四十六話
「条件ってなんだ?」
「それは......僕を街まで送り届けることだ」
「どういうことだ?」
「僕は、今......ま、迷子なんだよ」
ハチは恥ずかしそうに言う
「ふっ。それぐらいなら任せろ」
少し吹き出しそうになるのを堪えながら俺は言った。
「おい、笑うな!」
「ごめんごめん。じゃあ俺らについてきな。チーロ、雲を頼む」
「はーい。じゃあ皆、早く乗ってください」
「おい、これお前らがさっき乗ってたやつか?と、飛ぶのか?」
「そうだよ。何か問題でもあるのか?」
「僕は、あんまり高いところが得意...じゃないんだ」
こいつ自分で飛べるくせにダメなのか?
「そうか、じゃあ飛ぶぞ」
「おい聞いてたのか?何か他の方法はないのか?」
「ない」
そう言うと俺は奴に目隠しをした。
「これで大丈夫だろ」
「....」
奴は何も返事しなかった。
「じゃあ出発しますよー」
雲が急上昇を始める。
「う、うわ。落ちる!危ないだろ!」
ハチは恐怖のせいか騒ぎ立てる。
「大丈夫だから静かにしてろ」
「ほ、本当だろうなー」
「ほんとに大丈夫だから。静かにしてろって。」
「さっきから騒いでないでさー。街がどの辺にあるのか教えてよ。帰りたいんでしょ」
コークが呆れの混じった口調で言う。
「わからない」
「は?なんで自分の街でしょ。」
「分からないもんはしょうがないだろ。だから僕は今迷子なんだ」
「じゃあ、街の特徴とかはないの?」
「街の特徴か、それなら森の中の開けた場所にあるからすぐわかるはずだ」
「ほんとにー?全然開けた場所なんて見当たらないんだけど。あんたがいた場所からどれくらいのとこなの?」
「僕は大体一週間くらい街を出てたから結構離れてるはずだ」
「マジか......」
コークがため息交じりに言う。
「ところでそもそも何であんたは迷子になんかなったの?」
「街の兵隊達と一緒に森の見回りに出たときにはぐれちゃったんだ」
「何であんたみたいな子供が見回りに出んのよ」
「街を憎き人間から守る兵隊に俺は憧れてるんだ。だから無理言って連れてってもらったんだ」
「そうなんだ。で、今その憎き人間達に助けてもらってるわけだけど。何で子供のあんたが憎むほど人間を嫌ってるの?」
「それはお前ら人間が僕らミツバチを滅ぼそうとしたからだろ」
「滅ぼそうと?」
「そうだ。昔、この森はもっとミツバチの街がいくつもあって栄えていたんだ。でも、僕らが生産する密に万病を治す効果があると知った人間達が度々街を襲撃するようになって、多くの仲間が殺され、いくつもの街が滅ぼされたんだ。それで今は僕の住んでる街しか残っていない。ここまでした人間を憎まない理由なんてあるか?」
「そっか。それは私達人間が悪いことをしたわね。そこは謝るわ。でも私たちみたいにいい人間もいるからそれは覚えておいてね」
「お前らがちゃんと街まで送り届けてくれたら覚えてやる」
「分かったわ。どう。チーロ、街は見つかりそう?」
「それっぽいのが見えてきたよ」
前方には森の中に広大に広がる街のようなものがあった。街は巨大な木の柵で囲まれ、その内部には、独特な木造づくりの丸い家のようなものがいくつも存在し、街の中心部には巨大な球体の構造物があった。




