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85.魔術基礎 実践-1

 定例発表会での団体戦の噂は、あっという間に学院中に広まったようだ。

 というか、生徒会が積極的に広めたんじゃないかな。

 今朝、教室に入ると、クラスメイトたちは団体戦のことで盛り上がっていた。

 みんな、早いね!


「どうやってチーム分けをするんだろうな」

「やはり、実力を等分に分けるだろう。そのための実力測定が近々あるという噂だ」

「中等部一年は対象外だからなあ。関係ないよ」

「何言ってるんだ。それまでの練習試合のための、対戦チームを組むに決まっているだろう。当日まで、両チームで対戦するわけにはいかないんだから。そうなると、間違いなく一年生も訓練に駆り出されるぞ」

 その意見に、目を輝かす者と「うわあ」とげんなりする者がいて面白い。


「フェリクス兄上は、当然、一方のチームの大将になると思うが、もう片方はやはり彼かな」

 アレクサンドルたちは、チーム編成の予想に入っている。ジャスティンもアレクサンドルの言葉に頷いて言った。

「ああ。間違いないだろう。個人の力量でいけば、学院ナンバーワンは間違いないからな。ただ、大将としての力量はどうなんだろう?」

 その言葉に、マドレーヌが反応した。

「皆様、オズモンド様のことを指してますわよね?」

「ああ。もちろんだ」

「叔父から聞いた話ですが、学期末休暇の際、研修生として騎士団に長期研修にいらしたそうです。その際、新人とは思えない技量と精神力だったと褒めちぎってましたわ。寡黙で謙虚な方だとか」

「副団長のお墨付きか」


 そこから、シュバリエ所属の武官志望の生徒たちの中でも有名な名前がどんどん挙がり始めたようだ。

 うーん、全くわからん。


「よく高等部の先輩の名前がポンポン出てくるねえ」

 わたしが話についていけず、ポカーンとしていたのがおかしかったのか、ジャスティンが説明してくれた。

「以前言っただろう、ほとんどの中等部の男子生徒がシュバリエに所属しているって。ここで前が挙がっているような人は、高等部でもシュバリエ所属で、武官あるいは魔術騎士団所属希望の人たちだよ」

 なるほど。これは是非、クラスメイトから情報をもらっておいて、記事取材の下準備をしておいた方がいいかもしれないな。全く知らないのも困るだろうし。


「ねえ、もう一度名前言ってみて。取材に行くことになるかもしれないから」

「おお、新聞部らしいな」

 アレクサンドルが、得意そうに名前を挙げていった。

「絶対、押さえておかなければならないのは、オズモンド・ホリールード殿だな。それから、魔術士としては、ハロルド殿、マシュー殿、あとはロネッタ嬢か?」

「そうですわね。最近では、ピエール様の伸びが素晴らしいと、先生が絶賛されていたと聞いてますわ」

「それでも、オズモンド様は別格だよな、アレク」

「ああ、そうだな。オズモンド殿が卒業するまでに、一度は手合わせさせてもらいたいものだ」


 気になる、オズモンド様。わたしがオズモンド・ホリールードと書いた名前の下に太く線を引いたのを見たジャスティンが、もう少し説明をしてくれた。

「オズモンド様は、昨年の定例発表会での騎士戦で優勝した猛者だ。高等部一年なのに、二年生を全員打ち破って優勝したんだ。実は、中等部二年の時も、先生の推薦で特例参加させてもらってベスト4に残ったという武芸の天才だよ」

「騎士を目指す者には、憧れの先輩だな」

 アレクサンドルも、嬉しそうに言った。

「アレクは、フェリクス殿下の応援をしなくていいのか?」

 リカルドが揶揄うように言った。

「む。もちろん、フェリクス兄上の勝利を願っているが、オズモンド殿の戦いぶりは楽しみだ。それは、皆もだろう?」

「ああ、昨年の試合は凄かったよな」

 男子生徒は、全員オズモンドの話題で持ちきりだ。


「知略のフェリクス殿下か、武芸のオズモンド様か、とても盛り上がりそうですわね」

 シルヴィアが楽しそうに笑った。


「さあさあ、授業を始めますよ。皆さん、席について」

 団体戦の話が盛り上がって、サーペント先生が教室に入ったことに全く気付かなかった。

 全員、慌てて自分の席に戻る。


「皆さん、すでにお聞きのようですね。今年の定例発表会では、団体戦が行われます。中等部一年生は出場できませんが、練習に参加することが可能です。シュバリエ所属者は全員対象となりますから、そのつもりで。また、それ以外の生徒も、魔術あるいは武術で十分な実力ありと私の許可があった場合は、希望者のみ可能となります。

 そのために、後期の魔術基礎実践については、内容を変更して、基本的な戦術とそのために使われる魔術スキルを一通り習得することとします」

 一部の生徒からは歓声が上がった。


 サーペント先生が配布した資料は、基本的な戦略・戦術論だった。

「本来は戦において、状況に合わせた戦略を立て、その実行のための戦術を組み立て実行することが求められます。戦略論については、より政治的な背景も含まれますので、今回は省略しますが、こちらに参考書籍が記載されていますから、将来武官を目指す方は必ず精読するように」


 そして、サーペント先生が説明してくれたのは、基本となる戦術だった。

 敵と味方の実力が拮抗している場合、どちらかが大きな兵力を持っている場合、魔術と武力のどちらが勝っているのか、などの状況によって選ぶべき基本形をまずは学びなさいということだった。


「今回は、両チームの実力・人数ともに拮抗している、ということになります。その場合、定型はこの陣。しかしながら、防御力と攻撃力のどちらに重きを置くかによって、バリエーションがあります。そこが大将の戦術の見せ所となりますね。また、遠距離と近距離のどちらに火力があるかによっても変わってきます」

 確かに、同じ人数で同じレベルになるように出場選手を分けたとしても、スキルには個性がある。

 個人の持てるスキルを最大限出して、組み合わせることが求められるのだろう。


「そして、今回の試合では、全員がクリティカルヒットされれば壊れる魔石をつけます。動く敵の魔石にどのように武器あるいは魔法攻撃をヒットさせるのかが勝負です。ということで、この後は、動く魔石に魔法攻撃でヒットさせる練習をします。さあ、訓練場へ行きますよ」

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