調子に乗って領主を消してしまいました
ウォルフォード城で暗闇伯爵との対決シーンになります。
「ウォルフォード伯爵、大変です。ウォルゲートにいた5000人の兵士がなにものかに負けて消滅しました。そして生き返って、若返りました」
伝令の兵士が言った。
「なにを言っているのだ、お前は」
ウォルフォード伯爵が寝言のようなことを言う伝令を叱った。
「ハーディンはどうした?」
「ハーディン将軍は敵陣に一人で突入し敗北して消滅したようです」
ハーディンが負けたという事実は間違いないらしい。
ウォルフォード城の上空にタリルのパーティーを乗せたバハームートが到着した。
「ウォルフォード伯爵はいま、城の中心にある広間にいる」
エルフのセレアが城の中を透視して調べた。
「入り口にはアマゾネスのミアレイが護衛している。ミアレイだけだ」
セレアが言うと、バハムートが城の入り口でパーティー全員をおろした。
狼の獣人のマリアナが先頭になって城の扉を開けるとパーティーは城の中に入って行く。
城の中に入ると大広間になっていて両側に階段がある。
「右の階段が広間に繋がる」
セレアの誘導に従ってパーティーは広間に向かう。広間の入り口の前にいくとアマゾネスのミアレイが立っていた。
「戦う気はない。お前に生かされた命だ。お前のために使ってやろう」
タリルを見るとミアレイが顔を赤らめた。
「ウォルフォード伯爵は正々堂々戦ってくるタイプではない。俺が代わりにドアを開けて先に入ってやる。あとは自分でなんとかしろ」
そう言ってアマゾネスのミアレイが広間のドアを開ける。
開けた瞬間にドアから暗闇があふれだしてミアレイが暗黒に包まれて消えてしまった。
暗闇が部屋の中へと引いていくと入り口にアマゾネスの宝石が入った銀のリングが落ちている。
タリルは指輪を拾い上げる。アマゾネスのミアレイが魔法アイテムに変えられてしまったようだ。
「炎姫の指輪」
タリルが指輪を右手に嵌めると頭の中でミアレイの声が聞こえる。
(暗闇の魔法に対抗するのは光よ。闇に負けない光で照らして! この指輪で松明も作れるわ)
(アマゾネスが急に女っぽくなって優しくなったのは気のせいだろうか?)
左手に白昼の盾を握って真っ暗闇の部屋の中を照らす。白昼の盾はタリルが子供の時代に暗い森を照らすのに使ったアイテムだ。
盾から出る光の束は森の隅々まで明るくすることができた。
「白昼の盾よ。進路を照らせ!」
タリルは白昼の盾に言うと、白昼の盾を前にかざして部屋の中に入った。部屋の奥に暗闇伯爵のウォルフォードがいた。
「ハーディンをやったのはお前だな。なんの用だ」
暗闇伯爵はタリルを見て握りこぶしを前に突きだした。
「父と母を魔法アイテムに変えられた質屋のタリルだ。借りを返してもらいに来た」
タリルが暗闇伯爵を睨み付ける。
「そんなことか。お前もそいつらと同じように魔法アイテムにしてやろう」
暗闇伯爵がさらに拳を突きだして暗闇の球を出現させた。
「ノクターン!」
暗闇伯爵が暗黒魔法を詠唱すると暗闇が拡大してタリルに襲い掛かった。
タリルは白昼の盾を前に出すと光と闇がぶつかり合った。
白昼の盾の周囲と背後が暗闇から守られた。
「そんなレアアイテムがこの世にあったとはな」
暗闇伯爵が驚いて言った。
「炎姫よ。松明となって私を助けよ」
マーリスの剣が炎に包まれて明るくなる。
白昼の盾と松明になった剣を持ってタリルが暗闇伯爵の方に歩いて行く。暗闇が押された。
タリルが部屋の中央まで進むと部屋の半分までが真昼のように明るくなり、暗闇伯爵のいる奥のほうが暗闇になって分かれた。
「俺のことを倒したとしても、また他の奴に代わるだけだ」
「代わりがどうとか、そんなことよりも、借りは返してもらいますよ」
タリルは白昼の盾のと松明をもって暗闇伯爵に近づいて行く。
光が暗闇伯爵の手前までくると、暗闇伯爵が後ずさる。暗闇が光に飲みこまれていく。
「おまえが全部正しいと思うなよ」
暗闇伯爵が言った。
「負け惜しみを言うな」
白昼の盾が光って明るさを増す。
さらにタリルは白昼の盾を暗闇伯爵に近づけて体に光を押し付けた。
「一緒に暗闇に落ちろ」
暗闇伯爵がにやりと笑うと周囲の暗黒の球が拡大していく。
暗闇と光の押し合いになったが、暗闇が拡大してタリルが飲みこまれそうになる。
「罠だ! タリルが暗闇に飲みこまれるぞ」
後ろから浄化の鎧を着た狼の獣人マリアナがタリルを暗闇から引きずりだす。タリルの代わりに白昼の盾を持って前進する。
「それは浄化の鎧。ハーディンの鎧か」
暗闇伯爵の魔力が浄化の鎧に吸い取られて暗闇が消えていく。さらに白昼の盾から光が放出されると暗闇伯爵が光に包まれて体が溶けて消えた。
暗闇伯爵が消えていなくなると床にブラックスターサファイアの宝石の埋められたシルバーのリング「暗闇の指輪」が残った。
タリルは暗闇の指輪を拾って後ろを振り向いてパーティーを見た。
「闇の属性のリングだが、闇が深いな。誰かはめてみるか?」
全員が首を横に振った。
「たぶんレアアイテムが量産できるけど、自分で使いたくはないな。」
タリルが深いラピスラズリ色をした服のポケットに入れた。
「しまった。やってしまったな。領主がいない」
復讐したまでは良かったが、指輪にしてしまったので領主が不在になったことに気が付く。
「ロワールの話では城の地下にウォルフォード伯爵の弟のロールトバールが幽閉されているはずだ。とりあえずあいつを代わりにするしかないぞ」
レギーが弟を探そうと提案した。
タリルのパーティーは城の地下に向かった。
「この壁の向こうに隠し階段がある」
セレアが言うと、マリアナが石の壁を押した。石の壁が回転ドアのように動いて地下への階段が見える。中は光が届かず真っ暗闇だった。
湿った空気がひんやりしている。白昼の盾をもったタリルが先頭になって前を照らしながら、パーティーは奥に進んだ。
「突き当りにたくさんの部屋があるぞ。右の方の部屋に人がいる」
セレアが言った。白昼の盾を部屋の前に近づけて照らすと鉄の柵が見える。牢屋になっていた。
中に衰弱しきった男が見えた。レギーが鍵を探して牢屋の入り口を開けた。セレアがヒールの治癒魔法で男を回復させる。
「誰かは知らんが、助けてくれ。ウォルフォード伯爵に幽閉されている」
「ロールトバールか?」
「そうだ」
タリルが聞くと牢屋の中の男が答えた。体は大分細くなっている。長い間、閉じ込められていたのだろう。金色の髪は長く肌の色はウォルフォードのように青くはない。
「私は商人ギルドのタリルです」
「ウォルフォード伯爵に逆らった者は皆、魔法のアイテムにされました。なぜあなたは幽閉されて、魔法のアイテムにされなかったのですか?」
とタリルがロールトバールに聞いた。
「私と兄とは仲は悪くはなかった。ただ意見が違ったのです」
「私は南街区の繁華街を北の街区のように美しい街並みにして、スラム街も新しいアパルトメントにしようと計画しました。」
「兄は南の繁華街の夜の暗闇を愛していました。華やかでこの世で一番美しい暗闇だと兄は言いました」
「私にはそれが理解できなかった」
「私がスラム街の野良のキャットピープルの捕獲作戦を始めた時、兄はやめろと私を注意しました」
「野良のキャットピープルの里親を見つけるのだから良いことでしょうと私が言うと、現実は違う。多くの野良の子供がいなくなっている。この世から消えていると言いました」
「兄は南街区の再開発をやめろと私に言いました。その予算は全て戦費に回せと言うのです」
「南街区のスラム街を新しいアパルトメントにする金をケヴィスンの砦に充てると言いだした時に、私は兄を失脚させようと決めました。それで兄が怒って私を幽閉したのです」
「兄は野良のキャットピープルを消すのに金を使うのと、不愉快な隣人を消すのに金を使うのと、どっちが正しいか考えろと言って地下牢に入れたのです」
「あなたは私を助けるためにここに来たのでしょうか?」
ロールトバールはタリルに聞いた。
「まあ、そんなところです」
「若、領主がいなくなってしまった今となっては、この者に代わってもらうしかない」
セレアが煮え切らないタリルに決断を迫る。
「ロールトバールさん。助けますけど、新領主になっても野良ねこを殺さないと約束してくださいね」
「分かった。約束しよう」
ロールトバールを地下から連れ出して巨大な玄関ホールに戻ると、アリエルが炎姫の指輪をミアレイに戻した。
「ミアレイ、ロールトバールをお願いします」
ミアレイがロールトバールに肩を貸して二階の部屋へ運んだ。
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