僕、おばけ始めました
《登場人物》
僕……3日前からおばけになった青年。自分の名前や住んでいた場所が分からなくて困っている。
ユーレイさん……僕がおばけになってから初めて出会った女霊。
─おばけ生活3日目─
僕「僕は死んで3日も経ったはずなんですが……どうして成仏しないんでしょう?」
ユーレイさん「この世に未練があるんじゃない? 『彼女とヤり忘れた!』とか、『あのゲーム、クリアしてねーよ!』とか」
僕「ユーレイさんの発想が豊か過ぎて反応に困ります」
ユーレイさん「それほどでもあるかなー☆」
僕「誉めてませんから」
─おばけ生活4日目─
僕「素朴な疑問なんですけど」
ユーレイさん「うん」
僕「どうして夜中2時を『丑三つ時』って言うんですかね?」
ユーレイさん「知らなーい☆」
僕「…………。どうしておどかすときに『うらめしや〜』って言うんですかね?」
ユーレイさん「恨めしいからじゃない?」
僕「…………。井戸でお皿を数え間違えたら、どうすれば良いですかね?」
ユーレイさん「走って逃げる」
僕「足ないのに!?」
ユーレイさん「きっと、皿を割ったら自費なんだよ」
僕「買うの!?」
ユーレイさん「ちなみに火の玉はレンタルらしいよ☆」
僕「えっ……あれってレンタルだったの!?」
─おばけ生活5日目─
僕「海へ行きたい」
ユーレイさん「急にどうした」
僕「欲を言うならハワイのビーチで泳ぎたい」
ユーレイさん「ハワイに行けたとしても、あたしら足ないから泳げないよねー」
僕「ですよねー……」
ユーレイさん「ハワイは諦めて幽霊の大将でも目指せば? 死ぬ気でやれば何でも出来るよ☆」
僕「もう死んでます」
─おばけ生活6日目─
僕「ユーレイさん……」
ユーレイさん「うわぁ……どうしたの、顔が真っ青よー?」
僕「それは僕たちがおばけだからですよ。……それより、最近『何か』に呼ばれてる気がするんですよ」
ユーレイさん「あら偶然ね、あたしもなの」
僕「ユーレイさんも? ……僕を呼ぶ『何か』は、大切な事のような気がするんです」
ユーレイさん「大切な事……。あたしを呼んでるのも、大切な『何か』なのかな……」
僕「ユーレイさん……」
─おばけ生活7日目─
僕「あ……あうぅ……」
ユーレイさん「おやー、どうしたの……って……あれ……?」
僕「さっきまで忘れてた筈の『自分の事』を、どんどん思い出していく……!?」
ユーレイさん「ほんと……手に取るように思い出せるわ……!」
僕「僕たちは……」
ユーレイさん「そう、あたしたちは……」
「「カップルじゃん!!」」
キャスター『──1週間前に事故に遭って意識不明だった男女2人組が、ほぼ同時に意識を取り戻しました。担当の医師は「これは奇跡だ!」と話しており──』
僕「つまり僕たち……」
ユーレイさん「生き霊だった、ってこと?」
僕「あはは……そうだね」
ユーレイさん「あたしたちを呼ぶ『何か』って、自分たちの身体だったのかも」
僕「だね。これでハワイのビーチで泳げるぞーっ!」
ユーレイさん「その前に資金」
僕「…………はい」
END
『僕、おばけ始めました』は如何だったでしょうか?
あえて会話文のみにしてみましたが、ちょっと読み難かったかもしれませんね……。
ちなみに、お題は『おばけ』でした。