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午後の紅茶にくちづけを  作者: ちょこみんと
ダージリン・セカンドフラッシュ
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「じゅっかい…くいず?」

「そう、10回クイズ。チェリーちゃんはご存知ない?」


陽菜乃と真美子が部員分のティーセットを片し終えたところで橙子が唐突に10回クイズをしようと言い出したが聞きなれない単語に智瑛莉が首を傾げた。


「クイズを10問するんですか?」

「違うわよー。フェイクの答えに似た単語を10回言わせて答えるクイズよ」

「はぁ…」

「唐突に何言い出すかと思えば、アンタ小学生?」

「うるさいわね!いいじゃないの。昨晩たまたま聞いていたラジオでやってたのよ。それが面白くて面白くて」


翠璃に冷ややかな目線を向けられる橙子だったがそのラジオの10回クイズを思い出したようで1人でぷぷぷと笑い始める。


「へー、橙子ちゃんラジオなんて聞くの?」

「うん、よく聴くのよ」

「そうなの?珍しいわね」


この時代には珍しいラジオリスナーに蒼と陽菜乃は関心を持つ。


「それで、オレンジさん。その10回クイズってなんですか?」


まだ10回クイズをイマイチ理解できていない智瑛莉は橙子に早く話せと言わんばかりに前かがみになる。

まぁ、やる気ねと微笑む橙子はででんっと口でラジオのSEを真似て問題を続ける。


「シャンデリアって10回言って?」

「え?えぇっと…シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア」


智瑛莉は自分が言った回数を指折り数えて、5本の指が全部おられてまた開かれると智瑛莉はパッと橙子の顔を見て首を傾げる。


「じゃあ、毒りんごを食べちゃったのは?」

「…えっとぉ…シンデレ、あっ、白雪姫!!」


橙子の問いかけに一瞬10回クイズならではの引っ掛けに騙される智瑛莉だったがあっと正解を見つけて改めて答える。

騙されなかった智瑛莉に橙子はちょっと残念そうに正解と言うと智瑛莉はドヤ顔で橙子を見つめた。


「ふふっ、智瑛莉さんにはちょっと簡単だったようですね」

「蒼もするー!」

「やだわぁ、そんな子供だまし」


楽しそうな二人を見ていて蒼も手を挙げて参加を表明するが翠璃は馬鹿にするように鼻で笑っているが乗り気のようだった。


「むぅ、じゃあ2問目ででんっ!!…10って10回言って?」


橙子がそう言うと蒼と智瑛莉は同じように指折り自分が単語を口にした回数を数えて10回になると橙子の顔を見る。

陽菜乃や真美子は参加はしていなかったがどのように引っ掛けるのかを考えていた。


「…90の次はなんでしょう?」

「100!!」

「んー…、91?」


元気よく答える蒼と何かを伺うような智瑛莉の解答に橙子は満足気に微笑み答えあわせをする。


「蒼、残念!!正解はチェリーちゃんの91」


なんだか納得の行かないような顔をする智瑛莉の前で引っかかってしまい間違った事にガッカリする蒼。


「でも、90の次は91で正解なんでしょうか?」

「え?」

「いや、初項が90で公差が1の整数で表される等差数列ならそれで正解かもしれませんが…、そんな条件式は与えられていなかったので…」


んー、と顎を指先で掴んで考えるように首をかしげるとどうなんだと言わんばかりに出題者の橙子に目をやる。

そんなこと言われるとも思ってなかった橙子は苦手な数学の単語にうっ、と顔をゆがめる。


「智瑛莉、これはただのしょうもないクイズだから。あんまりオレンジを問い詰めないであげて」


数学できないみたいだからと陽菜乃が智瑛莉に苦笑いでそう言うとなんとも言えない様子の顔の橙子は口をすぼめた。


「なら、条件によれば蒼も正解ってことになりますの?」

「え、えぇ…公差が10の等差数列のもとなら正解になりますわ」

「ひねくれた答えね」


翠璃が真美子に問いかけるので苦笑いで答えると紅音がうでをくんで鼻で笑った。


「うぅ、そんなこと聞かれるなんで思わなかった…」

「ふっ、アンタなんかよりも智瑛莉ちゃんの方がよっぽど上手だったみたいね」

「もう、チェリーちゃんはもう少し純粋な幼心を持つべきだわ」


少し脹れた様子の橙子にそう言われる智瑛莉には響いてないようで薄い反応をされる。


「じゃあこれ最後ね」

「まだ続けるのね」

「んーと、じゃあ次は…」


膨れていたはずの橙子だったが直ぐに笑顔を浮かべて次の10回クイズで唱える単語を蒼と智瑛莉、翠璃にまで教える。


「次は、好きって10回言って?」


ニコッと笑った橙子に一瞬驚いたように目をぱちくりさせた智瑛莉だったがまた先程と同じように指を折りながら言われた通りに10回連呼する。

蒼も純粋に橙子に向かって好き好き好き…となんの疑いもなく10回口にする。

2人が言い終わった頃には橙子はえへへっとご満悦な笑顔を浮かべていた。


「ありがとう2人とも、私も大好きよ」

「は?」


そう答える橙子の対応に智瑛莉は理解出来ずに思わず品のない声を漏らした。

蒼も理解出来ずに首を傾げるが直ぐに納得して何よーと微笑む。


「問題は?」

「そんなのないわよ。好きって10回言ってもらっただけよ」

「まぁ、そう来るとは思いませんでしたわ」

「なんだか腑に落ちないわねそれ」

「あーぁ、智瑛莉ちゃん可愛そう。心にもないこと言わされるなんて」


真美子は感心するが陽菜乃は呆れたように隣で笑っていた。

微笑む蒼とは反対に憐れむような視線を智瑛莉におくる翠璃はわざとらしく橙子に言ってやる。

とうの智瑛莉は納得いかずにむぅと頬をふくらませていた。


「あはは、どう?チェリーちゃん。10回クイズ面白いでしょ?」

「全然面白くなんてありませんよ!!…もうっ」


けたけたとわらう橙子に可愛らしく怒る智瑛莉はそう言って気を落ち着かせるように隣の紅音に手を回して抱き寄せた。

10回クイズの様子を見ていた紅音は智瑛莉に抱かれながらめんどくさいことにしてくれたなと言わんばかりの視線を橙子に送るがそんなこと気にもしてないほど明るい笑顔で返される。


「私はその最後のやつ気に入りましたわ」

「まぁほんとですか?なら、是非やってみてくださいよ」

「ふふっ、そうですね。機会があれば」


笑顔の真美子は同じようにニコニコと笑う橙子とそんな会話をするころには智瑛莉の膨れた顔も穏やかな表情に変わっていた。


「もぉ、橙子ちゃんたら言ってくれたら蒼はクイズじゃなくても好きって言うのにー」

「私も蒼のこと好きよー。あら、もしかして両思いかしら?」

「あはは、そうだね。両思いだぁ」


蒼と橙子は2人でキャッキャッと仲良くしている隣で翠璃は可哀想なものを見る目を橙子に向けて口を開く。


「そんなことまでしないと好きって言って貰えないなんて、ブスったら可哀想だこと」


嘲笑いではなく何かに苛立ったようでバカにするように同情的な目を向ける翠璃に橙子は一瞬だけ悲しそうに瞳を揺らすが直ぐにいつものように強めの口調で言い返す。


「はぁ?余計なお世話ですぅー!!そんなに言うんでしたら早乙女の御令嬢はさぞ多くの人から愛を囁かれるんでしょうね」

「まぁ、馬鹿にしないでくださるかしら?私をだれとこころえ?久我山の小娘には分からないでしょうけどそりゃああまたの数よ」

「へぇ。なら、誰があなたを好きだと言ってくださるのよ。私はたった今チェリーちゃんと蒼に好きって言われたわよ?」


いつものように喧嘩腰の2人に挟まれた蒼は苦笑いを浮かべていた。

小馬鹿にするような態度だった翠璃だったが橙子にそう言われると痛いところをつかれたようで言葉につまり何も言えなくなった。

その様子に橙子の顔には徐々に冷ややかな笑みが現れる。


「あら?翠璃さんどうかなさって?」

「う、うるさいわね!!いっぱいいるわよ」

「まぁ、強がって。どっちが可哀想かしらねー」

「お、今日は翠璃が押されてる」


ぐぬぬと橙子を悔しげに睨む翠璃が珍しく陽菜乃は楽しそうにそれを眺める。

そんな中いつものように喧嘩している2人に真美子は不安げにしていた。


「ま、まぁまぁ。橙子ちゃんも翠璃ちゃんも大切に思ってくれてる人はいるからいいじゃん、ね?」

「うぅ…蒼ぃ…」

「蒼は橙子ちゃんも翠璃ちゃんも、ここに居る皆大好きだから」


今にも泣き出しそうな悔しげな翠璃に優しくほほ笑みかける蒼がそう声をかけると、2年生だけでなく3年生や智瑛莉も蒼に目をやった。

そう言われた翠璃は先程までの暗い表情から一変してぱあっと明るくなり蒼を大好き!!と抱きしめる。


「ありがとう蒼、私も大好きだから両思いね」

「ふふふ、そうだね」

「私も蒼好きだから両思いねー」

「ふふっ、私もですわ」


翠璃だけでなく真美子と陽菜乃も嬉しそうに微笑み智瑛莉も嬉しそうな笑みを浮かべ紅音を抱きしめながら改めて見つめる。

紅音は顔を見られないように顔を逸らすが陽菜乃からは照れたような表情が確認できた。

するとそれを見計らったように壁の時計が部活終了の時報の鐘を鳴らした。


「蒼さんのおかげで素敵な雰囲気になりましたね。では今日はこのあたりで終わりにしましょうか」

「ふふ、はーい」


蒼のおかげと言われた本人は嬉しそうに微笑んだ。

部長の真美子がそういうので他の部員はいっせいに帰り支度を始めようとソファから立ち上がり荷物を取りに向かう。

蒼に好きと言われたのがよほど嬉しいのか翠璃は蒼の手を握っていた。


「蒼がそんなこと考えてるなんて思ってもなかったわ」

「えへへ、紅音さんも蒼の大切な人ですよ?」

「ふふ、ありがとう」


珍しく素直に感謝する紅音に智瑛莉は少し落ち込むような素振りを見せて陽菜乃に頭を撫でられ慰められる。

その様子を横目で見ている紅音はあえてスルーした。

それぞれが満足気に嬉しそうな笑みを浮かべながら自分の学生鞄を手にすると、順に軽くスカートを持ち上げてサヨナラの挨拶をして部室から出ていった。

最後に残った部長の真美子は隣の給湯室で部員の使ったティーセットを洗い始めた。

喧嘩や間違った意思疎通の多い部員にひやひやすることも多い部活だが、なんだかんだで皆がお互いに信頼してたり大切に思いあっていたりして幸せな気持ちでいっぱいになった真美子は無意識に笑みを浮かべて水道から流れる程よい水温と水圧の水でカップの泡を流した。




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