その八 楊志、濮州軍と合流するのこと
そもそもが気の進む話では無かった。だが、軍人はその行動の是非など一々、上官に問わない。それがこの国の軍人の基本的なあり方であったし、楊志の考えでもあった。
楊志は軍人の家系に生まれた。先祖をさかのぼれば、この国の建国の功労者として名を馳せる軍人であり、ごくごく当然のように女子であった彼女も軍人の道筋を選んだ。
若い女性でありながら周りの軍人と比べても優秀であったと自負している。それは家柄もさることながら若い頃から父に受けてきた教育のおかげだった。三つの赤子に剣を握らせ、五つの娘に孫子を読ませる父の教育方針は軍人の家系と言うことを差し引いてもかなり特殊であったが、注いだ時間の見返りは確かにあった。
そんな順調な彼女の人生は一年前に唐突に終わりを告げた。重要な任務に失敗したのである。いや、あれを重要といっていいものか、疑問に思うところもあるがとにかく少なくとも一部の人間は重要と考えていた任務に失敗した。
その任務とは花石鋼の運搬だった。花石鋼とは簡単に言ってしまえば珍しい形をした石のことである。今の徽宗皇帝はこの石が大変にお気に入りでで各地から集めさせては広大な庭に飾っていた。楊志の任務はそれを産地である江南地方から首都である開封府に運ぶことだった。
運が無かった、といえばそれまでだった。長江で突然の嵐に見舞われ、自分は命からがらなんと助かったが、積荷である花石鋼は全て水中へと沈んだ。
そして自分は任務、それも皇帝の勅命に失敗したものとして、罰を受けることになった。地方への左遷と一兵卒への格下げである。開封府を離れる日、一族の人間は誰も見送りに来なかった。
幸運だったのは送られた先の北京大名府の知府が自分の境遇に同情的だったことだ。自分は到着してまたすぐに将官に格上げされた。自分が若い女性で、知府にそういう魂胆が無かったとは言わない。それらしい誘いを何度か受けたこともある。ぎりぎりでなんとかかわしてはいたが。
知府にはそういう恩義があるため、よほどのことでなければ彼の命令を断ることはできない。今回、長官の義父へのこの誕生祝の輸送にしてもそうだ。
本来、これは知府の私事であって、彼の家に雇われている使用人ならともかく、公の部下である自分に命令が下るのは筋違いというものだった。おまけにその中身と言えば十万貫にも及ぶ財宝だという。いくら相手がこの国の最高権力者の一人とはいえ、常軌を逸していた。贅沢さえしなければ、村丸々一つの住民が一生遊んでくらせる額である。後ろ暗い手段によって集められたのだろうと指摘されたとしても、楊志は反論のすべを持たなかった。
そんなわけで表面上はともかくも内心は渋々、楊志はこの輸送任務を引き受けた。なんたることだ、と心中で嘆く。軍人とはこの国の象徴である皇帝陛下とそのご一族、あるいは天下の民を守るのが本義だと言うのに自分のやっていることは犯罪の片棒担ぎとなんら変わりない。
しかし、なんであれ命令を受理したのであれば、こなさなくてはいけない。とにかく今はひたすら彼に従い、軍人として再起の道を図るしかないのだ。下手を打てば、今度こそどうなるかわからない。罪人として首をはねられる可能性すらあった。
楊志は三十名の部下を軍人の服ではなく、なるべくみすぼらしい格好をさせ、荷も本来の財宝の上に米やら何やらあまり価値の無いものを載せて擬装すると北京大名府を出発した。
兵は意図的に少なめにしている。あまり多くつれても目立つだけであまり意味が無い(山賊に襲われれば彼らは四散して逃げてしまうだろう)と思っていたし、それに兵士もまた自分と同じく知府の公の部下である。それを多数連れ出すことは楊志の良心がとがめた。
五日間ほどは何も問題なく進み、濮州との州境へと到着した。ところがそこではなぜか臨時の関所のようなものが置かれ、積荷の検査をうけているらしかった。
「面倒なことにならなきゃいいけど……」
「多分多分、大丈夫だよ」
応じたのは横にいる索超である。今回の任務では自分の副官を勤める女性だ。話し始めの言葉を繰り返す妙な癖の持ち主である。
「どうしてそう思うの?」
「いざといざとなれば袖の下でも渡せばどうとでもなるでしょ」
「それは面倒が起こった場合の対処法でしょ。そもそもそうなる事態になりたくないって言ってるの」
楊志は賄賂など認めぬなどという、青臭いことをいうつもりはない。つもりはないが、しかしそうなってしまうのはなるべく避けたかった。
検査を受けている列の最後尾にならんでからしばらくたって楊志たちの順番となった。
「お前がこの集団の代表か」
「はい、そうです」
楊志が進み出ると濮州の兵が居丈高に詰問した。
「頭巾を取れ」
「……え?」
てっきり積荷の中身や行き先を問われると思っていたので意外な質問だった。楊志は確かに頭巾をかぶっていた。砂埃がひどいのでそれから身を守るためというだけで別にこの場でとっても支障は無かったが、想定外だったために少し反応が遅れた。
「とっととしろ」
「はあ……?」
釈然としないながらも逆らってもいいことは無いので頭巾を取る。
「よし、お前達はこっちだ」
それ以上は何も無く、兵士はただ単に右側に少しそれた道を行くように指示した。
「あの、どうしてこっちに?」
「知らん。青い髪の女が通ったらこっちに通せと言われている」
ぶっきらぼうに兵士はそう言って追い立てるように楊志たちの集団をそちらに追いやった。
「これってこれって、どういうことだと思う?」
「わかるわけないでしょ」
とりあえず指示されたとおりの道筋をいくと数歩もしないうちに今度は別の兵士がやってきた。
「こちらで少々お待ち頂けますか」
さきほどとは打って変わって丁寧な態度である。言われるとおり待っていると、今度は馬に乗った身分の高そうな男が現れた。その男は馬上から降りると軽く軍隊風の礼をした。
答礼しそうになってあわてて、それをやめる。自分は今は軍人ではないということになっているのだから。
「北京大名府の楊提轄と索提轄で間違いございませんか」
「え?」
提轄というのは軍人の役職の一種で緊急時に別個に編成される集団を率いる軍人のことである。というのは表向きの話でつまりは指揮する部隊や確固たる職務は持っていないが、それなりの能力があるとみなされ待遇が保証されてる軍人のことだ。楊志と索超の現在の立場もこれにあたる。
本日二度目の驚きだった。目の前にいる男は正規の軍人であることは間違いなかろう。それがなぜ、自分たちがここにいることを知っている?
「ご安心召されよ。我々は梁知府からのご要請で動いている濮州の正規軍であります」
自分たちが発したかすかな警戒の色を察してか、その男は先回りするように自らの身分を明かした。嘘をついている可能性は無いだろう。正規軍でなければここまで大規模な検問を敷くことは不可能だ。
「いかにもその通りですが……」
改めて返礼しながら楊志は自分のことを認めた。
「私はこの濮州の騎兵都管の遠羽と申します。実は貴殿らが運んでいるその荷をこの州で奪うことを目論んでいる不逞の輩がいるという情報を入手し、こうして護衛のために参上つかまつりました。梁知府からの書状もお預かりしております」
男はそう言って封筒を差し出してきた。印璽も楊志がよく見たものと同じでこちらも偽者の可能性は無い。あけると確かに見覚えのある字で書かれた書状が出てきた。
「なんてなんて、書いてあるの?」
「待って。……えっと大体、遠都管が仰ってくださったことと一緒よ。濮州の知州から領内の賊が積荷を狙うという情報を受けたから護衛を受けてすすみなさいって」
残りの部分にこれは君らの力を信用しないのではなく、あくまで安全のためである、とつらつらと書かれていたがそこは省略した。自分も索超もこんなことで自分たちを信じていないのか、と不満を持つような人間ではない。
「ご了解頂けましたか。さすれば一刻(三十分)ほど休憩をとった後に出発したいと思いますが」
「任務でお忙しいでしょうに、手を煩わせて申し訳ありません、遠都管。ご厚意、ありがたく受けたいと思います」
楊志はそう言って遠都管と別れると部下たちに状況を説明した。わけがわからず緊張していた部下たちも話をきいてほっとしたらしく、思い思いに休憩し始めた。
部下に説明を一通りし終えると楊志もまた休憩のために荷台の上に腰を下ろした。
「どうしたの?」
そして索超が何か言いたそうな顔をしていることに気づいた。
「いやねいやね、別に私はいいんだけどね、いいのかなーと思って」
「何が?」
「だってだってだってだって、楊志言ってたじゃない。人が多くてもあんまり意味無くて却って目立って邪魔だって」
「それは……」
索超の言うとおりだった。で、あるからこそ、自分は護衛の兵を多く出そうとはせず、偽装するという手段で輸送をしていたのだった。
「まあ、そうだけど、あの場であなたたちはいざと言うときに信用できないから護衛はいりません、とは言えないでしょ。それに梁知府だって護衛してもらえって書いてあったじゃないの」
ちらりと周りを見回しながら、楊志は答えた。まわりの兵士は検問に使っていた資材を片付け、集合し始めている。どうやらあの検問は自分たちをみつけるためだけに使われたらしい。大仰なことである。
「そうかなそうかな、私は別に言ってもよかったと思うけど」
「あなたのそういう何も考えないところはたまにうらやましくなるわ」
「失礼失礼だよー、私だって色々考えているんだよ」
「はいはい。そういうことにしといてあげる。とにかく知府の命令を無視するわけにはいかないわ。それに結構護衛も多くいるみたいだし」
遠くで銅鑼が鳴らされている。どうやら相当広範囲にわたって展開されていたのか、続々と兵があつまってきていた。その数はそろそろ三百を超えようとしている。
「というかというかさ、これいくらなんでも多すぎじゃない?」
「うん、私もそう思ってきた」
そう言っている間にもに兵の数は増えていき、見た限りでは五百を超えようとしていた。
「楊志殿。もう少しいたしましたら全員集合いたしますので少々お待ちいただきたい。それと行軍の順序の相談をしたいのですが」
「あ、遠都管。すみません。ところでここには何名ぐらいの兵がいるのですか?」
「騎兵が三百。歩兵が五百。あわせて八百ですな」
涼しい顔をして遠羽はそう言い放った。
「は、八百ですか……」
まさか誕生祝の輸送のためにこれほどの兵士を使うとは。他人事ながら濮州の財政が心配になってくる。これだけの兵馬を展開させる費用は州政府の予算から言って決して安くないはずだ。
「知州殿も我々もそれだけ今回のことを大事と捉えているということです」
胸を張りながら彼はそう言ってくるが、今回のことというのは結局のところ、後ろ暗い賄賂の輸送だ。
「さて、並び順ですが、まず我らの騎馬隊が先頭を勤めますので楊志殿はその後に続いて来ていただきたい。後ろから歩兵部隊が参ります。よろしいですかな?」
「ええ、異論ありません」
「ありがとうございます。必要とあれば馬をお貸ししますが?」
偽装のために徒歩で移動していた楊志と索超を見て遠はそう声をかけた。
「いえ、このままでかまいません。お気持ちだけ頂いておきます」
「ふむ。それでは半刻ほどしたらまず我らが出立しますのでその後についてきてくだされ」
「ええ、わかりました」
呼び出しを受けて、濮州の知州室に到着すると、こちらが口を開く前に出し抜けに彼の上司は不機嫌そうに口を開いた。
「どういうつもりかね、王総兵管」
「いきなり、そう仰られても……お言葉の意味がわかりかねます。知州殿」
濮州の総兵管、王策はいつも自分の上司である知州を見るとカエルを連想せずにはいられない。いまのように激昂しているときは特にそうだ。つぶれたような声がそうさせるのか、しわくちゃの顔がそうさせるのか、益体も無い考えに少し意識を走らせた後、改めて知州を観察した。小男だ。そのため背もたれの高い知州の席が座っていると言うより、座らされているような印象を与えている。年は自分とほとんど変らないはずだが、自慢でもなんでもなく、自分より大分年上に見える。
「今回の出兵のことだ」
今、知州の執務室には自分と彼の二人だけだった。過去の傾向からするとこれはあまり良い兆候ではない。
「知州のご意向に沿ったまでですが」
「誰があんなに多数の兵を使えと言った!」
基本的にこの濮州に限らず、州の長官とは基本的に文民であるため、軍の出動については大まかな方針しか示さない。兵の数やその編成、具体的な行動などを決めるのは総兵管である王策の仕事だった。
今回で言えば、知州が出した命令は件の輸送隊が無事、州内を通行できることであり、それを受けて王策は千二百の兵を出発させたのである。
だが今知州はこうして自分を怒っているが、もし少ない兵数で出発して襲われようものならあっという間に自分に責任を負いかぶせるのは目に見えていた。故に王策はこの濮州の兵をほとんど空にする勢いで出撃したのだ。
「聡明なる知州殿にこのようなことを申し上げるのは真に僭越ですが、孫子にも『上兵は謀を伐つ』とあります。それゆえ、そもそも山賊に襲われぬよう、大軍勢で以って威圧することで、万全を期したまでです」
『上兵は謀を伐つ』とは、敵を倒すことではなく行動する前の計画の段階で敵を叩き潰すのが一番いい、という教えである。大勢の兵士が取り囲んでいれば通常、山賊は近寄ろうとすらしない、ということだ。
「万の兵を使って兎をしとめるのは赤子でもできることだろう。貴様のその頭はなんのためについているのだ」
「さしせまった危機が兎か虎かを判断するためです。知州殿」
慇懃のままに王策は答えた。知州は馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「今回の危機は虎と言うわけか」
「然り」
知州は面白く無さそうにふんと鼻息を出すと質問を重ねた。
「なら聞くが、最近、馬や槍の購入依頼が多数上がっているのはなんだ」
「出撃の際に記録されている馬や槍が使い物にならなくなっていることが発覚しまして、それで御請願をしたまでです」
「貴様の監督不行き届きではないか」
「今回の出撃に必要な分は足りておりますので問題ありません。担当者は既に処罰いたしました」
「兵糧や飼葉もか」
「……それはまた別です」
何か危険なものを感じて王策は慎重に答えを選んだ。
「軍の主計官から報告を受けたぞ、彼らの算定した量よりかなり大目の発注をしているようだな」
「お言葉ですが知州殿、彼らの計算は甘すぎます。全ての兵糧がきちんと予想通りに間違いなく届けば、彼らの言う量で十分でしょう。しかし実際にはそうなりません。天候や行軍の変更等でいくらでも軍や輸送隊の移動時間は変わりますし、兵糧の中身が全て問題なく食べられる食料とも限りません。そうである以上、多少の余裕は見ていただかないと困ります」
「その多少の余裕と言うのが二百貫もの出費になるわけか?」
「これほどの規模の出兵ですからある程度の費用がかかるのはご理解して頂かなくてはなりません」
知州は一旦不機嫌そうに黙ると話題を変えてきた。
「繰り返すが本当にそれほど大量の兵が必要なのかね?」
「知州殿が不必要と仰るのであれば減らしますが」
「そうは言っておらん。私は問うているだけだ」
おおよそ知州の考えが王策には読めてきた。彼の立場として濮州で輸送隊を襲われるのは絶対に困る。だがそのためにかかる費用は極力安くしたい。しかし、万が一、自分の指示が原因で護衛の兵数が減り、その結果襲われたとあればこれもまた彼の責任問題となってしまう。
だから彼にとって理想的なのは誰かが護衛の兵を少なくしても大丈夫だ、と言うことなのだ。それならば山賊に襲われてもとかげの尻尾きりができる。しかし、その意図に気づいてしまった以上、王策はその手に乗らない。このまま、話し合いを続けてようと不毛なばかりだ。
「それでは知州殿、そこまで私の判断をお疑いでしたら実際に輸送隊を率いている楊提轄に聞かれてみてはいかがでしょう」
「む?」
自分の言いたいことを知州は敏感に察したようだった。
「朱仝と雷横を呼び寄せた上でこの先の道筋の山賊どもの情報を聞かせ、楊堤轄にご判断を仰げばよろしいではありませんか。輸送隊の実力を最も把握しているのは彼女より他にございません」
「ふうむ、そうだな。うむ。そなたの意見、もっともである。そのように取り計らえ」
「かしこまりました」
殊更にもったいぶった調子で命じる知州に王策も同様の調子で応じた。
総兵管が辞去した室内で知州は机の中から小さな手紙をとりだした。本日の朝、彼の邸宅に届けられたものである。届けたのはまだ年端もいかない少女だったという。その子供は近くに居た鎧を来たおじさんに頼まれて持ってきたと言っていたので実際にこれを記載した人間は不明である。
手紙の内容は総兵管である王策を讒訴するものであった。その手紙が言うには王策は今回の出動にかこつけて余分な装備や食料を購入し、出入りの商人から賄賂を得ているという内容だった。
事実だとすれば到底、知州には見過ごせない内容である。この州の財貨は皇帝より知州たる自分が預かっているものだからだ。国の財を不当に使い、私腹を肥やすなど、この国に対する反逆以外の何者でもない。
他人がそれを聞けば黙って鏡を差し出したろうが、幸か不幸か彼の心の中身を覗き込むものは誰もいなかった。
(しかし、あの様子を見る限り、この内容はでたらめの可能性が高いな)
王策と話してみて知州の印象はそう変わった。もしそのような方法で賄賂を得ているならば、兵の削減にあそこまであっさりと応じるのは考えづらいと言うのが彼の考えだった。決め付けは禁物だが。
(だが、まあ何にせよ、兵の出撃する数は少ないに越したことは無かろう……)
知州はそう考えをまとめると、届けられた手紙をそっと鍵のかかる棚の奥へとしまいこんだ。
「言われたとおり届けたが、本当に知州はあの内容を信じるのか、呉用よ」
「さて、どうかしらね」
公孫勝の疑問に呉用はあっさりとあいまいな答えを返した。
「おいおい、信じてもらわねば困るのではないか?」
「それが困らないのよ。見もせずに破り捨てられたら困るけど、それは無いでしょうし」
公孫勝は今朝方、濮州の知州の家に呉用が書いた手紙を届けていた。軍人から言付かった振りをしろと言うのでその通りにしてある。内容はこの州の軍事責任者の賄賂を告発するものであった。てっきり、公孫勝はそれでもって今回の軍事活動の頭を挿げ替えさせて、出兵する人数を減らさせようとしているのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「まともな知州ならばあれを見れば一通りの調査ぐらいはするわ。そして調査すれば今回のこの出兵が決して安くつくものではないことはわかるはずよ。あの手紙はその発端となる種を植え付けること。だから書いてある内容は信じようと信じまいとどちらでもいいの。重要なのは知州の目を今回の軍事行動の出費に向けさせること。そしてその出費を見れば、護衛の兵を少なくすることも考えるでしょう」
「恐ろしい女じゃのう、つくづく味方でよかったわい」
「まあ、ほめ言葉として受け取っておこうかしら」
呉用は軽く微笑んだ。
本文中で提轄に関する説明が出てきますが、これは今回の独自設定です。原作『水滸伝』でも出てくる役職なのですが、具体的にどういう役職なのか、全く説明がないのでとりあえずこういうことにしてみました。
2014/4/14追記
読者の方から提轄について詳しい情報をご存じの方からご連絡を頂きました! 水娘伝での設定は本文のとおりのままとしますが、ご許可を頂きましたので下記の通り提轄についての正しい情報を掲載させて頂きます。
「当時の州や路といった行政区画におかれた武官の中の「提轄兵甲盗賊公事」のことで、主な職務は軍隊の訓練、盗賊の捜査逮捕だったそうです。現代で言えば小隊長クラスで、だいたい30人程度の部下がいたのだとか。」
ありがとうございました!