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緋堂と綾子のティータイム


今日は休日だ。

私は庭で優雅なティータイムを過ごしていた。


「緋堂の淹れる紅茶は何よりも美味しいわ。」

「お嬢様に褒めて頂けるなら、私も練習した甲斐があります。」


私は「練習したの?」と半分笑いながらも驚いてみる。すると、緋堂は「勿論です」何だか誇らしげな表情を見せた。


「そういえば、緋堂って全然屋敷から出ないわよね。お休みの日は何をしているの?」

「殆ど1日ベッドの上で過ごすか、敷地内を散歩するか、料理をするか、勉強か…そうですねぇ、殆ど屋敷から出ません。」


私の問いかけに緋堂はニコリと笑いながら答える。

緋堂は住み込みで働いているので、屋敷の一角の部屋で生活をしている。

ここは職場でもあるし外を出歩きたいと普通ならば思うはずだけど…珍しいこともあるのね。


「たまには外出すべきよ。そうね、私の買い物に付き合うとかどう?」

「…デートのお誘いですか?」


緋堂の言葉に、私は紅茶を吹き出してしまいそうになる。


「デ、デ、デートじゃないわよ!」

「何だ、お嬢様とデートしたかったのに。」


緋堂はニヤリと笑いながら、からかうように言う。

どう見ても私の反応を楽しんでいるわ。


本当に、無駄にイケメンなのがムカつく。

そんな冗談だって似合ってしまうんだもの。


まぁ、私と出歩いたところで緋堂には何の感情も与えないでしょうね。

彼は私を小さな時から見ている、所詮は妹程度にしか思われていないんだから。


…て、なぜ私は残念がっているの!?

頭でもおかしくなったのかしら!?


「まあでも…そうですね。たまには外を出歩くのも悪くない。」


何故だか少し悲しそうな顔をしながらも緋堂はポツリと呟いた。

それが本音なのかどうか、私にはわからなかったけれど、彼と並んで外を歩く休日が来る日はそう遠くないだろう。


「そういえば、この前学校で雫たちと話したんだけれどね、"影楼"って闇組織があるらしいのよ。緋堂、知ってる?」


私が雑談のつもりで問いかけながら緋堂の顔を見ると、ぐしゃりと憎悪で顔を歪めた男がそこにいた。


私の知らない感情を露わにする緋堂は、先程と同じ人物なのかと思わせた。


「一体、なぜそんな話を?」

「あ…華京院の分家が襲われたって雫と雨香くんが…でも詳しくは分からなくて…緋堂は、良く知っているの?」


緋堂は瞬時に憎悪を隠し、いつもの穏やかな顔を作る。それが作り笑いなんだということはすぐにわかった。

そして「いいえ。」という緋堂の解答も絶対に嘘なのだということも。


だけれど、私には掘り下げて彼に聞くほどの勇気は少しもなくて…それから以前のお兄様の表情が思い浮かんだ。


あれはやはり、嘘で塗り固められた表情だ。

みんなが私に何かを隠してる…どうして??


私は、きっと何も一つ知らないんだと思い知らされた。


あぁ、恋愛小説なんだから一刻も早く恋愛をさせたい。

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