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ド近眼ゴスロリの魔女は闘技場で暴言を吐く

キャットピープルの助太刀で闘技場でツーオンツーの戦闘、魔女の暴言シーンになります。

「待ちかねていたぞ。受付登録は本人で11時までだ。今すぐ二人で登録してくれ」


 マリアナとアリエルの二人が闘技場の受付までくるとすでにバンとグレーが来ていた。


「タリルが来るのを待ったら間に合わない。相手の一人が魔法使いということもあるので、アリエルに登録をお願いします」


 マリアナがアリエルに頼んだ。アリエルは情熱の杖を使ってみたかったのと対人戦も経験したかったので快諾した。


「対人戦か、情熱の杖が使える。楽しみだな。人数制限が二人だからバハムートとヨルムンガンドは今回は反則になるから使えないな」


 魔女のアリエルが肩に乗った小さなバハムートとヨルムンガンドに言った。


 狼の獣人マリアナが先に受付に行くと名前と二つ名を登録する。


「名前はマリアナ、狼の獣人 二つ名は、氷の狼、主なアイテムは氷の聖剣、」


 次にアリエルが受付に行き名前と二つ名を登録する。


「名前はアリエル、ヒューマン、二つ名は赤の魔女、主なアイテムは情熱の杖」


 昼になって対戦相手の登録情報を確認する。


クレーメン (ヒューマン)二つ名 千の槍 主なアイテムは分身の指輪 

エスブデン (ダークエルフ)二つ名 伝承者 主なアイテムはグアンダスの指輪


「グアンダスの指輪だと?」


 マリアナが驚いて言った。このアイテム名から想像するとグアンダスの能力を受け継いだものがいるらしい。グアンダスがアイテムに変えられたか? 一人で手に負える相手ではない。


「アリエル、まずいことになったぞ。エスブデンは蒸発の魔法を使ってくる。蒸発の魔法陣は近寄ることさえできない」


「グアンダスとの戦いの話はリュアラから聞いているよ。魔法陣からはじき出すんでしょ。方法はあるよ。僕に任せなよ」


 自信ありげにアリエルが言った。意味ありげな様子からすると、なにか秘策があるようだった。


 マリアナとアリエルは控室にいた。闘技場から歓声が湧き上がるのが聞こえる。首都ルシファナの娯楽のうち、最も人気のあるのがこの闘技場である。


 毎週1度行われるイベントは賭け事の対象にすることも認められており、よりいっそう盛り上がる。


 プログラムはワンオンワンが5試合、ツーオンツーが1試合 パーティー戦が1試合でパーティー戦は4対4になる。


 そのツーオンツーはパーティー戦の前座になっていた。


 ワンオンワンがすでに開始されて場内の興奮度も増してくる。ワンオンワンの4試合目ぐらいまで空席もあったが、5試合目になるとVIP席まで埋まっている。


 VIP席はガラス張りになっており、上級官僚がワインと食事を楽しみながら観戦していた。


 6試合目のツーオンツーの入場者がコールされる。


アリエル (ヒューマン)二つ名は赤の魔女、主なアイテムは情熱の杖

マリアナ (狼の獣人)二つ名は氷の狼、主なアイテムは氷の聖剣


クレーメン (ヒューマン)二つ名は千の槍 主なアイテムは分身の指輪 

エスブデン (ダークエルフ)二つ名は伝承者 主なアイテムはグアンダスの指輪


「この試合はツーオンツーとなります。チームの二人が戦闘不能になったときに相手が勝者となります。二人で一人をコンボで攻撃することが認められます。」


「生死に関わらず敗者は勝者にアイテムを一つ奪われます」とアナウンスがあった。


 負けるとアイテムを取られるなんて聞いてはいないが、負けるつもりなど毛頭ないとマリアナもアリエルも思った。


「なお、この試合はロワール卿のご子息とキャットピープル連合のダークの決闘の助太刀による代理試合となります」


 アナウンスされるとVIP席の太った高級官僚のロワール卿とその子息が会場に手を振った。


 アリエルが入場すると無名のためか、ネームコールされても会場は盛り上がらなかった。


 アリエルは身長はあったが体の線が細くひ弱そうに見える。


 赤と黒のゴスロリの衣裳には赤いリボンや薔薇の模様、ガーネットの宝石がちりばめらているため、戦うどころかただのコスプレ少女にしか見えない。


 いつもは着けている黒縁のメガネは、見栄なのか装着していない。情熱の杖という名前は誰も知らない。


「弱そう」

「かわいそう」

「戦う人の服装ではない」


 会場からアリエルが倒される前提での憐みの声が聞こえた。一部のキャットピープルだけが応援していた。


 銀色の髪に白い唇の氷の狼、マリアナが入場すると会場が盛り上がった。狼の耳の獣人は戦士の引き締まった体をしており、俊敏で強そうに見えた。マリアナは右手に水色の氷の聖剣を持ち左手にはヒドラのかぎ爪を装着していた。


 マリアナの名前はセーラルトの村を救ったことで少しは知られていた。氷の聖剣のアイテムは名が通っていた。


「氷の聖剣だってよ。ヒドラの爪もはめてるぞ」


 場内が騒めいた。


「がんばれ、マリアナ!」


 キャットピープル達も大盛り上がりしていた。アクアマリンの氷色の目をしたウルフの目が戦闘体制に入って輝きを増した。



「千の槍だ。槍将軍だ。クレーメン!」


 クレーメンが出てくると会場が湧き上がった。


「クレーメン!」

「クレーメン!」

「クレーメン!」


 名前を大声で叫ぶ者が多数いた。大した人気者だった。色の薄い金の長髪は歴戦の猛者の風貌をしていた。


 白に金の装飾の入った裾の長い戦闘服を着ている。額にはゴールドの額当てをつけていた。初老のその目は深い緑の翡翠のようで、もの静かな目は輝きを失ってはいなかった。


 エスブデンが入場してくる。大きく張りのある女体はグアンダスを思わせる。やや青みのある灰色の肌のダークエルフは白い長髪にとがった耳が付き出ている。


 ムーンストーン色の白い目玉が不気味に光っている。クレーメンとおそろいの白に金の装飾の施された露出の多めの衣裳から灰色の肌がはみ出ていた。


 グアンダスの名前は誰もが知っていた。エスブデンはグアンダスの指輪を嵌めることで蒸発魔法を伝承しており、グアンダスと似た大柄の体躯のダークエルフの女はグアンダスの伝承者と呼ばれていた。


 クレーメンの前にはマリアナが立ち、エスブデンの前にはアリエルが立っている。お互いが向き合うと場内の興奮は最高潮に達していた。


「雑魚はとっとと、くたばりな!」


 アリエルがエスブデンに向かって大声を出した後にすぐ、開始の合図の鐘がなった。


「カリエンテ」


 開始直後にエスブデンが護衛用の蒸発の魔法を詠唱した。円形のブルーの蒸発の魔法陣が現れてエスブデンを囲む。


 ブルーのサークルに囲まれると、誰もエスブデンに近づけなくなった。グアンダスと一度戦っているマリアナはやっかいだと思った。


「カリエンテス!」


 クレーメンがやや後方に下がるとエスブデンがさらに攻撃のための蒸発魔法を詠唱した。


 二人が溶かされそうだと場内も沸き立った。


「ダイブ」


 アリエルが詠唱すると地面が泥になってマリアナとアリエルが泥になった土の中に飲みこまれる。


「うあああああ」


 エスブデンの後方でクレーメンの下半身が埋まってもがいていた。


「うわっ」


 小さく叫んでマリアナも全身泥に飲みこまれる。味方も予期してない作戦だったようだ。敵をだますにはまず味方からという。


 灰色のダークエルフだけが泥の上のブルーの魔法陣の上に浮いていた。先ほどまでアリエルのいた泥の上には誰もいない。蒸発魔法が地面にドスンと直撃して白い煙が立ち上がった。


 アリエルは泥の中を移動してダークエルフを突き上げるのだろうか? とマリアナは思った。アリエルのアイデアは意外なものだった。


 泥の中を潜るとダークエルフの真下まで泳ぎ、妖精の杖でダークエルフを小人にした。それといっしょにブルーの魔法陣もいっしょに小さくなった。


 ダークエルフの目の前に巨人になった赤い魔女が泥の中から現れた。


 赤い魔女が巨大化したのではなく、ダークエルフが小人になったのが会場から見えた。


 赤い魔女はダークエルフの前にかがみこんで上から覗きこむ。


「近いっ!」


 ダークエルフが驚いた。


 アリエルがダークエルフに「ふっ」と吐息を吹きかけた。


 ダークエルフがブルーの魔法陣の外に飛ばされて転がると怯えた目で上を見上げた。


「胸がでかいだけの役立たずが!」


 アリエルが蚊を潰すがごとく地面を上から平手で叩くと、「ぷちっ」という音をと共にダークエルフが平たくなって戦闘不能になった。


 瞬殺だった。場内はあまりの攻撃の早さに騒然とする。クレーメンチームに賭けている者が多かったせいもあった。


 会場で大盛り上がりをしているのがキャットピープル達だった。キャットピープル達は全財産を賭けていた。オッズは100倍だった。


「話が違うぞ!」


 VIP席のロワール卿の息子が頭をかきむしった。ロワール卿が横の従者を激怒しているのが見える。


「クレーメン将軍は元ベルコン共和国の丞相にして将軍。その名は誰でも知っている猛者でございます。将軍に勝てるものなどおりません」


 従者が汗を拭きながら言い訳している。


 クレーメンは分身の指輪で長槍を持った自分を量産した。後方の一人だけが土に半身埋まっていたが、他の大勢が二人に襲い掛かって来た。


 氷の聖剣をマリアナが振ると多くのクレーメンが氷の人柱になったが、次から次へとクレーメンが現れる。


 数体を左手のヒドラの爪で砕いたが、他のクレーメンを砕く余裕もなかった。


「多すぎる! 手が回らない」


 マリアナが大声で叫んだ。


「プロイベーレ」


 マリアナの後ろに下がっていたアリエルが両手を高くあげて詠唱する。アリエルの上に大きな赤い時計の魔法陣が現れると、動いていた時計の針が停止した。


 時計の針と共に1000の槍と呼ばれる分身したクレーメンがすべて停止すると会場が騒然とした。


「あいつは赤の魔女なんかじゃない、時の魔女だ」


 誰かが言うと周りの観客も騒ぎ始める。


「時の魔女」


「時の魔女だ」


 会場がさらに騒めいた。


「うへへ あははははん」


 アリエルの顔がその格好良すぎる二つ名をもらって、嬉しさのあまりにいびつな笑みを浮かべている。両手を高く挙げたまま、完全に逝っている。


 マリアナがすべてのクレーメンの分身を氷の聖剣で凍らせると、アリエルの巨大化した情熱の杖がまとめて粉々に砕いた。

 

 あっという間に勝敗は決していた。下半身が土に埋まって上半身だけ飛び出たクレーメンが取り残される。


 これが最初にいた本体だ。アリエルが近づいていく。赤と黒のゴスロリがしゃがみこんで、ルビー色の目がクレーメンの顔を覗きこんだ。


「近いっ!」


 クレーメンはやや顔を赤らめた。クレーメンはもう戦意を失っていた。


「この俺様が、女に負けるなんてな」


 クレーメンの目はしゃがみこむアリエルのスカートの中に見える細い足を見ていた。


「ああん、僕が女だって? このエロオヤジ」


 小さな声でアリエルがクレーメンに耳打ちして、ビンタした。


「えっ」


 クレーメンが驚いて呆然とする。

 その声はマリアナにもかろうじて聞こえていた。


「えええええええ、女じゃないの?」


 マリアナもかなり驚いてアリエルを見る。


 アリエルがウインクして内緒よというように真っ赤な口紅をつけた唇に人差し指を添えた。


 試合はクレーメンが戦意を失ったために終了になり、氷の狼と時の魔女の名前はその後はどこの町にも知れ渡ることになった。ロワール卿が興奮して会場を去っていく。


「時の魔女。。。碧眼の魔女の弟子なのか?」


 VIP席からはサファイアとアメジスト色のオッドアイがその戦いぶりを見下ろしていた。


 暗闇伯爵の護衛を探していたハーディンはエスブデンをグアンダスの後継者にと、その実力を確認しに来ていたのだった。


「アクアマリンの目に氷の聖剣の獣人か。あのウルフは髪の色と唇の色こそ違うが私が仕留めたはずだ。なぜ生きている?」


 シルバーの浄化の鎧にオレンジ色の髪とマントが闘技場に背を向けて、ハーディンがVIPルームのドアから出ていった。


 会場ではキャットピープル達がニャーニャー大騒ぎしている。抱き合って涙を流すものもいた。キャットピープル達の所持金は一瞬で100倍に増えていた。


 マリアナは戦いの報酬として分身の指輪を、アリエルはグアンダスの指輪を手に入れた。



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