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91.もっと盛り上がってきた・・・?

「そうなりますと、できれば外部の、しかも星読みの方であればその口の堅さは間違いがありませんから、確認していただけるとありがたですわね」

 リュシエンヌの言葉を吟味するように、フェリクス殿下は少し考えてから言った。

「もしかして、アウローラ嬢の言っている兄弟子とは、セントラルにいるジェローム殿のことかい?」

「はい。魔導具のことだったら、わたしの知る限り、ジェロームが一番詳しいです」

「そうか。では、ご足労をかけるが、ジェローム殿には特別講師として、レッジーナ学院へ来てもらうことにしよう。確か、専門研究大学院を卒業されていたな? それなら学院長から依頼を出せばすぐだ」

「ええっ!?」

 突然、考えてもみなかったことを言われて、心底驚いたよ。わたしが大声を出したせいで、プーの尻尾までぴん、と立っている。


「大丈夫だ。ああ、そうだ。先程取材で話した新型魔導具の開発責任者と、ジェローム殿の特別対談を企画するというのはどうだ? 定例発表会で実施するなら、その前に打ち合わせを兼ねて一度レッジーナ学院へ来てもらわなければならないな」

「いえ、あの、ジェロームも仕事が……」

 途中で話に割り込もうとしたが、全く聞いていないようだ。


「星読みとして依頼するのではなく、卒業生として生徒会と学院から正式に依頼を出そう」

「いいお考えですわ。少々プログラムに修正が必要ですわね。大講堂は難しいかもしれません」

「大教室を使うのはどうだろう? 特に大きな舞台が必要なわけではないからね」

「ええ。では教室の手配も同時に進めますわ。登壇者はどなたがいいかしら」

「専門研究大学院に声を掛けるのを忘れないでくれ。後から、自分がジェローム殿と直接話したかった、と言われても面倒だ」

「そういう意味では、あちらに人選をお任せするというのもありですわね。こちらからの希望者を挙げて、そこから選んでいただくのは?」

「ああ。そのあたりの調整は君たちに任せるよ。ありがとう」

「かしこまりました。では、そのように進めますので。アウローラさん、また改めてご相談に伺いますわ」

 リュシエンヌは、とても良い笑顔で小会議室を出て行ってしまった。

 生徒会室の方で、「リチャード様、皆さま、追加企画のご相談がありますわ」と生徒会メンバーを集めている気配がする。


 あまりに二人の間で物事が決まっていくのが早すぎて、途中から口を開けたまま見ているしかなかった。いや、全く口を挟む余地がなかったよね?

 ふと気付くと、膝の上のプーも口をポカンと開けていた。

 わたしとプーの顔を見たフェリクス殿下は、くすり、と笑うと、サラサラと手元にあった紙に何か書いて、わたしに手渡した。


「そのメモは、キャメロンに渡してくれないか。追加企画についての支援の依頼だ。リュシエンヌは仕事が早いからね。多分、明後日にはジェローム殿に手紙が送られると思う。実際にレッジーナ学院へ来てもらう日が決まったら、アウローラ嬢にも連絡するよ。よろしく頼む」

 フェリクス殿下にまでとてもいい笑顔で言われてしまい、何も言えなくなってしまった。

 そのまま生徒会室を失礼すると、とぼとぼと同じフロアにある新聞部の部室へ戻った。


「大丈夫だったかい、アウローラ嬢」

 ジェイソンが心配そうな、というよりは面白いことはないか、という記者魂がウズウズしたような顔で待っていた。キャメロンも一緒にいる。

 わたしは、シルヴィアのことは大っぴらに話せないだけに、「兄弟子が追加企画として新型魔導具開発責任者との特別対談に呼ばれることになりそうだ」とだけ伝えて、フェリクス殿下からのメモをキャメロンに渡した。


 キャメロンがそのメモを読んでいる間、ジェイソンは、「おおーその企画は、魔導具に興味のある文官希望者だったら絶対聞きたい対談だな」と嬉しそうだった。

 一方、メモを読んだキャメロンは、驚いた顔をしていた。

「兄弟子って、ジェローム殿をゲストに呼ぶのか! ジェイソンは知らないかもしれないが、ジェローム殿は、魔導具の世界では非常に高名だぞ。久々にレッジーナ学院に来るとなったら、専門研究大学院の人たちが全員聞きに来るんじゃないか」

 と言った。そんなに凄かったんだ、ジェローム。


「いやあ、それはいいですね。もちろん、特集記事を書かないと」

「そうだな。しかし、本当にジェローム殿が参加してくれるのか?」

「どうしてですか? 忙しいから?」

「それもあるが、過去にジェローム殿に講演依頼をしたことがあったが、断られたという話を聞いたことがある」

 まあ、本業じゃないしね。わざわざ受けないよね。いくら魔導具が好きだからって、講演が好きなわけじゃないだろうし。

「今回は、アウローラがいるから特別に来てくれるんじゃないかっていうところかな」

「生徒会の手腕に期待しよう」

 キャメロンが笑いながら言った。


「しかし、今回の対談は、かなり専門性が高いですよね。キャメロン様、新聞部で一番魔導具に詳しいのは誰でしょう?」

「それはシノブだな。ただ、当日は団体戦で忙しいだろうから、エスメラルダがいいかもしれないな。彼女も得意分野は多少偏るが、魔術具に詳しいから大丈夫だろう。あと、クインシーにも伝えておいてくれ。図解も必要そうだからね」

「了解です」


 どんどん盛り上がっているけど、ジェローム大丈夫かな……ごめんね、巻き込んで……

 そういえば、ジェロームは運が悪いことを思い出した。こっちが巻き込んだんじゃなくて、巻き込まれたのか? とちょっと現実逃避してしまった。


 まあ、仕方がない。事前に知らせてあげたいが、わたしが学院の定期便に乗せてお手紙を出すよりも、学院からの連絡の方が絶対早いだろうからね。

 それでも、一応礼儀として、わたしからも手紙を送っておいた方がいいかな、と思ったので、部屋へ戻ってからジェローム宛に手紙を書くことにした。

 うーん、とはいえ、あまり大っぴらに書けることもないんだよね。

「えーと、『ジェローム、レッジーナ学院から連絡があったかと思いますが、どうぞ宜しくお願いします。』これ以上、書くこともないよね?」

 困った。本当に一言しか書くことがない。仕方がないので、プーが従魔扱いで教室へ同行していることや、今年は騎士戦が団体戦になったことを書いておいた。

 よし、これで明日の朝、寮母さんに渡そう。


 でも、ジェロームがレッジーナ学院に来てくれるというのは、とても心強かった。

 あの妙な魔導具を外すことができれば、もっと何かわかるかもしれない。

 ジェローム、面倒だろうけど、是非、この依頼を受けてね!

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