とにかく適当に
ここは何処だ?
俺は誰なんだ!!
暗闇の中に一人の男がいた。
見た目には高校生くらい、ただ、髪の色が老人のように真っ白な白髪であった。
懸命に口を開け、男は叫ぼうとする。しかし、叫び声は声にはならず体の中で反響する。
薄っすらと涙を浮かべた男は少しでも気を抜くと精神が逝きそうになるのを感じる。
次第に、体の感覚が麻痺してくる。今では、指先でさえ運動を拒絶している。
次第に、男は深い眠りへと誘われる。
「眠い・・・・・・」
授業を真剣に聞こうとしているものの、昼食を食べ終えての5時間目はとてつもなく眠い。まして、太陽が丁度良い暖かさを照らしてくる窓側の席なら、尚更だ。
俺の後ろの席の奴は憎らしい程に寝ている。
古文の呪文の様な言葉を聞きながらノートに板書していく。
「次のこの問題、えーと西川・・・・寝ているな。なら、前の人、西川の代わり――――」
ヤバい、聞いてなかった。こんな時まで、こいつは・・・・おれの疫病神か!?
「どうした!?」
どうしよ・・・
隣の奴はこんな時に限って休んでいるし、後ろの奴は疫病神だし、頼みの綱は前の奴だけか。
そう思い、ひっそりと声を掛け――――
「分からないのか?」
無理でした。
「すみません・・・」
「はぁ~」
先生は頭を押さえると、別方向を見る。
「桜さん、あのアホ達の代わりに答えてください」
「「誰が、阿保だ!!」」
俺は誰かと声が被る。っん?
「お前、起きてんじゃねぇーか!! 寝たふりしていただろ!!」
俺の後ろで、机から体を乗り出すように真剣な顔をしている西川健太こと、アホ。
「お前も、十分に酷いこと言ってるよ!」
俺は、軽く無視する。なんて、感の良い奴だ。
「お前等の事だ!! なら聞くが、西川、南座≪みなみざ≫この問題解けるのか?」
グッ、無理だ。
その後、先生から寝ていた西川は膨大な課題を出されていた。
西川に見られないように背を向け、口を押さえて笑う。
「はっははは、南座!! そんなに、笑う元気があるならお前にも課題を出しても平気だよな?」
・・・・悪魔の気がした。
「俺・・・用事を思い出したんで、それじゃあ」
急いでその場から離れようとする。しかし、肩に強烈な圧力を感じその場から離れようにも離れられない。
「お前も受け取るよな?」
ニヤニヤ笑う西川の顔が目の前にあった。