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第五話 転校生 橘有里

新ヒロイン登場です。

どうか暖かい目で見てやってください。


第五話 世界物語論肯定派 03月17日 >>編集



 第五話 転校生 橘有里


翌日。


「今日からこのクラスで一緒に勉強するとこになった橘有里さんだ。みんな仲良くするように」

「橘有里です。よろしくお願い致します」


 なるほど。あのライオンが言っていたのはこのことか。

 なかなかに美人じゃないか。

 腰まで伸びている黒髪が美しい。

 いかにもお嬢様といった感じだ。


「じゃあ席は、藤原君の隣の席空いてるから」

「はい」


 そういって、真人の右隣、つまり俺の右斜め前に座ることになった。


「よ、よろしく」

「……」

「け、今朝のことはさ。事故っていうか。その……」

「いいわけですか。男らしくない方ですね」


 おっと。どうやら早くも何かしら接触があったらしい。

 どうやら、初っ端から有里は真人のことを嫌悪しているらしい。

 まったく、あんまり俺の仕事増やさないでほしいんだけど。俺が、茜の時にどれだけ苦労したと思ってんだよ。あのときは学校とお前ん家三往復したんだぞ。帰宅部にあんなハードなランニングやらせんじゃねえよ。体育以外で体は動かしたくない。

 まぁ、過ぎたことを愚痴っても仕方がない。


「じゃあ、今日の予定は特にないのでちょっと早いけど、朝会を終わります」


 そういってちょっと早めの休み時間になった。


「……」


 言うが早いか、有里は教室から出ていった。


「真人、お前……」

「い、いや、違うんだ、公太郎」

「まだ、何もいってねぇよ」

「……」

「真人」


 後ろから俺が、右隣から夕陽が真人を見ていた。いや、見つめていた。ジト目で。


「……」


 いや、前向きに考えよう。

 俺が橋渡しするまでもなく、二人は顔を合わせた。

 きっかけとしては最悪だけど、印象も最悪だけど。

 それでも、出会っているのならば、話は早い。話を聞いたわけではないけれど。

 まずは、真人は有里に何をしたのかを聞いてそこから、好感度を逆転させる策を巡らせ、こいつを主人公として有里に惚れてもらい、有里にはラブコメヒロインの三人目となってもらう。



「んで、お前は朝から何をしたんだ?」


 放課後さっそく、真人に詰め寄っていた。

 隣の夕陽は帰り支度をしているが、明らかに真人の話が気になっている。


「いや~、それが……」



 僕は朝から普通にいつも通り登校していたんだ。

 学校も近くなったとき、ちょうど僕の前でリムジンが止まってさ。

 そしたら後部座席から橘さんが出てきて。


「お嬢様。本当にここでよろしいのですか?」

「構いません。この辺ならば治安もいいでしょうし」

「さようでございますか。では、お気を付けていってらっしゃいませ」

「はい」


 そしてら、ありがちだと思うんだけど、風が吹いてね。

 その、見えちゃったんだよね。

 だから、その、黒い……

 ね。



「ほほぅ」


 なるほどなるほど。だいだいわかったけど、一言いいかな。

 そのハプニング、ありがちじゃねぇよ!

 俺は人生で一度もそんなこと起きたことねぇよ。

 何? パンチラってそんなにも頻繁に発生するものなの?

 この世のパンチラ率ってどれほどのものなのかな。ライオンに調べてもらおうかな。


「へ~。さぞ楽しい時間だったんでしょうね~」


 うぉおお。怖い。怖いよ。真人の右隣、夕陽の背景にありもしない文字が見える。

 ゴゴゴゴゴゴ

 そんな文字と音が!

 ありもしない文字と音が!


「変態!」


 そう言い残して、夕陽は教室を後にした。


「今日、雨音さんってバイトだっけ?」

「いや、今日は部活のはず。それが救いだよ。でも、なんであんなに怒ったんだろう」

「そりゃ、女子として、パンツ見られたら怒るだろ」

「でも、夕陽のパンツを見たわけじゃいんだよ?」


 そういうことを素で言っちゃうからお前はダメ主人公なんだよ。



 何はともあれ

 出会いの馴れ初めを知ることができた。

 これは大きい。真人が隠したがりな性格じゃなくてよかった。

 隠されると、俺の方から有里に接触しなければならない。

 それは危険度が高い。

 有里が俺に惚れてしまう可能性が出てしまうからだ。

 遅かれ早かれ、俺も有里とはつながりを持たなければならないだろうが、真人が居ない場所で有里とつながりを持つのは、今の段階では避けたかった。

 万難を廃してミッションを遂行する。

 そんなことを思いながらの帰り道。

 出会ってしまった。

自動販売器からカフェオレを取り出しているところにばったり遭遇。

いや、落ち着け。

別に第一印象から惚れられることはない。そんな一目惚れは少女漫画くらいだ。これはラブコメ。俺は脇役。読者からの人気投票で地味にいいところに付いているようなキャラである。

そのポジションを確立するために、俺の取るべき行動は……

無視!

それしかない。確かに今日からクラスメイトだが、まだ、一言も会話を交わしていない。

そんな相手に、下校中会って話すことがあるだろうか。いや、ない!

ここは無視が安定だ。そう思っていたら。


「ちょっと」


 呼び止められてしまった。

 この展開はマズイ。


「はい?」

「あなた。クラスメイトの藤峰君ですわよね?」

「そうだけど……」


しまったなぁ。名前を覚えられていたとは。


「クラスメイトとすれ違って、挨拶もないとはどういうことですの?」

「あ、はい。では、さようなら」


 そういってそそくさと去っていく。


「ちょっと、待ちなさい!」


 えぇ!?


「なんでしょう?」

「『さようなら』ではありません。せっかく私が声をかけてあげているというのに、なんですのその受け答えは!」


 挨拶したじゃん。なんなの? この女、日本語不自由なの?

 黒髪のお嬢様っていうのは、だいたい育ちが良かったりするのが相場だが……

 このわがままっぷりは金髪のドリル型を思い出すな。


「えぇと、俺にどうしろと」

「そ、それは……その…………み」

「み?」

「道を教えなさい!」


 ……

 明日からお前の髪型は金髪のドリルに決定な!



「んで、住所は?」

「聞いてないわ。私が迷うわけなどありませんもの」

「迷ってんじゃねぇか!」

「だから、困ってますのよ」


 まぁ、大体は真人の家の方面に向かっていけば、見知ってるところに行き着くだろう。


「ついてこい」

「え?」


 真人家、つまりはF&Cの方角に向かって歩き始めた。


「ちょ、ちょっと待ちなさい」


 気にしない。


「もぅ。なんですの」


 そんな声と共に有里はカシュと先ほど買っていたカフェオレを開けた。


「……マズいですわ」

「そりゃ、自動販売機のカフェオレって不味いものだから」

「ふ~ん。庶民はこんなものを飲んでいるのですね。嘆かわしいですわ」

「そもそも女子高生は自動販売機のカフェオレあんまり飲まねぇけど……」

「な……好きなものは好きなんですもの。しょうがないでしょう」

「そもそも、なんで自販のカフェオレなんて買ったんだよ。それこそ、それは庶民の飲み物なのに」

「な……なんだっていいでしょう!」


 なるほど、これはこれで何か理由がありそうだな。

 そのへんもおいおい紐解いていかないとなぁ

 それ以外の会話という会話はなく、F&Cまで到着した。


「んで? ここまで見覚えのあるところまできたか?」

「?」


 なんで、そこでキョトンとすんだよ!

 可愛いかもしれないけど、可愛いとは思わないからな。


「はぁ……まぁここは真人の家だからとりあえず、そこで対策を考えよう」

「真人?」

「お前の隣の席の藤原真人だよ」

「……」


 そんな露骨に嫌な顔しなくても……

 他に手が思いつかなかったんだからしょうがないじゃん。

 っていうのは建前で、もちろんここで有里と真人の関係が良かれ悪かれ築くかれれば俺も行動しやすいっていうのが本音だ。

 今日は夕陽達が部活でいないってことは真人が花屋か喫茶店のどちらかにいるということだ。

 とりあえず、喫茶店の方に入ることにした。

 すると、有里も後ろからついてきた。ここで俺とはぐれるとまずいと判断したのだろう。もちろん、俺も有里がその程度の判断ができると踏まえて何か話すことなく自分で行動していた。

 この手のキャラは自暴自棄になりやすいが、基本的に頭がいいから冷静なうちは正常な判断が下せる人間であることは予想できる。

 喫茶店には雄太さんしかいなかった。真人はどうやら今日は花屋側の手伝いをしているのか。


「おぉいらっしゃい。公太郎。んん? なんだ後ろのカワイ子ちゃんは~ 彼女か?」


 勘弁してくれ。


「違いますよ。今日北原高校に転向してきた。橘有里さんです。転向してきたばかりで下校途中道に迷ってしまったようでして。この辺で橘って家しりません?」

「タチバナ? う~ん。この辺にタチバナなんていたっけなぁ。漢字は?」

「柑橘の橘でタチバナです」

「う~ん。わからないなぁ。舞に聞いた方がいいかもしれん」

「そうですか。じゃあ隣行ってみます」

「あ、ちょっと待て、今舞出てってんだよ。今真人が店番やってる状態でよ」

「そうですか……一応、真人にも聞いてみようと思います」

「そうか? すまねぇな」

「いえ。では」


 そういって花屋の方へ向かった。有里も話は聞いていたようで、俺についてきた。


「よっ」

「あれ? 公太郎、どうしたの? !?」


 俺の後ろにいる人物に気づいたようだ。


「早い話道に迷ってしまったらしい」

「そ、そっか~。えっと橘さん? 住所とかは?」

「……」


 どうやら、真人とは口も聞きたくないらしい。


「……」


 ほら~。真人も有里の反応に困ってるじゃないか。


「あ、じゃあ連絡先とか」

「……」


 真人の声には無反応だったが、思いだしたようにカバンから一枚の紙切れを取り出した。

 そこにはだれかの携帯電話の番号らしき数字が羅列されていた。


「ちょ、お前連絡先持ってんじゃねぇか。それで連絡しろよ」

「スマホ持っていませんので」

「……」


 なるほど。そりゃ、無理だな。っていうかそのメモを渡した人間はこいつがケータイを持ってないことを知らなかったのか?

 それより、今こいつ俺の言葉には反応しやがった。いつまで、真人のこと嫌ってんだよ。むしろ意識しすぎでいい感じなんじゃねぇかって疑っちまうよ。

 そんなに簡単にことは進まないだろうけど。


「……じゃあ、俺のスマホでかけるよ」


 なんだ、この脱力感。

 俺仕事関係なく、こいつがどうやったら帰れるか考えてたのに。

 っていうか


「言えよ。連絡先があるってことくらい」

「わ、忘れてましたのよ」


 ははは、このおっちょこちょいめ~(怒)。


 

「はい。松井でございます」

「え? あれ? 松井?」

「あ、橘有里さまのご学友でございますか?」

「あ、はい」

「もしかして、有里様道に迷われました?」

「はい、そうです」

「そうですか……。迎えに行きますので、今いる場所を教えて頂けますか?」


 迎えに来てくれるとは。さすがはお嬢様。

 俺はF&Cという店にいることを伝え電話を切った。


「ここに、迎えにきてくれるってよ」

「そうですの」

「それまでコーヒーでも飲んで時間を潰すか」

「え?」

「ここにいても暇だろ? ここのカフェオレはうまいぜ?」

「……」

「うん。それがいいよ。ゆっくりしていって」

「……わかりましたわ」


 いかにも渋々といった感じで、有里はつぶやくように言った。



「おいしい」

「ははは、そうだろうそうだろう」


 自分の作ったカフェオレが褒められて、雄太さんはご機嫌だった。


「そりゃ、自動販売機のカフェオレよりはなぁ」

「ははは、そうだろうそうだろう」


 カフェオレを飲むことで多少は機嫌が直ったらしい。

 真人が今朝見たらしいリムジンがF&Cの前に到着した。

 有里の迎えが来たらしい。


「有里さま、お迎えに上がりました」

「ありがとう」

「ホントにお嬢様だったんだ~」

「お前、今朝このリムジン見たんじゃねぇのかよ」

「それは、そうなんだけどね……」

「でも、この辺じゃリムジンなんて珍しいからさ~」

「確かに」


 そんな会話をしていると、そそくさと有里はリムジンに乗り込んでいた。

 すると先ほどの電話の相手であろう老執事が会釈だけして、リムジンに乗り込んで、去っていった。

 って人には挨拶するように言っといて、自分は何も挨拶なにし帰るのかよ。


「あら?」


 リムジンと入れ替えに舞さんが帰ってきた。


「どうかしたの? さっきおっきい車が通ったけど。お客様?」

「えっと……」

「ちょっと話が長くなるかな~」


 説明は真人に任せることにして、俺はお暇することにした。



 次の日

 真人はバイトがあるからと言ってそそくさと帰り、俺は一人で下校していた。

 まぁ、帰ってもやることはないし、F&Cにでも寄っていくかと思い至ったそのとき。

 またしても有里と出会した。

 場所はこの間と同じ、自動販売機の前。

 ちなみにポーズも同じ、カフェオレを取り出しているところ。


「あ」

「あ」

「……」

「……」


 これ、また挨拶とかしなきゃいけない感じですか? そうですか……

 でも、学校でも取り立てて仲良くしていたわけではない。

 真人なんかは特に取りつく島もない。


「せっかく、お店にも来てくれたし仲良くしたいんだけどなぁ」


 と真人も言っていた。

 そういうところが主人公なんだよなぁ


「なぁ、橘」

「なんですの」

「今からF&Cに行くんだけど、一緒にいかね?」

「……」

「おいおい、別に下心なんてないって」

「……」


 おいおいそんな目で見つめんなよ。ホレちゃうぜ?(嘘)


「雄太さんの入れたカフェオレ飲みたくないのか?」


 行く理由を作ってやっているのに。


「……いきますわ」

「おぅ、じゃあ行くか」


 真人に会いに。あ、違った。カフェオレ飲みに。



 F&Cについた途端 異変に気がついた。

 それを異変と呼ぶには大したことではないが、今まで見た中で一番混み合っていた。


「おお」


 と一言驚きの声をあげてしまった。一年の頃からF&Cに通っていたから、大体一年くらい通っている。そりゃ、毎日通ったわけではないが、F&Cがこんなに混むなんて始めて見た。


「おぉ。公太郎、いらっしゃ……」

「すみませ~ん」

「は~い」


 雄太さんも忙しいらしい。

 席もカウンター二つが開いているだけで、テーブル席は全部埋まっていた。

 俺と有里も、カウンター席に座ることにした。


「ここっていつもこんなに混んでますの?」

「いや、俺の知る限り今日が初めてだ」

「でも、今日、こんなに混んだってことは、これからもこんなに混む可能性はあるってことですわよね?」

「それは、そうだけど」

「決めましたわ。私ここでアルバイトいたします」

「は? なんでまた」

「あなた掛け合いなさい」

「俺が!? なんで?」


 何考えてんだこいつ。俺がそんなめんどくさ……


「あなた、前来たときもそこのマスターと仲良く話していたではありませんの」

「はぁ、しょうがねぇな。分かったよ」


 くはないな。面倒は面倒だが、悪くない。

 むしろチャンスか。これで、真人に惚れてもらえば俺の今回の仕事は終わる。

 正確にはバランスが崩れないよう調整する仕事はあるが、山場はひとまず越える。まさにチャンスだった。


「とりあえず、今日は客が引くまで待ってろ。この状況じゃあ話すものも話せないだろう」

「いえ、この一杯で私は帰りますわ」

「は?」

「だからあなた、話しといてくださる?」

「え?」

「お願いしますわね」

「ちょ、ちょっと」


 そう言い残して、店を去って行った。

 って


「カフェオレ代も俺持ちかよ!」


 まったくどんだわがままお嬢様だ。何でもかんでも人に任せておけばいいと考えている。これは一回コントロールできたら楽なんだろうけど、この手の女子とは付き合いがなかったからなぁ。



 客が引いていくのに、夕方までかかった。

 今日は予定もないから別にいいけど、コーヒー一杯で時間を潰すのはさすがに無理があった。スマホをいじって何とか時間を潰した。

 途中真人の姿を探してみたが、どうやら花屋の方にいるらしい。今日もあっちはあっちで急がしそうだった。


「ふ~ やっと客がはけたぜ」

「お疲れさまです。雄太さん」

「おぅ。お前またあのお嬢様連れてきてたな。仲良いなぁおい」


 だから、勘弁してくれ


「それより、ここのバイト増やす予定とかないんですか?」

「え? 公太郎お前バイト入ってくれるのか」

「俺じゃなくて、俺の隣にいたお嬢様がバイトしたいって」

「あの子が?」

「良いじゃないですか。もっと華やかになりますよ?」

「てめぇ、舞がいて華やかじゃないって言いてぇのか?」

「めっそうもございません!」


 アンタ嫁さん好きすぎだろ。


「でも、今日みたいに、雨音さんや茜ちゃんがいないとき真人一人じゃ回らない場合があるじゃないですか」

「そうなんだよなぁ。よし、わかった。舞と相談してみるわ」

「お願いします」


 そういって俺も席を立って会計を済ませた。


「ちなみに、お嬢様のカフェオレ代って付けてもらえたりできる」

「許さん」


 デスヨネー……

 

 チーン



さて、新ヒロインどうでしたか?

気に入ってもらえたら、うれしいです。

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