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入れ替わり

作者: シャンプーinリンス

3作目の作品となります。

そこまで長い文章ではないので、ぜひ最後まで目を通していただけるとありがたいです。

その日、僕は友人と二人ドライブを楽しんでいた。

そんな帰り道のことだった。

行きは友人が運転していたので、帰りは僕が運転することになっていた。

僕は運転席にすわり、ハンドルを握っていた。

友人は疲れたのか、助手席で寝ている。

時刻はもう夕方ということもあり、夕日がきれいだった。

そんな時、ラジオから夕日に似合うスローテンポなメロディが流れてきた。


音楽を聴いていると一瞬ウトウトとしてしまった。

そしてその一瞬が命取りで、我に返った時には遅かった。

僕らの車の目の前にはトラックが迫り、僕はとっさに慌ててハンドルを切った。


目を覚ますと、目の前には見慣れない真っ白な天井があった。

僕は目の前に迫ったトラックを思い出し、そうか、ここは病院か。僕はあの時事故で、そうか運ばれてきたのかと思った。

僕が周りを見るために体を起こそうとすると、体が悲鳴を上げた。

僕は痛みに耐えられず、思わず声を上げてしまった。けれどそのことで看護師が僕の目が覚めたことに気が付いた。

「先生、○○さんが目を覚まされました。大丈夫ですか○○さん。わかりますか」

ときいてきた。僕は呼ばれた名前が自分の名前でないことに気が付いた。

それは僕の友人の名前で…




隣のベッドを見るとそこには僕が眠っていた。

どうやら僕は友人と肉体と精神が入れ替わってしまったようだった。

その後、医者が現れいろいろと質問を受け、検査された。

「僕は、○○じゃない。」

そう言ったけれど、事故のショックで少しおかしくなっていると思われただけだった。

友人の家族も来て、

「よかった目を覚まして本当によかった。」

といわれた。

僕たちは、入れ替わっているんだ。そうわかってほしかった。


その後、友人の体の僕は回復していった。リハビリも順調で、もう2週間もすれば退院できるらしい。

最初は、入れ替わっていることを受け入れられなかったが、次第と落ち着いて考えられるようになってきた。

僕の精神が友人の体にあるということは、僕の友人の精神はきっと僕の体にあるのだろう。

けれど、僕の体が目を覚ますことはなかった。

どうやら、あの時僕がとっさにハンドルを切ったことで友人の体は比較的軽傷で済んだらしい。ただ、皮肉なことにその中には自分自身がいるのだけれど…。

そして2週間がたち、僕は退院した。


僕は友人を助けるため、そして自分の体を取り戻すために行動することに決めた。

何にせよ、僕は再び精神が入れ替わる方法を見つけるか、最低でも僕自身の体を起こす方法を見つけなくちゃいけない。

そう思い、僕は人の精神やそれをつかさどる脳について調べることにした。

幸いにも、僕と友人は大学では理系に通っていたので、精神や脳について調べることや話を聞くことができた。

様々な話を聞きながら、僕はさらに知識を深めるためにひたすら勉強した。

そして、脳の研究を行う最先端の大学院に入り、必死に研究した。

しかし、人間の脳はまだまだ分からないことも多く、なかなか研究は発展しなかった。

その後も、大学院を出た後はそのままその大学の教授となり研究を続けた。

ただ、その後も僕はことあるごとに壁にぶつかり悩み苦しんだ。

そんな時に僕を支えてくれた女性がいた。

その女性は僕と同期で、同じように教授になった気の許せる相手だった。

僕らは互いの研究が行き詰まると、飲みに出かけたり二人で思案したりした。

僕はそんな彼女のことを好きになってしまっていた。

僕は研究をしなければならない、そして今の自分の体は友人のものだと思いながらもあふれる気持ちを抑えることができなかった。

ある日とうとう僕は彼女に告白し、思いを打ち明けた。

彼女は笑顔で

「うれしい。私も○○くんのこと好きだったよ。」

と返事をしてくれた。

僕は僕の名前ではなく友人の名前が彼女の口から出ることに罪悪感を感じたが、それ以上に彼女に思いが伝わったことに喜びを覚えていた。

その後も、僕は研究を続けた。

彼女とは結婚し、子供も生まれた。

そうして僕が過ごしている間も僕の体は目を覚まさなかった。

そして、事故の年から15年がたったころ、ついに僕は人の精神と対話する方法を見つけ、学会で発表した。

僕のこの研究は、論文を発表すると同時に、世界中に反響を呼んだ。

なぜなら、これで精神的なうつ病などの病気や植物人間の治療が一歩進むかもしれないからだった。

僕は、その年のノーベル賞を受賞し、世界中から称賛された。


そしてその後、理論を深め、ついに精神を入れ替える方法を編み出した。

これで、僕は僕の体に戻れる。そう思った。

そして、事故からちょうど16年のその日に試すことにした。


僕は病室で準備をしていた。機械をセットし、2人の体に電極をさし、あとはスイッチを押すだけという状態になった。

そんな時、僕はふと思った。

僕は僕の体に戻る意味があるのかと。

僕は友人の体を使いはしたが、自分の頭で今まで研究してきた。

自分自身が培ってきた地位や名声は自分の力で手に入れた。

それに僕には妻や子供もいる。

僕は本当に元の体に戻った方がいいのか…。

心の中に悪い僕が現れた。

いや、違う。戻る必要なんてない。

僕は僕自身の力でこれまでやってきたんだ。それをわざわざ失う必要なんてない。

そうだ、そうだよ、僕はなんてバカだったんだ。最初からそうすればよかったんだ。

僕の頭の中には、幸せなこれからの生活が浮かんでいた。

僕はこれから○○として人生を生きよう。そう思った。

こんなばからしい機械、片付けてしまおう。

そう思い機械に手を伸ばした時、僕は間違えてスイッチに触れてしまった。

きづいたときにはもう遅かった。

機械が稼働し始めた。

やめろ、違う、やめてくれ…。間違いだ、僕は戻りたくなんかないんだ。

そう僕は叫んだ。けれどその声もむなしく僕の視界は暗転し、倒れていた。


気が付くと僕は真っ暗闇の中にいた。

僕は自然とそこがどこか分かった。

ここは、僕の体自身の心の中だ。

そこは真っ暗で、広大な悪意が広がっていた。

自分さえ良ければいい、地位や名誉を手放したくない。そんな叫びが聞こえてきた。

僕はそんな悪意たちに腕や足から飲み込まれていった。

悪意は僕の体をどんどん黒くし、顔の方まで迫ってくる。

いやだ、消えたくない。死にたくない。

最後の一部が消える時、

「もし、僕があの時素直な気持ちで元に戻ろうと思っていたら…。」

最後にそう思ったが、それはもう後の祭りだった。


そして、朝になり看護師が病室を見に行ったとき、眠っている僕と、その横で倒れている教授を見つけた。

○○教授、○○教授しっかりしてください。

「うっ、ここは…。」

と教授は目を覚ましたのだった。

すると隣でピピーピピーという断続的な音が鳴りだし、看護師は慌てて医者を呼ぶ。

そして最後にピーという音がすると音がやんだ。

あとがき

読了ありがとうございました。

今回は、いわゆる体が入れかわる系の話を書かせていただきました。

最後の部分に、若干の後味の悪さというか、気味悪さを感じていただけると幸いです。


前作同様、今後のために一言でもよいので感想いただけるととても励みになります。

もしよろしければ、過去作にも目を通していただけるとありがたいです。

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