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水娘伝(すいこでん)  作者: 文太
第二話 蠢動編
18/110

その六 呉用、阮三姉妹を引き連れて現るのこと

 宋江(そうこう)公孫勝(こうそんしょう)宋清(そうせい)を連れて指定された時間帯に東門の外に来ると宋江に紙を渡した少女が待っていた。


「やあやあ、よく来たね」


「お姉ちゃん、だあれ?」


手を振りながら話しかけてくる少女に警戒しているのか、まだ演技モードの公孫勝が話しかけた。


「およよ、聞いてたのとだいぶ違う雰囲気だね。あたし、阮小七(げんしょうしち)呉用(ごよう)先生の使いさ」


屈託無くその少女は笑った。


(やっぱ女の子なのか)


そのやはり聞き覚えのある名前を聞いて宋江は思った。彼女も『水滸伝』に名前が出てくる人物だ。


(ということは姉が二人いるのかな)


水滸伝では阮の名を持つ漁師の三兄弟がいた。上から阮小二(げんしょうじ)阮小五(げんしょうご)、そして阮小七。今までの法則に従うなら三人姉妹で、彼女が末っ子と言うことなのだろう。年は見たところ、自分より下で宋清より上、といった具合だろうか。


「こっちだよ。ついてきて」


そんなふうに宋江が予想している間に彼女はひょいひょいと歩き出した。既に夕闇が迫り、女の子が一人で、いや男が数人であっても歩き回るには危険な時間帯になりつつあったが彼女はそのあたりを気にするそぶりも見せず、歩いていく。


 しかも今歩いているのは城壁の外だ。城の中と比べるとだいぶ治安が悪い。見回りの兵士がいるわけでも無いし、明かりも少ない。宋清など、宋江の服の裾をぎゅっと握っていて、宋江が握り返して初めて警戒を緩めたような表情をした。


「そう言えば、呉用さんとはどういう関係なの?」


黙って歩くだけなのも気が詰まるので宋江は阮小七に世間話のつもりで尋ねてみた。


「ん? んー、呉用先生は昔、世話になった人なんだよ」


「へえ?」


興味深げに宋江が声を返すと阮小七は喋り始めた。


「あたし達は漁師なんだけど前に鄆城(うんじょう)の町に魚を売ってた時に役人の野郎に因縁ふっかけられてさ、その時に呉用先生が助けてくれたんだよね」


「そんなことがあったんだ」


「うん。その時にこっちもお礼に魚をあげてさ、それからの付き合いなんだ。ああ、見えてきた。あそこだよ」


 そんな事を言っているうちに目的地が近づいてきたらしい。阮小七が指差したのは城壁のすぐ回りに取り囲むようにある貧民街の一角にある粗末な小屋だった。どうも素泊まりの宿らしいが、つくりは見た感じ、宋江と晁蓋がかつて作っていた馬小屋と大差ないレベル、つまりいつ崩れてもおかしくないような代物だった。


「一昨日きやがれ!」


その怒声は宋江たちがその宿にまで十メートル程の距離に近づいたところで響いた。そして、その直後になにやら黒い物体が小屋から飛び出し、こちらに飛んできた。先頭の阮小七がさっとそれをよけ、宋江たちの足元にその物体が転がってくる。


「あ……あひゅ……」


物体と思っていたのは四十代程度と思われる男だった。誰かに殴られたらしく顔が赤く腫れて白目をむいている。


「え、だ、大丈夫ですか?」


「気にしなくていいよ、そんな人」


思わず声をかけた宋江に阮小七が冷たく言い放った。


「え?」


「自業自得って奴だと思うし」


それだけ言うと阮小七は振り返ることも無くまた目的地である建物に歩いていく。


「おにいちゃん、私も気にしなくていいと思うよ」


おろおろとした宋江に肩の上から公孫勝が声をかけてきた。


「そ、そうなの?」


「放っておいてもカゼを引く程度だし、大丈夫でしょ」


公孫勝にそういわれて宋江もようやく立ち上がった。悪いとは思ったがあんまりかまっていると阮小七に置いてかれてしまう。頼りになる公孫勝がいたとしてもこの不気味な場所に置いていかれるのはごめんこうむりたかった。


「お姉ちゃん、入るよ」


阮少七はそう言ってその男が吹っ飛ばされてきた建物の入り口に声をかけた。


「あん、小七(しょうしち)か」


不機嫌そうに応じる声が聞こえる。


「あれで何人目なの?」


「八人目。覚悟していたとはいえ、想像以上にひでえや。さすがに呉用先生にも文句言いたくなるぜ」


「まあまあ、小五(しょうご)ちゃん。そうとがらなくてもいいじゃない」


「ううん、阮小二さん。私も悪かったと思ってるわ。最近、治安が悪化してるとは聞いたけど、ここまでとは思わなかったもの」


と、その呉用の言葉で宋江はようやく先程倒れていたあの男は物取りかなにかだったらしいと悟る。


 小屋に入ってすぐのところにカウンターのようなものが置かれていたがそこには誰も居ない。左手の方の通路の先に小さな部屋があり、そこに今入ったばかりの阮小七を含めて四人の人物が居た。宋江から見て一番近い場所に阮小七。それからその奥に黒髪の少女がいた。頭はぼさぼさで長い一房の黒髪が尻尾のように背中で揺れている。小五ちゃんと呼ばれていたから彼女が阮小五だろう。


 それから奥にもう一人女性。居座る四人の中で一番年上らしい落ち着いた雰囲気のその女性はにこにこと笑いながらこちらを見上げている。阮小七と同じように薄い栗色の髪の持ち主でこちらはその髪をショートカットにしていた。面子からかんがえるとこれが阮小二のようだ。


 そしてその更に奥、ぼんやりと薄く光るろうそくの明かりの中で宋江はようやく見知った顔を認めて、ほっと息を吐いた。


「呉用さん」


「宋江、ご苦労様。公孫勝と宋清もね。狭いところだけど、とりあえず中に入って頂戴」


 呉用の言うとおり、中は狭かった。この場にいる人間は全部で七人。比較的小柄な人間が多いとはいえ、全員が中に入るとかなりの圧迫感があった。


「とりあえず紹介するわね。こっちのくせっ毛が宋江。その隣が妹の宋清。それからその不気味な小さいのが公孫勝よ」


「もう、不気味だなんてこんな美少女に使う言葉じゃないよ、呉用おねえちゃん」


公孫勝が笑顔で抗議したが、呉用はとりあわず、ほらね不気味でしょ、と残りの人間につけたすように言っただけで済ませた。


「それでこっちが私が新しく仲間に引き入れた隣村に住んでる三姉妹ね。右から順に長女の阮小二、次女の阮小五、三女の阮小七よ。普段は漁師をしているんだけど、腕に覚えもあるし、知らない仲でも無いから今回協力をお願いしたの」


「はじめまして」


「……どーも」


「あらためて、よろしくね」


年齢順にそんな反応が返ってきた。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」


宋江と宋清も慌てて返事をした。


「それにしても随分早く着いたんですね」


「私はもう少しゆっくりでいいと言ったんだけどね……」


宋江の疑問に呉用が少し困ったように三姉妹を見やった。


「だって、呉用先生だって言ってたじゃん、兵は説得を尊ぶって」


「もう、何言ってるの、小七ちゃんったら、説得じゃなくて殺生でしょ」


「拙速だ、アホども」


突然始まったコントもどきの会話はさておき、どうやら急がば回れということでやってきたらしい。


晁蓋(ちょうがい)劉唐(りゅうとう)さんは?」


「晁蓋はそろそろこっちに出発してる頃だと思う。どうしてもあいつは目立つから、ここから少し離れた場所に待ち合わせ地点を指定して、劉唐にそこにいてもらってるの。今日ここに来たのはあなたたちの現状確認とお互いの顔あわせね」


 公孫勝がそこでちらりと周囲に視線を走らせた。盗み聞きなどされないか気にしたのだろう。それを見て阮小二が微笑んだ。


「大丈夫、小五ちゃんがだいぶ頑張ってくれたからもうここに近づこうと言う命知らずは今晩はいないですよ」


「ところでよ、そっちの三人は本当に戦えるのか?」


と阮小五が訪ねてくる。見るからにひ弱な自分と少女二人ではどうしても気になったのだろう。


「いいえ、公孫勝は別だけど、宋江と宋清は私と同じで後方支援よ」


と思った以上にすっぱりと呉用が言い切る。


「ふーん……」


と阮小五が胡散臭そうに宋江のことを見てくる。その視線に気づいてか、呉用が補足した。


「まあ、こいつはこいつで使い道はあるわよ。晁蓋以外の唯一の男手だしね。あいつは突撃するばかりで細かな作業とかとは無縁の人間だから」


と、言ってから呉用は急に宋江を振り返って言った。


「そう言えば、あなた、天候の予測が出来るんですってね」


「え? どうして、知ってるんです?」


「あんたがいなくなった後に村の人達が騒いでたからよ。そんな便利な技能があるなら黙ってないで教えてよ」


「ご、ごめんなさい」


しゅんとなって宋江は謝った。


「そこまで、小さくならなくていいけど……まあ、いいわ。今回はあんまり関係ないけど、なんか急に天候が変わりそうだったら教えてね」


「あらあら、本当にそんな事ができるの? 便利ねー。ねえ、今度の計画が終わったらうちに来ない? 漁をする時、助かるわー」


「うえ? えっと……」


どう返答したものか宋江が答えに詰まると呉用がパンパンと手を叩いた。


「はいはい。そういう話も後にして。それで話を戻すけど、公孫勝。どうなの? 状況は」


「うむ。大体、呉用殿の作戦どおりの展開になったぞ。それと宋江の予測も当たっておった」


お芝居モードを止めた公孫勝が頷きながらそう言った。


「あれ、口調変わった?」


「え、小五お姉ちゃん。あの子が猫かぶってるの気付かなかったの?」


という阮小五と阮小七の会話を無視して公孫勝が説明を続ける。


 呉用の作戦。まずそれは第一段階として輸送隊を捕捉することから始められた。相手がどこにいるかもわからないのでは攻撃のしようが無い。


 仰々しく軍隊が行進しているのならば見つけるのは簡単だが、宋江の弁によればそうではなく、偽装しながら進んでいる可能性があるということだったのでこれを見破る必要があった。


 だが、そんな手段を持つ人間など、どこにもいない。ならば見つけてもらおう、というのが呉用の考えだった。


 そこで呉用はまず劉唐に『梁知府(りょうちふ)蔡京(さいけい)長官にあてた宝を狙う奴らが濮州(ぼくしゅう)にいるらしい』という噂を流すように指示をした。これで濮州の知州(ちしゅう)はその偽装した輸送隊を発見し、警護せざるを得ない。噂の出所を怪しんだとしても万が一、その噂をつかみながら、何も手を打たなければ知州はただ事ではすまされないのだ。


「それで出撃するのが騎兵四百に歩兵八百ね」


「うむ、騎兵三百と歩兵五百がその輸送隊の捜索。残りがここから東京開封府(とうけいかいほうふ)への道筋にいる野盗の捜索と排除じゃな」


「あのさ、呉用先生……作戦通り、これで輸送隊は見つかるだろうけど、さすがに千二百の兵が相手じゃ、晁蓋さんもきついんじゃないの?」


阮小五が心配そうにそう聞いた。そのうち、四百が直接の護衛でなく、露払いのための別働隊だとしても残り八百である。


「まあ、やってやれないことはないかもしれないけど、そんな手段に賭けるつもりは無いわよ」


「噂には聞いてたけど、本当、とんでもない人だよね。千人相手でもどうかしそうなの?」


阮小七がぼそりがつぶやいた。


「じゃあ、どうするつもりなのかしら、呉用先生?」


阮小二が小首をかしげながら可愛らしく聞いた。


 宋江は公孫勝と顔を見合わせた。どうやら呉用は作戦の全てを彼女達に話してはいないらしい。


「呉用さん、その、これからのこと、説明してなかったんですか?」


「これからのこと?」


阮小五が鋭く反応した。


「その暇もなく、急き立てられてきたのよ。あのね、そんな噂を流せば、警備が増強されることは当然予想してたわよ」


呉用は落ち着き払って宋江と阮小五の問いに答えた。


「公孫勝。軍の規模と編成はわかったけど、どんな指揮官までかはわかる?」


「むう、そこまではさすがに……名前だけはわかっとるがの」


「なんていう名前?」


「まず、騎兵三百と歩兵五百を率いるのが騎兵都菅の遠羽(えんう)と歩兵都管の法進(ほうしん)。遠羽の方が総大将のようじゃな。で騎兵百と歩兵三百を率いるのが騎兵副都菅の朱仝(しゅどう)と歩兵副都菅の雷横(らいおう)。こちらは朱仝が総大将じゃな」


「え!? 兄様(にいさま)、朱仝と雷横ってあの……」


宋清が思い当たったように声を上げる。宋江も当然、覚えているがやはり、という思いのほうが強くて思わず沈黙していた。


「宋清、何か知ってるの?」


宋江が黙ったままなので呉用が宋清に話しかける。


「え? は、はい、あの……」


宋清はそういった切り、ちらりとこちらを見上げてくる。そこで、ようやく宋江は口を開いた。


「ふたりとも今日、客として会ったんだ」


「客?」


「言ったじゃない。公孫勝さんが活動しやすいように二人共お店で働いてたんだよ」


怪訝そうな顔になった阮小五に阮小七が解説を加えた。


「とりあえずどんな人達だったか、詳しく教えてくれる?」


「え、でも……」


呉用の問いに宋江と宋清は言いよどんだ。話すのは構わないが、雷横は昨日会ったばかりの人間だし、朱仝に至っては今日が初対面だ。話せるような事はほとんどない。


「どんな小さなことでもいいから」


呉用はそんな二人の悩みを見ぬいたかのようにそう言った。


「じゃあ、どんなことでも良いって言うなら……」


そう前置きして宋江はとりあえず、昨日からの雷横と朱仝のやりとりを話した。とは言え、昨日は雷横とはほとんど交流らしいものも無かったので必然、今日の出来事が大半となる。


「……ってこれくらいだけど」


だが、自信なさげに報告を終えた宋江に対して呉用は満足げに頷いた。


「よくわかったわ。宋江、お手柄よ」


「え?」


その呉用のコメントに自分だけでなく公孫勝や阮小二もきょとんとした顔になった。


「今の宋江の話でわかるのは三つ。一つ、若い女性の武官にもかかわらず今回のこの騒動に駆り出された、ということはよほど優秀なであるということ。二つ、雷横というその指揮官は自ら軍人と名乗らなかった。それだけの実力があり、副都菅という立場にあるにも関わらず、軍人と名乗らないのはどこかで軍にやましさを抱えている証拠よ。普通の軍人ならその立場を利用して、商品をただで奪い取っていくぐらいのことはやりかねないもの。三つ、朱仝はあなたにわざわざこれから山賊を退治することを話した。つまり、今回の仕事をただの偵察・捜索の類とは考えず、明確に、山賊の存在を認識している」


「え? 山賊を倒しに行くんだから、山賊がいるのを知っているのは当たり前じゃないの?」

阮小七が疑問の声を上げた


「違うわ、公孫勝の話を思い出して。朱仝と雷横が率いる四百の兵はあくまで、山賊の捜索と『発見できれば』その撃滅が目的なのよ。だというのに、朱仝は既にもう山賊がいることを知っているような言い方だわ」


「ふむ、つまり……?」


「色々予想できることは有るけれど、まとめると……実に好都合ね」


にんまりと呉用は笑った。


「作戦を次の段階へと移すとしましょうか。宋江と公孫勝に話すのは二度目だけど、全員よく聞いてね」








「……というわけで説明は以上よ」


呉用の説明が終わると、三姉妹が感心したようにため息をついた。


「さすが、呉用先生ね」


「そう? 自分では決して完璧とは思ってないんだけど」


「呉用先生は心配性だね。例え多少上手く行かなかったとしても、最後の襲撃の時になんとかすればいいだけじゃん」


「そういう考え方が一番危険なの」


阮小七のコメントに呉用は窘めるように言った。


「ま、とにかく、今日出来ることはここまでじゃ。明日に備えてもう寝るとしようぞ」


「あ、そうだね。じゃあ、帰ろうか」


宋江がそう言って立ち上がると全員がきょとんとした顔をみせた。


「帰るってどこに帰るの?」


「え、自分達の宿だけど……え? また変な事言っちゃった?」


「あのね宋江、陽が落ちれば、城門は閉まるわよ。つまり、夜明けまで出入りはできないの」


呉用が幼子に諭すようにに言う。


「え? じゃあ、今晩どうしよう?」


「ここに泊まっていけばいいじゃない」


狼狽する宋江に呉用があっさりとそう言った。


「ここに?」


言って宋江はあたりを見回した。仕切り等という高尚なものはなく。広さもさほど無い。七人も寝た

らぎゅうぎゅうになってしまうだろう事は明らかだった。


 だが、宋江がまごまごしている内に他の面々は寝具の用意をし始めた。


「はい、これ使ってね」


「あ、どうもすみません」


阮小二にぽんと毛布を渡されるが その頃には、公孫勝や阮小七、阮小五はさっさと自分の居場所を占領して寝転がってしまっていた。


「えへへ、兄様のすぐ横で寝るの、久しぶりです」


宋清がうれしそうにそう言ってくる。旅の間は、寝台がふたつある部屋で宋清とは別々に寝てたが、どうやら彼女はそれがお気に召していなかったらしい。


「宋江、いつまでも突っ立ってないで寝たら、灯り消すわよ」


「わ、わかったよ」


呉用が急かすように言うので、宋江も一番出入口に近い場所に寝転んだ。そして、すぐにその横に宋清が体を潜り込ませる様に陣取る。


「じゃ、消すから」


呉用があっさりとろうそくの灯りを消した。


「お休みなさい、兄様」


「あ、ああ、お休み」







(ね、眠れない……)


だが、宋江は眠れなかった。宋清との生活で少しは慣れたものの、女性と一緒の空間で寝るというのは彼には中々緊張するものだった。しかも、今晩は宋清のような子供ではなく、同年代以上の呉用や阮小二、阮小五もいる。それを意識するとなんだか五感がいつもより遥かに鋭敏になってしまった。耳は一人一人の寝息を捉え、鼻は女性の甘い香りを嗅ぎ分けてしまう。


(な、何も考えないようにしないと……)


「ん……うう……」


なんだか悩まし気な声まで聞こえてくる。


(……からかわれてるんじゃないよね)


そう思いつつも好奇心に勝てず、目を開けると、呉用の寝顔が目の前にあった。


(あれ? どうして!?)


自分の横にいたのは宋清がいたはずである。あたりを見回すと宋清の頭は自分の胸元あたりに下がってて、その隣に呉用がもともといたため、遮るものが何も無くなってしまったのだ。


 さらさらと絹のような彼女の銀髪は月の光を受けて幻想的な美しさを醸し出していた。


 ひどくいけないことをしているような気持ちになりながらも、宋江はその光景から目を離せないでいた。彼女の肩が優しく規則正しく動く度に全身が微かに揺れ、その小さな野苺のような口から息が漏れているのが暗い室内でも何故かはっきりわかってしまう。


(って、いつまで見入ってるんだよー!?)


心の中で自分に突っ込むと宋江は乱暴に目を閉じた。

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


連載再開しました。またいけるところまで隔日で更新予定です。

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