明日へ
僕は、緑豊かな土地を思い描いた。
「だから植物の事をもっと知らなくてはならない。私たちを生かしてくれるのは彼らだもの。私たちを守ってくれているのだから。だから、むやみに子孫を増やすことはしてはならないの。森に住む動物たちを追い詰めないよう。自然に生きる植物たちを守るのが、パースレインの人たちの役割なの」
アニスの話を目を閉じて聞いていると、最初に会った時に彼女が乗っていた馬車に違和感があった。
僕は思い出してくすっと笑った。
「そう言えば、君はどうしてあんな立派な馬車に乗っていたんだ?」
アニスが押し黙る。
「そうね。あなたの言う通りよ。パースレインにあんな馬車はない。あの時、私たちは生きることに必死で考えつかなかったけど、どうして馬車があったの?」
「それって重要な事?」
僕はけだるげに口だけ動かした。
アニスが優しく僕の頭を撫でてくれる。
「眠いのね?」
「君が隣にいるのに、眠いなんて」
彼女がそばにいることが僕を安心させた。
「君の体が温かいせいだ」
「私のせいなの?」
アニスが驚いたように言って、額にキスをした。
「あなた、今、とても重要な事を言ったのよ」
「え?」
立派な馬車があった。
誰か来客があったのだわ…。
アニスが呟いた。
それから、寝息を立てているジョーンズに身を寄せると自分も目を閉じた。
明日、考えよう。
思い出さなきゃいけないことがたくさんあるけれど、今夜はひとまずぐっすり眠りたい。
やらなきゃならないことがたくさんある。
ジョーンズと一緒ならなんでもできる気がするのだから不思議だ。
アニスは離れまいと、彼にしがみついた。




