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碧眼の魔女の作戦

碧眼の魔女がダークエルフのグアンダスを倒す作戦を教えてくれます。

「作戦なしにグアンダスに近づいてみな。一瞬で蒸発してオダブツさ。あたいの大事な弟子だってさぁ、こないだ蒸発して消されたさ」

 

「それにさ、グアンダス一人でも無理なのに、炎姫と剣聖と暗闇伯爵までいるタイミングなんて、グアンダスと闘うのに最悪さ。あんたバカなのかい?」


「あたいがグアンダスから見えないように隠さなかったら、あんた死んでたね」


 碧眼の魔女がレギーを叱りつけた。


「隠してくれたって言うけど、もっと他の方法があったでしょうに」

 レギーが文句をつけた。


 ふんと軽く口をへの字に曲げると碧眼の魔女が話を続けた。


「あたいは弟子の敵討ちをするためにここ一週間様子を伺っていたのさ。そしたら目の前にレアアイテム満載の景気の良いパーティーがいるじゃないか」


「他の目は誤魔化せても、あたいの目は誤魔化せないよ。あたいはここいらじゃ一番の魔法使いだからね。」


 碧眼の魔女がタリルをじろじろと見た。


 タリルもマリアナもセレアもレギーにいきなりまたがってキスをした熟女にドン引きして口をあんぐりと開いたままでいた。


「あんた、どこの坊ちゃんだい?冒険者ではないね。。。。マーリスの剣、妖気の胸当て、爆雷の杖だね」


 魔女がマーリスの剣に触れてじっと見た。


「これだけの物をそろえられるとは。ははん、商人ギルドだね。ダノリクムのタリルだ。ジレヴァルの森の妖精が言ってたよ。狂った二刀流のガキが森で暴れているって」


「もう、デビューしたんだね」


 驚いたような顔をしてタリルを見た。


「でもさ、その装備だけじゃグアンダスには勝てないよ。グアンダスの蒸発の魔法陣の中に入って蒸発さ」


 言いながら碧眼の魔女が首を横に振った。


「私のことを知っているのですか?」


 タリルが我に返って聞き返した。


「ああ、魔女の間ではちょっとした噂だよ。剣士と魔術師のハイブリッドだってね」


「それで、おばさ、お姉さんは作戦があるのですか?」


「リュアラと呼びな。さんはつけなくていい。あたいを今回だけパーティーに雇いな。報酬は砂丘の杖。あんたの質屋の倉庫にあるはずだ。それがずっと欲しかったんだよ」


 おばさんと言いかけたタリルを碧眼の魔女がジロリと睨んだ。


「一週間あいつらをつけたけど、あいつらは一人にはならない。だから、グアンダスとアマゾネスが一緒の二人の時を狙うのさ」


「ハーディンは別格に強いし、ハーディンは浄化の鎧を着ているから、タリルのレアアイテムはすべて効かないよ」


「魔法が一切効かないから、物理攻撃での戦いになる。あいつに物理攻撃で勝てる奴なんてこの世の中には一人もいないのさ。マーリスが生きていてもどうかなぁ。無理だと思うよ」


「魔法使いとハーディンとの相性は最悪さね」


「暗闇伯爵のほうはもっとやばいよ。あいつの作ったブラックホールに吸い込まれたら、魔法を使えないどころか、魔法のアイテムに変えられちまうって話さ」


 リュアラの話に4人は吸い込まれるように聞き入った。


「チャンスがあるとしたらアマゾネスの炎姫と一緒の時だね。炎姫は火属性だから氷の魔法はなんとか届くぐらいだが、グアンダスには通じない。届く前に蒸発しちまう」


「タリルの爆雷の杖の空気砲は二人に通じるけど威力が少ないかな。雷系のジャンノザートは届くよ」


「あいつらは自信家だ。最初は一人で来るよ。たぶん闘いが大好きなアマゾネスの炎姫だね」


「あたいが砂丘の杖で砂の城壁を作るから、その間から一斉攻撃して体力を削りな。それから、エルフのアーチャーには光の弓を持たせな」


「ウルフちゃんには雷帝の剣だね。雷帝の剣は雷の弾が剣先から出て遠くのターゲットも狙える優れものさ。両方とも質屋の倉庫にあるはずだよ」


「あんたは最後の切り札だから、炎姫との戦いの時は体力を温存してな」


 リュアラがレギーにウインクをすると、レギーが両腕で体を守るようなしぐさを見せた。


「炎姫が弱ったらタリルが突っ込んで仕留めな。炎姫をやっつけたあとはグアンダスが出てくる」


「闘い方は途中まで一緒だけど、蒸発の魔法陣からグアンダスを出さないと近づけないから、グアンダスを魔法陣の外まで押し出すのが、あんた達の仕事さ」


 レギー以外の3人を順に指さしした。


 碧眼の魔女がレギーをじっと見つめる。


「少しでも魔法陣からグアンダスがはみ出したら、切り札のあんたがそのグローブで絞め殺しな」


「ガローザのローブがあればグアンダスに気づかれずに近づけるはずさ。魔法陣の中には絶対に入るんじゃないよ。蒸発して消えちまう」


「あんた、訳ありなんだろ。しっかり仕事しな!」


 魔女が真剣な表情でレギーに言った。


「ウォルフォード伯爵の宿は町から少し離れた東の湖畔の別荘だ。ここ数日、毎朝アマゾネスとダークエルフの二人は湖に水浴びしに来る。そこを狙うのさ」


 言い終わると、どこからともなく右手に出現した木の樽型のビールジョッキに口をつけて、ごくごくとのどを鳴らして潤した。


「この作戦で良いですか?」


 タリルが首から下げた懐中時計型の炎の羅針盤を取り出してに尋ねると、ガラスの中の炎が大きくなりYESの合図を出した。


 炎の羅針盤はマリアナが狼の獣人の夫婦の家から帰って来たあたりに、質流れして倉庫に来た。

 倉庫を物色するタリルが横を通ると明るく光ってここだと自ら知らせてきた。

 気がついて手に取るとガラスの中の炎が大きくなった。


 ゴブリンと闘う前もギルド選びも、旅立ちの前も、炎の羅針盤は正しい道を示した。


「今回も大丈夫だ」


 タリルは炎の羅針盤を見て確信した。


「作戦はわかりました。今回はあなたを雇いましょう」


 タリルは言うと茶色の枯れた茎を取り出した。


「転移のカノンだね。用意が良い子だ」


 リュアラが感心してタリルを優しい目で見る。


 タリルは1秒ほど席から消えると手に小さな砂色の杖と剣と弓と巻かれた布を抱えて現れた。そして砂色の杖をリュアラに、剣をマリアナに、弓をセレアに渡した。


「これが欲しかったんだよぉ」


 杖に頬ずりするリュアラに白い布の巻物を渡した。


「雲の絨毯です。あなたの白いほうきもクールですが、白い絨毯は寝ながら飛べるように大きくなりますよ。大人数で乗ることも出来ます。これも差し上げます」


 タリルは気前が良かった。


「あたいが白いアイテムが好きって分かるなんて、気が効く坊ちゃんだよ。ますます気にいったよ。でも、戦いの時はその優しさはいらないよ」


「とどめをさして死んだのを確認するまで気を緩めるんじゃないよ」


 リュアラがだらしない顔から引き締まった顔になった。


「ウォルフォードは明日、城に戻るかもしれないし、明日の朝に作戦決行するよ」


「失敗しそうだと分かったらすぐにあたいが逃げるよと合図するから、雲の絨毯に乗ってずらかろう」


「生きていればまたチャンスはあるさね」


 リュアラが言うと4人も引き締まった顔になった。


「今夜はリュアラの部屋も一番良いスイートルームを用意するので一緒に来てください」


 タリルが丁寧に言う。


「さすが、商人ギルドのダノリクムの若旦那は景気が良いね」


 魔女が若い依頼者を褒め殺した。


 エリスの店を出て5人が歩いていくと路地で5人ほどの冒険者のパーティーが進路を阻んだ。

 剣士のヒューマン、戦士のドワーフ、魔術師のエルフ、キャットピープルの獣人、イノシシの獣人だ。


「碧眼の魔女だな。お前をつかまえれば大儲けだ」


 後衛のエルフを越して、パーティーの全員が走りこんできた。


 リュアラが欠伸をしながら砂丘の杖を左右に振ると地面が砂地に変わった。蟻地獄のようにさらさらと砂が流れて逆円錐のくぼみができる。


 4人がそこに流されて吸い込まれて叫ぶのを見てエルフが後ずさると、追い打ちをかけるようにリュアラが杖を盾に振り下ろした。


 エルフの立つ地面が割れて足が開いていき、足が開ききったところで下に落ちて暗闇に吸い込まれる。


 リュアラが砂丘の杖を上に上げるとばっくりと割れていた地面がドーンという音と共に閉じて、砂の蟻地獄もなくなって、何事もなかったかのように元に戻った。


「1000年早いよっ!」


 リュアラがパーティーを吸い込んだ地面に向かって言った。



「部屋が用意出来次第に合図しますので、窓からお入りください」


 ホテルの前まで来るとタリルがリュアラに丁寧に言った。


「依頼人はこうじゃなくちゃね」とリュアラが感心する。


 タリルはホテルのクロークで一番のスイートルームを追加を依頼すると「予約なしでは泊められない」と支配人に断られた。


 金ならいくらでも出すと言っても支配人は首を縦に振らなかった。タリルは女神の冠を頭にのせる。


「一番のスイートルームを一室お願いします」


「喜んで!」


 支配人が満面の笑みを浮かべて答えた。


 宿について部屋に入るとタリルはシャワーを浴びてベッドに寝た。珍しくマリアナがベッドの上で寝るとお互いの目と目が合って、しばらくの間、無言で見つめあう形になった。 


 チャピは寝がえりでつぶされないようにと窓際のテーブルの上で寝ていた。窓際には丸く大きな月が見えた。

 タリルが少し恥ずかしくなって、間が持たずに月明りで青白い天井を見た。


「タリルとずっといっしょにいれるかな?」

「ずっと?」


 タリルは聞き返して目を閉じたら眠くなってそのまま眠りに落ちた。


 マリアナは眠りに落ちるタリルの顔をしばらく見つめた。マリアナの白い顔を明るい月が照らして、アクアマリンの宝石のようにウルフの目が怪しく光った。


 タリルは一緒に草原で走り回る子供のころのマリアナの夢を見た。

 日の出前に目が覚めると子供の頃のようにマリアナと抱き合って寝ていた。


 少し恥ずかしくなって、体に巻き付いたマリアナの手をほどくと窓際に立って湖畔の涼しい風を吸い込んだ。


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