その四 晁蓋、強くなる方法を説くのこと
宋江が呉用から奇妙な依頼を受けた翌朝、晁蓋と宋江は案内役の二名とともに出立し、五日目の昼過ぎに目的地である南沢村へと到着した。村には確たる入り口のようなものはないが明らかに人の手が入っている田畑と崩れた柵がわかりやすく内外の境界を示していた。
「おう、ここか。おい、ついたぞ宋江」
「え、ほ、ほんと?」
宋江は息も絶え絶えである。この五日間、彼は慣れない靴ででこぼこの道を歩き続け、疲労困憊であった。
初日に自分よりはるかに体力のある三人に無茶してついていったのが最初の間違いだった。その日の晩には足がパンパンにふくれあがり、かかとには靴擦れができるわ、足の裏にはまめができるわで大変なことになってしまった。二日目にそれらの痛みをかばった歩き方をしたのがさらに問題を大きくした。三日目にはもうまともに歩けないのは誰の目にも明らかとなり、四日目、つまり昨日などは荷物を他の人に持ってもらった上で肩をかしてもらいながら進んでいた。そこまでいくと歩くというよりメン・イン・ブラックにつれられたグレイのように連行されているという表現が正しい有様である。
「おら、後ちょっとなんだからきりきり歩け。それとも一昨日みたいにぶん投げられたいか」
一昨日。完全に疲れてもう歩けないと泣きついた宋江は晁蓋によって一時間ほど道に沿って20メートルほどずつ延々投げ続けられ、地面と平行に滑空するはめになった。歩かないから代わりに移動させてやったというのが晁蓋の言い分だったが、あの時ばかりは普段穏やかな宋江もこいついつか殺してやる、と本気で殺意を覚えたものである。
「わかったよ。後ちょっとだもんね」
村に入ると案内役の村人が一番大きい屋敷まで連れて行ってくれた。名主、つまり村長の家であるらしい。そこまでいく道すがら、村の人々が畑仕事をしながらちらちらとこちらを見ていた。話は伝わっているだろうが、特段話しかけてくる人間もいない。屋敷の前では何人かの男たち、晁蓋の村に来た男たちもいた、が並んで待っていた。
「ようこそ。お越しいただき、ありがとうございます。この村の長をやっております孫と申します」
真ん中にいたあごひげを生やした初老の老人が馬鹿丁寧に晁蓋に頭を下げた。
「なに、そんなにかしこまるな。山賊五十人ごとき、たいしたことじゃねぇさ」
「おお、噂に聞いたとおり、頼もしき方のようで何よりですじゃ」
「で、山賊ってのはどこにいるんだい?」
「はい、ここから十里ほど離れた山におります」
この時代の中国では一里はおよそ500メートル程になる。十里ということはおよそ5キロだ。
「ですが、お連れの方もお疲れのようですし、詳しいことは明日にするとして、とりあえずお休みになってください。夜になりましたら歓迎の宴をさせて頂きますので」
「あ、いやいいんだ。こいつは別にそのへんで野垂れ死にしても」
「ちょっとぉ!!」
残った力を振り絞って宋江は抗議の声を上げた。
「冗談だ。うるせえやつだな。じゃあ孫名主、お言葉に甘えてとりあえず休ませてもらおうか」
「ええ、それではお部屋に案内いたします」
「ああ、それと悪いが水を使わせてくれねぇか。体中ホコリだらけなもんでな」
「それでしたら裏手に河がありますのでご案内いたしましょう」
「おい、宋江。行こうぜ」
「あ、うん」
正直、今すぐにでも倒れこみたかったが、晁蓋の言葉で自分の体も汚れがひどいことに気づかされた。何せこの五日間ずっと野宿で旅をしていたのだ。他の三人はまだたまに休憩がてら足を洗ったりしていたようだが、歩く速度が遅かった宋江にはそういう贅沢は許されていなかったし、気力も無かった。
荷物を用意された部屋に置いてから村長は川へと案内してくれた。川は屋敷のすぐ裏手にあった。さらさらと清流が流れている。晁蓋の家では井戸で水を汲んでいたので、宋江にはこういう水源は新鮮だった。
「上流の方は飲み水につかっておりますので体を洗うときはなるべく下流でお願いいたします」
「あいよ」
「それではごゆるりと。私は失礼させていただきますので」
「おう、ありがとうな」
そう言って、さっさと降りていく晁蓋を横目に宋江はよろよろとびっこを引くように後に続いた。とにかく慎重に歩かないと足の裏のマメや靴ずれが激痛を引き起こすのである。先に行った晁蓋は下着まで脱いで全裸で水の中に突撃するように入っていく。
「かー、いいねー!」
そんな風に大声をあげてるさまは猛獣か何かのようにも思えた。
豪快だなぁ、と思いながらそこより少し上流で宋江は手ぬぐいを濡らすとゆっくりと体をこすっていった。
「うわ、どろどろ……」
少しこするだけで手ぬぐいが汚れる。相当ひどい生活を送ってたよなぁ、と思いながら顔や腕、足を順々に洗っていく。
「しかし、あれだなぁ、お前、もう少し体力つけなきゃな」
この五日間で耳たこになるくらい言われたことを全裸で川原に上がってきながら晁蓋がいう。
「前ぐらい隠したらどうなの?」
「あん? 気にするもんでもないだろ。じゃ、俺は行くぜー」
そう言いつつも、一応下着をはいてから晁蓋はまたさっさと川原からあがっていく。
(まるっきりカラスの行水だよな)
晁蓋のあまりの手早さにそう思いながらも見送る。おそらく水に浸かっていた時間は十分と無かっただろう。
「はあ、ついてくるんじゃなかった……」
この五日間、風呂はおろか、ろくに体も髪も洗わずに砂ぼこりの中を歩いてきたせいもあって、体のどこを拭いてもどろが剥がれ落ちてくる。油断すると川の冷たい水がいつの間にか全身にできた傷口にはいってずきずきと痛みを生じさせた。それに耐えて宋江は丹念にゆっくりと体を洗っていく。
(石鹸もないし、水洗いだけか。暖かいお風呂とか入りたい……)
試しに自分の体の匂いを嗅いでみる。少し汗臭い気がする。ちなみに風呂はこの世界では一月に一度、入るかどうか、という感覚らしい。体を洗うのは毎日行われるが温かいお湯に浸かるという習慣は無いようだった。
水だけなので限度はあるが一時間ほどそうやって体中を洗うとだいぶマシな状態になった。
(後はパンツどうしようか)
服は晁蓋のお古(十二歳ぐらいの時に着てたやつと言われてえらく微妙な気持ちになった)を着ていたが、下着については宋江は現代からもちこんだ、というか現代から来た時に履いていた自分のトランクスしか持っていない。晁蓋からは一枚やろうか、と言われたのだが、他の衣服ならともかく、たとえ洗っていたとしても、他人の使っていた下着を使うというのはやはり避けたかった。新品は街にいかなければ手に入らないというので、持っている下着はそれ一着である。毎日、寝る前に洗って干して、なんとか翌朝乾いたのを使うというありさまだった。
そのパターンから言えば、今日の夜までパンツを洗うのはなしだが、五日間、洗えていないので気持ち悪いどころの騒ぎではない。
(洗うか)
少し考えた後、今日の残りをノーパンで過ごす覚悟を決めて洗うため、パンツを脱いだ。
「あ……」
だが宋江は周りを確認するという大事な手順を忘れていた。だから自分の後ろに女の子がいるという事実にもそのか細い声が届くまで気づかぬままだった。
「Oh……」
なぜかやたらとグローバルな呟きと共に振り向く。そこに少女がいた。背は低い。自分のいたところの基準で言えばまだ小学生くらいではなかろうか。顔もそれ相応に幼かった。肩甲骨のあたりまでのばされているらしい黒髪がふわりと風にたなびいている。飾り気のない服を着ていて3センチほどの太めの幅の帯をヘアバンドのようにして頭に巻いていた。
「す、すいません。私見てませんから!」
「あ、あの、ご、ごめんっていうか! 違うんだ、これは!」
ぬぎかけの状態であせったのがさらに良くなかった。バランスを崩した宋江はそのまま、川の中に倒れていく。
「ぎゃーっ!!」
川はそれほど深くない。川底の小石にしたたかに全身をうちつけ、冷水と石に傷をえぐられた宋江の哀れな悲鳴が響いた。
「本当、何から何までごめんね」
なんだかこっちにきてから謝ってばかりの気がする。宋江はそんなことを考えながら少女に背を向けてトランクスをしぼった。無論それをはいてないだけで他の衣服はきちんと着ている。
「い、いえ、気になさらないでください」
少女がどんな顔をしているのかはわからないが、声の調子からすると幸いそんなに怒っていないようだった。
あの後……川に落ちた宋江はなんとか、自力で川岸まで戻ると服を着た。今ようやく服を着ていたので後ろに向いてもらっていた彼女に水場を交代したところである。
本来であれば恥ずかしいので一刻も早く、ここから離れたかったのだが、宋江にはその前に気になることがあった。それが少女が持ってきた水桶である。少女は二つの水桶がつながった天秤棒を二本持ってきていた。つまり合計で四つの桶を持ってきている。一つ一つの水桶は優に5リットルは水が入りそうな大きさである。満杯にしていくとすれば彼女はそんな重いものをどうやって持っていくつもりなのだろう。
少女はそれ以上は何も言わず、宋江がいた場所から上流の地点、さきほど村長が飲み水につかうといっていたあたりだ、で水を汲んだ。水汲みそれ自体は、すぐに終わった。が、問題はそこからである。仮に20リットルの水とすれば彼女は20キロの重量をかついでいるのだ。おけの重さもあるから実際にはそれ以上である。下手をすると彼女自身の体重よりも重いその水桶をふらふらと危なっかしげに運んでいる。体中が痛いとはいえ、これを見て見ぬふりをするのは少々気分が悪かった。
「手伝うよ」
近づいて手を差し出す。
「え、でも……」
少女は理由はわからないが、拒む様子を見せた。遠慮かと思ったがひょっとしたら警戒されているのかもしれない。何せ、そんなことは意図していなかったとはいえ、自分の目の前で全裸になっていた男である。まあいいか、別に感謝がほしいわけではない、と割りきって宋江はやや強引に一つ目の天秤棒を奪うようにして持ち上げた。
(重っ!?)
桶は予想していたよりずっと重たかった。この子、こんなの持っていくつもりだったのか? 天秤棒の先に下がる桶も合わせて重さは15キロは下らないだろう。
「だ、大丈夫ですか?」
思わず顔に驚きと苦痛が出てしまったのだろう。少女が心配そうに尋ねてきた。
「だ、大丈夫、大丈夫」
無理に笑ってどうにか天秤棒を安定させる。
「さ、もう一つも持つよ」
「い、いえ。一つ持っていただければ十分ですから」
少女がそういうので宋江も引き下がった。情けないことに正直助かったとも思ったが。
「すいません、ありがとうございます。あの……ひょっとして貴方様が晁蓋様ですか?」
「え? ああ、そうか聞いてるんだね。ううん、僕は、まあ晁蓋のおまけかな。えっと宋江っていうんだ、よろしくね」
「あ、わたし郭清といいます」
「郭清はこの村の人なの? この水汲みはおうちの手伝い?」
「あ、いえ、私、家族を五年前に流行病でなくしてしまいまして……」
「あ、ご、ごめん」
何気ない話題をふったつもりだったがいきなり地雷をふみぬいてしまった。
「き、気になさらないでください。今は名主さんのお家で養ってもらってるんです」
「あ、そうなんだ。それでこうして手伝いしているんだ。偉いね。僕も見習わないと」
「宋江さんも晁蓋さんの家で働いているのですか」
「ま、まあそんなもんかな」
まさか、この話の流れで居候とは言えずにそう曖昧に言葉を濁す。
「あの、ところで晁蓋さんは今どちらに……」
「ん? 多分、部屋に戻っていると思うけど? どうかしたの?」
「はい、あの……」
郭清がそう言いかけた時だ。
「郭清!! いつまで仕事さぼってんだい!!」
川原からあがっていく坂の上、そこに目のつり上がった中年の女性が仁王立ちで待ち構えていた。先ほど晁蓋と自分を迎えた一団の中にいた人間だ。推測するに村長の妻だろう。その怒気に唖然とした宋江に構わず、村長の妻は吠えた。
「ぐずな子だね、水汲むのにどんだけ時間かかってるんだい!」
「ご、ごめんなさい!」
「ああ、すいません。僕がちょっと川を占領してたものだから少し時間をとらせちゃったんですよ。ごめんね、郭清も」
「い、いえ、そんな」
自分が原因で起こったことと知って、宋江は慌てて、二人に謝った。ちらりと中年女性を見るとどうやら矛先を収めてくれるらしい。おまけとはいえ、村を助けるためにやってきた晁蓋の一味だからだろうか。
「まあ、こちらの方がそう言うなら、今回は許してあげるよ、郭清。でもね、あんたがぐずぐずしてるのは今日だけに限ったことじゃないんだよ! いつもいつも!」
……というのは宋江の早とちりだった。宋江のいる前でこの女性はなおも郭清にがみがみと言いつのるつもりらしい。
だが、言うまでもなくあんなに重たい水を持たせてるなら時間がかかって当然だし、そもそもこんな小さな子にその仕事をおしつけるのはどうかと思った。思ったが、宋江にはこの場でそれを糾弾するような勇気は持ちあわせていなかった。
「すみません、すみません」
郭清はぺこぺこと必死に頭を下げていた。
「ろくに仕事もしないくせに食べる量だけは一人前なんて本当、とんでもない子だよ、全く」
「………」
そうイヤミを言うと村長の妻に対して郭清は何も言わず、黙りこくるだけだ。だが、それが却って彼女をいらつかせたのだろう。
「なんとか言ったらどうだい!」
村長の妻は突如腕を振り上げて郭清の頬に向かって平手打ちを打った。腕を振り上げた時点で郭清も気づいたのだろう。だが、彼女にできることはびくりと身をすくませることだけだった。避けたり防いだりすればもっとひどい目に合うことがわかっていたからだ。パン! と音がその場に鳴り響く。だが、その音の発生点は郭清の頬ではなくそこから少し離れた場所に差し出された宋江と女性の手の衝突からだった。
「………」
「いや、暴力はやっぱよくないじゃないですか、はは……」
じろりと睨む女性に、宋江はごまかすような薄ら笑いを浮かべた。
「お客人とはいえ、人のうちの事情にあまり手を突っ込まないでほしいんだけどね」
「すいません」
「ふん……まあいいさ。郭清、何ぼさっとしてるんだい! とっとと運びな! あんたが来ないと夕飯の支度ができないんだよ!」
「は、はい!」
そう怒鳴ると郭清は少し、脚を速めて前へと進んでいく。それに続いて村長の妻が、最後に複雑な顔をした宋江が続いた。
「……ってことがあったんだけど」
「へー」
部屋に帰ると晁蓋はどこから手にいれてきたのか酒を片手に寝台に寝そべっていた。
「それだけ?」
「他に何言えってんだよ。まさか、だから山賊退治をやめようとかか」
くびりと酒を飲む晁蓋は淡々としていた。
「そうは言わないけどさ……」
「そもそもがお前が勝手に関わった話だろうが、俺には関係ないぜ」
「うーん」
言われてみればその通りである。
「まあ、確かに見てて気持ちのいいもんじゃあ無かったろな」
「うんうん」
同意が得られてうれしくなった宋江に晁蓋はとんでもないことを言い出した。
「じゃあ、さっさとその女をぶっ飛ばしたらよかったんだよ」
「……それ、あまりにも乱暴じゃない?」
「かもな。けど自分が嫌な気持ちになるよりはずっとその方がいいさ」
「自分本位過ぎない? そんなことしてたら皆から嫌われちゃうよ」
「あのな、宋江」
むくりと晁蓋は体を起こすと寝台の上に座った。
「な、なに?」
「お前ももう十六なら俺もとやかく言うのは余計なお世話だろうがな、一つだけ言っておく。そういう時にな、我慢するな」
宋江は言われた意味がわからず、一瞬沈黙した。小さい頃から、人並み程度には我慢をしなさい、我慢は大切だと教えられた彼にとってみれば晁蓋の言葉は瞬時に理解できなかった。
「我慢しちゃだめなの?」
「だめだな」
「どうして?」
「弱くなるからだ」
「……逆じゃないの? 晁蓋みたいに強かったら我慢しなくていいんじゃないの」
「違う。強いから我慢しないんじゃない。我慢しない奴が強くなるんだ。勘違いする奴が多いが我慢するのは強いことの証明じゃない。弱いことの証明なんだよ」
宋江はこんなによくしゃべる晁蓋を見るのは初めてだった。
「この村の奴らが山賊に耐えてるのはどうしてだ? 弱いからだろう。そして我慢できないから俺を呼んで村の戦力を強くしたんだ。違うか?」
「それは……そうとも言えるかもしれないけど……でもやっぱり強くなきゃ我慢しないっていう選択はできないんじゃないの?」
あごを掻きながら宋江は反論を試みる。
「馬鹿だな、だから我慢しちゃいけないんだろうが。我慢しないで他人とぶつかりゃ、どうしたって強くならなきゃいけないだろうが。だから、相手より自分がちょっとでも有利だと思ったら我慢しないで強気で行ってみろ。お前の今日の相手なんて中年女一人じゃねえか」
「む、無茶苦茶だよ」
「あくまでそう言うなら、もう俺も言わねえよ。俺の余計なお世話だろうしな。けどな、我慢するってのはな、癖になるぜ。さらに手におえないのがそれが悪いことだって中々気づかねぇ。ああなった奴らの人生は悲惨だぜ。俺は我慢しているのが偉いことだと勘違いしている連中を何人も見てきたよ」
「………」
宋江には晁蓋の言うことに素直に受け入れていいのかどうかよくわからなかった。確かに晁蓋のいうことは正しいのかもしれない。ニュアンスはだいぶ違うが必要は発明の母だと言うことだろうか。便利になりたいという願望から発明が生まれるように、我慢したくないという気持ちから強さが生まれる。でも、だからといって自分勝手・好き勝手に振る舞っていいものなのだろうか。
「晁蓋様」
宋江が考えにふけっていると部屋の外から声がかかった。見上げると村の人たちが棒のようなものをもっている。
「どうした?」
「いえ、せっかく武術の達人と名高い、晁蓋様が来てくださっているのですから明日の戦に備えて一手ご指南頂きたいという人間がおりまして、お疲れのところ申し訳ないのですがお付き合い頂けないでしょうか」
「おう、別にかまわねぇぜ」
晁蓋は寝台から飛び上がるように跳ね起きると部屋の外に向かっていく。
「お前はどうする?」
「ん。少し休んでいるよ」
「そうだな、明日は槍担いで山に登るしな。寝とけ」
「本当にやるの、それ」
げんなりしながら宋江は口を尖らせたが、既に晁蓋の姿は消えていた。
はあ、と溜息をつく。とりあえず寝よう、と思った。あの小さな女の子の事も結局のところ、自分には荷が勝ちすぎている。
用意された寝台に潜り込むと、冗談のような速度で宋江は眠りについた。
ようやく、宋江が主人公らしいことをしてくれるようになりました。