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3/3

3,安心


「そういえば、ギルはさっきから何を焼いているの?」


リーが目を覚ましてからずっと焚き火を枝で突っついているギルに気になって聞いてみると、ギルは慌てたようにあっと言った。


「ヤバい!完全に忘れてた!」


慌てて焚き火の中から、何かを取り出そうとするも、熱いのかなかなか取れない。


「取れた!」


ようやく取れても、ギルの手はだいぶ火傷を負っていた。


「はい、どうぞ。魚を焼いたんだ!だいぶ焦げちまってるけど、食べれるから!」


にこやかに焦げで真っ黒になった魚を渡してくる。


「あれ?天使って食べないんだっけ?」

「いや、私は食べるよ。天使じゃなくなったからね。それより、その火傷、大丈夫?」

「こんぐらいの火傷なら大丈夫!すぐ治るし!」


そう言うが、微かに眉をひそめる所を見ると、やはり痛いらしい。

火傷した手を掴むとギルは驚いたようにこちらを見た。


「えっ!?治してくれるのか!?」

「このくらいすぐに治せるよ」

「疲れてねーの?」

「このぐらいの傷なら全く疲れないので」


そっと火傷の部分に手をかざす。するとギルの目が丸くなった。


「あれ?もう痛くねぇ!」

「それは良かった」

「すげーな!ありがとな!てか、俺、てっきり治すときもっとパアッと光ったりするのかと思ってた!」


素直にキラキラと目を輝かせて喜ばれると悪い気がしない。


神殿にいた頃は、どんどん人がやって来ては治して、治し終わったら、すぐに次の人がやって来て、と反応を見る暇もなく、まるで治療するただの機械になったかのような状態だったので、なおのことギルの反応は嬉しかった。


治った手で焼きすぎて真っ黒になった魚をむしゃむしゃと食べていたギルがふと尋ねてきた。


「そういえばリーはどうやって神殿から逃げてきたんだ?神殿から逃げるってたいぶ難しいとけど」


そう言われるとナターシャの事が頭をよぎる。

興味津々とこちらを見るギルに、味方なのだからと正直に話す事にした。


500年間神殿の塔の一室から出られず、ひたすら来る人、来る人治していき、神殿が財を富ませていたこと。

ナターシャがそんな毎日に外の楽しい話や噂を話していたこと。


そして、昨日。ついに、ナターシャの助けで外に逃げてきたこと。


「けど、ナターシャは捕まってしまった。私だけが逃げてしまった」

「…そうか。そんな事があったんだな…。でも、逃げきれて良かったな!これからどうすんだ?あんた。神殿に捕まらないよう、ずっと逃げ続けるのか?」

「それは…まだ分からないよ…でも、どうにかしてナターシャを助けたい」

「じゃあ、最初はナターシャって人を助けるというのを目標にしよう!なぁーに!この俺がついてるんだ!助けられるさ!」


ギルが胸を張って堂々と言い張った。そのどやっとした態度にそれまでの重苦しい空気が四散した。


「神様に願ったって、こればっかしは俺たち人間でどうにかしないとどうにもならないしな。なんせ神様はどう頑張ったって、人間の事情にあれこれ介入出来ないし!」


そう言いながら、ギルは持っていた鞄の中から寝袋を二つ出してきた。と思ったら、枕やら毛布やら色々と取り出す。どう見ても、鞄の容量と荷物の量が合わない。


リーが興味津々で見ていることに気づいたのだろう、ギルがニヤニヤして自慢する。


「この鞄はなぁ、魔法の鞄なんだぜ!たくさん荷物が入るようになってるやつなんだ!めっちゃ高かったんだけど、傭兵でいっぱい稼いで頑張って買ったんだ!いいだろ」


ふふん、と顔がにやけるのを我慢しているギル。


「そうなんだね。でも、そんなに仕事って沢山あるの?」

「まあ、今の時代、結構あちこちで小さい規模のものから大きい規模のものの衝突があるからな~」


戦場での事を思い出したのだろう、ギルは少し悲しそうな顔をした。しかし、リーが心配そうに見ていることに気づいたギルはすぐに表情を改め、寝る準備に取りかかった。


「とりあえず、もう寝ようぜ!寝不足で戦えませんでした、なんてカッコ悪すぎるしな!」


寝袋の1つを渡してきて、枕やら毛布やらも渡してくる。


「夜はだいぶ冷え込むからな!しっかり暖かくして寝ろよ」


母親みたいな事を言っていたギルも、元天使って風邪引くのか?とかなんとかぶつぶつ言いながら寝袋に滑り込む。


「安心して寝ろよ。俺の神様からの頼まれ事でもあるんだし、ちゃんと守ってやっから」


何百歳も年下に言われたのにも関わらず、そう言われるとなぜか無性に安心した。

リーの年齢は確かに何百歳もあるが、精神的な年齢はリーの見た目と同じ17、18あたりぐらいの青年と同じものだった。


すぐに聞こえてきたギルのイビキを聞きながら、ギルに出会えたことに感謝した。

きっとリー1人では何も決めれず、何も出来ず、ただたださ迷い続けるしかなかっただろう。


そして、リーも感謝しながらだんだんと眠りに落ちていったのだった。

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