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04_『ようこそ、選ばれた人間諸君!!』

お久しぶりです。間が空いちゃいましたね。

 ふと気が付くと、俺は見覚えのない白い世界に立っていた。


「ここは、どこだ……?」


 周りを見渡すが、何もない。どこまでも白一色の世界。あまりにも異質な空間だ。

 なぜ自分がこんな場所にいるのか、分からない。


「というか、俺は誰だ」


 落ち着け、きっと頭が混乱しているだけだ。

 誰一人いないこの世界で大きく深呼吸をし、冷静になろうとする。


「俺は、……俺の名前は、ていや、帝の夜と書いて、帝夜。じゃあ、苗字は?」


 思い出せない。

 とりあえず手掛かりになるものがないか、己自身の体を見る。校章が入った紺色のブレザー服を着ていた。ネクタイを緩め、カッターシャツの第一ボタンを外す。少し首元が楽になった。

 ブレザーやズボンのポケットの中を漁ってみるが、何も入っていない。内ポケットの中も探すが、やはりない。

 自身の服装から推察するに、高校生ぐらいだろう。


「誘拐されたのか、俺は」


 だとしたらここはどこなのだろうか。とてつもなく広く、空はどこまでも白い。絶対に地球ではない気がする。


「天国か」


 その割には天使や花畑もない。


「じゃあ地獄……って訳でもなさそうだしな」


 顎に手をやり、考えてみるが一向に答えは思い浮かんでこない。

 ただでさえ記憶がないというのに、手掛かりひとつもない状況。

 考えても仕方がない。

 ぐだーっと大地に寝転がってみることにした。


 と、次の瞬間。地面から金色の光が天に向かって伸び始めた。そして、一枚の小さな黒い布切れが顔に覆いかぶさる。


「なんだっ!?」


 思わず飛び上がり、布を取り払い、地面を見る。すると、あたり一面には大量のサークル、魔法陣らしきものが出現して光を放っていた。地平線の先までも。


 そして次々と魔法陣の上に出現する人々たち。

 老若男女問わず、様々な人種が現れる。程なくして、俺の視界は人だらけになった。


『ようこそ、選ばれた人間諸君!!』


 どこからともなく聞こえてくる、アニメ声。

 皆が一斉に声の主を探そうと首を動かすが、見つけられていない。


『そしておめでとう! 諸君らは別世界に転生する権利を得た希少な人間たちだ!』


 希少という割には、人が多すぎると思ったのは俺だけだろうか。

 様々な言語が飛び交い、ざわついたこの世界。そんな中、はっきりと鮮明に聞こえてくる謎のアニメ声。そして、転生というワード。


『で、どうする?』


 何を、だ。


『諸君らは転生する権利を得た訳だが』


『本当にそれを望むかい?』


 望まなければ、どうなるというのだ。


『それとも、――大人しく死を選ぶかい?』


 死。

背中がぞくっとした。


『あっ、違うか。君たちはすでに死んでいたんだっけ』


 言い終えるとアニメ声の姿見えぬ相手はクスクスと笑う。すると、地面のそれに合わせて地鳴りを上げ始めた。


『で、今の記憶を保ったまま、別世界に転生することを望むかい?』


 俺たちはすでに死んだ? じゃあやはりここは、死後の世界なのか。

 だが、なぜ死んだのだろうか。くそ、思い出せない。

 頭を抱えたい気分だ。


「うおっ!?」


 誰かが叫んだ。そちらへ振り向くと、ごつい男が光を上げながら消えていくのが見えた。


『さあ、諸君らも早く決めたまえ。心の中で決断するだけでいいからさ』


 そんな簡単に転生できてしまうのか。

 次々と人々が光を発して、転生していく。その光景を見ると、ただ綺麗だと思うだろう。ふわりふわりと光の粉が天に向かって飛んでいくのだ。それが何百、何千、いやそれ以上かもしれない。そんな中に、俺たちは立っているのだ。


「転生、か」 


 記憶がない。だから未練もない。だから正直なところ、俺は転生でも、そのまま死んでみるのもいいと思っている。

 どっちでもいいのだ。だから、声の主に委ねてみようかと。

 白かった空間は黄金の光に満ち溢れている。


「まるで天国だな」


 今はただ、心が穏やかだった。

 俺は一体どうなるのだろうな。ぼんやりと飛んでいく光を見上げ続けた。

 徐々に光は遠くへと離れていき、残っている人もいなくなる。

 そんな中、俺だけは一向に消える気配がなかった。さすがに焦りを感じ始めた。やっぱり自分で決めなければならないか。


 ならば俺は、このまま転生せずに死を受け入れよう。


 生きる目的もないのだ。記憶があればまた違ったのだろうが、今の俺は空っぽ。だから、このまま消えていい。

 俺は死を選ぶ。だというのに、なぜこの体は消えてくれないんだ?

 もう周りには誰もいない。静寂の中、残っているのは自分だけだ。

 いや、逆に考えれば、俺以外は全員、転生を選んだということではないだろうか。だから、死を選んだ俺は消えない。きっとそうに違いない。


『いいや、それは違う』


 アニメ声が聞こえた。静かになってようやく気付いた。これは、意識に直接語り掛けてきている。


『君には用があるから、最後まで残ってもらったんだ』


 大きく地面が揺れ始め、俺は体のバランスを崩して倒れた。

 一体何が起きているのか。超巨大地震とでも言うべき揺れが、しばらく続く。

 まさか、この世界が崩壊でもしているのだろうか。

 立ち上がって周りを確認したいが、未だ立つことさえ難しい。ついでに、体に重りでも乗ったかのよう、動きづらい。四つん這いでいるのが、やっとなくらいだ。

 腕と足の筋肉が重力に耐え切れず、俺はついに真っ白な地面へと張り付いた。

 そして次の瞬間、体が急に軽くなった。


「何が起こったんだよ……」


 ゆっくりと立ち上がり、少しよろめきながらも、俺は周りを見渡すと。

 俺の背後の奥、さらに遠い先、巨大な顔があった。


「なっ……!?」


 もう一度、言おう。振り返った先には、巨大な、視界に映りきらない程の、真っ白な女の子の顔があった。


『やあ♪』


 ソレは、アニメ声で俺に微笑み語り掛けてきたのだ。


もう少し転生時の話が続きます……。

そして、読んでくれてありがとうございます!


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