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エルフに魔法の指輪をあげたら狼の獣人が嫉妬で怒った

新しい領主が砦を放棄したために南の国が進軍してきました。

 

「湖を見ながらメロンソーダを飲めるなんて最高の気分だ。メロンソーダはセレアの目の色みたいだね」


「若、複数の人間でいるときは言葉に気を付けられよ」


 タリルと狼の獣人の女マリアナとエルフのセレアの三人がウィサリスの町のライラス湖の見えるカフェでメロンフロートを飲んで休息を取っている。


 メロンフロートが好物だったタリルとマリアナは質流れ品を運ぶ途中の休息に来ていた。カフェにセレアを誘って寄ったのだ。


 カフェの入り口から碧眼の魔女が入ってくると周囲がざわついた。碧眼の魔女は眼帯をつけたオレンジの髪の女の子を連れている。


 ざわつくのには理由がある。碧眼の魔女の懸賞金は2億ゴールドになっていたからだ。


 ハーディンがタリルのパーティーに負けて蒸発した日、雲の絨毯で逃げ去る碧眼の魔女を目撃した兵士がいた。


 そのため、ハーディンと5000人の軍隊を打ち負かしたのが碧眼の魔女だということになったのだ。


 さらにウォルフォード伯爵が行方不明になったのも碧眼の魔女が関わっているのではないかと疑われているので懸賞金がはね上がった。


 ウォルフォード領はロールトバールが引継いで領主になった。ミアレイはロールトバールの側近として、ウォルフォード軍の将軍になっている。


 碧眼の魔女リュアラはタリル達のテーブルに来ると一緒の席に座ってメロンフロートを二つ注文した。


 眼帯をしたオレンジの髪の女の子が、手をべたべたにしながらバニラアイスを口に入れた。口のまわりもアイスで白くなっていく。


 「サファイアは覚えが早いよ。こいつはすごい魔女になる。タリルのパーティーに入るのもそう遠くはないよ」


 リュアラが嬉しそうにしてサファイアの頭をなでるとサファイアが嫌がって体をひねった。


「これで良かったのでしょうか?」


 タリルがリュアラに聞くと


「考えるだけ無駄さね。この世に正解なんてないのさ」


 リュアラが笑って答えた。


「そういえば、セレア、これを君にあげよう」


 タリルがテーブルの上で指輪の入った箱を開いた。


「若、こういった行動は人間関係に支障があるのでやめろと言ったはずですぞ」


 箱をパカリと開けて指輪を見せたので、セレアも同席していたマリアナも勘違いした。


「タリル、セレアにちょっかいを出しているの? そうだ。この間の別行動の時ね!」


 マリアナのアクアマリンの目の中に嫉妬の炎が見える。


「ああ、あまりにもセレアの横顔が綺麗だったので、綺麗だと言っただけだ。恋愛対象では見ていないよ」


「じゃあ、遊びなの?」


「若、言動には気を付けなさいと言ったはずですぞ。遊びで、あのようなことをおっしゃったのですか?」


 セレアが面白そうだと言う顔でさらに炎上させる。リュアラがにやにやしながら様子を見ていた。


「違うよ。この間の遠征の褒美と思って魔法を使える指輪を3つと杖をセレアに用意したんだ」


「ほう。やはり若は気前が良いですな」


「指輪は土と光と水の三種類で、杖は闇の杖です。闇属性で使い方はセレアの工夫次第です。アリエルと相談してみてください」


「指輪だけでなく、新しい杖までくださるとは、お返しできるものと言えばこの身一つしかございません」


 セレアが上目づかいにちらりとタリルを見るのを狼の獣人がうなり声をあげて見ていた。


「私には褒美はないの?」


「もちろんマリアナにも褒美はあるよ。浄化の鎧は重いからね機動力を上げるためのジャンプシューズだ」


「浄化の鎧は魔法が無効化できるのはいいが体が重いと思っていたんだ。走るスピードがアップしてジャンプ力も上がるのは便利だね」


「いいねえ。私も欲しいよ。私達だって欲しいよね。サファイア」


 碧眼の魔女がわざとらしくタリルにおねだりした。


「そうですね。サファイアには風の聖剣をプレゼントします。天気を自由に変えられますよ」


「リュアラさんには渡そうと思って準備してあったアイテムがあるんです。これはマップクオーツと呼ばれる水晶玉なのですけど魔力がある人が覗くと少し先の未来が見えることがあるようです」


「マップクオーツにはいろいろ種類があるけど、これは複雑な模様が入った水晶玉だね。ありがたく受け取っておくよ」


「私、剣よりもアイスクリームがいいの」


 口の回りがアイスで白くなったサファイアがあどけない顔をした。


 入り口からアマゾネスのミアレイが入ってくると碧眼の魔女が身構える。


「碧眼の魔女リュアラ、おまえに戦意はない。タリルに用事があって来た」


 アマゾネスの露出は激しく、赤いスポーツブラに下は革のミニスカートを履いているので太腿が露わになっていた。


「なんだい? ミアレイ」


「ロールトバールがオクラスの南にあるケヴィスンの砦を放棄した。すぐにベルコン王国が北上して来るだろう。オクラスの町も危ない」


「なんだって! オクラスにベルコン王国がせめてくる? なぜ砦を放棄したんだい?」


「ロールトバールが新領主になったら砦は要らないといって、さらに戦費は半減されて、傭兵は半数が解雇になった。オクラスまで手が回らないからタリルが守ってくれ」


「わかった。オクラスは私達が守りますよ」


「それと、タリル、副将軍にならないか? ハーディンがいないので敵国に舐められている」


「ミアレイのことも守りたいけどね」


「守ってくれるのですか」


 威勢のいいアマゾネスがタリルを見て頬を赤らめると、もじもじと女らしいしぐさをする。


「いやぁ、副将軍がお供と隠密をつれて旅するのはなんだかご隠居っぽいので嫌だな。考えておくよ」


「そうか。マリアナはどうだ? 浄化の鎧を着ていることだし」


 タリルを見て女を見せたアマゾネスに狼の獣人は不快感を示していた。


「なにっ? 私はあんたが嫌いだし部下になるつもりはない。私はタリルと一緒にいないと、心配だから。それにセレアと二人きりにできない」


 マリアナがセレアを見ると、セレアが髪を掻き上げながらメロンソーダに口をつけた。


「いまはアリエルもレギーも別行動だし、私とマリアナとセレアで町に急ぎ戻ろう」


「新しい指輪もいただきましたし、魔法を使って防いで見せましょう」


 セレアが立ち上がって出口に向かう。タリルの横を通るときに、三つの指輪を嵌めた左手をわざとマリアナに見せつけて微笑む。

 

「さあ、若、急いでいきましょうか」


 セレアがタリルの肩の上に手を触れて耳元で囁くのを見て、マリアナが怒って立ち上がった。椅子が勢いで吹っ飛ぶ。


「いくぞ。タリル! いつまでも年増のエルフにデレデレしてるんじゃないぞ」


「狼の女はおっかないねぇ。気を付けなよ。サファイア」


 リュアラがハンカチでサファイアの口の周りを葺きながら笑った。


 大股で外に出ていくマリアナをタリルがきょとんとして見送る。


「タリルは女心が分かってないねえ。これはしばらくエルフのおもちゃになるよ」




 レギーとアリエルは今回は別行動を取っていた。タリルが次に行く町「ネーアル」を事前に調査するためだった。


 オクラスの町が攻撃されそうになっていることはまだ知らない。


 読書好きの二人は気が合うようで、シーフオブノスタルジアのセリフだけでなく、いろんな本のセリフを言っては盛り上がっていた。


 時の魔女アリエルが本当は男かもしれないという疑惑があることをマリアナはみんなに黙っていた。


 アリエルはもしかしたら女かもしれないし、見た目も声も女だった。今二人が幸せなら自分が確かめる必要もないと思った。別に男が女装していても罪ではない。


 湖の上、その上の竜のように巻いた雲の上をアリエルとレギーを載せたバハムートが飛んでいた。レギーがアリエルの腰につかまって耳元で声をかけた。


「アリ―、冒険をするのに学校の成績はいらない」


「必要なのは最初の一歩を踏み出す勇気だけだ」


 アリエルが少しだけ振り向いて返事をした。


「今まで行ったことのない場所へ行ってみよう」


 嬉しそうにしてレギーが続けた。


「町の向こうは知らない町」


 アリエルが前方を指さす。


「森の向こうは行ったことのない森」


 レギーが上から見下ろす森を指さした


「新しく見るものすべてが冒険だ」


 二人を乗せたバハムートが町に向かって急降下して小さくなっていく。




 タリルとマリアナとセレアが町にオクラスの町に転移のカノンで移動する。平和だった湖の町と違って町の中が騒然としている。


「ベルコン軍が攻めてきているぞ」


「ケヴィスンの砦がとられてこちらに向かっているって」


「七千人の大軍らしいぞ」


 荷物を持って町から出ようとする商人たちで広場が混雑していた。


 商人ギルドの執務室に行くとジャンとノーザンがタリルを待っていた。


「タリル、戻って来たか。大変なことになった。この町が危ない」


「ジャン叔父さん。大丈夫です。私のパーティーは5人で大軍に勝てます」


「でも、3人しかいないぞ」


「マリアナとエルフのセレアがいれば余裕で町を守れますよ」


 セレアは広場の中央に立って両手を高く上げる。


「キャスタリア!」

 

 土を固めた砂岩の城がオクラスの町を囲んでいく。


「土の魔法は色々と作れそうですな」


 そう言って片手を振ると、空に向かって百段の階段ができた。セレアは階段の上に駆けあがっていく。上から町を見下ろす。


「ベルコン軍がダフラック側の向こうまで進軍している!」


 エルフが南を指して叫ぶと、左手を開いて水の魔法を詠唱した。


「ナイアガラ!」


 城壁の外側に滝ができて東西南北の橋以外から浸入が出来なくなった。


 階段の上に立って黒い杖を高く上げるとベルコン軍の先方軍、三千人に向けて振り下ろす。三千人の軍を黒いドームが包み込んで内部は暗闇なった。


 先ほどまで青空だった空がいきなり真っ暗になったのでベルコン軍の兵士が怯える。


「プラネタリウム!」


 暗闇の中に光輝く星が無数に現れてぐるぐると回り始めた。


「おおっ。星空だ。綺麗だ」


 兵士たちが嬉しそうに見あげて喜んだ瞬間星たちが降り始める。流れ星が光の矢になって雨のように降り注いでくる。光の矢は兵士たちの体を貫いていく。


 一瞬で三千の部隊が消えた。


「闇と光のコンボはいかがだったかな」


「では次は土と光のコンボを試してみよう」


「キリングムーン!」


 大きな土の固まりが球体になって空に浮かぶと光に包まれる。月のような球体が地面から五つ浮かび上がるとベルコン軍の本体に向かって落ちていく。


 大きな地響きと共に地表にクレーターが出来る。潰されずに生き残った兵士たちが逃げ惑う様子を上からエルフのエメラルドの目が静かに見ている。


 左手を振ると残りの月も次々と地面に落ちて地響きをあげた。


 ベルコン軍の本体もばらばらになっていく。


 本能で退却するものや、その場で座り込むもの、まだ戦おうとするものなど統制が取れなくなる。


「水と闇のコンボに耐えられるかな」


 空に突き出た階段の上で両手を高く上げるエルフの顔がいままでに見たことのないような冷たたい表情を浮かべる。


「ツナミ!」


 真っ黒な高い波が兵士のほうに向かってくる。走って逃げる兵士もその場に立つ兵士も飲みこまれていく。それでも前に進もうとするものなどいない。


 黒い波がベルコン軍の残った兵士を押し流すと、将軍や隊長も消えて数人の兵士しか残っていなかった。


「恐怖に負けずに立ち向かって来たものよ。帰還するか? 私達の町に投降するかを選べ。まだ戦いたい者は、狼の獣人が相手しよう」


 シルバーの浄化の鎧を着た白い髪の獣人が橋を渡って歩いてくる。狼の耳が髪から突き出ている。右手の氷の聖剣が水色に光って、左手にヒドラのかぎ爪をしている。


「あれは、氷の狼。クレーメン将軍を倒した奴だ。名を上げるチャンスだぞ」


 白い月が胸にある熊の戦士がマリアナを見て嬉しそうにした。


 他に体力のあるサイの戦士とライオンの戦士とミノタウルスの女戦士と泳いで乗り切ったカエルの戦士が立っていた。


「俺はごめんだ」


 カエルの戦士が跳ねて南へ逃げた。


 






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