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午後の紅茶にくちづけを  作者: ちょこみんと
ディンブラ・ティー
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「それで、外履きを履いてらっしゃるんですのね」


生徒会の仕事で少し遅刻してきた真美子は先に用意されていた蒼のアッサムのストレートティーの注がれたカップを手に少し不貞腐れてる様子が見える紅音の足元に目をやる。

体育で使っているので多少の土汚れのある白いローカットの靴を履いていていつもよりも幼くも見えた。


「あんな靴履いてくるからよ。そもそも学校指定の靴を履きなさいよ」


隣で自分の持ってきたスイートポテトを口にして隣で不貞腐れる紅音に声をかける。

紅音と智瑛莉は何も言わずにただスイートポテトを無心で食べていた。


「紅音さんだけですよね、こんなに校則破ってる方」


翠璃がカップをソーサーに戻して紅音の顔を見つめて生徒会長である真美子に問いかける。

確かにーと、隣に座る蒼も付け加える。


「いいのよ校則なんて。あってないようなものなんだから」

「そう言われてしまうと生徒会としては困りますわね…」


真美子は翠璃と蒼、紅音に苦笑いで返す。

陽菜乃がスイートポテトにフォークを刺した途端に昔のことを思い出したようにあっ、と声を上げて紅音を見る。


「そう言えばさ、中等部の頃紅音何回も小学生と間違われてたよね」


いきなり面白そうに笑いかける陽菜乃をこの話に触れられて欲しくないらしい紅音はスイートポテトで膨らんでいる頬のままギロッと睨むが、陽菜乃は何も気にせず真美子の方に目をやる。


「確かに。中等部の制服をきちんと着ていたのによく間違われてましたわね」

「その時の紅音はまだちゃんと校則守ってて…ちっちゃかったから幼くて可愛かったよね」

「ち、ちっちゃいゆーな!」

「まぁ、その時のお姉様見てみたいですわぁ」


昔話に花を咲かせる陽菜乃と真美子の話に智瑛莉はすかさず食いつく。

羨ましそうに目を輝かす智瑛莉に陽菜乃はスマホのカメラロールを振り返って写真がないかを探し出す。


「蒼だって中等部の時はよく言われてましたわよ」

「もー、そんな事言わないでよっ!!」

「あら、あなた達入学の時そんなに変わらなかったわよ」


橙子も中等部の時のことを思い出すと蒼に止められる。

翠璃は唇についたスイートポテトを舐めとって、今では身長差のある2人に目をやった。


「何よ翠璃ちゃん、私だけ成長してないみたいじゃない」

「え?違うわよ。蒼はどっかの誰かと違ってずっと可愛いままってことよ」

「ちょっと翠璃、誰かって誰よ」


そう言いながら蒼を抱きしめて笑顔で愛でる翠璃に橙子はムッと反応する。


「あ、これこれ。…中2の修学旅行の時か…ほら、私と真美子と紅音」


写真を見つけたらしい陽菜乃がスマホの全画面に写真を表示してテーブルに置いた。

智瑛莉と2年生だけでなく懐かしさから真美子もその画面を覗くと、ハワイのショッピングモールで食事している風景の自撮り写真だった。

満面の笑みの陽菜乃の隣でひきつりながらも笑顔を浮かべる真美子の背中に手を置いてひょっこり顔を出している紅音が幼い笑顔を浮かべてウインクをしていた。


「きゃー可愛らしい!!さすがお姉様」

「そんな時期もあったわね…」

「真美子さん、写真の時はいつもひきつりますよね」

「やだ、恥ずかしい」


上級生3人の懐かしい写真に興味津々な後輩に画面を横にスワイプしてまた別の写真を見せる。

次の写真は綺麗な白い砂浜と青い海で遊んでいる紅音と陽菜乃の水着姿だった。

紫色のチューブトップビキニの陽菜乃に手を引かれていやいや海の中に連れていかれそうになっている背中のバックリ開いた赤いワンピースの紅音。

智瑛莉は嬉しそうにその写真を見つめて、陽菜乃さんこの写真送って、とねだった。


「陽菜乃さんは今とあんまり変わりませんね」

「紅音さんは今よりも笑顔ですね」


翠璃と蒼が写真と実物を交互に見て笑う。

紅音は少し恥ずかしそうに陽菜乃の制服を引っ張り、やめるように目で合図するがが陽菜乃はいいじゃないとやめなかった。


「確かこの時、紅音さん迷子になりましたわよね?」

「ま、迷子じゃないし…ちょっと、遠くまで散歩に行っただけよ」

「そうそう、急に居なくなってすごく焦ったの。それでお菓子をいっぱいもって泣きながら帰ってきたと思ったら、"私もう真美子から離れない"って泣き喚いて」

「ありましたわね、そんなこと。それでお菓子の字が読めないから食べられないってまた泣いちゃって」

「やめてよそんな話!!」

「お姉様ったら可愛らしい!!」

「まぁ、それは大変でしたわね」


真美子の話を遮ろうとする紅音は恥ずかしそうに頬を染めるがそれを見逃さない智瑛莉に捕まる。

橙子は当時の話をする陽菜乃に目を向けてリアクションを取る。


「あの時結局なんだったの?」

「だから、散歩に行ったの」

「泣きながらですか?」

「何よ疑うの?」


散歩だと言い張る紅音に翠璃が疑いの目を向けるので言い返す。


「でも、ビーチだけじゃなかったですわよね?迷子になったの…確かアウトレットとかレストランとか…でもちゃんと帰っては来るんですのよ」

「あら、紅音さんって意外と旅行ではしゃぐタイプなんですわね」

「うるさいわね、いいでしょ旅行なんだから」


また横にスワイプすると次は制服姿の真美子と紅音が手を繋いでショッピングモールを歩いている様子が隠し撮りされているように写っていた。

頭一つほど身長の違う2人が買い物をする姿は見るからに姉妹のようだった。


「あ、そうそう、ここで紅音さんがお洋服を買っていたらお店の方に"キッズパーティーには露出度が高すぎる"って言われましたの」

「でも、紅音は言ってること分かってなくて困って泣きそうになってたよね」

「ち、ちがっ、アレは…そんなんじゃないの!!」

「あなた達の時はどうだったの?修学旅行」


あらかた自分のスマホに入っている修学旅行の写真を見せ終わると2年生に問いかける。

すると待ってましたかと言わんばかりに蒼が花柄のケースを付けてるスマホの写真を見せる。


「私たちの時も3人で回りましたわ。でも…蒼達は英語あんまりわかんなくて」


蒼が見せた写真はハワイで有名なセントオーガスティン協会の前と中のステンドグラスを背に笑顔でポーズを決める3人の写真だった。


「蒼ったら言葉通じないのにすぐに現地の方と仲良くなったと思ったら、すぐついて行こうとして怖かったですわ…」

「だって、ガイドブックよりも現地の人のおすすめの場所知りたかったしー」

「だとしても人気の少ない所で声掛けられてるんだから危機感を持ちなさいよって、何回言ったことか…」


修学旅行中の事を思い出す2年生の蒼は笑顔で話すが、両隣に座る翠璃と橙子は苦い顔をして思い出し話す。

次に見せた写真は同じく水着姿でビーチで遊んでいる3人だった。

オレンジ色のタンキニの橙子と浮き輪に乗った花柄ワンピース水着の蒼をオフショルの翠璃が腕を伸ばして自撮りをした可愛らし写真で、智瑛莉も素敵ぃと写真を眺めた。


「私と蒼はずっと海に入って潜ったり泳いだりしてたんだけど、翠璃ったらちょっと入ったらずっとビーチで寝てたの」

「だって、海水やなんだもん」

「でも、海綺麗だったよねー」

「夜も海に出た?星すごかったでしょ?」

「蒼たちの時は夜はホテルから出ては行けなくて…ホテルの部屋からしか見れなかったけど、綺麗でしたわ」


2年生と陽菜乃は修学旅行の思い出話に花を咲かせ、智瑛莉は送ってもらった中学時代の紅音の画像を嬉しそうにニコニコと頬を緩ませながら眺めていた。

紅音は自分の過去をさらけ出されて少し不貞腐れながらスイートポテトを食べきり、全てを流すようにアッサムを飲み干した。


「また行きたいなーハワイ」

「そうですね、なら次はみんなで行きますか?」

「あっ、私さんせーい!!」


蒼の携帯のハワイの画像を見ながらそう漏らすと、それに乗った真美子が旅行に誘う。

すると他の部員も賛同するなか、翠璃はなにかを思い出して苦い顔をする。


「だったら部屋割りはきちんと決めましょう。私、この時この2人との3人部屋で死にそうだったんですの」

「死にそうって、大袈裟な」


憂鬱そうにそういう翠璃に陽菜乃は笑って突っ込むが翠璃の表情を見る限りではおおかた真実のようだ。


「そうよ翠璃、5日間楽しい夜だったじゃない」

「翠璃ちゃんだってずっとテンション高かったよ」

「それでも朝方までずっとアンタ達みたいにくっちゃべっちゃいなかったわよ」


頭を抱えて過去を思い出す翠璃に2人が言いがかりだよと物言いする。


「しかもほとんど経験もない恋愛話。よく飽きなかったわね」

「だって、修学旅行の夜は枕投げか恋バナって昔見たドラマでやってたわ」

「でも楽しかったよねー」


ねー、と橙子と蒼は微笑み合うが翠璃ははぁっとため息を漏らしてアッサムに口を付けた。


「私達もそんなだったわよ。初日はぐったりしてたけど、紅音が変にテンション上がって寝なかったし、その隣で真美子が日焼けで死にそうになってるの」

「アンタが早寝早起きすぎるのよ。私達が寝た時に起きてきて寝させなかったのはどこの誰よ」

「いい思い出ですわ」


真美子はふふっと笑って飲み終えたティーカップをソーサーに戻して銀トレーに置く。

翠璃も食べきったスイートポテトの乗っていたデザートプレートを同じように銀トレーに戻した。


「なら、私はお姉様と同じ部屋でお願いします」

「駄目よ。私は海外では真美子と離れないって決めたの」

「あら、ごめんなさいね智瑛莉さん」


紅音の腕に絡みついて真美子に笑顔を向けるがポーカーフェイスの紅音に断られガーンと文字が背後に見えるほどに落ち込む。


「私は蒼と2人部屋で」

「待ちなさい、蒼は私と同じ部屋!!」

「んー、私は陽菜乃さんがいいなぁ」

「残念ねあなた達」


こちらもまた本命の蒼に振られてしまった翠璃と橙子は落胆する。


「まあ、この話はちゃんと予定を立てた時にしましょうね」


真美子はそう言いながら目の前で落胆する翠璃の頭を撫でると翠璃は少し照れたように頷いた。

陽菜乃も空になった自分と紅音のティーセットとを手に取り銀トレーに戻した所でまたいつものように壁の振り子時計の時報の鐘がなる。

それまで楽しく会話をしていた少女たちもその鐘の音を聞けば少し名残朝そうに余っていたアッサムとスイートポテトを口にすると帰り支度を始める。

紅音も立ち上がるといつもよりも低い視界にややショックを受けた。


「紅音縮んだ?」


陽菜乃はいつもより頭の位置の低い紅音にわざとそう言ってぷぷぷと笑いをこらえる。

紅音はそんな陽菜乃をキッと睨みつけて黙らせた。


「まぁ、紅音さんったらやっぱりハグするのにちょうどいいですわぁ」

「あっ、橙子さんお姉様から離れてくださぃー!!」


後片付けをする陽菜乃と真美子をよそにそそくさと先に帰ろうとしたいつもより背の低い紅音は橙子に捕まり後ろからハグをされる。

それを見ていた智瑛莉は子嫌がる子供のように橙子の腕を掴んで引き剥がそうとする。

そんな2人に絡まれている紅音の表情はさらに不満に満ちていた。


「やっぱり紅音さん蒼と体変わらなーいっ」

「こら蒼、言葉を考えなさい」

「蒼さんまでぇ!?」


楽しそうにしていた橙子達に近づくと蒼も紅音に抱きついて天然かわざとか、嫌味とも取れるような発言をして翠璃に注意を食らう。

やっと橙子を引き剥がしたと思ったのに次は蒼が引っ付くとまた引き剥がそうとするが橙子よりも優しく扱った。


「あなた達いい加減にしなさい!!私は3年生で先輩なのよ!?こんなにいじっていいわけないでしょ!!」

「いじってなんかないですよーぅ。可愛がってるんですっ」

「変わんないわよ!!」


身長がそんなに変わらない蒼に頬を擦り寄せられて困ったように眉を下げる紅音は助けを求めるように給湯室に入っていった真美子と陽菜乃に目をやるが2人は全く気付かなかったようで諦めたように身を委ねた。


「ほら、蒼帰るわよ。今日はウチの店にジュエリーを見に行くんでしょ?」

「あ、そうだった忘れてた」

「そうだわ、早く行かないとお店閉まっちゃう」


翠璃の発言で紅音から離れる蒼は橙子とも一緒にご機嫌麗しゅうと別れの挨拶をして部室から出ていった。

変に体力を使った紅音は何度か深いため息をつくと私達も帰りましょうと少し怒った様子の智瑛莉に手を引かれ蒼達の後をおって出ていった。

騒がしかった部員達が帰っていくと一気に部室は静まり返り、それが面白かったのか陽菜乃はふっと笑った。


「本当に騒がしい子達よね」

「ふふっ、本当にね」


給湯室でティーセットを洗っている2人は微笑みあってあと片付けを済ませた。



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