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三十四話

それからも不気味なくらい蟻とは遭遇せずに進んでいた。


 遠くから地鳴りのような足音が響いてきた。


 「おい誰かいるぞ。隠れろ!」

 三人は通路の端に(そび)える白い柱の陰に隠れた。


 前方には十字路がある。

 足音はちょうど俺らの死角になっている方向から聞こえてくる。


 「なんでしょう?この足音」


 「さあな。だが今まで以上に警戒はしといた方がいい」


 すると死角から現れたのは今までに遭遇した蟻よりも一回り、いや二回りほど大きい三メートルはあろうかという蟻が現れた。

 他の蟻とは違い黒の光沢の輝きが一段と強くまるで磨き上げられた鋼鉄のような輝きを放っていた。

 その脇には人が抱えられていた。抱えられた人は気を失っているのか力なく項垂れている。

 見覚えがあるような?


 「おじさんだ!」

 チーロが叫ぶ。


 「ちょっとあんた!」

 コークが怒りのこもった突っ込みを入れる。


 でかい蟻はゆっくりとこちらの方を見る。


 「誰だ?出てこい」


 俺とコークは気づかれないように息を潜める。


 しかしチーロは

 

 「おじさんを離せ!」

 雲に乗り蟻の方へと急発進していた。

 あのバカ野郎!


 「なんだ。勇者の仲間か。ここまで来るとは」

 

 チーロは炎で剣を作り蟻を切りつける。

 

 しかし、その攻撃は虚しく奴には傷一つついていなかった。

 

 「その程度で俺が倒せるとでも?」

 そう言うと蟻はチーロへと蹴りを放った。


 チーロは蹴られた勢いのまま俺らの目の前まで飛んできた。


 「大丈夫かチーロ!」

 つい体が動いてしまう。


 「おお、出てきたか勇者よ」

 蟻は嬉しそうに微笑を浮かべる


 「今治してやる」

 チーロへと回復魔法を施す。


 「ありがとうございます。すいません。ついカッとなって」


 「気にするな。休んでろ」

 俺がそう言うとチーロは気を失った。


 「この俺、兵隊長様を無視するとは流石だな勇者よ。だがこれを食らったらそんな余裕をかましてられるかな?」

 蟻は力いっぱい足を踏み込んだ。


 蟻の踏み込み位置を中心として床が崩れる。

 やばい、落ちる。

 気を失ったチーロを抱える。

 床を失い。俺らと奴は先ほどまで歩いていた通路へと落ちた。

 俺はチーロを抱えながらも何とか受け身を取る。

 コークは大丈夫だろうか?


 「コーク。大丈夫か?」


 「大丈夫よ」


 「よかった。今回の奴は今までの奴らみたいにはいかないっぽいぞ」


 「そうみたいね」


 俺とコークは戦闘態勢へと移った。

 

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