表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
午後の紅茶にくちづけを  作者: ちょこみんと
ディンブラ・ティー
12/72

12

「あー、もうブスったらいい加減にしなさいよ!!」

「はー?翠璃こそいい加減に負けを認めたらどうなのよ!!」

「あーもう、うーるーさーいー!」


雨が降る放課後、午後の紅茶部の少女7人はいつもの通り部室で紅茶とお菓子の用意をしていた。

締め切った窓に大きい雨粒が何度も音を立てて死んでいくようにぶつかり紅音のお気に入りのバルコニーは水浸しになっている。

地面と窓からする雨音さえもかき消すような橙子と翠璃の声に挟まれた蒼はぬいぐるみを抱えて仲裁に入る。


「今日もお2人は仲がいいことで、羨ましいですわ」


ティーセットの乗った銀トレーを持ってテーブルに運んでいた真美子がいつも通りの2人に微笑みながら声をかける。

そんな真美子の発言が気に食わず、誰がこんなやつなんかとまたお互いを貶し出す2人にチーズケーキを切り分けていた陽菜乃もうんざりしていた。


「智瑛莉さん、これ私が用意したのだけれどどうかしら?」


こちらも普段通りヘッドホンで音楽を聴いている紅音にベッタリとくっついて嬉しそうに顔を緩ませている智瑛莉に今日新しく持ってきた黄色のティーセットを目の前に並べる。


「わぁ、とても素敵ですわぁ。私なんかが使ってもよろしいのですか?」

「ええ、もちろんですわ。智瑛莉さんのためにご用意しましたの。気に入って頂けましたか?」

「ええ、とても!!ありがとうございます、真美子さん!!」


笑顔を浮かべ喜ぶ智瑛莉があまりにも可愛かったので真美子は思わず頭を撫でる。

頭を撫でられると智瑛莉もニコニコと笑顔を浮かべて受け入れるがそれを目の前で見せつけられている紅音は仏のような表情であった。


「で?今日はなんの喧嘩?」


切り分けたチーズケーキののったデザートプレートを真美子と同じくテーブルに並べている陽菜乃が睨み合っている橙子と翠璃に挟まれた辟易している蒼に問いかける。


「今日、2年生は身体測定がありましたの。それで身長と体重…私たち乙女にとってはナイーブなお話です」


ジュンと名付けられているうさぎのぬいぐるみをひしと抱きしめる蒼は仲裁を諦めてソファの背もたれに体を預けた。


「そうだ、橙子さん。ダイエットのために今日のチーズケーキ私があなたの分まで、頂いて差し上げますわ」

「あらやだ翠璃さんたら、食い意地が張って卑しい人ね」

「食い意地が張ってるですって?親切心で言ってるのよ!!」

「うるさいわね、大きなお世話よ!!」


そこまでの会話を聞く限りではお互いの体重の事で言い合っているらしいと他の部員も容易に想像出来た。


「そんなこと言うなら2人とも食べなくてよろしい」


陽菜乃は言い争っている橙子と翠璃のチーズケーキを取り上げて蒼と智瑛莉の前に並べる。

チーズケーキが2つになった蒼はやったぁと喜び、智瑛莉も喜ぶとお姉様ぁと甘い声で紅音に差し出す。


「ひ、陽菜乃さん!?そんな、無慈悲なぁ…!!」

「ちょっと、ご冗談ですわよね?」

「蒼どう思う?」

「んー、もう食べちゃおっかなぁ…?」

「「ごめんなさいい!!」」


余程チーズケーキを取り上げられるのが嫌だったようで、事前に打ち合わせをしたのではないのかと思うほど2人同時に頭を下げて謝る姿はほぼシンクロしていた。

ジュンを抱きしめる蒼も橙子と翠璃の謝罪を満足そうに見るとニッコリと笑って、いい加減にしてね?といつもと違う低い声で言い放って翠璃に皿を返却する。

それを見た智瑛莉と紅音も橙子にチーズケーキをスっと返却した。

橙子と翠璃はありがたくチーズケーキを受け取るがその顔は笑顔が浮かんでいるかと思えば青白くなっていた。


「じゃあ、そろそろいただきましょうか」


チーズケーキと紅茶を並べ終えた真美子がそう言うと皆がいっせいにきちんと自分の定位置について、いただきますと礼をすると注がれてふわりと湯気のたっている紅茶に手をつけた。

今日の紅茶は、陽菜乃が持ってきた世界三代銘茶にも名を連ねる中国の高級茶にも数えられるキームンだった。

薄い朱色の液体からは松や木蘭のようなスモーキーな香りが漂い、白いマグカップ内に艶やかな液体に金色の縁が完成して1口口にするするだけでまろやかな口当たりで足跡を残さない渋さを感じ、工夫紅茶と言われるだけあってとても丁寧に繊細に作られているのだなと勝手に想像出来てしまうほど深い味わいがした。

少し癖の強いキームンに少し顔を歪ませてミルクを入れる少女たちも何人かいた。


「キームンなんて久々に飲みましたわ」


真美子もストレートて1口飲んでそのあとはミルクを垂らしてミルクティーにしてしまう。


「そうなんだ。私も久々にこの香りを感じたくてね」


今日キームンを持ってきた陽菜乃は真美子の発言に満足そうに微笑むと、香りを楽しみながらストレートでキームンを飲む。

渋いものがダメな紅音もミルクティーにしたキームンに少しだけ口をつけてチーズケーキにフォークを突き刺して1口に切り分けて口に運ぶ。


「んー、チーズケーキ美味しいなぁ」

「スフレも美味しいわね。次はレアチーズケーキにしようかなぁ」

「えー、またチーズケーキ?そろそろ和菓子も食べたいわ」

「そんなんだから発育がよろしいのよ橙子さんったら」


フォークに刺したチーズケーキを口にしていた橙子は遠回しの翠璃の発言に苛立ちの色を見せる。

いつもならばすぐにお菓子を食べ終わる翠璃も今日は進みが遅く半分以上がプレートに残っていた。


「馬鹿ね、私は食べる分動いて消化するの」

「へぇ、その割には成果が見えておりませんこと」

「ぐっ…何よあんた、私の体を見た事あるって言うの?」

「は、はぁ?興味無いわよあんたのお粗末な体になんて」

「誰がお粗末よ!!あんただって無駄に豊満なだけでしょ?」

「別に無駄じゃないわよ!!」


また翠璃の発言から言い合いが始まる。

いつも止めに入る陽菜乃も諦めたようで自然に終わるのを待っている。

我関せずの様子でチーズケーキを食べている紅音にくっついていて止めるべきなのかとオロオロする智瑛莉。

熱が入ってきた言い争いをさすがに真美子が止めようと口を開いた途端に今まで黙っていた蒼がみんなで囲んでいたローテーブルに可愛がっているはずのジュンを思いっきり叩きつける。

ダンっと大きい音がするとそれまで言い争っていた2人だけでなく嘆きの息を漏らす声もしんっと静まり返り窓に打ち付けられる雨音だけになる。

突然の蒼の暴挙に同じソファに座っていた翠璃は驚いて戸惑いながらも蒼が次に何をしだすのかと見つめる。

蒼はジュンをテーブルにほったらかしたまま翠璃に顔を向け真っ直ぐに見据える。

見つめられて怯えたように何をされるか分からないので胸元に手を構える翠璃の肩を押してカウチソファに無理矢理押し倒す。

蒼は暴れださないように翠璃の太ももの辺りに乗っかり、構えていた両手を掴んで肘置きの方におさえつける。


「真美子さん、翠璃ちゃんの手を抑えておいてくださいませ」

「あ、蒼っ…やだ、何よいきなり」


押し倒されて嫌な予感しかしない翠璃は真美子に助けを求めるように視線を送る。

止めるべきか蒼の言う通りにするべきか迷いに迷った末に、ごめんなさいね…とそっと優しく蒼の抑えていた翠璃の手首に手を添える。

そして抵抗するすべがなくなった翠璃は自分の上に乗っている蒼に首を振ってやめてと懇願する。


「…いい加減にしてって、蒼言ったよね…?」


そんな翠璃の顔の横にバシッと勢いよく手をついてにいっと口角を上げていつも翠璃が橙子に向けるような冷笑を浮かべて見下ろす。

それを見ている翠璃以外の少女達も普段の蒼とは違う雰囲気に恐怖さえ感じた。


「翠璃ちゃん、蒼ね…」


ピリついた空気の中で蒼がいつも通りの明るく可愛らしい声で翠璃に声をかけると、押さえつけられている翠璃の耳元に顔を近づける。


「蒼…翠璃ちゃんが思ってるど、子供じゃないのよ?」


恐怖に怯える翠璃の耳元でそう囁くと腕をあげられて全開にされている翠璃の二の腕と脇、脇腹を指の腹でゆっくりと撫でる。

絶妙なくすぐったさがもどかしく撫でられる度にピクピクと体を震わせ、そんな自分を恥じるように強く目をつぶって背もたれ側にほんのり色付き出した顔を見られないように逸らす。

抑えていた翠璃の手は助けを求めているのか、くすぐったさに耐えているのか強く真美子の手を握りしめる。

異様な雰囲気の2人を止めるべきなのかさらに迷う真美子は出産に立ち会う人のように翠璃の手を握り返すことしか出来なかった。


「やだっ、蒼…っ、やめてよ…こんな所で…っ」

「蒼もさっき、やめてって言ったよね?」

「あっ、だめよ…そんなっ…」


怯えるような目をうるませて熱っぽい声と吐息を悔しそうに漏らし蒼を見上げる翠璃の頬から始まって首筋から鎖骨、下着の跡をなぞるように制服に包まれている翠璃の上半身を撫でている蒼の小さな手がくびれを確かめるようにウエストの辺りで止まる。


「いやっ、お願い蒼っ…あ、っひゃははは!!」


脇腹に手を置かれて何かに怯えるように小刻みに首を横に振る翠璃に満面の笑みを浮かべる蒼は両手の指を器用にバラバラに動かして脇腹を全力でくすぐり始めた。

くすぐりに弱いらしい敏感な翠璃はくすぐったさからげたげたと笑いながら蒼の手から逃れるようにソファの上で身をよじらせて暴れ出す。


「きやっ、ははは!!やっ、あっ蒼ごめっ、なさ…ぃ、っやめっひゃははっ!!」

「えーなぁに?翠璃ちゃん、聞こえなーい」

「ふひゃははっ!!やだぁ、ひゃはは、っごめんなさいっ!!」


大声で笑いながらドタバタ暴れる翠璃の足がテーブルに当たりそうになったので陽菜乃は危険を察知してティーセットやチーズケーキがこぼれないように中央に移動させた。

2人がじゃれあっている姿を見ていて面白いのかクスクス笑う部員に紛れて橙子だけが笑えておらず蒼にお仕置まがいのことをされている翠璃を見ていた。


「もうしない?約束する?」

「んっ、ぅん…っひゅふふっ、も、もぅしっ、しないっ…ふはははっ!!」


蒼は笑いすぎて涙目になって何度も頷いて答える翠璃に満足したらしく手を止めて膝の上から退くと酸欠気味で赤くなった顔を二の腕で隠して肩で息する翠璃を抱き起こす。

真美子も手を離して自分のソファに座り、複雑な気を紛らわすようにカップに口をつけて渋みの強い液体を流し込み現実味を取り戻す。

疲れたように肘置きに体を預けて乱れた息と制服を整える翠璃の頭を撫でる蒼は満面の笑みを浮かべて次の獲物を見る目で橙子の方を振り向く。

蒼に見つめられた橙子は思わず立ち上がって藁にもすがる思いで自分の正面に座りずっとこの光景を見ていた陽菜乃の背後に回って蒼から逃げようとする。


「どうしたの橙子ちゃん?なんで逃げるの?」

「ご、ごめんなさい蒼!!私、ただ、翠璃に付き合ってあげただけなの!!」

「えー?謝るってことはぁ…悪いことしたって自覚があるって事ぉ?」

「ひっ、陽菜乃さん!!助けてぇ!!」

「お願い私を巻き込まないで」


後輩2人に挟まれた陽菜乃は困却してため息を漏らす。

笑顔のままの蒼は距離を詰めて陽菜乃の背中にずっと隠れていた橙子の手をがっちりと掴む。

どんまい、と橙子の肩を叩いて自分の席に陽菜乃は戻って行った。


「あ、蒼っ…」

「んー?どうしたの?こっちおいでよー」


掴んだ橙子の手をやや強引に引っ張って紅音が座るソファの背もたれを両手で掴ませる。

座っていた紅音は嫌そうに眉を顰めるが、関わるとめんどくさいと思ったのか大人しくチーズケーキを食べていた。

智瑛莉は翠璃のことも見ていたので次は何が起きるのかと期待と不安の入り交じった目で紅音にくっついたまま橙子と蒼の行動を見ていた。

何をされるのか予想もできない橙子は不安から緊張気味で蒼の言うままに背もたれを握る力が強くなる。

恐ろしいほどの満面の笑みを浮かべる蒼は橙子の肩を抱いてゆっくりと背中を撫でて腰なのかおしりなのか中途半端な辺りを撫で回す。

プリーツスカート越しに臀裂に沿って浅い所から指をくい込ませる。


「な、何…?」

「昔はね…悪い子にはおしりを叩いて躾してたんだって」


ニヤッと笑い橙子の耳元でわざとらしく小声で囁き尾てい骨の辺りを叩く。


「きゃっ、やめてよ!!」

「あ、でも女の子のおしり叩くのって良くないよねー」


橙子は予想外の蒼の行為に思わず背もたれから手を離して自分のおしりをかばう。

蒼は勝手に手を離した橙子の手を掴むと強引に次は背もたれではなく背もたれ越しに紅音の首に腕を回させて後ろから抱きしめるようにさせる。

いきなり橙子に手を回された紅音は嫌そうにするが蒼の奇行が恐ろしく目をつぶって我慢する。

智瑛莉はその様子に少し不満そうにするが奇妙なことをしでかす蒼が今は怖くなにもせず大人しく見ていた。


「ダメでしょ橙子ちゃん。…蒼がいいって言うまで離しちゃダメだからね」

「っ、何するの…怖いよ蒼…」

「何って…楽しい事に決まってるでしょ…?」


楽しそうにニヤッと笑う蒼が翠璃と同じように怯える橙子にそう言うと背後にしゃがみこみ下から橙子の下半身を見つめる。


「ちょっと、橙子苦し…」

「申し訳ございません、紅音さっ、あっ!!」


しゃがみこんだ蒼は規定通りの長さのスカートから覗く橙子の左太ももの裏に爪を立てながら内ももをゆっくりと撫でる。

突然の刺激に橙子は思わず紅音を強く抱き締めて脚の内側を震わせる。

翠璃をくすぐったように橙子の太ももの内側にも同じことをすると、余程くすぐったいらしく立っていられないようで、律儀に抱きしめている紅音に縋り付く。


「蒼っ…ひぁッ…そんなとこ、だめっ」

「えー?蒼分かんなーい」


蒼は含ませた笑みを浮かべて橙子の左足を軽く持ち上げて茶色のローファーを無駄にゆっくりと脱がす。

そして蒼は片足立ちになり器用にバランスをとる橙子の左足の学校指定の黒いニーハイソックスをゆっくりと脱がせていって、徐々にあらわになる橙子の生足に息を吹きかける。

紅音の肩に身を預けている橙子は息を吹きかけられる度に小さな声を漏らして足をもじらせる。

蒼は橙子の素足を持ち上げて膝の裏から足の裏までゆっくりと人差し指を軽く這わせる。


「んふっ、やだくすぐったい」

「気持ち悪い声出すのはやめなさいよ」


蒼の指が橙子の前足部や中足部をわざとらしく撫でる度に、慣れていないくすぐったさに耐えるように体を揺らして声を漏らす。

しかし片足立ちの橙子がバランスを取った立ち続けるには紅音に重心を置くしかないのだが、不用意に橙子の吐息を近くで浴びる紅音も困ったように眉を下げる。


「橙子ちゃんの足って意外と綺麗だね。新発見だよー」

「もう、やめてっ…くすぐったいわっ…ん、ふふふっ…っんん」

「えーなぁに?もっと?」

「ち、ちがっ、うわ…っひゃ…も、もうしないからっ…ごめん、っなさい…!!」

「ホント?嘘じゃない…?」


足の指の間をわざとらしくなぞり震えながら紅音に縋るしかない橙子に笑顔で問いかける。

何度も頷く橙子は蒼の方に振り向けないのが必死に紅音に謝罪しているように見える。


「う、嘘じゃないっか、ら…ぅんん…っやめてよぉ」


そこまで橙子が言うと蒼も足をいじる手を止めて、脱がせた靴下を履かせて靴も足に添える。

蒼に掴まれていた足を絨毯の上に戻して自立させると橙子は紅音へ回していた手を解いてそのまま力をなくしたようにぺたりとその場に座り込み、蒼と同じ目線になる。

恥ずかしさか血行が良くなったからなのか耳まで真っ赤になった顔を両手で隠し顔を伏せる。

その様子に満足した蒼は橙子の頭を慰めるように軽くなでるとすぐに自分の席に戻って行った。

蒼に体をいじられた翠璃と橙子だけでなく変に巻き込まれた紅音の3人は疲れきったようにぐったりとしているが蒼はその反対に残していたチーズケーキとミルクティーにしたキームンをニコニコしながら口にしていた。


「姫宮蒼…恐ろしい人…」


先輩3人の疲れ果てた様子を目の当たりにした智瑛莉は畏怖の表情で蒼を見てぎゅうっと紅音の腕を握った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ