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ハジマリ


『9:57』


 ふと、執務用の机から目線を上げると画面には今の時刻がデジタルで表示されていた。


 ……そろそろか。


 手にしていた羊皮紙を端に置いて、ぐいーっと腕を頭上へ伸ばす。そのままぐるぐると肩を回して凝りをほぐす。首もゆっくり回して、準備万端。


「魔王さま」


 側に控えていた宰相を見れば、どうやらこちらも準備万端のようだ。なにせ、彼のその冷ややかな眼差しは今日も絶好調であるのだから。その目付きの悪さから一部の魔族の間で騒がれているのは把握済みだ。……もちろん変態的な意味で。


 喉を潤そうとカップを手にしたら一瞬で破裂した。


「魔王サマ」

「冗談のきかないヤツだな」


 ――だが、俺は知っている。この宰相の自室には白い羽を生やした精巧な人形(という名のフィギュア)が並べてあることを。しかも戦隊ものだ。中でも彼のお気に入りはちょっとおバカで空気の読めないイエローである。


「何ですか?」

「……いや、誰にでもギャップはあるものだと実感していた」

「はあ」



 ――まさかその面でおバカキャラを目指そうとしてるわけではないよな。

 などと聞ける訳がない。まあ、仕事に差し支えがなければいいんだ。プライベートは自由だもんな。


 そうしてつかの間の休息をとっているうちに時刻はちょうど10時となった。軽い電子音が響く。机にひじを立てて重くなった頭を支えていると、部屋の扉を叩く音が響いた。


「魔王さま、お客様です」

「今いないって言って」

「失礼します」

「おい」


 毎朝10時きっかりにこの魔の国に奴はやって来る。しかも手土産を提げて。

 どういう神経してんだか俺にはわからないが、やることは変わらない。ため息をひとつ溢して立ち上がった。



「今日はどのようなご用件で?」



 ……さて。今日も律儀な勇者の相手をしますか。




(まおーとかマジやってらんねぇよ、な毎日。)

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