が一つ城に落ちてきて城が揺れる。城が半分破壊されて無くなる。
「やめろ! やめてくれ。話し合いをしようじゃないか」
「では、ベルコン共和国で会議を開いて他の王にこう言ってください」
「なんだ?」
「オクラスとその南にある農村に手を出したら、ベルコン共和国のすべての国をいただきに来るから手を出すなと」
タリルが言い終わると空にあった月が全て城に落ちて来る。すさまじい衝撃音で城の中にいた衛兵も怯えた。
王の間の壁が崩れて青空が見える。王の間を残して城のほとんどが壊滅状態になっていた。
「いいですか? 私は好きな時にだれの了承も得ずに、いつでもここに一瞬で来れるということをお忘れなく」
ラピスラズリ色の服の少年が茶色い葦のような棒を振ると、少年と千人の鎧の獣人とエルフが消えていなくなった。
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