アマゾネスは勘違いして質屋に恋をする
タリルに殺されなかったアマゾネスのミアレイのエピソードです
アマゾネスは女系の部族で戦闘を好む武装集団だった。好戦的で弓や手斧や槍などを使う。
村を守るための戦闘が、いつしか戦闘するための村となり、戦闘するために優秀な女子を育てた。
アマゾネスは村を守るだけでなく雇われて他の国に分散した。アマゾネスは村の外で強い男性と関係を持ち故郷に帰って出産する。
そのため、村の内部で夫婦になることはない。戦 闘に強い遺伝子を生み育てるための一つのルールだ。そのため、恋愛対象として交際の相手を選ぶのではなく、強いものを探して見つかるまで移動し続ける。
アマゾネス族のミアレイは各地を転々とする中でウォルフォード伯爵の南方侵攻の兵士として雇われていた。戦闘では先陣を切り、多くの相手の兵士を倒して活躍した。
光沢のある褐色の肌で髪の毛は黒でコーンロウ、赤いビキニの上下に腰に茶色い布を巻いていた。引き締まった体に似合わない大きな丸い二つの胸の膨らみが女性だと分からせた。
ミアレイは手斧による物理攻撃だけでなく、火属性の魔法を得意にしていた。
二つの手斧を回転させて火の玉で巨大なダリアの花をつくると敵の集団にぶち込んだ。巨大な炎の花を撃ち込まれた部隊が一瞬で全滅していく。
戦闘で仲間が押されていても。ミアレイが敵陣に数発打ち込むと一気にウォルフォード軍が優位に立った。その戦闘する姿を本陣から女好きと言われるウォルフォード伯爵と横で剣聖ハーディンが見ていた。
いつも護衛についている剣聖ハーディンは軍の将軍を兼任しており、ウォルフォード城を空けることも多くなっていた。
ハーディンはウォルフォードの愛人とも言われ、いつも傍らにいたが、ウォルフォード伯爵の隣にいないことも多くなっていた。そこで他の護衛が必要になっていた。
ハーディンは無双の剣聖としてどこの国でも彼女の名前を知らぬものはない。ミアレイもハーディンの闘う姿を戦地で目撃したことがあったが強さは別格だと分かった。
そのハーディンが認める男とはどんな男だろうと興味があった。そこにウォルフォード伯爵から自分の護衛につくようにと呼ばれた。願ってもない出世だ。
そばでどんなやつか見てやろうと思った。もともとアマゾネスの村を出たのは強い男を見つけるためだ。
ウォルフォード伯爵は暗闇伯爵と呼ばれ、城に呼ばれた女性がそのまま帰らないという噂があった。実際には女性だけでなく男性も行方不明になっていた。
ウォルフォード伯爵の護衛をして城下町のウォルゲートを歩いていた時のことだった。一人の男が路地から出てきて「娘を返せ!」と叫びながら、ウォルフォード伯爵にナイフで襲い掛かった。
男はウォルフォード伯爵に近づくこともできなかった。ミアレイが突っ込んで来た男を素手で捕まえると地面に放り出して蹴りを入れた。
「どうする?」
「捕まえて城に連れて来い」
ウォルフォード伯爵に聞くと不敵な笑みを浮かべながら低い声を出した。
城に帰るとミアレイはウォルフォード伯爵の執務室の前で警護に当たっていた。捕まえらた男が後ろ手に縛られたまま衛兵に連れてこられる。
「衛兵が昼の男を連れてきました」
ミアレイがドアの外で言う。
「中に連れて来い」
ウォルフォード伯爵の声が部屋の中から聞こえる。
「お願いします」
中に入りたがらない衛兵に連れていってくれと男を手渡された。
「放してくれ!」
ミアレイが縄を引くと男が暴れた。
「跪かせろ」
ウォルフォード伯爵が言うので、ミアレイは男に足払いをして倒すと蹴り上げて跪かせた。
「どうかお許しを」
ひざまずいた状態で男が昼の無礼を詫びて哀願した。
「なぜ? 普通にお前を許しはしない」
ウォルフォード伯爵は言った。
「ミアレイ、指輪はほしいか?」
「欲しいです」
ウォルフォード伯爵に聞かれたので別に欲しいわけではなかったが、そう答えた。
ウォルフォード伯爵は男に近づくと左の手のひらを頭の前に出した。手の前に黒い球のような穴ができて男が叫ぶ間もなく吸い込まれていった。
「受け取れ、これをつけると敵の魔法攻撃を食らっても半減する」
ウォルフォード伯爵が握った左の手を前につきだした。
手のひらを上にして受け取ると銀色の大きめの指輪があった。おそらくさっきの男が魔法のアイテムに変えられたのだろうと思った。
あの暗闇はなんだろう。暗闇伯爵と呼ばれているのはこのせいだろうか。
ミアレイの指にはジャラジャラと銀色の指輪が並んだ。ライラス湖畔の別荘に滞在していた朝、いつものように水浴びしていた。
湖の表面が光って踊っていた。日が当たると暖かいが水が冷たい。水に濡れた肌に湖の冷たい風があたるのが気持ちが良い。
隣には最近護衛に加わった灰色のダークエルフが水浴びしている。敵だったのをハーディンが一騎打ちして味方にしたと聞いた。
町一つを蒸発させた狂ったやつだ。張りのあるダークエルフの体から、水の筋が急ぎ足で滑り落ちた。
不穏な風を感じて丘の方角を見ると、少年とエルフと狼の獣人の女と魔法使いの4人のパーティーがこちらに向かって歩いてくるのを見つけた。
ミアレイは湖から上がって衣服をつけた。理由は分からないが、挨拶代わりに攻撃するのがアマゾネスだ。
ダークエルフには「俺の獲物だから手を出すな」と伝えて一人で挑んだ。
剣を右手に杖を左手に持った二刀流の少年が下腹部に空気の球の連弾をぶつけてきた。魔法も物理攻撃も指輪の効果で90パーセント以上は効果がない。痒いだけだ。
それでも戦いが続くと酸素が薄くなって自分の口が開いていくのがわかった。
二刀流の少年が空を駆けて走って来る。火炎魔法のダリアで仕留めて終わらせようとを少年に連弾した。ダリアが少年に命中した。
炎のダリアの花びらが散って中から少年が出現する。慌てて手斧でガードしようとしたがこじ開けられてそのあとの記憶がない。
ミアレイは別荘のベッドで上半身を起こした。湖畔を見ているとハーディンがドアから入って来た。
ハーディンからダークエルフが殺されたことと、自分が少年に倒されたことも教えられた。
「どこの冒険者だ?」
「質屋の跡取りのタリルだ」
そのことはハーディンしか知らないことで、ウォルフォード伯爵にも伝えていないと言った。
「パーティーの中にいた碧眼の魔女にダークエルフが倒されただけで、他に戦闘などなかったことになっているから」
ハーディンが言った。質屋の少年にお前もダークエルフも負けたことは、ウォルフォードの格が落ちるので口外しないようにと口止めされた。
「あの二刀流の少年に負けたのか?」
でもなぜ私は死んでいないのだろう。腹が痛いのは剣で殴られて気絶したせいか? 少年は俺を切らずに剣の腹で殴った。
少年は私を殺さずに生かしてくれたのだ。殺そうとしたのに許された。ミアレイは胸の鼓動が早くなるのを感じた。
ミアレイの頬に赤みが刺した。
「俺、本当なら死んでたんだ。なぜあいつはおれを殺さなかったのだろう。俺が女のアマゾネスだからかな。なにか、深い意味があるのだろうか」
紅潮したミアレイが言った。
タリルはモンスターしか殺したことがなく、対人戦で人を殺したことのない新米だったことを知らなかった。強いタリルに好かれたとアマゾネスのミアレイは勘違いした。
ハーディンがベッドに腰を下ろしてミアレイの顔を見つめた。
サファイア色とアメジスト色のオッドアイが微笑するのを初めて見た。笑顔が恐ろしく綺麗だった。
「ミアレイ顔が赤いぞ、自重しろ。今日も何事もなかったように、任務を続けろ」
ハーディンはベッドの横から立ち上がると部屋を出ていった。
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