九話
それから大人しくなった。二人を引き連れながら市場を目指した。
所々ある長い階段が慣れない人間の体の体力を削ってくる。
しかし、あと一個長い階段を上れば市場が見えるはず。
階段を上り切ると開けた広場が目に映る。活気にあふれた人の群れに無数の屋台。これが市場か。俺のいた世界ではこんな雰囲気の市場はなかったな。いや、あったのかもしれないが少なくとも俺は行ったことないな。
「おー市場だー」
いつものテンションで声を上げる。
「うるさいわねー。この前も来たでしょ」
コークが不機嫌そうに言う。お前も早く機嫌直せよ。
だが、意見には同感だ。
「ねえねえ、ここの名産品知ってますか?グビリコ」
「名産品?いや知らないなこの街には来たこともないし存在も初めて知ったからな」
「じゃあこっち来てください見せてあげますからねー」
子供のようにはしゃぐチーロの後を追う。
行き交う人を何とか縫って行くと。なんだか怪しげな雰囲気の店があった。
「ここですよー二人とも。」
「何の店なんだここは?」
何やら怪しげな文字が書いた円筒に噴射口が付いたものが並んでいる。
「なんとー。Gジェットの店なんですー」
Gジェットの店!?何故だか全身が震えてしまう。
「どうしました?グビリコ様子が変ですよ。」
「大丈夫だ。Gジェットって何なんだ?」
名前を聞いただけで本能的に体が危険を発するものだやばいものに決まってる。
「Gジェットはですねー。一家に一本は必須のゴキブリ退治の薬です!」
ゴキブリを殺す薬だと!なんで俺がこれの名前を聞いただけで身震いしてしまうのかが分かった。
そんな危険なもの持ってられるか!
いや、今は俺は人間だ欲しい振りをしといた方がいいのか。
「へー。す、凄いじゃん。それがあればあの化け物みたいにでかいゴキブリも一撃で倒せるのか?」
「いえ、そこは残念なんですが家に出てくる小さい奴だけです。でかい奴らは耐性持ちです」
「そうなのか。それがここの名産品なんだろ買ってくのか?」
「いえ、僕たちは前来たときいっぱい買ったので大丈夫です。グビリコはいかがですか?一つくらい持ってた方がいいですよ」
こんなもの身近に置いておいたら身が持たないわ!
「いや、俺は今は遠慮しておくよ。お前らがいっぱい持ってるんならわざわざ俺が買わなくても大丈夫だろ」
「そうですか.....」
「まあ無理に買えとは言いません。じゃあおなかも減ったころだし食事でもしましょうか」
「食事は私が教えてあげる!こっち来て」
さっきまでの機嫌の悪さが嘘のように良くなったチーロに腕を引かれる。
「これよ。子豚の丸焼き。安くてボリュームもあって美味しいの。どう?これならグビリコも買うでしょ」
子豚って言っても俺がいた世界では大人の豚くらいあるぞとても一人じゃ食べきれない。こいつらは食べきれるのか?
「ああ、買ってもいいんだが一人で食べるにはでかくないか?三人で分けないか?」
「へー。グビリコって意外と少食なんだね。いいよ一緒に食べてあげる」
これが食べれなくて少食?お前の体の半分以上あるぞどんな胃袋してんだ!
「じゃ三人で割り勘ね。グビリコお金頂戴。5Gね」
「お金?」
そんなもの持ってないぞ。どうする。
「え、もしかしてグビリコお金持ってない?信じらんない。いいよ。今は私が奢ってあげるからあとで返してね」
「すまない。ところでお金ってどうやって手に入れるんだ?」
「働いて稼ぐに決まってるでしょ。」
「働く?何をするんだ」
「あんた何も知らないのね。私たちみたいな旅人は主にクエストね。」
「クエスト?」
「そう、困ってる人や街を助けてお礼にお金をもらうの。ま、詳しいことは後で話しましょ。今は食事に集中集中!」
人間は働くなんて面倒なことをしないと食事にもありつけないのか。
食事に関してはゴキブリの方が楽だな。
まあそんなことはいい今は人間なんだし、俺も今は食事に集中しよう。




