童話界には……。
この度は童話界には……。を読んでいただきありがとうございます。
これが童話かどうか聞かれたら、私自身は困ってしまいますが、きっと童話なのだと思います。
なんとも言えないんですが、きっと子ども読んだ時と大人が読んだ時、感じるものが違うはずです。正直最後の数文は蛇足かもしれない。けど、きっと私はこれが書きたかった。
まぁ、私初の短編です。読んでいただけるだけで幸いです。
童話界には……。
ここは逆さ虹の森。
みんなが仲良く……
なんてことはけしてありません。
「おい!図体ばかりでかいこのでくの坊が!」
「ごめんよぉ……」
暴れん坊のアライグマさんが怖がりのクマさんに怒鳴ります。
秋も深くなり、この森にももうじき冬がやってきます。
くまさんは冬を越すために冬眠を行います。
そのために今熊さんは一番ご飯を食べてしまいます。
そのことを今日もアライグマさんはクマさんに
「みんな知ってるんだぞ!お前はその凶暴なツメでキバで俺らをいつでも殺せてしまうことを!」
「それなのにいつもおっかなびっくりしやがって!」
「そうやっていつもいつでも俺らを騙してるってな!この真症のウソツキが!」
もうじき冬がやってきてしまうこの森ではみんな大忙しです。
冬には果物も、木の実も花も咲かない。冬はみんなにとって厳しい世界です。
コマドリさんの歌は聞こえない。また春になるまで暖かいところにいるから。
ヘビさんも食べ物を求めここより暖かい場所に移動してししまいました。
そして冬を越たび、冬が訪れる前にいつもアライグマさんはクマさんにあたってしまいます。
「じゃ、じゃあ。ドングリ池にお願いに行こう。冬が来なければきっとみんな幸せになれるんじゃないかな……」
「たまにはいいこというじゃねぇか!」
ドングリ池はとてもきれいな池でドングリを投げ込むとお願いをかなえてくれるという噂があります。
「あのいたずら好きのリスがドングリをたくさんため込んでるかもしれない!あいつにも協力してもらおう!」
「う、うん!」
クマさんとアライグマさんはリスさんの住む根っこ広場に向かいました。
根っこ広場では“ウソ”をついてしまうと根っこに絡まってしまうと言われています。
根っこ池広場の木のうろにいたずら好きのリスさんは住んでいます。
「おやおや。クマさん、アライグマさん。越冬の準備はお済ですか?」
「あ、こんにちはキツネさん」
キツネさんはこんにちはと返してくれた。
キツネさんはお人好しでそしてとても賢いです。
ヘビさんと並んでこの森ではこの2匹が賢いです。
「今から『冬が来ないようにしてください』ってお願いしに行くんだよ!お前も来るだろ?キツネ。」
キツネさんはお人好しなので付いて来てくれるとクマさんもアライグマさんも思っていました。
「この時期にそのお願いしに行くのはよくないかもしれません」
「え……。付いて来てくれないんですか?」
「はい今回は私は遠慮しておきます。お二人もやめておいたほうがいいかもしれませんよ?」
「けっ。クマ、こんなやつほっとこうぜ!」
「う、うん……」
アライグマさんはリスさんの住む木のうろに向かっていきました。
クマさんはキツネさんをチラチラと気にしながらアライグマさんについていきました。
きつねさんは忠告しましたからね。とさみしそうに告げて二匹を見送りました。
「おい!リス!リスはいるか!」
「なんですか。こんな忙しい時期に。」
「今からドングリ池にお願いしに行くんだよ。お前もついて来いよ!」
アライグマさんはリスさんを乱暴に誘います。
「そうですか。おふたりでいってください。僕はドングリを貯めて冬に備えないといけません。」
「その冬が来ないようにするんだよ。一緒に来ないか?」
「それはいいですね。冬が来なければこうやって備える必要もなくなりますね!」
「リスさんも付いて来てくれるんですか?ありがとう!」
クマさんは自分の大きさも忘れて、キツネさんの忠告も忘れて、何もかも忘れて刹那的にリスさんに抱き着こうとしました。
「やめるです。あぶない!」
「ごめんよ……」
「んじゃ。メンバーも集まったし行こうか!」
アライグマさんが陽気に言います。
「俺はほんとは行きたくないんだけどクマがどうしてもって言うからな!」
“ウソ”をついてしまったからアライグマさんは足をとられてこけてしまいます。
「くそ!取れない!」
力の強いクマさんはツタをツメで切ります。
「うん。どうしても行こう!」
「お、おう……。けっ。別に助けてなんて言ってないからな!」
リスさんはクマさんに自分の集めたドングリを渡しました。
ドングリ池に行くにはオンボロ橋を越えていく必要があります。
オンボロ橋で川を越えたらあとはもう少し歩くだけでドングリ池です。
3匹はずんずんと逆さ虹のかかる森を進んでいきます。
この森も冬が来る前はもっと賑わっていて、あちらこちらで動物の声が聞こえていました。
しかし今は、しん……。としています。
まるでこの世界には3匹以外いないかのように。
「静かだな。きっと冬が来なければもっとこの森はいつもお祭りのようににぎやかになる!これはきっとみんなにいいことなんだ!」
「うん。アライグマさんもリスさんも僕にいいことだ。ずっと冬が来ないようたくさんドングリをお供えしよう!」
「そうですね。冬の準備は何かと大変です。きっといいことなんだ」
3匹はオンボロ橋につきました。
「う、うー。僕が渡ると崩れそうで怖いです」
「そうだな。俺らが先にこう。行くぞ。リス」
アライグマさんが先行してそのあとをリスさんが行きます。
「いっつもこの橋を渡るたびにゆらしたくなるんですよ」
そういうといたずら好きのリスさんはオンボロ橋を揺らします。
「お、おい!やめろ。うわー!」
アライグマさんが落ちてしまいました。
「アライグマさーーん!」
クマさんはアライグマさんを追って、バチャン!と大きな音で川に飛び込みます。
「アライグマさん大丈夫?」
「げほげほ。大丈夫だ。こらー!リス!」
リスさんも橋の上から飛び降りました。
ぱちゃんと小さな音で飛び込みました。
「リスさん大丈夫?」
「あははは!なんだか楽しいね!」
リスさんは川から顔をあげると大きな声をあげて笑いました。
それにつられるように3匹して大きな声をあげて笑いました。
川から上がり対岸につきました。
「ご、ごめんよ。川に飛び込んで大事なドングリを落としちゃったよ……」
「別にいいさ。またみんなで拾おうぜ!」
「もとはと言えば私が悪いしね。みんなで拾おう」
「うん。ありがとう!みんなで拾えばきっとドングリ池までにたくさん集められるよね!」
3匹はドングリを拾いながら、ドングリ池に向かいます。
ドングリ池に3匹がつく頃には3匹の両手いっぱいにドングリを持っていました。
「これだけあればきっとずっと冬が来ないよね!」
「おう!そうだな!きっとこれでこの森はにぎやかになるぞ!今まで見たことのないドウブツも来るかもしれない!」
「やったね!きっともっとトモダチが増える。これは私たちだけじゃなくてみんなが幸せになれる!」
冬を越す必要がなくなることに喜ぶ3匹。
みんなが幸せになれればいいと3匹とも心から願っていました。
「じゃあみんなでお願いしよう!」
「「「冬が来ないようにしてください!!!」」」
3匹は両手いっぱいのドングリをドングリ池に投げ込みます。
ぽちゃぽちゃぽちゃとドングリが池に落ちていきます。
徐々に空気が暖かくなっていきます。まるで冬が飛んで春が来たように。
「やったドングリ池の噂はほんとだったんだ!」
「これでみんな幸せになれる!」
「やった!私らはきっと森の英雄だよ!」
3匹は大喜びです。
どんどん温かくなっていきます。
夏が来たようです。
どんどん熱くなっていき、越冬に備えた動物たちは急な環境の変化に耐えれなくなっていきました。
時間は流れて。
森の植生が変わってしまいました。
今まで森にはいなかった動物や虫などが森に訪れるようになりました。
これは決して3匹が望んだ未来ではないです。
しかし、ドングリ池は確かに願いを叶えてくれました。
冬が来ないように。
ここにはもう、歌上手のコマドリさんの歌声は響きません。
ここにはもう、食いしん坊のヘビさんのご飯を求める声は聞こえません。
ここにはもう、暴れん坊のアライグマさんの暴れる音はありません。
ここにはもう、お人好しのキツネさんの笑顔はありません。
ここにはもう、いたずら好きのリスさんがいたずらできる場所はありません。
ここはもう、喰われた動物の鳴き声が響きます。
ここはもう、強い生き物のえさを求める雄たけびしか聞こえません。
ここはもう、戦いの鈍い音しか響きません。
ここはもう、笑顔なんてありません。
ここはもう、いたずら何てかわいいものはありません。
ここにはもう、かつて怯えていたクマさんはいません。
ここはもう、生き抜くためにトモダチを食べてしまったクマさんしかいません。
ここはもう、穏やかな逆さ虹のかかる森ではなくなってしまったのですから。
この度は童話界には……。を読んでいただきありがとうございます。
あとがきですよ。あとがき!どうもこんにちはなつみんです。
いやあーなんか童話投稿のバナーあるな。ほぉーんこんな設定なんか。ほな、書いたろ。って思って書いてたんですよ。
それで応募要項を500文字くらい書いたところで見て、間に合わんやんけ!って気づいたわけですよ!
ただ、書ききらないのも気持ち悪いので書ききりました。
次何かに応募するときは応募要項を見て応募しようと思いました!マル。
そんな感じで完成した作品です。読んでいただけると幸いです。