四十一話
奴の白い羽が紫色に変色し始める。
そして奴は飛び立ち始めた。
何をするつもりだ?
俺の上を目がけて移動している?
俺は奴から逃げる。
奴は俺を追いながら唾を連続して吐いてくる。
避けるだけなら余裕だ。
しかし、奴に近づけない。
あとは決定打さえ打てれば奴を倒せそうだというのに。
どうすれば近づけるだろうか?
避けながらなんとか思考を巡らせる。
「おい勇者逃げるだけか?」
そう言うと奴は壁を破壊し始めた。
生じた瓦礫を俺の前方へと投げてくる。
行く手を阻まれた。
やばい。
当たる。
いやまだあきらめるな
剣で飛んでくる唾を切り落とし続ける。
「剣で避けているだけじゃ我は倒せんぞ」
「そんなのわかってるさ」
俺は避ける剣を離し腕を構えた。
「清澄激流砲!」
奴の傷ついた目を狙う。
奴は目を抑え、うずくまる
全身に唾が当たり焼けるように痛む。
しかし、せっかく作った隙だ。
無駄にできない。
傷む腕で剣を握る。
「女王アリよ止めだ!電撃閃光斬!」
奴の首を目がけて剣を振るう。
「まだだ!」
奴は俺の渾身の一撃を受け止めた。
「このままてめぇーの首を切ってやる」
「できるものならやってみろ」
俺はさらに力を込める。
奴の腕に剣がめり込んでいく感覚があった。
「ふざけるな!」
俺の胸目がけて唾を吐きかけてきた。
しかしもう避けないぞ。
胸に耐え難い痛みが走るが。
さらに腕に力を込める。
奴の腕が切断された。
「な、なにー!」
奴の悲鳴が上がる。
その勢いのまま俺は奴の首に剣をかけた。
奴は何とか首と肩で剣を挟み俺の攻撃を防ごうとする。
「こんなにやばいのは初めてだ褒めて遣わすぞ。しかしお前の負けだ。さっきのお前の技学習させてもらったぞ」
奴は俺の腹の前で手を構える。
やばい!
俺は腕にさらに力を込める。
「電撃閃光斬!」
「死ね勇者!灼熱火炎砲!」
奴の体は力なく倒れた。
そして首が落ちた。
「我が.....勇者ごときに.....申し訳ございません......グレートゴキブリ...様」
女王アリは黒く禍々しい煙を纏いながら消滅していった。
全身の力が抜け、俺もその場に倒れこんだ。
とてつもない強敵だった。
一発一発が死につながる。
奴が病に侵されていなかったら確実に負けていただろう。
勝利を奴らにも報告せねば、痛む体に鞭打って立ち上がる。
無駄に大きな扉を開く。
「グビリコ!」
チーロとコークが声を上げる。
「勝ったんですね!」
「ああ、なんとかな」
「でもひどい傷。早く手当てしないと」
「それは私たちに任せてください」
村人の一人が言った。
「え、でも皆さんも蟻にこき使われてボロボロなんじゃ」
「いいや、いいんだよあの女王アリを倒してくれたんだ。命の恩人に恩返しがしたいだけだ」
そう言ってチーロの制止を振り払うと村人たちは俺の元へと寄ってきた。
「兄ちゃんじっとしてな。すぐに良くしてやるからな」
緑色の優しい光が俺を包み込む。
体が癒される。気持ちい。
心地よさのままに俺は目を閉じた。




