デイバルト湖の神殿でキモいバジリスクと戦う
螺旋の宝箱に変えられた母を救出するためデイバルト湖の下にある神殿に行きます。
闘技場での戦いが終わりゲートから氷の狼と時の魔女が出て来た。財産が100倍になったキャットピープル達が狂喜乱舞していた。
マリアナとアリエルはキャットピープルに囲まれて祝福される。
タリルとセレアとレギーも闘技場の客席から降りて出口で待っていた。見事な戦いだとタリルも感心していた。
「まるで長年一緒にいたパーティーのコンボだったよ」
タリルがマリアナとアリエルを褒めた。マリアナは正直危なかったと思っていたので苦笑いした。アリエルはパーティーという言葉を噛みしめていた。
「レギーも戻ったんだね。ロワールの方はなにか情報がありましたか?」
マリアナが聞くとレギーが答えた。
「タリルのお母さんの居場所が分かった。デイバルト湖の神殿だ。螺旋の宝箱というアイテムに変えられていたよ」
「あなたが大盗賊、赤髪のレギーだね。リュアラが言ってたのより若くてイケメンだね」
アリエルが顔を近づけてレギーを見ると言った。
「近いっ! 大盗賊って、大分話が盛られてそうだけど、リュアラの弟子の魔女だね、レギーだ。よろしくな」
アリエルはレギーに近いと言われて、あわてて黒縁のメガネをかける。
「グアンダスとの戦いでの大活躍はリュアラから聞いている」
そう言ってレギーと握手をした。
「アリエルは時間を止める魔法が使えるんだね」
レギーが戦いを褒める。
「時間を進めたり、ゆっくりにしたり、戻したりできるよ」
「時間を戻せるだって?」
レギーがタリルのほうを向いて驚いたように言った。
「リトリルの林を元に戻したよ。ああ、なぜ今までそれに気が付かなかったんだろう」
タリルが天を仰いだ。
「旦那、お父さん助かりますよ。ロワールが言ってましたよね。時間でも戻せない限り無理だって。炎の羅針盤の時間を戻せるんじゃないですか?」
レギーが嬉しそうにアリエルを見た。
「僕は時の魔女だからね。アイテムの時間を戻すなんて造作もないさ」
ゴスロリ姿の魔女アリエルが平らな胸を張った。
「ここでは目立ちすぎる。オクラスに転移のカノンを使って帰ろう」
タリルが言うと、パーティーはオクラスの商人ギルドのジャンの執務室に転移した。
ジャンが執務室にいきなり現れたパーティー5人にびっくりした。
「急に入ってくるな。タリル。心臓に悪い」
ジャンは椅子に深くもたれて深呼吸した。
「ジャン叔父さん。お父さんを元に戻せますよ。だから急いでジャン叔父さんの執務室に来たんです」
「ノーザンを炎の羅針盤から人間に戻せるだと。それで、方法は?」
「時の魔女アリエルが時間を戻す魔法を詠唱するとアイテムの時間が戻るんですよ」
「時の魔女の居場所は?」
ジャンがタリルに聞く。
「僕が時の魔女アリエルです」
アリエルが前に進み出た。
「タリルの仲間かね」
ジャンに仲間という言葉を使われたことに反応して、アリエルが突然襲った幸福感のためにめまいがしてよろけた。
「はふぅ。な、仲間です。私達は仲間よね」
友達のいなかったアリエルはその類の言葉に弱いようだ。
「タリル、炎の羅針盤を床に置いて」
アリエルが言うと皆が部屋の中央を空けた。
タリルが炎の羅針盤を部屋の中央に置くと、羅針盤の炎が大きくなった。魔女アリエルが両手を高く上げると赤い時計の魔法陣が炎の羅針盤の床の周りに現れる。
「レディーレ!」
アリエルが詠唱すると赤い時計の針が高速で逆回転を始める。炎の羅針盤の中の炎が逆再生のような動きをして小刻みに震えた。
炎の羅針盤のあった場所に一人の男が現れる。
「ノーザン!」
ジャンが叫ぶとノーザンに近づいて抱きしめた。
「兄さん、俺はどうしてここに。。。」
ノーザンが周りを見ると、チャピがふわりと飛んでノーザンの肩に乗った。
「やあ、チャピ」
ノーザンの顔にチャピが嬉しそう抱きついた。
父のノーザンノディスを助けられたことで、螺旋の宝箱さえ手に入れれば、母のリナも助かることがわかった。
5人のパーティーは螺旋の宝箱のあるデイバルト湖の神殿に向かうことに決めた。
先行して調査するため、アリエルがレギーをバハムートに乗せてデイバルト湖まで運ぶことになる。後発隊がヨルムンガンドに乗って川を下ってデイバルト湖に向かう。
「初めて翼竜に乗ったぜ。オクラスの町があんなに小さく見える」
「振り落とされないように、ちゃんと僕につかまってなよ」
アリエルがレギーの手を自分の腰に回させた。
「バハムート!高く飛べ!」
アリエルが言うとばさりと翼竜が羽ばたいて空のさらに上のほうに急上昇した。バハムートは雲の上につき出ると雲が下に見えた。
「これが本当の雲の絨毯さ」
アリエルが言うとバハムートは今度は急降下し始めた。雲を突き破って下降する。
「やべえ、スピードだ。でもたまんねえな」
強い風を受けながらレギーがアリエルにしがみついた。
「これが冒険さ」
レギーが嬉しそうに言った。
「シーフオブノスタルジアだね」
「シーフオブノスタルジア読んだの?」
「全部読んだよ。特に5巻目の」
とアリエルが言い始めたのでレギーが慌てて止めた。
「ちょっと待ってくれ! 言わないでくれ。まだ2巻目を終わったところまでなんだ」
「わかったよ。本を読むのは好きかい?」
「ああ、大好きだ。シーフオブノスタルジアは100回以上読んだぜ」
「先がわからないのが旅さ」
「おっ、しっかりセリフまで覚えてるね。危険を冒すのが盗賊さ」
「世界は不思議で溢れている」
アリエルがシーフオブノスタルジアの一節を返した。
「水平線の向こうはまた水平線だ」とレギーが返すと
「正解なんか探すだけ無駄さ」とアリエルが返す。
「誰かがなんとかしてくれると思うなよ」
「今、やらなければもうできない」
「やってもやらなくても俺達は塵のようなものだ」
「下らねえ野郎は地面に這いつくばって寝てな」
アリエルがそのあとのセリフを続けた。
バハムートがデイバルト湖に着くころには二人は意気投合していた。レギーが先に湖の真ん中にある島に降り立つ。アリエルが続いてバハムートから降りた。
「それじゃアリ―、俺は偵察に行くよ。ここでタリル達を待ってくれ。俺が帰って来なくても嘆くなよ。誰でもいつかは土に帰る」
レギーは石で出来た地下への入り口に向かい。階段を降りていった。
「今、アリ―って呼んだか? パーティーっていいな」
アリエルが満足そうな顔をした。
レギーの方はパーティーとは違う感情をアリエルに抱いていた。
ヨルムンガンドに乗った3人は森の中を流れるダフラック川をデイバルト湖に向かって進んでいる。
森を抜けようとしたとき上空に20体ほどのハーピーの群れが見えた。獲物とみて待ち伏せしたようだ。
ハーピーは顔も体も人間だが手の代わりに羽が生えている。森や林に住んでおり、集団で攻撃をしてくる性質を持っている。
ヨルムンガンドの背中をタリルが駆け上がる。右手にはマーリスの剣を左手には爆雷の杖を持っている。剣と杖の二刀流の構えだ。
ヨルムンガンドの頭を通過するとタリルは走って空へ駆け上がって行く。
セレアが後ろから光の弓で援護射撃する。5本の光の筋がタリルの背中を通過して5体のハーピーを射落とす。
タリルはハーピーの飛ぶ高さまで駆けあがると、円弧を描きながら空気を蹴ってハーピーの後ろに回り込んだ。
ハーピーに杖を向けると空気砲のマシンガンがモンスターを打ち落とす。あっという間にハーピーは5体まで減っていく。
分が悪いと見て逃げようとする残りのハーピーにエルフのセレアが空に向かって光の矢を放つ。光の筋が拡散してばらばらに逃げるハーピーを追尾すると貫通してハーピーが水面に落ちていく。
「次に人を襲うときは相手を選べ」
タリルが水面に向かって言った。
急に川幅が広がって滝が湖に落ちていた。滝を降りる時にタリル達が落ちないようにヨルムンガンドは丁寧に宙に浮いた。
ヨルムンガンドが滝の下の水面に着水すると、波が立って岸まで届く。
湖の中心には小さな島が見える。
「あそこが入り口だな。あの島へ向かおう」
タリルが島を指さした。
ヨルムンガンドが水しぶきを上げて水上を進む。ヨルムンガンドに襲い掛かって来るような水の生物はいないようだ。
真ん中の島にを遠くから見るとバハムートが見えた。先にアリエル達が無事に到着している。
タリル達が島に到着するとアリエルが階段を指さす。
「レギーが偵察に入った。きっともうすぐ帰って来るよ」
デイバルト湖は三方向を山に囲まれている。山からの水が流れ込むので透明度も高い。浅瀬なら水の中の魚が泳いでいるのも見える。
ライラス湖のように巨大すぎて向こう岸が見えないということもなく、湖の向こうにうっすらと高く尖った山々が見えて美しい。
階段を登ってくるレギーが見える。レギーは息を切らしながらタリル達に近づいてくる。
「洞窟の途中に複数のバジリスクがいました。6体はいました。奥の神殿に螺旋の宝箱は見えましたが、最後の一体が大きくて邪魔なのでそばにいけませんでした」
レギーがタリルに報告した。
「アリ―、土にならずに済んだぜ」
レギーがアリエルのことを親しげに呼んだのを皆が聞き逃さなかった。
マリアナはしばらく何も言わずそっとしておこうと思った。
「いくぞ、湖底探検へ!」
タリルが言うと黒縁メガネのアリエルが頬を紅潮させて震えた。
「探検! たまんないっ」
ゴスロリのドレスのくびれは細く、華奢な脚は内股で脇をしめるしぐさはか弱い女性だ。
洞窟の中の階段を降りていくと気温も下がって冷たくなってきた。洞窟の穴は広く岩肌で、頭を下げなくても階段を降りられる。
洞窟の天井部分は鍾乳石のつららのとげが数知れずぶら下がっている。奥に空間が広がってホールのようになっていた。
「旦那、広いところにバジリスクがいます」
レギーが小声で言った。バジリスクは体としっぽは翼竜だが顔と足がニワトリに似ている。体が青黒くぬめりがある。
パーティーの目にもその姿が飛び込んできた。凶暴で毒を口から吐いてぶつけてくる。
「きもっ!」
アリエルが舌を出して、バジリスクが見た目がやばすぎるという顔をして見せた。
「マリアナが先行して私が続く、セレアとアリエルは並列で護衛、レギーは護衛を守れ」
タリルが言うとマリアナが単独でバジリスクに突っ込んでいく。
剣と魔法の杖の二刀流のタリルが走って続いた。
バジリスクがこちらの存在に気が付いて毒液を口から吐き出す。
狼の獣人の脚は速く、マリアナは軽くかわしてバジリスクに近づくと、氷の聖剣を素早く振って一体目を凍らせた。
氷の固まりになったバジリスクをタリルが爆雷の杖から空気砲をマシンガンのように出して砕いた。
2体目と3体目のバジリスクが同時に現れてマリアナに毒液を吐いてくる。毒液がマリアナに届きかける。
「レンテ!」
魔女アリエルが片手を開いて突き出す。詠唱すると小さな赤い時計がフワリと飛んで毒液がスローモーションになった。
マリアナは間一髪で毒液をかわすことができた。マリアナが2体のバジリスクを氷にすると、後ろから来たタリルが剣でバジリルクを叩き砕いた。
パーティーの連携がうまくつながり始める。
さらに2体のバジリスクがマリアナに向かって来る。バジリスクは走りながら毒液を口から飛び散らせた。
「プロイベーレ」
アリエルが両手を高く上げて詠唱すると、赤い時計が現れて針が停止した。二体の動きがぴたりと止まった。
マリアナが2人に分身して氷の聖剣を振るとバジリスクと毒液が凍り付いた。凍ったバジリスクをタリルが剣で叩いて粉砕した。
神殿の前に先ほどの5体よりも大きなバジリスクがいた。色が赤く前の5体よりも大きかった。
マリアナに気が付くと猛スピードで走って来て毒液をまき散らした。
「魔法をかけるのは、なにも敵だけに限らないぞ」
アリエルは両手を高く上げてと詠唱する。
「マートゥーレ」
マリアナの体に時計の魔法陣が絡みつくとマリアナが高速化する。
バジリスクの股の下を狼の獣人が氷の聖剣を持ってスライディングして通り抜ける。赤いバジリスクが一瞬で凍りついた。
「後ろにもう一体いるぞ」
レギーが言うと、アリエルがすかさず振り返って、グアンダスの指輪をつけた片手で詠唱する。黒縁のメガネのガラスに円形の赤い魔法陣が映りこむ。
「カリエンテ!」
丸く赤い円形の魔法陣が出現してバジリスクに当たると、バジリスクが白い煙をあげて蒸発した。
グアンダスのブルーの魔法陣を赤に変えるあたりは、アリエルの赤へのこだわりが相当なものだとタリルは思った。
タリルが剣をもって凍った赤いバジリスクに近づく。
「強いパーティーとは私達のことだ!」
アリエルが強いパーティーと言う言葉に過剰に反応して、喜びのあまり、手を額にかざしながら、ふらふらとよろめいた。
「アリエル、赤いバジリスクだけど手なずけるかい?」
「もちろん」
アリエルは妖精の杖で赤いバジリスクを小さくした。
「凍らせたままもって行こう。手なずけるのは後でもよい。先に螺旋の宝箱を戻そう」
アリエルが言った。
マリアナが少しだけ毒を被ったのでセレアが治癒魔法を施した。
神殿の階段を少し登ると台座が見える。その上に螺旋の宝箱があった。
「私はタリルノディスです。お母さんですか?」
螺旋の宝箱にタリルが聞くと、宝箱が光った。
「宝箱を開けた方が良いでしょうか?」
聞いても宝箱はなにも反応しない。
「タリル、螺旋の宝箱は開けると異世界に転生して、違う人生が始まる箱だったと思う。開けるのをやめろ」
アリエルが忠告する。
「お母さん、宝箱を開けない方が良いでしょうか?」
タリルが聞くと螺旋の宝箱が光って答えた。
「宝箱は開けないことにする。アリエル、後は頼んだよ」
タリルは言うとアリエルと場所を交代する。
アリエルは両手を高く上げた。
「レディーレ!」
声が洞窟内に反響した。
宝箱が光ったり消えたり、空いたり閉じたりした。過去にどれだけの人を異世界に転生させたのだろう。
点滅が終わるとやや青みがかった黒髪の女性が現れた。目はタリルと同じ黒に近いラピスラズリの色だ。
「お母さん、タリルノディスです。助けにきました」
タリルの母のリナは成長したタリルを見て驚いた。
「ノーザンは?」
「無事です。今すぐ会えますよ」
そう言うとタリルは転移のカノンを準備する。
タリルはパーティー全員とリナをジャンの執務室に転移するとリナを見つけてジャンが涙した。ノーザンがリナに駆け寄って抱きしめた。
抱き合う二人の上をチャピがフワフワと飛び回った。
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