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野良のキャットピープルを助けたらもめごとに巻き込まれた

野良のキャットピープルの子供と知り合いになったらもめごとに巻き込まれます

 首都ルシファナは人口2万人の大都市だ。ウォルフォードの機能は首都ルシファナに集中しており、あらゆる役所が首都ルシファナにある。


 ウォルフォード領の政治を行う文官は全てルシファナにいる。そのため、あらゆる町や村から首都ルシファナにお金が集められる。そのため多くの人もルシファナに集中していた。


 観光や行商人やビジネスのため訪れているルシファナ以外の人口を含めると推定でも3万人以上が都市の中で活動している。


 ダフラック川が首都ルシファナの中央を東西に横切るように通っており、北の町と南の町に別れている。


 川を挟んで北がオフィス街で南が繁華街でホテルは南エリアの川側に集中していた。南に行くほど繁華街はディープなエリアになり、町の南端はスラム街になっていた。


 川から無数の水路が北と南に伸びていて、船で人を運ぶ水上タクシーもあった。


 タリル達は商人ギルドで荷卸しして、その後はホテルにチェックインしようとホテル街へ向かう。


 タリル達がホテルに向かうと道沿いに小さな水路があり、陸上の道だけでなく細かい水路で小舟が荷物と人を運んでいた。商人ギルドからホテルまでは近かったので小舟は使わなかった。

 

 ホテルに到着してタリルがクロークへ向かう。


「眺めの良い一番グレードの高い部屋を3部屋お願いします。1泊の予定です」


 タリルが伝えると、クロークの係が後ろにある棚の中段のボックスから鍵を3つとるのが見えた。


「ありがとう」


 タリルが金貨を3枚をチップとして渡す。


「お客様少々お待ちください」


 クロークの係が上段のキーボックスの部屋のキーと取り変えた。キーボックスの上の段の方が良い部屋の様だった。


 どうやらこの街は金次第らしいとタリルは思った。


 「護衛はマリアナだけで良いので、ディナーの時間まで自由行動にしましょう。日が落ちたらロビーで待ち合わせにします」


 タリル達はホテルのロビーで解散した。タリルとマリアナは部屋に入って窓から町を見た。


 ホテルの窓は北側に配置されているためオフィス街が見える。川の向こう側にはルシファナ大聖堂や役所の大きな建物が並んでいる。


 役所の建物は部署ごとに分かれている様でそれぞれが5階建て以上の建物だった。オクラスにはこのような巨大な建造物はなかった。


 タリルは商人ギルドの仕事で来たけれど、少し観光気分になった。


「マリアナ、水上タクシーに乗ってみないか」


 タリルが言うとマリアナも賛成した。ホテルの目の前の水路にも水上タクシーの小舟が数隻停泊している。


 タリルとマリアナは水上タクシーに乗り込む。


「どちらへ行きましょうか?」


「行き先は特にないので観光の名所にお願いします。日没までにホテルに戻りたいです」


「それなら北のエリアのルシファナ大聖堂のあたりだね」


 船頭が北エリアへ水上タクシーを向かわせた。


 一度大きなダフラック船が出ると川幅が広くて、まるで湖の様だった。北エリアに向かってしばらくするとルシファナ大聖堂が見えてくる。


 北エリアの水路に入ると川辺には多くのカフェが軒を連ねていた。お店の前のテントの中には食事を楽しむ人たちの姿が見える。


 まだお日様は高いところにあったが、ワインを飲んで上機嫌になっている観光客がいた。カフェの前を通るとピザの焼ける匂いがした。


 大聖堂の周囲の水路を一回りすると水上タクシーは官庁の建物街の横を通過した。綺麗な石造りの建築が整然と並んでいる。


 屋根の付近には石像が立っているのが見えた。ガーゴイルのことを思いだして動きださないかと想像してぞっとした。


 水上から見てもルシファナの街は良く清掃されており、ゴミ一つ落ちてはいない。役所の建物の中にも水路は伸びていたが、鉄のゲートがあって、両脇に門番が建っていた。


 建設庁や文化庁、魔法庁などの建築が水路に向いて並んでいた。明日行く財務庁の建物もあった。


 美術館や図書館、劇場と呼ばれる巨大な建築や闘技場なども水上タクシーから見えた。機会があれば劇場や闘技場の中にも入ってみたいものだとタリルは思った。


 ホテルの前に水上タクシーが到着したが日没までまだ間があったので、タリルとマリアナは市場へ行ってみた。


 フルーツやスパイス、いろいろな食べ物がざるに盛り付けられて並んでいる。食べ物のエリアだけでなく洋服や家具を置いてあるエリアもあった。


 市場を歩くと焼き鳥や焼きトウモロコシなどの屋台の匂いが時々顔に当たった。ジェラートの屋台の甘い香りが顔にあたると、マリアナがジェラートを食べたいというのでジェラートを買って市場に面する噴水広場で食べた。


 広場にはギターを弾いている老人ととそれに合わせて踊るキャットピープルの少女が見えた。


 ギターのケースの中にお金を入れる仕組みらしいので、タリルは腰の革袋の中から銀貨を取り出して入れた。ギターの中は小さな銅貨ばかりだった。


 タリルは気前が良い。


 市場をに戻ろうと噴水広場を後にすると先ほど踊っていたキャットピープルの少女が走って近づいてきてタリルの腰にぶつかった。

「大丈夫?」


 少女にきくとコクリとうなずいて後ずさりすると走って逃げた。手には革袋が握られている。それを他のキャットピープルの少年に投げた。


 受け取ったキャットピープルの少年が屋根の上に革袋を投げると、屋根にいる他のキャットピープルの少年が受け取って、屋根伝いに走って逃げた。


 タリルがマリアナに目で合図するとマリアナが全速力で屋根の上の少年を追った。


 市場から外れた南の路地まで少年は逃げたが、狼の耳の銀色の髪のお姉さんが進路を塞いで立っていた。慌てて逃げようとしたが少年はマリアナに簡単に捕まってしまった。


 両脇をアパルトメントの建物に挟まれた青空から、ラピスラズリのような濃いブルーのジャケットを着た男が、空中に階段でもあるかのように空から降りてきた。


 ああ、これはとてもひどい目にあうんだとキャットピープルの少年は思った。


「その革袋は私のものだから返してもらおう」


 ラピスラズリ色の服の男が言った。コクリとうなずいて少年は革の袋を返した。


「これを奪っても魔法の袋だから、君たちでは中からは何も取りだせないんだよ」


 ラピスラズリ色の服の男が言った。


「私の名前はタリルだ。オクラスの街から来た。この街には来たばかりだ。君の街を少し案内してもらえないか?」


 ラピスラズリ色の服のタリルが提案した。


「ひどい目にあわせないのかい?」


 キャットピープルの少年が不安そうな顔出タリルを見た。


「ひどい目にあわせたりしないよ」


「おいらはチャトラだ。シロとクロも出て来いよ。タリルに街を案内するんだ」


 最初に革袋を盗んだ白いキャットピープルの少女と黒いキャットピープルの少年が近づいてきた。


 キャットピープルはアパルトメントに囲まれた路地を南に進む。徐々に道幅も狭くなり水路もなくなっていた。


 路地にはゴミがたくさん落ちていて、建物もだいぶ老朽化している様だった。北の町の印象とはだいぶ違う。


「ここが君の街かい」

「おいらたちの街はもっと奥さ」


 チャトラが言った。路地を抜けて視界が広がると木の葉の屋根で出来た簡単な家が並んでいる。南のスラム街だった。


 チャトラ達は親に捨てられた野良のキャットピープルだった。


「おいらたちは生まれた時から親なんかいない。ここがおれ達の家さ。遠慮なく入ってくれ」


 チャトラは言うと、廃材らしい壁に葉っぱの屋根家の中に案内した。中は狭く5人で座ると一杯だった。


「お兄ちゃんは冒険者かい?強いならおいらに剣術を教えてくれよ。ほら剣ならある」


 チャトラは自分で削りだしたらしい木の剣を構えた。


「いや、私は商人だよ」


 タリルが答えた。


「そうかい?それは残念だ。今は泥棒がおいらの仕事だけど、将来は冒険者になってこの街を出るんだ。シロとクロもいっしょさ」


「冒険者になってどうするんだい?」


「冒険者ギルドに入ってクエストをするよ。クエストをたくさんして金持ちになって。食べ物を買うよ。こんな大きな骨付きの肉とか」


 両手を大きく広げてチャトラが言った。


 親がいないと聞いてマリアナは自分と重ねたようだった。優しい顔だが少し寂しそうな顔をした。


 市場の前までチャトラに送ってもらうと、タリルは革の袋から街を案内してくれたお礼だといって、3人にクッキーの入った袋を配った。


「これはね、お兄ちゃんが大好きなクッキーというお菓子だ。レフィーリーザが作ったんだ。すごく甘くておいしいんだ」


 タリルが嬉しそうな顔をしてほっぺを押さえた。


「レフィーリーザはお菓子屋かい? ありがとう」


 チャトラ達が袋の中身のクッキーの匂いを嗅ぐと嬉しそうな顔をした。


 ホテルにつくころには水路の向こうの太陽が、クッキーの色になっていた。


 ホテルのロビーでは魔女のアリエルがハイエルフのセレアと話し込んでいた。


「なるほど、その詠唱ならわしの杖でも出来そうだ。ご教授かたじけない」


「魔法の本はたくさん読んだから、僕で教えられることならいつでも聞いてくれ」


 アリエルが照れた。そこにタリルとマリアナが帰ってきた。


「なんだか二人で楽しそうだね」


 アリエルがタリルとマリアナに言った。


「屋台のジェラートがおいしかったの」


 マリアナが自慢するとおなかがすいたので食事しに行こうということになった。


「この辺で一番おいしいお店を教えていただけないですか?」


「ドノバンの店だ」


 クロークの係がと教えてくれたので4人でドノバンの店に行った。


 ドノバンの店は雑居アパルトメントの地下にあり、レンガ造りの壁の落ち着いた内装だった。内部は小分けされたスペースになっており、落ち着いて話ができそうだった。


 タリル達は4人掛けのテーブルのある小さなスペースに通された。


「お飲み物の注文は?」


 キャットピープルのホール係の女の子に聞かれたのでタリルとマリアナとセレアはメロンフロートを頼んだ。


 アリエルが一人だけイチゴフロートを頼んだのを見て他の3人は赤い色フェチはそうくるだろうねと思ってうなずいた。


 店員からのおすすめはルシファナ名物のピザだと聞くと、アリエルがトマトソースのマルゲリータのピザと骨付き肉を頼んだ。タリルとマリアナも同じものにした。セレアはサラダを頼んだ。


 メロンフロートとイチゴフロートがテーブルの上に置かれるとタリルの革の袋の中からチャピが出てきてバニラアイスが欲しいとねだる。


 骨付き肉とピザとサラダがテーブルに並ぶと、アリエルの帽子の中から小さなバハムートとヨルムンガンドが出てきた。それを見てチャピが飛び上がって驚いた。


 チャピは大急ぎでタリルの革の袋の中に戻って顔だけ出して様子を伺っている。アリエルが肉を細かくすると、バハムートとヨルムンガンドが喜んで食べた。

 

 4人は会計を終えてホテルに戻ろうと出口に向かうと、入り口から入って来る3人の灰色の犬型の獣人とすれ違った。


「茶色の野良猫野郎、俺からひったくりしようなんて無理ゲーだぜ。袋を大事そうに隠したから、金かと思ったら中身はクッキーだったぜ。いらねえっての」


「あれ、蹴りすぎだって、もう死んでるんじゃね?」


 犬型の獣人達は話をしながら中に入った。


 タリルとマリアナが顔を見合わせて噴水公園に向かうと、虫の息で転がっているチャトラをシロとクロがさすっている。シロがマリアナに気が付く。


 「狼のお姉ちゃんチャトラが死んじゃう」


 シロがマリアナに抱き着いた。


 セレアがヒールの治癒魔法でチャトラを回復させて体を起こした。


「もう大丈夫だろう。体を動かしてみろ」


 セレアがチャトラにいうと、チャトラは肩を回してみる。


「しくじっちまった。獣人は足が早いや。ありがとなエルフの姉さん」


「まったく、しょうがない奴だ。明日の朝、3人で商人ギルドに来なさい。他の仕事を探してやるから」


 タリルが言うとチャトラとシロとクロがうなずいた。


 ホテルに戻るとタリルとマリアナはツインルームで同じ部屋だったが、別のベッドに入った。


 タリルが疲れてすぐに寝たが、マリアナのアクアマリン色の目は怪しい狼の目になって、ベッドから抜けるとドアから外に出ていく。


 ネオンの看板が並ぶディープな繁華街の裏路地をマリアナは歩いていた。光る看板のあるバーのドアの前まで来ると匂いを嗅いだ。


「チャトラをやったやつらはこの中だ」


 マリアナが小さな声で言った。


 ドアを開けて中に入ると真ん中のテーブル席に灰色の犬の獣人の3人が木の樽のジョッキでビールを飲んで酔っぱらっていた。


 マリアナはカウンターのマスターの前まで行くと「メロンソーダ」と言って銀貨をカウンターに置いた。

「ギャハハ、メロンソーダだってよ。女は帰って寝ろっつーの」


 3人の中の手前の獣人が言った。


「メロンソーダです」


 マスターがカウンターに鮮やかな緑色のソーダを置いた。


「まったくこの街の繁華街は野良ばっかりで不快だぜ。あいつら親に捨てられた野良猫だ。親もいらないってよ」


 手前の灰色の犬の獣人が言った。


 メロンソーダを片手に持ったマリアナが灰色の犬の獣人のほうに近づいて行く。


 奥の犬の獣人二人がウルフのシルバーの髪の女が近づいてくるのを見て、後ろから来るぞと首で合図した。


「あん?」


 灰色の犬の獣人が振り向くとマリアナが犬の獣人の髪の毛を引っ張って床に引きずり倒した。


「親に捨てられて悪かったな」


 マリアナがメロンソーダを無理やり口に流し込んだ。


「やめろ、苦しい」


 苦しがる犬の獣人の頭をマリアナが床に叩きつけて気絶させる。


「この野郎!」


 仲間の二人がと立ち上がる。


「私の友達を半殺しにしたな。許さないぞ」


 狼の獣人が一人の犬の獣人の顔にハイキックをした。ガードする腕がぐにゃりと曲がって、マリアナの脚が顔に命中すると、犬の獣人が白目になって崩れ落ちた。


 マリアナはそのまま素早く回転して、もう一人の獣人の顔に裏拳をヒットさせると、奥のテーブルの下まで吹っ飛んで舌を出して気絶した。


 奥のテーブルでは3人のキャットピープルが何も無かったように樽のジョッキのビールを飲み続けている。


 マリアナはぐったりとした3人を同時に引きずって外に放り出すと、カウンターまで行って「迷惑料だ」と言って銀貨を置いた。マリアナが帰ろうと出口に向かう。


「ちょっと待ちな、あんたに話がある」


 奥の席のキャットピープルが引き留める。マリアナが振り向いた先には丸い帽子を被った顔中傷だらけのキャットピープルが座っていた。


 真ん中のボスと思われる男は大柄でがっしりした体格で年配だった。長く白い毛のキャットピープルだ。


 右には三毛猫の若い女のキャットピープル、左には灰色の若い男のキャットピープルが座っていた。白猫の部下の様だ。


「なんの用だ?」


 マリアナが好戦的な態度をする。


「勘違いしないでくれ。敵意はまったくねえ。強そうなあんたにお願いがあって引き留めた。メロンソーダをおごるから、こっちで話を聞いちゃくれねえかい?」


 マリアナが奥のテーブルのほうに向かって行き着席する。


「おれの名前はバンだ。このあたりの野良猫を仕切っている」


「聞いて欲しい話とはこいつらのことだ。このミケが街でちょっかい出されてね。それをこのグレーが助けたんだが相手が悪かった。北の街の役人の息子さ。それがもとで決闘を申し込まれちまってね」


 バンが言ったところでマリアナの前にメロンソーダが来た。


「この街の決闘のルールは2対2で助太刀ありだ。なんなら助太刀の2人だけでも良いってルールだ。相手は金に糸目をつけねえ金持ちってことだ。てことはとてつもなく強いのが二人出てくるってことだ。俺はもう老いぼれだ。俺じゃ助太刀はできそうもない。そこであんたに戦ってもらいてえと、そうゆう理由だ」


「バンが野良の面倒を見ているっていうのは本当か?」


 マリアナがグレーのキャットピープルに聞いた。


「俺達だってバンに面倒を見てもらって育った。ここいらの野良猫は大抵、腹が減るとバンに泣きついて、食わしてもらっているんだ。バンがいなけりゃ子供はみんな飢え死にさ。チャトラもシロもクロもバンがいなけりゃ冬は越えられてねえ」


「チャトラの知り合いか?」


 マリアナがバンに聞く。


「あいつがあんたらの荷物を盗んでしくじったのは知ってる。しくじったのにクッキーをくれたって驚いてたよ。チャトラを2回も救ってくれて、仕返しまでしてくれたあんたに、こんなことを頼むなんてどうかしているが、他に頼む人もいねえし、アイデアもないんだよ」


「決闘はいつだ?」


「明日、北の街の闘技場で14時に行われる」


「わかった。私と同じぐらい強いのがいるので二人で行くよ」


 午後ならタリルも用事が終わっているだろうとマリアナは思った。タリルと二人なら連携プレーも出来るはずだ。


 マリアナが朝になってタリルに昨日の出来事を話すと、「用事は午前で終わるだろうから闘技場で待ち合わせよう」ということになった。


 タリルは商人ギルドに頼んで、「3人のキャットピープルの子供が来るので、出来そうな仕事を与えてくれ」と手配しておいた。


「役所の用事にはセレアと行く。相手が隠しているものがあれば見えるからね。アリエルはマリアナと行動してくれ」


 タリルがアリエルに頼んだ。


「僕は昨日の、図書館の本の続きが。。。。」


 アリエルが言いかけたのを見て笑顔でタリルが割り込んだ。


「タダでとは言わない。赤いレアアイテムがあるけど欲しくはないかな」


 タリルが意味ありげにアリエルを見ながらアイテムを出した。


「これは泥の杖というレアアイテムと赤く伸縮する東洋の杖をアリエルのために合成したアイテムです。レアアイテムの合成だけでなく見た目にもこだわりました。杖本体が赤いだけでなく、先端には真っ赤な宝石、ガーネットをハートのカットにして装飾してあります」


 タリルが機能を実演する前に、アリエルが赤いロッドの先端にある愛らしいガーネットを見てひとめ惚れした。


「分かりました。行きます」と速攻でOKした。


「この杖は対象の場所の地面を液状化させるだけでなく、自由に泥の中を移動できます。改良を加えたので泥は顔や衣服に付きません。それだけではなく伸びろと命じればどこまでも伸びますし、縮めといえば戻ります。大きくなれと言えば大きくなるし、小さくなれといえば小さくなります。ほらね」


 タリル赤い杖を指の腹に乗せた。見せ終わると杖を元の大きさに戻した。

「そしてこの新アイテムには名前がまだありません。アリエルが名付け親になっても良いのですよ」


 タリルに言われるとアリエルが手を額の上にあげてよろめいた。


「僕が魔法アイテムの名付け親ですって?なんという栄誉でしょう。と、図書館はどうでもよいです」


 ふらふらとよろめきながらハートのガーネットの装飾されたロッドを受け取った。


「そうねぇ。情熱の杖でいいわ」


 魔女が名づけると今まで地味だった名前の泥の杖が喜んで輝いたように見えた。


 タリルとセレアと別れたマリアナとアリエルは闘技場に着く。壁に貼られている相手の対戦カードを見た。


 相手の一人はクレーメンという名で元ベルコン共和国の将軍であり、長槍の使い手だった。ベルコン王とそりが合わずフリーになったとはいえ元将軍の器だった。


 もう一人はエスブデンという上級冒険者で魔法使いのようだ。


 二人の魔法アイテムはまだ公表されていないが、入場の前には名前と自分でつけた2つ名と魔法アイテムの一つが分かるらしい。それでなんとなく相手が知れそうだ。



励みになりますので是非応援よろしくお願いいたします。


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