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私たちは、モールへ行く前にいったんアパートへ戻ることにした。

理由は単純だ。

——全員、汗臭かったから。

「このままモール行ってもいいけどさ」

そう言いながら、優希は私をちらっと見る。

「たぶん、マラソンから逃げてきた人たちだと思われるよ?」

私は小さく鼻を鳴らした。

「私は服屋の真ん中で倒れたくない。」

宙は真剣な顔でうなずく。

「私も、べたべたする。」

——満場一致。

アパートに戻ってから、私と宙は順番にシャワーを浴びた。

優希はソファに座り、スマホをいじりながら待っている。

その姿は完全にリラックスしていて、

職場で見る彼女とはまるで別人だった。

準備が終わり、私たちは再び部屋に集まる。

私はシンプルな部屋着——

無地の落ち着いた色のTシャツに、ゆったりした長ズボン。

アクセサリーは何もつけていない。

宙が部屋から出てくる。

……服装が、ほとんど同じだった。

薄いグレーのパーカー。

シンプルな長ズボン。

動きやすくて、実用的。

宙はしばらく私を見つめてから、ぽつりと言った。

「ねえ、七海。」

「ん?」

「服、似てる。」

宙が指さして、私はようやく気づいた。

自分の服を見下ろして、小さく笑う。

「ほんとだね。」

優希は目を細めて、私たちを交互に見る。

「……あ、本当だ。」

そして笑った。

「大小サイズ違いって感じ。」

宙は少し考えてから、静かに言う。

「じゃあ……好み、同じ?」

私は少し黙ってから、うなずいた。

「たぶんね。」

「七海も、シンプルなのが好きだから。」

宙の表情が、少しだけ明るくなる。

モールは昼間で、そこまで混んでいなかった。

子ども服売り場に入った瞬間、優希のスイッチが入る。

「これ可愛い!」

「こっちも!」

「パステルカラー、絶対似合う!」

彼女の手は止まらず、

ワンピースやスカート、フェミニンなトップスを次々と取っていく。

宙は少し後ろに立ち、見てはいるが、前には出てこない。

私は宙の前にしゃがんだ。

「無理しなくていいよ。」

「好きなの、選びな。」

宙は少し迷ってから、店の隅にあるラックを指さした。

無地のTシャツ。

薄手のカーディガン。

飾りの少ないシンプルなスカート。

「あれ。」

優希が近づいて、ラックを見る。

少し沈黙。

「……めっちゃシンプル。」

宙はうなずく。

「着やすいのが好き。」

私は小さく笑う。

「七海と一緒だね。」

優希はついに笑い出した。

「もう、それ遺伝でしょ。」

何着か試着した。

派手なワンピース → 宙は落ち着かない。

シンプルな服 → 肩の力が抜け、表情が穏やか。

最終的に選んだのは、

柔らかいTシャツ数枚、

シンプルなスカート、

そして装飾の少ない無地のワンピース一着。

「これ、楽。」

宙が小さく言う。

「それが一番。」

私はそう答えた。

レジの前に立つ。

カゴの中には、

無地のTシャツ、

シンプルなスカート、

薄手のカーディガン、

そして飾りのないワンピース。

優希はしばらく中身を見つめてから、

大げさにため息をついた。

「……結局さ。」

「前とほぼ同じ服じゃない?」

宙は背筋を少し伸ばす。

「楽だから。」

「それに、着やすい。」

優希は顔を覆う。

「可愛いドレス姿、想像してたのに……」

宙は私をちらっと見て、淡々と言う。

「だって、七海の服もそんな感じだし。」

「おい。」

私は小さくむせる。

優希は大笑いした。

「はい、一本取られた!」

私は鼻を鳴らす。

「悪いね。レースとリボンの人じゃなくて。」

宙は真剣にうなずく。

「だから、私も好きじゃない。」

優希は両手を上げた。

「はいはい。家系には勝てません。」

店を出ると、私たちは自然と学校用品コーナーの前で立ち止まった。

小学生用のランドセルがきれいに並んでいる。

明るい色。

大きなデザイン。

……そして、明らかに高い。

私は一つをじっと見つめた。

「……信じられない。」

「毎月税金払ってるのに。」

「このカバンまで自腹?」

優希は口を押さえて笑いをこらえる。

宙は交互に私たちを見る。

「税金って……なに?」

素朴な質問。

私は宙を見る。

「国に取られて、七海がこうやって文句言うためのお金。」

優希はとうとう笑い出した。

「七海さん、正直すぎ。」

それからランドセルを見て言う。

「あ、そうだ。」

「こういうカバン、姪のお下がりがまだあるよ。」

「え?」

「まだ綺麗。」

「壊れてない。」

「よかったら、家で渡すけど?」

私は数秒、固まる。

「……いいの?」

「いいよ。」

「クローゼットで眠ってるし。」

宙が私たちを見る。

「じゃあ……新しいの、買わなくていい?」

私はうなずく。

「うん。」

「まだ使えるものにしよう。」

宙はほっとした顔をする。

「……よかった。」

私たちはフードコートの方へ歩き出す。

人の足音と、モールのざわめきの中で、

私はもう一度、宙を見る。

今日は——

宙は、無理に変えられなかった。

そして私は、

少しずつ学んでいる。

すべてが新しくなくても、

ちゃんと「始まり」にはなれるんだって。

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