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cioce shake -クロックシェイク-  作者: 清木
上位争奪試験編
5/16

和領国と魔導軍隊

 


 リヴォルタが教室を去った後、入れ替わりで教師が一人入ってきた。黒ぶちの眼鏡を掛けた真面目そうな初老の男だ。どうにも、甘すぎる性格故かあらゆる生徒からなめられているらしい。

 今日もいつも通りに談笑を始める生徒が多数いた。それでも初老の教師は落ち着いた物腰で授業を進めていった。


「あの教師、怖いよなあ」


 ぽつりと涼也が呟いた。


「え? 一番怖くないじゃん。怒ったところなんか見たことないしさ」


 隣の席に座るレナンが首をかしげながら言葉を返す。涼也はひとつため息をはいてから、教師に目をやった。


「今、教卓の上のノートに何か書いただろ? 多分、騒がしい生徒とか不真面目な奴らがどんどん減点されてるんだ」

「う、嘘……!?」

「静かにしろ。あの教師、顔の感じからして出身国は俺と同じだと思う。だからわかるんだ。ああいう、いやらしいやり方」


 涼也は人差し指を唇に当て、レナンを落ち着かせる。騒がしい教室なので小声で喋る二人は教師から注目されることはなく、さらに涼也の唇をあまり動かさないで喋る技巧的な何かもまた一役かっているのかもしれない。


「涼也の出身国って和領国だったよね? いやらしいやり方って?」

「うちの国は忍ぶことを基本とした暗い感じの文化が主体でな。戦闘でもなんでも、あらゆるものを隠す。だからあの教師は感情を隠してる。でも減点はしっかりやってるんだろうよ」


 気づけない生徒はどんどん減点され、一学期の成績に絶望するだろう。そういう意味で涼也は怖いと言ったのだ。


「そっかあ、そういう意味じゃ素直に大声で叱りつけてぶん殴ってくるリヴォルタ教官の方が……いや、やっぱあの人の方が怖い」

「ああ、それは同意だ。あのひと怖すぎ」


 恐怖の象徴である教官様を思い、二人して肩を震わせる。それをちらりと見た教師がノートに何かを書き足していた姿を見て、しまったと、涼也はうなだれた。


 そうこうしてる間に、授業は終わりをむかえる。そして休憩時間、涼也は転校生アリス=クレイバーに集る男子生徒たちを眺めながら、次の授業の準備を進めていた。そこに朝の十時前から弁当箱を開き始めたレナンが涼也に言う。


「すごい人気だねえ。ああいう子がタイプなの?」

「いや、転校生もさ、なんとなく和領国の人間に似た面構えというか……うーん微妙なラインだな」

「でも本人は北の大陸出身だって言ってたじゃん。すっごい肌も白いし、まるで人形だね!」


 確かに、と言い捨てて、涼也はアリスの方を見るのをやめた。


「ところで、次の授業ってなんだっけ」

「次は幻素学。はあ、魔導実践の授業以外やる気おきねえ」

「相変わらず座学嫌いだねえ。軍の部隊編成とか絶対覚えてないでしょ?」

「なんだそれ……」


 なに言ってんだこいつという顔で涼也はレナンを見る。そんな涼也を見て、レナンは何処からか取り出した眼鏡を掛けた。インテリキャラを気取る時に愛用してるものだが、あまり似合わない上に中学時代には「おばあちゃんみたいな顔」とまで言われたが、彼女はその程度で揺るがない。眼鏡は現役である。


「よろしい。ならば説明します!」

「いいよ、どうせ理解できないから」


 余計なお世話だと切り捨てる涼也を無視して、レナンは勝手に説明に入る。


「まず! 魔導軍隊のトップは元帥らしいけどどんな人なのかは殆どの人が知らないね。その下に大将って呼ばれてる五人の各部隊を仕切る総隊長がいるの」

「総隊長ってあれか、リヴォルタ教官とかの階級か」

「そうそう、魔導部隊、機動部隊、武装部隊、医療部隊、技術部隊があって、リヴォルタ先生は魔導部隊の総隊長だね」

「そこまではわかるけどさ、そっから先をあんま覚えてないんだよ」


 なんだかんだ説明を受けている涼也は、レナンに先を促す。


「五つの部隊は各九つの分割された部隊を持ってるの。第一部隊が総隊長率いる最高位部隊ね。第二、第三と続いて、数字が増えるほど下の階級なの」

「第九部隊が一番下ってわけか」

「うん。それで分割された各部隊にも隊長はいて、その人たちが分割部隊長って言われてるの。それは総称だから、第三部隊長でも第七部隊長でも、分割部隊長って括りの中ね」

「……ふーん」

「はい、理解してないねー、理解してないでしょー? ってあ痛たたたた!」


 涼也は、馬鹿にしたように顔を近づけてくるレナンの鼻を思い切り捻ってから、教科書を開いた。


「ほら、もう次の授業始まるから大人しくしてろ」

「もー、暴力に逃げるなんて野蛮だよ」


 鼻をすすりながら涙目の少女は席に着いた。結局、涼也は階級などについて、理解が及ばなかったのであった。


 


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