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月蝕 外伝④:運命の分岐と宿命の再会


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**1. 宿命の信念**


クロウ、33歳。本名不明、経歴不明。

月蝕の使徒のリーダーとして、ハルナやカイト、アヤカ、タイゾウを率いた男。

彼の瞳は、まるで深淵を覗くように暗く、鋭く、どこか神聖な光を宿していた。

彼の「能力」は、人の心を読み、微かに操る力。直接的な戦闘力はないが、相手の感情や欲望を巧みに引き出し、誘導する『心神掌握』。

彼の声は、聞く者を惹きつける不思議な響きを持っていた。


クロウの目的は、驚くべきものだった。「天皇主権の復活」。

彼は、現代の日本の政治体制――政党政治と資本主義に支配された世界――を腐敗と混乱の元凶と見なしていた。

彼の心の奥底には、尊王攘夷思想が燃えていた。


「この国は、神の血を引く者にこそ導かれるべきだ。政党の私利私欲、資本の汚濁、それらが日本を蝕んでいる。オレは、天皇主権国家を取り戻す。そのために、月蝕の使徒は存在する。」


クロウは、すべての政党を弱体化させ、滅ぼす計画を進めていた。

政治家、財閥、裏社会の支配者たちを、ハルナの「命蝕の月」やカイトの「燃やす拳」、アヤカの「刹那停止」、タイゾウの「完全透明」で排除。

最終的には、天皇を中心とした「神聖な国家」を再構築する。それが、彼の渇望だった。


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**2. 運命の闇**


霧島レイカ、28歳。

名門大学を卒業していながら、定職には就かず、「暁の使徒」のリーダーであり、クロウの元同志だった女。

彼女の瞳は、まるで憎しみの炎に焼かれたように、冷たく、狂気じみていた。

彼女の「能力」は、空間を歪める力。触れることなく、対象を圧縮したり、空間をねじ曲げて攻撃する。

彼女の力は、クロウの精神操作とは対照的に、直接的で破壊的だった。


霧島の目的は、「宗教法人の根絶」。全世界の宗教法人、その関係者を皆殺しにすること。

彼女は、宗教二世として、過激な新興宗教にハマった両親に人生を狂わされた被害者だった。幼い頃、両親は全財産を教団に捧げ、彼女を過酷な儀式や「修行」に強制参加させた。

彼女の心は、宗教への憎しみで染まり、すべての信仰を「人間を縛る呪い」と定義した。


「宗教は、人の心を支配し、自由を奪う。私は、この世界からすべての宗教を根絶する。それが、私の正義よ。」


霧島は、ハルナの「命蝕の月」を欲していた。彼女の空間操作では、宗教法人の広範なネットワークを一掃するには限界があった。だが、ハルナの力なら、リアルタイムの映像を通じて、遠隔で標的を即座に、あるいは時間差で殺せる。霧島にとって、ハルナは「完全な殺人兵器」だった。


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**3. 運命と過去**


クロウと霧島は、かつて同じ夢を見ていた。10年前、20代前半の二人は、裏社会のサロンで出会い、「新たな世界」を築くことを誓った。

クロウは、天皇主権の復活を夢見て、霧島は、宗教の呪縛からの解放を願った。

二人の目的は、腐敗した現代社会を破壊し、それぞれの理想郷を築くことだった。


「レイカ、オレたちの力なら、この世界を変えられる。天皇の下で、純粋な日本を取り戻すんだ。」

クロウの言葉に、霧島は笑って答えた。

「クロウ、あなたの夢、嫌いじゃないわ。それに、政治家なんて票田の為に裏では確実に宗教と繋がってる。私はそんな宗教を根絶する。そうすれば彼らは確実に弱体化するわ。それが、私たちの使命よ。」


二人は、互いの能力を補完し合い、裏社会で勢力を拡大した。クロウは人心を操り、霧島は空間を歪めて敵を排除。

二人のコンビは、裏の世界で「闇の双璧」と恐れられた。だが、彼らの目指す理想は、あまりにも根深く、本質的には互いに相容れないものだった。


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**4. 宿命と狂気**


クロウと霧島の道は、5年前に分かれた。

霧島の憎しみは、宗教法人だけでなく、すべての信仰やイデオロギーにまで広がり、彼女を狂気に駆り立てた。

ついに彼女は、クロウの天皇主権思想すら「新たな宗教」と見なし、否定した。


「クロウ、あなたの天皇崇拝も、結局は信仰じゃない。神を信じるなんて、ただの幻想よ。私は、すべてを壊す!」


クロウは、霧島の狂気を止めようとした。だが、彼女の空間操作は、あまりにも強力だった。

彼の心操能力では、彼女の憎しみを抑えきれなかった。クロウは、霧島と袂を分かち、月蝕の使徒を結成。

霧島は、反宗教組織である暁の使徒を率い、独自の道を歩んだ。


霧島の狂気は、彼女をさらに追い詰めた。彼女は、宗教関係者を次々と殺し、裏の世界で「死の女神」と呼ばれた。

だが、彼女の力には限界があった。宗教法人のネットワークは、あまりにも広大で、彼女一人では根絶できなかった。

そこで、彼女はハルナの力を求めた。


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**5. 二人の渇望**

クロウが目指すは天皇主権の復活のみ。神の血を引く者に国家を委ね、腐敗した政党政治を滅ぼすこと。

クロウの過去は謎に包まれているが、尊王攘夷思想に傾倒したのは、家族が政治スキャンダルで破滅した経験が影響している。

彼は、現代社会の混乱を「神聖さの欠如」と考え、天皇中心の国家を理想とした。

彼の欠点はその独善性にあった。自分の理想が唯一の正義と信じ、手段を選ばない。他人の犠牲や、仲間ハルナたちの心の傷を軽視する傾向があった。

クロウの口調は、落ち着きと威厳に満ちている。まるで、神父のような荘厳な響きを持ち、聞く者を引き込む魅力があった。

これは、彼の尊王思想を反映していた。彼は、自分を「神の代弁者」と見なし、言葉に力を込める。

だが、その裏には、常に独善的な冷たさが隠れていた。


「ハルナ、君の力は、この国を救う鍵だ。神の意志に従い、腐敗を焼き払うんだ、君なら必ずそれが可能となる」


霧島の渇望は宗教法人の根絶。宗教による心の支配をなくし、全ての人間を洗脳から解放し、真に自由な世界を築くこと。

宗教二世として、両親に強制された過酷な儀式や教団への財産献上がトラウマになっている。すべての信仰を「呪い」と見なし、憎しみを原動力に戦う。

彼女の欠点は狂気だけだった。憎しみが暴走し、あまりにも巨大な相手、規模、そして信仰が生み出す権力の前に、ついに精神が耐えられず暴走した。

やがてその力は宗教だけでなく、すべてのイデオロギーを否定し、仲間や無関係な者まで巻き込む破壊衝動に駆られるようになった。

霧島の口調は、鋭く、挑発的だった。彼女の憎しみと狂気を反映している。彼女の言葉は、感情的でありながら、どこか計算高いものだった。

「ハルナ、あなたの力、頂くわ。宗教の呪いを根絶するには、それが必要よ。」


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**6. ハルナとの邂逅**


クロウは、人を完全かつ正確に殺せるハルナの「命蝕の月」を、天皇主権復活の最終兵器と見なした。

彼は、ハルナを月蝕の使徒に引き入れ、彼女の力を利用して政治家や財閥を排除しようと試した。だが、ハルナの暴走と、ミカの存在が、彼の計画に揺らぎをもたらした。


「ハルナ、君はオレたちの希望だ。だが、君の力は、制御できなければ、オレたちを滅ぼすだろう。」


霧島は、クロウたちを通じて得た情報から刺客を送り込み、ハルナを「宗教根絶の鍵」と見なし、彼女の力を奪おうとした。

渋谷の集会場での戦いで、彼女はハルナと対峙。視線を合わせないように空間を歪め、ハルナを追い詰めたが、クロウの介入とハルナの覚醒した力に敗れた。


「ハルナ……! あなたの力、欲しかった……。でも、私の正義の遺志は、消えないわ……!」


霧島は意識を失い、攻め込んできた暁の使徒の残党は霧島を抱えて逃げ出し、壊滅した。彼女の狂気は、ついに彼女自身を飲み込んだ。


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**7. クロウの終焉**


クロウは、ハルナを庇い、霧島の刃を急所で受けた。あの瞬間、彼は自分の独善性と向き合った。

ハルナの心、ミカの涙、カイトやアヤカ、タイゾウの葛藤。彼は、仲間を「道具」としか見ていなかった自分を、初めて悔いた。


「ハルナ、君は自由だ。オレの夢は、君の手で終わった。俺たちは、清算したかったのかも、しれない。だが、それでいい……これからは、君たちのための時代なんだ」


クロウは、血に染まりながら笑った。彼の天皇主権の夢は、月蝕の夜に散った。


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**8. 新たなる世界**


霧島は、敗北後、裏の世界から姿を消した。生きているのか、死んだのか、誰も知らない。

報道されることもないからだ。彼女の憎しみは、宗教根絶という目的に燃え尽きたのだろうか。


ハルナたちは、クロウの死後、月蝕の使徒を解散。ハルナとミカは「星屑の灯」を設立し、カイトは消防士を、アヤカは動物保護を、タイゾウは情報屋を目指した。

クロウの夢も、霧島の狂気も、あの日の夜に消えた。


月は、満ちては欠ける。クロウと霧島の理想は、互いに相容れず、ついに闇に沈んだ。だが、ハルナたちの光は、新たな未来を照らしていた。


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(完)

お疲れさまでした。

時事ネタがいっぱいかもしれない

過激な寝室シーンはノクターン

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