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午後の紅茶にくちづけを  作者: ちょこみんと
ディンブラ・ティー
14/72

14

「蒼、聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」


新学期が始まり何もかもが新しくなって浮かれ気分だった生徒もそれが日常となると変に落ち着きをもって学校生活を送れる程に月日が流れた頃の晴れた日、いつもより早めに部室に着ていた紅音は同じく早めに来ていた蒼に緊張した面持ちで問いかける。

変に真剣な顔で自分に話しかける紅音に身構えながらも、なんでしょう?と笑顔で返事をする。

紅音は自分の定位置のソファーに腰掛けたまま足を組んで蒼に続けた。


「ありがとう。なら、単刀直入に聞くけれど」

「はい」

「…貴方、今年身長いくつだったの?」

「へ?」


赤いコスメで華やかに彩られた紅音の真面目な顔が素っ頓狂な質問投げかけるので蒼はぽかんとして間の抜けた声が漏れた。

変に真面目な顔をしていた自分とは対照的にま抜けた顔をする蒼に少し苛立ったように、どうなのよと追求する。


「んー、紅音さんの身長を教えてくださったら教えますわよ?」

「くっ…ぬかりないわね…」


部員の中で一二を争う程の低身長の2人は互いに譲らず、どう相手の情報を聞き出すか方法を頭の中で何度も考える。

蒼はジュンを抱きしめたまま大体の身長を推測されないように立ち上がらずにソファに身を鎮めて二っと紅音を見つめる。

2人で見つめあっているとごきげんようと橙子と翠璃がこちらも別のことで揉めながら部室に入ってきた。


「わ、私は…それほど低くないわよ。ほら、橙子と変わらないでしょ?」


紅音は立ち上がり言い争っている橙子の隣に駆け寄って背筋を伸ばし身長差を見せつける。

それでも5cm程背の高い橙子の隣で紅音は蒼に目をやる。


「へー、なら今日の靴は少し高めのヒールを履いてらっしゃるんですのね」


蒼は負けじと笑顔でかつ穏やかな口調で紅音に反撃する。

紅音は言われた通りのいつもより数センチ高いピンヒールのパンプスを隠すように橙子の後ろに隠れる。


「あら、紅音さん達も身体測定終わりましたの?」

「3年生はするのが遅いんですのね」


橙子は後ろに隠れる紅音にくすくすと微笑みかけており、その隣を翠璃が通り過ぎて学生鞄を置くと普段通りに蒼の隣に座る。


「そう言えば紅音さんの実際の身長ってどのくらいですの?」

「うるさいわね、いいじゃないいくらでも」


橙子は後ろを振り返り紅音を正面から抱きしめる。

いきなりのスキンシップに反射的に肩を押し返す。


「なんなのいきなり!?」

「んー、ハグをするならもう少し小さい方が収まりがいいですわ」

「失礼ね、私は先輩なのよ?」

「えぇ、とおっても可愛らしい先輩ですわぁ」


橙子が愛おしそうに抱きしめると紅音の鼻に橙子の緩く巻かれた髪の毛から漂う柑橘系のシャンプーの匂いが届いた。

こういう風に髪の毛を巻いてた男がいたなぁと紅音はふと思い出した。


「そう言えば紅音さんのその靴初めて見た気がします」

「あっ、確かにー。それで身長もってるんですよねー?」


バタバタ暴れる2人を翠璃が振り向き見慣れない紅音の靴に目がいった。

蒼は可愛らしい笑顔で紅音にむき出しの嫌味を言う。


「今日はこれの気分だっただけで、別に身長を誤魔化すためじゃないんだからね!!」

「紅音さん、そんなにちっちゃいのが嫌でございますか?」


橙子を振り払った紅音に翠璃は純粋に問いかけるが、ちっちゃいという単語が紅音と蒼は気に食わず同時に翠璃に目を向ける。


「なに翠璃、今バカにした?」

「え?そんなつもりはなかったのですが…言葉の選択ミスです」


てへっと形のいい唇から舌をチロっと出して誤魔化すように微笑む。

紅音はため息をつくと身長の話をするのを諦めてソファに大人しく座った。

橙子もそれに続いて蒼の隣のソファに腰掛けた。


「いいわよね、蒼は。背が低くてもそれで可愛い可愛いって可愛がられるんだから」


肘置きに肘をついてもたれては蒼を見つめてため息混じりに告げる。

本音なのか嫌味なのかを言われた蒼はムッと頬を膨らませ次の言葉を待つ。


「紅音さんだって、小柄で可愛らしいですわよ。蒼よりも大人びてて変に色っぽいと言うか…」

「それがやなのよ」

「え?」


橙子がフォローするための発言に対しての先程自分と子供の口喧嘩のように言い合っていた紅音の大人びた態度に蒼は背筋が伸びた。


「私は、蒼みたいに可愛くないのよ。目付きだって悪いし、見ての通り態度も悪ければ無駄に大人びて可愛げ無いの。…それなのにこんな子供みたいな体じゃ…格好がつかないでしょ?」


そう嘆く紅音は、同じ呆然としている顔をして正面に座る2年生3人に気づくとおかしく思いふっ、と笑いをこぼす。


「何よあなた達、同じ顔してるわよ」

「紅音さんがそこまで考えていたなんて…なんだか申し訳ません」

「私も…そんな気持ちも知らずに可愛いと言ってしまって…3年生ですのに…」


蒼と橙子は紅音の話を聞くと先程までの言動を申し訳なく思い、口々に謝罪をする。

紅音も謝罪されると変に気を使ってしまい気にしないでと返す。


「でも、背が高くたってそんなにいい事ないですわよ?」

「み、翠璃!?」


しかし翠璃だけは空気を読まずに紅音に意見を返し、橙子に止められるが、翠璃はお構い無しに続けた。


「女の子達と並ぶと頭1つ抜き出て目立つし、可愛い目のお洋服なんて好きだとしても着られないし、ヒールを履いちゃうと大体の男と身長変わらないかそれ以下だし…大変な事ばかりですわ」


先程の紅音のように自分の体について嘆きため息を漏らす。


「私からすれば紅音さんや蒼の方がよっぽど羨ましい体ですわ」

「酷いわ翠璃ちゃん。私たちの気も知らないでっ!!」


蒼は大人しく聞いていたかと思えば隣に座る座高の高さも違う翠璃に頬を膨らませ異議を唱える。


「たしかに、小さいから可愛がられるけどそれまでなのっ!!1人でお買い物とかしててもお店の人にお母さんはー?とかお嬢ちゃんとか子供扱いされるし、かっこいい服だって翠璃ちゃんみたいにスタイルが良く見えないからきれる服も限られるの!!」

「そうよ!体育の時1番前で前ならえする気持ちが貴方にわかるの!?しかも図書室だって1番上の棚には嫌がらせなのか手は届かないし、ちょっと人混みに混ざると完全に迷子になったりするの!!」


いつの間にか小さい2人と翠璃とで2対1の図が出来上がり、まさに呉越同舟になった紅音と蒼は顔を見合わせて互いに手を取りあった。


「紅音さん…!!わかります、蒼とても分かります!!」

「蒼…っ、私の理解者だわ!!」

「…え、何この状況」


翠璃よりも低くて蒼立ち寄りも身長の高い中間の位置にいる橙子はどっちつかずの反応を見せて苦笑いをする。

腕を組んで納得のいかない様子の翠璃だが、言い返すのもめんどくさく2人の様子を見ていた。


「やっぱり蒼の事をよく知ってるのは紅音さんでしたのね!!」


蒼はジュンをソファに放ったらかして自分の悩みに同じく共感して嬉しそうに紅音に抱きつこうと目を輝かせて両手を広げる。

紅音も立ち上がり同じく両手を広げて飛び込んでくる蒼を受け入れる。


「そうね、私の事をよく知るのも蒼だったのねっ」


感動的に抱き合う2人を翠璃と橙子は苦笑いで見ていた。

しばらく抱き合っていたが、蒼は抱きしめていた手で体型を確かめるように紅音の背中とくびれなどを撫でる。


「ちょ、蒼?」

「あ、でも紅音さん腰周り細い!!…羨ましい」

「そんなこと言ったら蒼だって太くないわよ」

「もー、蒼も細いねって言ってくださいよー」


先程までの険悪な雰囲気から一変して小動物のようにじゃれ合う紅音と蒼は本物の姉妹のように見えた。

そのままの雰囲気で笑顔の蒼は紅音の紺色のスカーフの辺りに両手を添えた。

蒼の小さな手に収まるほどの紅音のなだらかな膨らみの感触を確かめるうに指先を動かした。


「ちょ、ちょっと、蒼!?どこ触ってるの!?」

「まぁ、紅音さんったら可愛らしいこと…きゃっ!!」

「何よ蒼だって私と大して変わらないじゃない!!」


いきなり自分の胸を触られて大きさについて言及され驚く紅音は仕返しというように同じように蒼の水色のスカーフの上を雑に鷲掴み、言い返す。


「やだわ…紅音さんったら…」


しかし、蒼は紅音が想像していた通りの嫌がる素振りを見せる訳ではなく、あざとく頬を薄く染めるともっとと言わんばかりで誘うような色っぽい目付きで紅音を見つめた。

見たことない蒼の表情に面食らった紅音はスっと手を離して距離を置いた。


「ごめんなさい紅音さん、この子そういう所あるんです」


何かを察知した翠璃が蒼の手を引いてソファに座らせた。

その時には蒼の表情はいつも通りの幼い少女に戻っていた。


「紅音さん、蒼って天然なんですのよ」

「怖いわ。私…後輩が怖い」


橙子に肩を撫でられ宥められる紅音は蒼の天然で片付けられない言動にもはや恐怖を覚えた。


「あら、みんな早いのね」


その時陽菜乃と智瑛莉がお菓子が入ってるのか紙袋をもって部室に入ってきた。

陽菜乃の背後から部室を見渡し紅音を見つけた智瑛莉はすぐに紅音の元に駆け寄った。


「お姉様ぁ、会いとうございましたわぁ!!」

「ひぎゃあっ!!」


勢いよく智瑛莉が飛びついてきたのでふらつく体を支えようと後退りをすると、いつものチャンキーヒールにならば耐えられるはずの智瑛莉の勢いと重さに久しぶりのピンヒールが耐えられずに右足のピンからガリっと言う音と共にバランスを崩し後ろに倒れ込む。

バタンと大きな音がして2年生と陽菜乃が心配そうに様子を伺う。


「やだっ、お姉様…お怪我はありませんか?」

「え、えぇ…」


智瑛莉が後頭部にまで手を回して抱きしめたので頭には衝撃がなかったが背中を思いっきり強打した紅音は少し痛そうに顔を歪める。

心配そうに紅音を見下ろす智瑛莉は名残惜しそうだが体をいたわるようにゆっくりと紅音の体を起こして原因になった右足のピンヒールを脱がせると細いピンが根元から折れていてとても履けるものでは無くなっていた。


「派手にやったわね…そんなもんはいてるからよ」


折れたピンヒールに目をやる陽菜乃は呆れたようにため息をつくと体育の外履き持ってきてあげると部室からでていき、部室には紅音と後輩だけが残った。

陽菜乃がワゴンに置いたお菓子の紙袋に目をやる蒼と翠璃はそこから離れてアフタヌーンティーの準備に取り掛かった。


「こんなに危ない靴なんか履かれて…お姉様はもう少し自分の体を大切にすべきですわ」


智瑛莉は紅音の履いていた高いピンヒールに目をやりながら心配して危ないからもう片方を脱がそうとするが、紅音は制止する。


「う、うるさいわね!!私だって好きで履いてるわけじゃないの…っ」

「…なら、どうしてですの?」

「…教えない…。アンタには口が裂けても教えない」


思わず口にしてしまった言葉にハッと遅いが口元を隠して遮る。

智瑛莉は紅音の反応が気になり問いかけるも真面目に取り合ってくれない紅音に苛立ち、抱き起こした紅音をもう一度床に押し倒す。

天井を背景に智瑛莉を見上げることになった紅音は驚き不安になりながらも退きなさいよと強気にあたる。


「どうしてお姉様はいつも私を苦しめるんですか…?私、こんなにも紅音お姉様の事しか考えていないのに…」

「言いがかりはよして。私にだって色々あるの」

「私には…どうしても教えて下さいませんか…?」

「ええ。教えない…」


そこまでキッパリ言われると智瑛莉も悲しげな表情を浮かべる。

さすがにキツク言い過ぎたかと紅音は心配するが表にはそれを出さずに、とっととどきなさいと訴える。

しかし智瑛莉は退くどころか、紅音の顔を撫でて不敵に笑う。


「そうですか…なら、教えたくなるまで、ずぅっと体にお尋ねするまでですわ」

「はぁ?な、何考えてっ…やだっ!!」


不敵に笑った智瑛莉の表情に危険を感じた紅音はどうにか逃げ出そうと体を動かしたりと抵抗するがそれも虚しく智瑛莉に取り押さえられる。

智瑛莉の綺麗な顔が近づいてくるごとに長い髪の毛が垂れる。

髪の毛と智瑛莉を避けるように顔を背けたのが逆に好都合で顕になったえらと首筋に柔らかい唇を触れさせる。


「んっ、…ちょっ、と…あっぁ…」

「どうしました?…もしかして、感じてらして?」

「ばっか、あっ…ぃやだっ」


首筋に智瑛莉の髪の毛と唇、そこから微かに漏れる吐息のくすぐったさに妙な気持ちにされる。

左の首筋から制服を少しずらして鎖骨の辺りまでに唇と舌を這わせた。

両手を押さえつけられている紅音は顔を隠すことも出来ず下唇を噛み締めて漏れそうになる声を我慢する。

わざとらしく耳元で音を立てたり軽く歯を当てたりと色々試す智瑛莉は強情に口を割らない紅音に不満そうに視線を送る。

紅音は胸を深く上下させて呼吸をしながらキッと大きい瞳で智瑛莉を睨みつける。


「お姉様…強情ですのね」

「うるさい…退きなさい、今すぐ…」

「お姉様こそ…私は本気ですわよ」


真剣な表情で見つめる智瑛莉は先程から無意識に動いていた紅音の右足を撫でる。

オーバーニーソックスに包まれた膝から短いスカートの中に入りそうなきわどい所まで指を這わせると強がっていた紅音の顔にも焦りの色が見えた。


「やめなさいっ!!どこ触ってるの!?」

「…お姉様が好きな所です」


智瑛莉の軽く触れた指が側面からわざとらしくゆっくりと内ももを撫でていじらしくなぞる。


「ひっ…ぃ、やだ…!!だめっ」

「だめ?嘘ばっかり…本当にお姉様ったら嘘が下手ですわね」


小刻みに震える内ももを満足そうに見つめると真っ赤な顔で悔しそうに智瑛莉を睨みつける紅音の耳元で囁く。


「良いんですの…?正直にならないと、私このまま続けますよ?」

「やだっ、絶対…やだっ!!」

「なら、私に正直に話てくださいますか…?」


しばらく悩んだ末に紅音が何も言わずに悔しそうに頷くと嬉しそうにほっとした表情を浮かべる智瑛莉は紅音の上からゆっくりと退く。

涙目になりながらもまだ強気に智瑛莉を睨みつけていた紅音は左手で思いっきり智瑛莉の首を掴んだ。

いきなりの紅音の暴挙におどろく智瑛莉の動きは止まり真っ直ぐに見つめる。

寸分の狂いもなく智瑛莉の頸動脈を押さえてゆっくりと気管ごと締め付ける。

呼吸することが難しくなりつつある智瑛莉だが抵抗することなく酸素の少なくなってきている頭で紅音を見つめる。


「遊びがすぎるわよ。場所を考えろって言ったわよね?」


赤いグラデーションのネイルの施された紅音の指がどんどん智瑛莉の首にくい込んでいく。


「馬鹿な犬を躾するのは飼い主の仕事よね」

「お、ねぇ…っさま…っ」

「あまり私を見くびらないで」


苦しいはずの智瑛莉の顔には苦悶の表情ではなく笑顔が浮かべられうっすらと涙が溜まっている目で紅音をうっとりと見つめる。

紅音は先程の仕返しと言わんばかりに耳元で冷めた声を上げる。


「アンタなんかいつだって殺せるのよ」


限界まで締められていた智瑛莉の首を押し返して解放するとその場から離れる。

締められていた気管が一気に開かれて体に不足気味の酸素を取り入れるべく肩で息をする。

そんな智瑛莉をほっといていつものソファに腰掛けずっと見ていた橙子に目をやる。

見つめられた橙子はなにも見ていませんというように首を横に振るといつも通りのポーカーフェイスになっていた。






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