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冒険者になりたい質屋の御曹司

質屋の御曹司は冒険者になりたいのに叔父に商人ギルドに入れと言われます。

 タリルが学校でいつも上位の成績だったのは、叔父の経営する質屋にあるレアアイテムのおかげで実力で上位を取っていたわけではない。


 タリルが剣の授業で無敵だったのは、叔父の質屋にあるレアな剣を使っており、道具で優位に立っていたからだった。


 魔法の授業で異才を発揮したのもレアな魔法アイテムのおかげだ。


 お金に困って魔術師が質屋に売ったレアな魔法の杖は、中古なので育てなくてもそのまま使えた。自分が持ち主に売られたのを恨んでおり、次の持ち主には異常なほどに従順だった。それには理由があった。


 叔父のジャンの質屋はカジノと酒場のエリアの間に位置している。レアな剣や魔法の杖や防具はなどは、カジノで負けて売られたか、飲み代が足りなくて売られたものだ。


「自分は捨てられた」


 そう思った剣も魔法のロッドも自分を引き取りにこなかった持ち主を恨んだ。


 タリルは子供のころから自由に質屋のノディス家の倉庫に入って好きなレアアイテムを持ち出すことができた。一般人がのどから手が出るような高給なアイテムや、誰も知らないレアアイテムなどが使い放題だった。


 タリルは友達がいなかったので、レアアイテムで一人遊びした。家の中だけでなく市場や町の北にあるリトリルの小さな林でレアアイテムの効果を試した。


「マーリスの剣」「白昼の盾」「妖気の胸当て」「女神の冠」「爆雷の杖」「ガローザのローブ」「転移のカノン」「ミーネルの首飾り」その他たくさん。


 お気に入りは「ガローザのローブ」だ。


 このローブを着用すると周りからはタリルの姿は見えなくなった。


 ノディス家の廊下でメイドの話を盗み聞きもし放題だった。


「ジャン様はタリル様をまるで子供のように思っていらっしゃるわ。それにしても、甘やかし過ぎね」


 ノディス家のメイドはタリルが居るにもかかわらずタリルの噂話を続ける。


 タリルはメイドたちの噂話を聞いて、叔父のジャンがタリルのことをとても大事にしていること。愛していることを知った。


 タリルは市場でもいたずらをすることがあった。市場は活気があって大勢の人が行きかう。元気な露天の呼び込みの声と通行人の足音が混じって聞こえる。


「いらっしゃい! 秘伝のタレの焼き鳥だよ」


「美味しそうな匂いだ」


 市場を歩くと屋台の焼き鳥や甘いお菓子の匂いが時々鼻にぶつかってきた。


 周りの人には見えない状態で人々の間を移動するほど楽しいものはない。


「ひぃぃ 死んだ鶏肉が動いていあがる」


 タリルはお金には不自由していないので市場で物を盗んだことはないが、市場で吊られている死んだ鶏肉を動かして通行人を驚かせた。


 透明人間になって男子が思う願望は大抵の場合は女子の裸を覗きすることだが、タリルはそのようなことはしなかった。


 する必要もなかったのだ。


 女神の冠を頭にのせれば女神の祝福が得られる。女神の冠はカリスマがMAXに上昇してどんな女性だろうと男性だろうと、タリルの言いなりになった。


女神の冠をしているときは、どんな命令をしても相手はそれを拒むことはできない。


 メイドのレフィーリーザで試してみると「脱げ」といえば脱ぐし「踊れ」といえば踊った。


 女神の冠を頭から外すと相手は我に帰るらしい。


「キャァーー!」


「タリルさま! なぜ私はは裸なのですか?」


 メイドのレフィーリーザが裸でタリルの前で踊った後に、我に返って全裸の自分を見たときには絶叫を上げて走って逃げた。


 若くて年ごろのレフィーリーザの体はどんな彫刻よりも美しく眩しかった。


 ミーネルの首飾りは首にかけると透視ができた。

 壁の向こう側や木の裏側、森に隠れている動物が見える。


 市場や町で使えば家の中まで透けて見えて、透視の度合いは慣れると調整できる。


 レフィーリーザを呼んで服の中を透視すると彫刻のような美しい体が見える。


「やっぱり、レフィは中身も美しいな」


「あんまりじろじろ見られると仕事がしづらいですぅ」


 部屋の掃除しにきたレフィーリーザをタリルがにやにや見るのを嫌がった。


 その後、メイドのレフィーリーザにはいろんなアイテムを試した。


 ノディス家には他にもメイドはたくさんいたがレフィーリーザが一番リアクションが良かった。


 度たびレアアイテムを使われたため、レフィーリーザは自分がレアアイテムの実験台にされているのに気づいた。


「タリル様、私になにかいたずらをしていません?」


(ああ、レフィーにレアアイテムを使ったことか)


「私の周りで変なことばかり起こるので、おかしいと思っているのです」


 なにか異変があるとタリルの仕業ではないかと勘づくようになった。


(レフィには訳を話しして協力してもらおう)


「レフィにお願いがあるんだ」


「何でございますか? タリル様」


「お店の倉庫にあるアイテムで、試したいものがあってね」


 そのためタリルは、レフィーリーザを自分の部屋に呼んだ後にあらかじめアイテムの効果を本人に伝えるようした。


 転移のカノンは以前に行ったことのある場所であれば、対象の物や人を瞬間転送することができる。

 はじめて使ったときにレフィーリーザをリトリルの林に転移をさせるのに、森をイメージしてしまった。

 そのためにレフィーリーザをジレヴァルの森へ飛ばしてしまったのだ。


「ここはどこ? 誰かたすけて!」


 レフィーリーザは森で半日の間迷子になった。


 白昼の盾をつかって真夜中に森を昼のように照らして捜索隊が探し出す。


「人間の女が森にいるぞ!」


 ゴブリンがレフィーリーザを追いかける。

 レフィーリーザは足が速い。この世界ではあまり見ない走り方をする。

 どこかの異世界で走る訓練をしたようなフォームだった。


「なに! なんなの? あの緑色の気持ち悪い生き物は! ひぃぃぃっ!」


 レフィーリーザはゴブリンに襲われそうになりながら、半日逃走を続けていた。


「市場に瞬間移動してほしいの。歩くのがめんどうだから」


 転移が意のままに成功するようになってからレフィーリーザは自分から頼むようになった。


 転移のカノンは見た目が地味だ。


 ただの枯れた葦の棒にしか見えないので、掃除で捨てられないように注意して倉庫に戻すようにした。


 爆雷の杖をリトリルの林を使ったときはタリル自身もその威力に腰を抜かした。


 爆雷の杖は自分を捨てた前の持ち主を恨んでいた。

 タリルが手にしたときは次の持ち主が現れたことを泣いて喜んだ。


 爆雷の杖は自ら唱える呪文を変えると効果が変わることを教えてくれた。


 「アリゴン」の詠唱は空気の鉄砲のようなものを当てて目標物を吹き飛ばす。


 「レフデン」は目標物を炎のミサイルのような球でピンポイントで爆破することができた。


 中でも「ジャンノザート」が強烈だった。


 軽く詠唱して杖を振ったらリトリルの林の半分が吹き飛んだ。

 雷に打たれて焦げたようになって林に焦げ臭い匂いが残った。


 その後「ジャンノザート」は使用していない。


 爆雷の杖は自分に魔力がなくても極めて短い詠唱で攻撃魔法が使えるレアアイテムだった。杖との信頼関係ができると、詠唱することさえいらなくなった。


 リトリルの林が半分に小さくなってからタリルはジレヴァルの森でアイテムを試した。


 ジレヴァルの森はモンスターも出現する。

 一般人やレベルの低い冒険者はゴブリンや得体のしれないモンスターを恐れて入ることはない。


 ジレヴァルの森は昼でも薄暗かった。タリルは白昼の盾で前を照らしながら森を進む。

 妖気の胸当てを体に付けることでほとんどのモンスターは不気味に感じて近寄って来ない。


 仮に周囲5m近寄って来た場合は妖気の胸当てからは黒い煙の帯が飛び出して、近寄る不審者に巻きついて捕獲して足止めするのだ。


 剣やロッドの類は無数に質屋に売られており、質屋の倉庫にはたくさん並べられていた。

 低レベルの冒険者が売ったアイテムだから、どれも大したものでは無いが、まれにレアな剣が売られることがある。


 たいていの場合、盗賊が盗んだものか、ダンジョンで拾われた剣であり、剣のレアアイテムに関しては持ち主が売ることは少ない。


 タリルが気にいっているのはマーリスの剣だ。

 見た目はシンプルな剣で持ちやすく小さめで軽い。


 上級冒険者の勇者マーリスが使用していたもので、勇者マーリスの剣術を剣が記憶しているため、使用する者の体が勇者マーリスが生きていたころのように動いた。


 タリルはこの剣のおかげで学校では伝説的な強さを誇り、無敗のまま卒業した。


 マーリスの剣の動きで多くの経験を積んだので、他の剣を使用している時でも勇者マーリスの基本動作ができる様になっていた。


 戦士ギルドもタリルをほしがっていたが、タリルはきっと商人ギルドのダノリクムに入るだろうとあきらめていた。


「ジャン叔父さん、僕は冒険者ギルドに入りたいんです。」


 タリルは叔父のジャンに直談判した。


「お前はなにもわかっとらんな。冒険者ギルドではなく、お前は商人ギルドに入るのだぞ」


 そう言いながらジャンが頭を抱えた。


「ジャン叔父さん、僕は町の外の世界が見たいんだよ。町の外に出たいんだ。もっといろいろ見たい」


 タリルが食い下がった。


「おまえが森の中に入っていろいろやっていることは知っている。それも大目に見てきた。冒険者ギルドに入ってクエストでもするつもりか? よく考えてみろ。お前はこれからクエストの依頼者になるのだ」


 何も言わずにタリルは下を向いた。


(やっぱり叔父さんは冒険者ギルドに入るのを許してくれないか)


「冒険者にお金を払って依頼しているのは、ほとんどが商人ギルドだ。自分の役回りを知れ! タリルよ」


 ジャンがタリルを指さして言った。


「お前は依頼者なのだ」


「ならばジャン叔父さん。依頼者の私がクエストに同行するのは許されるでしょう」


「クエストの依頼もパーティーの選別も、報酬の支払いも依頼者がするのですから、監視役としてパーティーに同行するのは問題ないでしょう」


 タリルは一週間考え抜いたアイデアをタリルがジャンに披露した。


 ジャンとタリルの会話をジャンの横でマリアナが聞いていた。マリアナはジャンの幼馴染で狼の耳としっぽをもった獣人の女性だ。


「将来的にジャンの後継者になるのですから、ダノリクムの依頼するクエストへの同行はタリルの大きな経験になるに違いありません。将来のダノリクムをけん引する存在になるでしょうから一石二鳥です」


 マリアナが横からフォローした。


「ううむ、それも一理ある。かわいい子には旅をさせろと言うしな。よかろう」


 納得して腕組みをしてジャンが目を閉じた。


「それなら、明日にでも商人ギルドに登録します。ジャン叔父さんは推薦状を書いてください。お願いします」


 タリルは言うと、嬉しそうにマリアナに微笑んだ。


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