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父は魔法のアイテムに変えられていました

行方不明になっていた父は魔法のアイテムなっていたのを知っていたのは

 タリルのほうから剣聖ハーディンが狼の獣人のマリアナに馬乗りになって剣で胸を刺すのが見えた。


「マリアナ!」


 タリルが叫んで空中を走って、ハーディンに向かっていった。ハーディンはマリアナから体を離すと後退しながらタリルの攻撃に備えた。


 タリルの狂ったような魔法の連弾と剣の二刀流の打撃をハーディンは剣で防御する。


 杖の魔法のほうは全て銀色に光る浄化の鎧に吸われて消えた。胸当てから出た黒い煙の帯もハーディンの体に巻きつけずに寸前で溶けた。


 その間にリュアラとセレアとレギーが刺されたマリアナの体を雲の絨毯に乗せた。白い雲の絨毯が空中で旋回する。


 タリルの横を通過するとレギーとセレアがタリルの両腕をつかんで、雲の絨毯の上へと引っ張り上げた。


 高速で上空へ逃げる雲の絨毯。剣聖ハーディンに魔法は効かないが遠距離魔法は使えないので追撃はなかった。


 ハーディンが無表情で空を駆けて逃げる白い絨毯を目で追う。サファイア色とアメジスト色のオッドアイが雲の絨毯が走り去った後の青空を見つめた。


 逃げ去る雲の絨毯の上で横たわるマリアナは顔面蒼白だった。息をしていない。


「マリアナ! マリアナ!」


 幼馴染の狼の獣人が動かないのを見てタリルは取り乱して叫んだ。


 セレアが治癒魔法で胸の傷を塞いだ。どんどん白くなるマリアナの顔。赤かった唇の色が変わって白くなる。茶色だった髪も銀色の狼の毛にタリルの目の前で変色していった。


「もう、絶命している」


 リュアラが心臓に耳を当てると心臓の音はしなかった。


「おああああああああ」


 タリルは空を見上げて泣き叫ぶと、がっくりと座りこんだ。レギーが立膝のまま下を向いた。エルフのセレアは泣きながら治癒魔法を続けていた。


「タリル!倉庫に行ってフェニックスの赤い羽根を取っておいで! 泣いてる暇はないよ。大丈夫だ。体の形はある。このまま蘇りの呪文をするのに、赤い羽根が必要だ」


 碧眼の魔女に言われて、タリルは泣きじゃくりながらも転移のカノンを取り出した。


 タリルはすぐに炎の形をしたフェニックスの赤い羽根を持って帰還した。タリルからフェニックスの赤い羽根を受け取ったリュアラが蘇りの呪文を唱える。


「レナトゥス」


 白かったマリアナの顔に少し生気が宿って戻る。マリアナは口から血を吐いたあとに雲の絨毯の上で全身が痙攣して、数回床から跳ね上がったあとに目を開いた。


 髪は銀色で唇は白いまま蘇った。もとの茶色い髪と赤い唇には戻らなかった。タリルがマリアナを強く抱きしめる。


「マリアナ! マリアナ!」


 タリルが呼び続けるのをレギーとセレアがリュアラが安堵した表情で見守った。


 雲の絨毯がウィサリスの町に着くと碧眼の魔女がタリル達を地面におろした。


「あんた達のパーティーには魔術師が必要だ。あたいはもう老いぼれだからね。若くて強い弟子の魔女がいるからそいつを雇いな」


 碧眼の魔女がそう言うとタリルが納得したようにうなずいた。


「ぜひ、お願いします。商人ギルドのダノクリムの質屋タリルのところまで来るように伝えてください」


 タリルが頭を下げた。


「あたいはここでお別れだ。懸賞金がまた増えるだろうさ。またどこかで会えるさね。それと、タリル、ミアレイを殺さなかったね。躊躇なくマリアナの胸を刺したハーディンを見ただろ。戦いの時はその優しさはいらないよ」

 

 龍のように長くカーブした雲のある空の方に碧眼の魔女が雲の絨毯に乗って消えた。


 グアンダスが倒された話はウィサリスの町にすぐに広まった。碧眼の魔女リュアラが単独で弟子の復讐をしたことになっていた。


 碧眼の魔女リュアラの懸賞金は10倍の1億ゴールドになった。


 グアンダスが質屋の少年のご一行に倒されたというのでは、グアンダスだけでなくウォルフォードの格が下がるので、ハーディンが嘘をついて伏せられていた。


 ミアレイがタリルに負けたこともハーディンが隠した。1億ゴールドは一生遊んで暮らしてもなくならない金だが、有名なグアンダスを倒した碧眼の魔女を見つけて挑みかかる強者など一人もいなかった。


 タリルはウィサリスの町の質屋ノディスの支店で見つけた質流れしたレアアイテムを馬車に積んだ。


 オクラスの町でリュアラの弟子の魔女が来たら、プレゼントとして渡すアイテムを探してみたが、どれも気にいってくれるか微妙だなと思った。


「帰ったらレフィに頼んで試さないといけないな」


「レフィは何が好きなんだろう。おみやげは何が良いか聞いてくればよかった」


 転移のカノンで今すぐオクラスの町に戻って聞きに行くことはできるが、お土産は何がよいか聞きに戻るなんて、ばかばかしい感じがしてやめた。


 荷台が大分空いていたので、ウィサリスの名産であるウィスキーとバラの花を大量に積んだ。お酒は飲まないが、セーラルトの村のワインが高く売れたので他の町に名産を持って移動すれば価値が上がることを体験していた。


 グアンダスとの戦いから3日目の朝、ホテルのロビーで待ち合せて、ウィサリスの町の市場に行くと、今からオクラスに転移するので、マリアナとセレアとレギーに幌馬車に乗るように言った。


 一度行った場所にはこの転移のカノンで瞬間移動できるのだと教えた。全員をオクラスに転送した後、タリルも自らオクラスの広場に転移した。


「このアイテムがあれば馬車などいらないのに」


 オクラスの町の広場に着くとレギーが言った。


「それでは護衛の仕事が減るではないか」


 セレアが言うのでレギーが納得した。


「今日は解散しますが、継続して契約したいので明日の朝に質屋の受付に来てください」


 タリルはセレアとレギーに言った。


「分かりました。若」


 セレアが答える。


「あっしも継続できるので?」


 レギーは自分も継続して契約出来ると知って嬉しかった。

 

「シーフオブノスタルジアの続編が読みたいから、早く次の仕事をくださいね。旦那」


 もう、呼び方を変えさせるのは無理かもしれないとタリルは思った。


「チャピは私と一緒に叔父さんに会いに行こうね」


 肩に乗っているチャピに向かって言うと、チャピが頭の上でうろうろと落ち着きなく左右に飛んだ。


 タリルとマリアナは商人ギルドの建物にある、ジャンの執務室に帰還の報告をしに行った。セレアとレギーを継続して雇うことも報告したかった。


「ジャン叔父さん、ただいま戻りました」


「セーラルトの村を救ったのは聞いたよ。まったく向こう見ずな奴だ。冷や冷やしたぞ。収益のほうはワインとウイスキーの商いで通常の往復の20倍は出ている。お前は商才もあるな」


「ジャン、ただいま」


 マリアナが帰還の報告をする。


「セーラルトの村では、よくタリルを守ってくれたな。しかし、なんだその銀色の髪と白い唇は?」


 ジャンが不思議そうに言った。ハーディンとの死闘の件はジャンは知らない。知ったら卒倒するだろうなとマリアナは苦笑いした。


「最近のファッションです」


 マリアナは苦笑いして誤魔化した。


 ジャンは肩の上に乗るチャピを見つけると、真顔になった。


「おまえは。。。。」


 ジャンが言うとチャピがもじもじとタリルの顔の陰に隠れようとした。


「セーラルトの村で、オーガの鳥かごに入っていたのを助けた妖精です。それから一緒なんですよ。名前はチャピです」


「なんてことだ。ノーザンと一緒にいた妖精だな」


 ジャンが驚いた顔をした。


 タリルはチャピが父親のノーザンノディスと一緒に居たことを初めて知った。


「お父さんと一緒に居たなんて聞かなかったぞ。チャピ!」


 タリルが強い口調で言う。


「チャピ、隠してない、聞かれなかったから言わなかった。それだけのこと」


 チャピが小さな体を震わせながら怯えた。


「怒っていないから、ノーザンノディスといつはぐれたか。教えてくれないかい?」


 ジャンが妖精のチャピを落ち着かせるやさしい口調で尋ねた。

 ジャン叔父さんは大人だなとタリルは思った。


「ノーザンとはウォルフォード伯爵の城で離れた。ウォルフォード城でノーザンは魔法のアイテムに変えられた」


 ノーザンがウォルフォード城に行ったことはジャンは手紙で知っていた。


「やはり、ウォルフォード城が最後だったか」


 ジャンががっかりする。


「リナはどうした?」


「リナは知らない。生きてるか。死んでるか。魔法のアイテムになったか。それも分からない」


 ジャンの質問にチャピが怯えながら答えた。


「ノーザンはなんのアイテムに変えられた?」


 ジャンが聞くと、チャピがタリルの首からぶら下がる炎の羅針盤を指さした。


「ノーザン、炎の羅針盤に変えられた」


 チャピが言うと、ジャンもマリアナも驚いて炎の羅針盤をみた。炎の羅針盤のガラスの中で炎が静かに燃えていた。


「なんだって?」


 ジャンが炎の羅針盤に近づいて尋ねた。


「ノーザンなのか?」


 炎の羅針盤の中の炎が大きくなった。


 炎の羅針盤はタリルと一緒にいていつもタリルの進むべき道を教えた。それが父親だったなんてとタリルもジャンも驚いた。

 ジャンがひざまずいて炎の羅針盤に額をこすりつける。


「ノーザン! ノーザン!」


 ジャンが大きな声をだして泣いた。ジャン叔父さんが取り乱すのも、涙を流すのを見るのもタリルはそれが初めてだった。ジャンは泣き顔のままチャピに言った。


「ウォルフォード伯爵がノーザンを炎の羅針盤に変えたので間違いないな?」


 チャピがうなずいた。


「チャピ、窓から森に逃げたらオーガに捕まった。それからずっと鳥かごの中」


 ウォルフォード伯爵はオクラスの町にとっては領主だ。簡単に追求できる相手でもない。まずは調査が必要だとジャンもタリルも考えた。


「ジャン叔父さん、今回雇ったパーティーの中に密偵が上手なシーフがいます。そのものに探らせましょう」


 タリルが言うとジャンも深くうなずいた。


「それからヒーラーでアーチャーのエルフがいます。彼女はセーラルトの村で活躍しました。実力はハイエルフです。そのものをノディス家の住み込みにして年契約で雇う予定です」


「よかろう、お前の部下の人事はすべてお前に任せるよ」


 ジャンが言ったので、これから来る予定の魔法使いの件は事後報告で良くなったとタリルは思った。碧眼の魔女との出会いから弟子の紹介までの経緯を説明するのも嘘をつくのも面倒だった。


「お父さんとは今まで通り一緒に行動します。色々聞きたいこともあるので自分の部屋に戻ります」


 タリルが言うとジャンも炎の羅針盤に色々と聞きたそうな顔をした。


「分かった、お疲れさまだったな、タリル」


 ジャンは炎の羅針盤を見つめると名残惜しそうにした。



 タリルはジャンの部屋から出ると、廊下にいたメイドのイサベルに依頼した。


「馬車の中のバラの花をメイド全員の部屋に均等に配って、部屋をバラで一杯に。そしてワインが人数分はあるからそれも部屋に。お土産だといって配ってください」


 長い黒髪の清楚系の美人のイサベルが目を輝かせて笑顔になった。タリルは気前が良い。


「お父さんだったんだね」


 部屋に戻ってタリルはベッドに横になると炎の羅針盤に向かって話しかけた。炎の羅針盤の炎が大きくなって答える。


「お父さんが炎の羅針盤に変えられた、ウォルフォード城を探らせるとよいですか?」


 タリルが聞くと炎が小さくなった。


「では、城下町のウォルゲートではいかがでしょう?」


 炎は小さいままだった。


「その南の首都ルシファナを探るのはどうですか?」


 炎が大きくなった。


「チャピはお城までお父さんと一緒だったよね。ルシファナでお父さんは誰と合いましたか?」


 タリルがチャピに質問した。


「ノーザンとリナ、お金渡すためにロワールと会った。ノーザンとリナはそのあと一緒に城に行った。ウォルフォード城でノーザンはリナと離れた」


励みになりますので是非応援よろしくお願いいたします。


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