薫、それはいい匂い
俺は聞いたことがある。
クラス内にもてる奴は一人でいいと。
だが俺は考える。
もしここで北条という名の男と友達にならなければ、奴はおそらく5人組のグループに入ってしまうだろう、と俺の直感が告げていた。
しかし、奴の周りには群がる女子たちによって拒まれている。
女子たちは8人その中に俺が割り込むことは可能だろうか、そしてもし割り込み北条と話せたとしたとしてもそこから俺と友達になろうと言えるのか、いや言えないだろ。
そして無常にも2時間目の授業のチャイムが鳴る。
チャイムに釣られて北条に群がる女子共が席に戻りだす。
しかし、なぜこうなった。
女子に囲まれるのは俺の仕事じゃなかったのか・・・?
だが面白い、北条というライバルがあってこそ真の主人公は輝くのだ。
そしてまたしても何事もなく昼休みを迎える。
あれからの休み時間絶えず北条の周りには女子が群がり俺の会話の機会を奪っていた。
また一人、だが昼飯を一人で食べるということくらい慣れている。
この程度苦痛ではない。
弁当に手を付けかけた時に誰かに話しかけられる。
「また一人でご飯食べてるんだね」
この子は確か天気の事を話していた子だ。
えっと名前は・・・
「あーごめんね、決してねそのぼっちだねって言ってるんじゃないよ」
この女天然なのだろうか、ここでいちいちぼっちとかいう必要はあったのだろうか。
しかし、もてもてになるためにはこいつも俺に惚れさせなくてはならない。
「そうそう、まだ名前まだ知らなかったよね。私の名前は浜岡 薫っていうの」
「そうか、俺の名前は波風だ。波風 隼人」
「なんだか早そうな名前だね!」
ニコッと笑いながらそう言う。
そして俺はまたその天使のような笑顔に恋に落ちた。
「ありがとう、浜岡さんもいい匂いがしそうな名前だ、いやもういい匂いがしていたね」
彼女は笑いながらこう言った。
「あはは、波風君って変な人だね。だって普通真顔で全然仲もよくない人にいい匂いなんて言わないよ」
しまった、つい俺の妄想の言葉がでてしまった。
だが彼女がそこまで引いていないのが助かったか。
「浜岡さんは北条の所に行かなくていいのか?」
「なんで私が北条くんの所にいかなくちゃいけないの?」
これは意外な答えだった。
彼女はまったく北条に興味がないではないか。
この感じ行けるかもしれない。
分かったぜ。
この子は俺に惚れている。