五十七話
カブトムシは起き上がり俺の目を見つめて言った。
「お前を勇者と認めよう」
「お前に認められるまでもねー。俺は元元勇者だ。」
「おい、お前勇者に執着してるように見えるがどういうことだ?」
アントンが俺も気になっていたことを聞いてくれた。
「先ず、お前ではない。我の名はルビートだ」
「分かった。ルビート、教えてくれ。何故お前が勇者に執着しているのか?」
「よいだろう。結論から言うと我の目的はグレートゴキブリとかつての我のライバルであり今はグレートゴキブリの配下へと堕ちたオオクワガタのドーク、この二人の討伐だ。だが、その二人を倒すためには我だけでは力は足りぬ。そのため奴らの討伐を共にしてくれる人間の勇者という存在を探し求めていた」
「それでこの街に来る人間に片っ端から相撲を仕掛けてたのか?」
「そうだ」
「志だけは素晴らしいな。街の住民や街へ向かう人々への迷惑は考えなかったのか?」
「全くだな。強さこそすべて。弱者は強者に従うのみ」
「それは違うな」
俺は奴の目を強く見つめながら言った。
「それはどういうことだ?」
「お前の言ってることは間違ってる。強者はその力を振りかざすのではなく弱者を守るために使うべきだ。」
「何故そう思う」
「強者による弱者への支配は負の感情しか生まない。強者は傲慢さや驕りを、弱者は恐怖や不安を抱えるだけだ。それにお前のその思想だとお前が討伐しようとしているグレートゴキブリと恐らく変わらないだろう(グレートゴキブリの本当の目的は知らないが、ここではこう言っといた方がいいだろう)。」
「そうか......分かった。勇者のお前が言うならそうなのだろう」
奴は真顔でそう言った。
納得してるのかしてないのか分からんな。
「まあ、分かってくれたならいい。もう人間にいきなり相撲を仕掛けたりするなよ」
「ああそうしよう。だが勇者よ一つ頼みがある」
「頼み、なんだ?」
「我をこのルビートをグレートゴキブリ討伐の旅に同行させてほしい。我もお前と同じ志を持つ者同士だ。頼む」
予想はしていたが、こいつと一緒に?
「僕はいいですよ」
「私はいいわよ」
チーロとコークは軽い感じで承諾してしまっている。
ちょっとは考えろよ。虫と同行するなんて今後動きにくくなるだろ。
「俺は旅に同行するわけじゃないがいいと思うぞ」
アントンまで。
「勇者、お前はどうなんだ?」
ルビートは目を輝かせながらこちらを見つめてくる。その目の煌めきには有無を言わさない力強さがあった。
「わ、分かった。いいだろう」
奴の圧に負けてしまった。




