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1章 4 作戦内容は…

生徒会室を後にし、急ぎ足で教室へ戻ると、俺たちの結果報告を待っていたクラスメイト達に生徒会室でのいきさつを伝えた。


「くそ、じゃあ俺たちは女子の犬になりに蓬莱学園に来たってことかよ!」

「こんな横暴が認められるか!こうなったら徹底抗戦だ!」

「でもよ、そんなスゲー権力を持ってる相手にどうやって戦うんだよ?」


その声に教卓に立っていた悠斗が言う。

「そのための作戦はもう考えてある。その点は俺に任せてくれ」


「おお、流石悠斗だ!いざって時に頼りになるぜ!」

「『助平策士(エロリーダー』の二つ名は伊達じゃねえぜ!」

「じゃあ早くその作戦ってやつを教えてくれよ!」


「その前にまずは教室の近くで誰か盗聴していないかを確認する。無道、東、行ってきてくれるか」

「わかった」「おっけー」

俺と東は教室を出て向かい合う。


「じゃあ、僕は特別教室の方を見てくるから立花は他のクラスの教室の方をよろしく」

その提案に俺は少し眉を寄せる。


「手分けしてまわるより一緒に回ったほうが一人じゃ気づけないところも補えていいんじゃないか?」

「平気だって。この時間になんて僕達以外ほとんど生徒なんて残ってないし。それにあんまりみんなを待たせちゃ僕が怒られるかもしれないだろ」

「結局怒られるのが嫌なだけかよ。でもまあ確かに・・・」


廊下を見渡しても生徒の姿は見当たらない。物悲しい静寂に包まれた廊下に俺たちの声だけが反響し、溶けて消える。


「な?人一人いそうもないって。そんなの探すより悠斗の作戦の話し合いに時間を割こうぜ」

珍しく真っ当なことを言う東に俺も今回ばかりは賛同する。


「わかった。手分けして探そう。そしたら、俺が他クラスの方見てくるわ。誰も見てないからって手抜きすんじゃねえぞ」


「大丈夫だよ、任せとけって」


これほど大丈夫という言葉に信用を置けないのはこいつくらいじゃないだろうか。俺は不安を残しつつも東に背を向け他クラスの教室を回り始めた。


念のため一組まで回ったが、部活もないこの日は教室に残っている人影は無い。俺たち以外に学校に残っているのは生徒会のやつらくらいではないのだろうか。

俺は五組に戻ると東と合流し誰もいないことを報告した。





このとき生徒会室を出てからまだ十分程度しか経っておらず、向こうもまだ対策を練っている頃だろうと考え、新も油断していた。まあ例え油断していなかったとしても、彼女のこちらを観察する視線に気づくことはおそらくできなかっただろうが。


坂本楓は常に新を視ていた。皐月の情報では、標的の立花新は中学の頃、彼らのグループの中でも突発的な危険への回避能力、つまり奇襲の対応能力についても高いことが分かっていたため最初は索敵能力も高いのかと楓をもってしても最大限に警戒する必要がある人物かと考えていた。


しかし今までを見る限りそれは思い過ごしだったようだ――


『隠蔽』。


楓は気配を完全に殺すスキルを使ったまま、音もなく五組の教室内でまさに熱弁をふるまわんとする木田に耳を傾けた。



俺と東の報告が終わるのを見計らって悠斗が咳払いを一つして話し出す。


「よし、それじゃあ『聖域への侵入作戦』について説明する」


「名前つけたのかよ・・・」

「木田君さっきから意外とノリノリなんだよね・・・」


隣で矢部が言ったように壇上の悠斗は高校に入ってから一番生き生きしてるように見えた。


その姿は、昔俺とよくくだらないことを全力で取り組んで遊んだ幼いころの悠斗を彷彿とさせた。まあ昔からこういうイベントは好きだったからなあ。


ただ、こういう場面で悠斗が頼りになることも今まで一緒にいて散々思い知った。今回も今までのように何かすごい打開策があるのだろう。


俺だけでなく他のクラスメイトも悠斗に期待のまなざしを向ける。

悠斗はその視線に気づき、にやっと口の端を上げ、しゃべり始めた。


「まあ細かい説明は後にもするが、まず本作戦の一番の目標を教える。それは――生徒会メンバーの風呂を盗撮することだ」


おい、さっきまでの期待を返してくれ。




流石『助平策士(エロ―リーダー)』。こいつの作戦は優秀だが、そのほとんどに自分の欲望、つまりエロ要素を加えてくるのを忘れてたぜ。


「おい悠斗。ふざけるなら俺は帰るぞ」


周りが呆然とする中、まず俺が口を開く。

そうだ。悠斗は優秀なんだが基本はただのスケベだったことをすっかり失念していた。


悠斗はやれやれという感じで肩をすくめる。

「別にふざけてるわけじゃない。時間のない中でこれだけの権力的差があれば正攻法じゃなく邪道で行くことしかないことはお前も分かってるだろ」


「いや、だとしても何で覗きなんだよ・・・」

「そりゃお前、これが一番やる気出るだろ」


「結局お前が見てえだけじゃねえか!」


あっけらかんと答えた悠斗に俺は全力でツッコむ。

すると悠斗はチッチッチッ、と指を振る。


「俺が見たいんじゃない。俺たちが見たいんだ。そうだろ、みんな?」


「「「然り、然り、然りいいいいい!!」」」


「うぉっ!」


悠斗の問いに俺以外のほとんどのクラスメイトが呼応した。悠斗は征服王か何かかよ。


「せっかく女子校にきたんだからこういうシチュエーションもあるかなって期待してたんだが・・・。この瞬間を待っていたんだ!」

「現代の火影と言わしめられた俺の実力を発揮する時がとうとう来たようだね・・・」

「なんでもやるぜ悠斗!指示をくれ!」


教室の空気は途端に気温が数度上がったかのような熱気に包まれる。ていうか火影云々は隣から聞こえたぞ。東じゃねえか。


「声が廊下に漏れる。静まれ!」

速攻で静かになる教室。朝より統制がより洗練されているように見えるのは気のせいではないはず。


「わかったか新。つまりこういうことだ」

「いやそんな大真面目に言われても・・・」


「いいか。現状俺たちのできることはかなり限られている。そしてさっきあんな大見え斬ったんだ。向こうも俺たちが来週まで何もできないように警備を強化するなり監視をつけるなりしてくるだろう。ただ、現状まだ相手も完全には対策できていない。やるなら早いほうがいい。そして今日にでもできる方法として最も妥当なのが生徒会メンバーの入浴シーンを撮影して弱み、までいかなくても交渉のテーブルにつくための武器を作ることなんだ」


「前半真面目な話の分後半とのギャップがひどいぞ」

「じゃあ新。お前は他に有効な案を今すぐ提示できるのか?」


「いや、それは…」そこを突かれると痛い。

「だいたい、お前だって人生で一度くらいは覗きしてみたいだろ?」


「……」否定しきれない気持ちが確かに存在していた。いやだって俺も男ですもん。そりゃぶっちゃけ見れるならみたいっすよ。


その沈黙をイエスと受け取った悠斗は周りに確認する。

「よし、お前ら!改めてこの作戦に異存があるやつはいるか?」


異を唱える者はいなかった。…俺も含めて。

悠斗はにんまりと笑う。


「よし、それじゃ作戦の細かい中身を説明する。」


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