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朝日が東の地平線から昇る。

その光はビルの隙間を縫うように差し込み、誰に向けられたのか分からない鳥のさえずりが街に響いていた。

アパートの灯りがともり、人々が動き出し、街は再び呼吸を始める。

月曜日が始まった。

人間たちが、それぞれの忙しさへ戻っていく日。

そしてもちろん、私もその一人だった。

私は小さなアパートに住んでいる。

一部屋と、バスルームが一つ。狭すぎるわけではないけれど、自由を感じるほど広くもない。

その朝、私は半分眠ったまま目を覚ました。体は重く、理由のはっきりしない不快感がまとわりついている。

疲労。

眠気。

空虚。

どれも、もう慣れた感覚だった。

洗面所へ向かい、冷たい水で顔を洗う。意識を無理やり現実に引き戻すために。

鏡を一瞥し、歯ブラシと歯磨き粉を手に取り、機械的に歯を磨く。

口をゆすいだあと、もう一度鏡を見る。

顔色は少しだけ良くなっている。

それでも、疲れは消えていなかった。身体の疲れではない。もっと奥に沈んだ、拭いきれない疲労。

「……はぁ、また月曜日か」

ため息混じりの言葉が、自然とこぼれた。

絶望というほどでもなく、希望もない。ただの諦め。

冷蔵庫を開け、簡単な果物――リンゴとバナナを取り出す。

ベッドと椅子の間に置かれた小さなテーブルに座り、簡素な朝食をとりながらテレビをつける。

天気予報は晴れ。

雨の心配はないらしい。

いつも思う。

天気は、私の気分よりずっと優秀だ。

時は淡々と過ぎ、時計は午前六時を指していた。

私は鞄を手に取り、最寄り駅へ向かう。

外はすでに人で溢れ始めている。

当然だ。月曜日の朝なのだから。

無表情で早足の大人たち。

制服姿の学生たちは、これから向かう世界をまだ知らないような顔をしている。

皆、同じ方向へ――駅へ、日常へ。

電車が到着し、人の流れに押されるように車内へ入る。

身体は押し合い、顔はどれも無言。

立ったまま、押され、騒がしい時間が数分続く。

ようやく、目的の駅に着いた。

電車を降り、改札を抜け、駅前のバス停へ向かう。

朝の混雑はまだ続いていた。しばらく待って、ようやくバスが来る。

乗車し、カードをタッチして席に座る。

その瞬間、ずっと張りつめていた脚が、ほんの少しだけ楽になった。

背もたれに身体を預け、静かに息を吐く。

けれど、その安堵はすぐに別の現実に上書きされる。

今日は月曜日。

この先、何時間も座り続けることになる。

腰が痛くなるまで。

感覚がなくなるまで。

……本当に、面倒だ。

座っても辛い。立っても辛い。

バスは目的の停留所に到着する。

降車し、西へ数メートル歩く。

そこに、三階建てのビルがあった。

一年のうち、人生の七割近くを閉じ込められている場所。

「……すごいよね」

心の中でそう呟く。

褒めているのか、皮肉なのか、自分でも分からない。

入口の前で、顔見知りの男性に声をかけられた。

「七海さん、おはようございます」

「……あ、健太さん。おはようございます」

並んでビルの中へ入る。

「週末はどこか行ったんですか?」

月曜日らしい、軽い世間話。

「家にいました。だるくて、疲れてて」

「ははは。七海さん、インドア派ですよね」

私は小さく笑って、否定しなかった。

階段を上り、二階へ。

インスタントコーヒーの匂いと、空調の低い音が迎えてくる。

廊下の分かれ道で、健太さんと別れた。

自分のデスクに向かい、鞄を置き、社員証を掛け、パソコンの電源を入れる。

画面が点灯すると同時に、通知が次々と表示された。

メール。

社内メッセージ。

会議のリマインド。

まだ八時前なのに、頭の中はもういっぱいだ。

私は作業を始める。

キーボードを叩き、コードを書き、消して、書き直す。

プログラマーとして、これは日常だった。

けれど、今日は集中しきれない。

あの動画の言葉が、頭をよぎる。

――AIは、いくつかの職業を置き換える。

画面を見つめる時間が長くなる。

見慣れたコードが、急に冷たく感じられた。

いつか、これらすべてが、疲れも迷いも恐怖も持たない何かに書き換えられる日が来るのだろうか。

「なな……あ、七海さん?」

隣の席の女性社員が、コーヒーを片手に声をかけてきた。

「ぼーっとしてるけど、寝不足?」

「少しだけ」

「月曜日って残酷ですよね」

彼女は小さく笑った。

やがて、上司が短い朝会を告げる。

長机に集まり、プロジェクターが点灯する。

グラフ、スケジュール、いつもと同じ目標。

そして、新しいスライド。

「今後、業務効率向上のために、AIツールを段階的に導入します」

部屋が、わずかに静まった。

「誰かを置き換えるためではありません。あくまで補助です」

その言葉は――どこかで聞いたことがある。

私は視線を落とす。

脳裏に、あの悪夢が蘇る。

向かい合う上司。

淡々と告げられる、短い一言。

――AIに代替されたため、君は解雇だ。

会議は終わり、皆それぞれの席へ戻る。

キーボードの音が、何事もなかったかのように部屋を満たす。

けれど、私の中では違った。

この平凡な日常の中で、

確かに、何かがひび割れた。

今日という日は――

もう、安全なだけの日常ではない。

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