五十話
「取引ってなんだ?」
俺は痛みをこらえて立ち上がり言った。
「ここから南東にアントベルグという街がある。そこの街を女王アリとその配下達が先日支配した。女王を倒し、その街を開放してやってほしい」
「そんなんでいいのか?それならここに来る直前にやったぞ」
「なに!貴様らがあの女王アリを倒したのか?本当か?隊長、偵察のものを街へ送れ!」
女王は驚きの声を上げる。
「わざわざ偵察を送るのもいいが、本当だぞ。しかし何故女王アリを倒す必要があるんだ?お前ら同じ虫だろ仲間じゃないのか?」
「仲間だった......」
女王は先程とは打って変わって悲しみの表情を浮かべる
「だった?」
「そうだ。アリ達と我々はこの森に街を築き、友好的に交流を行っていた。しかしある時、アリの街にグレートゴキブリが現れ街の住民や女王を洗脳し、女王には不治の呪いをかけたのだ。それから彼らは街から姿を消し、人間の街を支配、弾圧し始めた。我々はそうなってしまったアリたちの姿を見ていられなかった。だから何とか助けようと奮闘した。しかし、」
「女王アリの呪いはお前らの蜜で治すことはできなかったのか?」
俺は女王の発言を遮る。
「おい!女王様がお話し中だぞ失礼だぞ」
隊長が俺に怒りの声を上げる。
「よい、落ちつけ隊長よ。人間よ貴様の質問に答えよう。無理だ。我我の蜜は病は治せても呪いを解くことはできない」
そうか、回復魔法でも蜜でも治らない。どっちにしろ女王アリは長くなかったのかもしれないな。
「どうやっても彼女らを救う方法は見つからなかった。いや、唯一救う方法が奴を、女王アリを倒すことだったのだ。我も友人である女王アリを倒すことに抵抗があった。そこで貴様らに頼もうと思ったのだが......そうか、もう」
女王は空を見上げる。
誰も声を上げることはなかった。
「済まない、つい感傷に浸ってしまった。取引は成立済みだったようだな。こちらも筋は通そう蜜は貴様らにやろう。おい、もってこい」
女王は側近と思われるミツバチに命令を下す。
「しかし、偵察の者がまだ戻ってきていないぞ俺らの言ってることを信用していいのか?」
「大丈夫だ。さっきのはつい取り乱してしまってな。貴様の目を見ればわかる」
「そうか、感謝する」
「ただし、これは取引ではないが約束をしてほしい」
女王は意思のこもった眼をこちらに向ける
「なんだ?」
「あの忌々しきグレートゴキブリを倒すことを約束してくれないか?」
「任せておけ」
俺は腹に力を込めて言った。




