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*リャムカ

<その船は白銀だな? 私を中に入れなさい。君にはその義務がある>

 なんだ? この偉そうな奴は。モニターを見ると船の近くに同じ速度で飛んでいる小型船が見えた。

 拡大してコクピットを映す。その姿は老人と似ていた。まさかスナイプ人か?

「……」

 また何か騒動が舞い込んで来た予感。白銀はハッチを開ける。そこに入っていく姿がモニターに映り続いてコンテナ内に切り替えた。

 ゆっくりと止まる船を確認しハッチを閉じる。船から出てきた姿を見てマイクのスイッチを押しコンテナに響く音量で発する。

<そのまま真っ直ぐ来てくれ>

 男はそれを聞いて歩き出す。白銀はモニターを切ってナナンに視線を向けた。妙にばつの悪そうにしている老人。やっぱりこいつの関係者か……何が『身寄りがない』だ。

 男を案内するために白銀は部屋を後にした。


「お師さま!」

 入ってきた男はいきなり老人に駆け寄る。やれやれと白銀は肩をすくめた。

「突然『旅に出る』と申して私を困らせないで下さい。どれだけ探したと思っているのですか」

「じゃから探すなと言ったじゃろう……」

「何を言うのです! 弟子の私を放り出して」

 そして男はギロリと白銀を睨み付けた。

「どうしてこの男にあなたの力が必要なのですか。私には解りません」

「! ……なに?」

 俺にだってわからん。初耳だ。

「あんたの力が必要? 誰がそんな事言ったんだ」

 白銀が目を細めて老人に問いかけた。

「……」

 老人の目が泳ぐ。

 この2人、師匠と弟子の関係らしいが俺が巻き込まれた経緯はまったく謎だ。

「そ、それはじゃな……え~と」

 なんとか誤魔化そうとしているようだが今更遅いのに。と白銀はナナンを見下ろす。

「お師さま……スナイプ星が」

「ああ、解っておるよ」

 老人は少しの陰りを見せたあと白銀に向き直った。

「お前さん。力の加減はできちょるかい?」

「!」

 白銀は真面目な表情になった老人を見てしばらく沈黙した。

 確かに最近、力が有り余っているというか暴走しそうな時がある。

「もっと大きな力に目覚めつつあるんじゃ。そのままでは自滅してしまう」

「! 大きな、力?」

 白銀はディランをチラリと見た。老人はそれに気がつきリャムカに視線を移す。

「リャムカ。少し彼と話をしていてくれんか」

「え、はい」

 老人と白銀は部屋から出て話を再開した。

「彼には言ってないのかね?『エナジー・ブレイン』の事は」

「普通の人間には理解出来ないだろ」

 白銀はそう言って苦笑いした。

「まあ確かにそうじゃな」

「それで、力って?」

「お前さん、その力を何だと思っとる?」

 唐突に質問される。そんな事訊かれたって……

「さあ……高次元の力だとしか」

「それは正しいが、お前さんそれを攻撃としてしか使ってないじゃろ」

「他にあるのか?」

「お前さん、そういう認識しか無かったのかい。それは回復が本来の力なんじゃぞ」

「! そう……なのか?」

「これでもわしはエナジー・ブレインにかけては師と仰がれる程の者じゃ。お前さんのその力、わしが制御出来るようにしてやろう」

「本当か?」

「ただし……」

「金はまけろって?」

「む、そうじゃ」

 バレていた。当然だ。ここまで金を払わないで引き延ばしているのにバレないはずが無い。白銀は諦めて溜息を吐いた。

「解った。その代わりしっかり教えてくれよ」

「もちろんじゃ」

『惑星ガースノリティ』までの道程みちのりの間、白銀と老人はトレーニングルームでその力を学んでいた。

 ディランにバレないように取りつくろうのに苦労したが、彼の楽天的な性格とリャムカが意外とお喋り好きという点が功を奏した。

 そうは言っても、こちらが惑星に着く大体の日付は調査員たちに知らせている訳であって遅れる事は出来ない。

 星に着くまでのほんの数日間だけでまだ制御出来ているとは言えないが、暴走するような感覚は消えた。

「後は仕事が片付いてからだな」

「うむ、かなり良くなった。まだ使いこなす事は出来んだろうが、これから徐々に力の使い方も学んでゆけばよい。それにしてもこんな部屋まであるとはつくづくデカい船じゃな」

 トレーニングルームから出てきた白銀に、後ろからついて同じく出てきた老人が話しかける。

「常に鍛えておかないとどんな相手に出会うか解んねーし」

 白銀は苦笑いする。この船を買う時ディーラーから不審な目で見られたのは当然だがさすがに金がやばかった。とても個人で買うようなデカさじゃない。

 今までの仕事で貯めた金が全てこいつに持っていかれた程だ。部屋の造りもオーダーメイド。こんな仕様をディーラーに持ちかけた自分もある意味凄いと思った。


 トレーニングを終えてリビングルームでコーヒーを傾けていた白銀にコックピットのディランから通信が入る。

<シルヴィ、港に着くぞ>

「ああ、頼む」

「彼は大型船も扱えるのだな」

「大型貨物もいけるらしいぜ。ほとんどの船はOKじゃなかったかな」

「そりゃ素晴らしい」

 運転技術までは素晴らしいのかどうかは解らないが……

 船が港に着いて落ち着くまでの間に白銀はシャワーと着替えを済ませた。


 白銀たちは立ち入り禁止区域に入り、依頼されたコンピュータがあるであろう大きな部屋のドアを開ける。

「まだ誰も来てないのか?」

 白銀がそう言って後からリャムカとナナン、そしてディランが入ってくる。

「!」

 すると、向かいのドアが開く。

「お、来た来た」

 ディランが笑顔で彼らに向かおうとした時、白銀がそれを制止した。

「どうした?」

「何か……変だ」

 入ってきたのは男3人。そして──

「ライナ……」

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