表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/113

83.新聞部での打ち合わせ-2

「では、今年の定例発表会は、この団体戦が目玉ということなんだね?」

 シノブが確認するように聞いた。あ、そうだ。来賓のことを聞きたかったんだ、とわたしは思い出した。

「あのーちょっとクラスメイトに聞いたんですけど、今年はバチスタ教国から来賓があるって。本当ですか?」

 わたしの質問に、ぎょっとした顔をしたのはキャメロン以外の全員だった。


「アウローラがどうしてそんな情報を? キャメロン様、本当ですか?」

 ジェイソンの質問に、キャメロンが少し考えるような顔をしてから答えた。

「……ああ、本当だ。まだほんの一握りの関係者にしか情報開示されていないはずだが。まあ、もうすぐオープンになる話だからね。秘密でもないんだが、きちんと理由を説明しないと、神殿派と皇帝派の間で溝ができてもいけないから、学校側から説明があるまではここだけにしてくれ」

 全員、神妙に頷いた。わたしも、まさかそんな情報だったなんて思わなかったよ。

 シルヴィアのお家が筆頭侯爵家だったの、うっかり忘れてた。


「皆が知っているとおり、現在、『聖女候補』と神殿派が注目している生徒がいる。表向きは、その生徒の確認をしたいということのようだが、バチスタ教国がそんなことでレッジーナ学院まで人を派遣するわけがない、というのがディレクトラ大帝国上層部の見解だ。しかしながら、今回の要請は拒否できなかったようだ」

「一体、どのクラスが来賓として来るんだろう」

「個人名まではまだ決まってないが、本国の枢機卿クラスだということは確定だ」

「へえ! そうなると、ディレクトラ大帝国の神殿に派遣されているケイマン枢機卿も招待しないわけにいかないだろうな」

 ジェイソンがメモを取りながら言った。


「ああ、そうなるだろう。ということで、これがもう一つのフェリクス殿下からの依頼だ。『取材』の名目で、新聞部の誰かがバチスタ教国からの来賓に終日同行して欲しいそうだ」

「うへえ。貴重な人手が減るってことか」

「仕方がない。当日、生徒会は実行委員会を仕切っているからね。しかも会長のフェリクス殿下は、団体戦の片方の大将を務めるのは間違いないだろう。あちらも手が足りないんだよ。それに新聞部だったら、取材の名目で張り付いていてもおかしくないだろうし」

 キャメロンが苦笑しながら説明する。


「うーん、一体誰がその役割を?」

「まあ、私だろうね」

 キャメロンが言った。

「ええ!? 団体戦に出ないんですか? せっかくの機会ですのに」

 エスメラルダが驚いたように言った。他の部員も全員、納得がいかないようだ。キャメロンはロシュタルト辺境伯家長男というだけあって、武芸も魔術も相当な腕前なのだとクラスの男子生徒も言っていた。ただ、卒業後は辺境伯領へ戻るため、士官する予定はなく、領地経営と魔獣研究、そして新聞部が忙しいという理由からシュバリエには所属していない。

「私たちは団体戦に出ないでしょうから、今回は女子部員で担った方が良いのでは?」

 イヴォンヌも申し出た。


「ありがとう。だが、枢機卿の中でもかなり上位の人が派遣されてくる可能性が高い。学院の中では身分は関係ないと言っても、正直なところ彼らには通じないだろう。そうなると、ある程度の身分がある方が、何かあった時に融通がきく」

「たしかに……でも……」

 エスメラルダが悔しそうだ。


 新聞部は、優秀な部員が揃っているが、身分でいくとそれほど高いメンバーが揃っているわけではない。

 部長のキャメロンは辺境伯家ということで、学院の中でも別格の家柄だが、わたしを含め、平民が二人いるし、子爵家の人も多く、普通よりは革新的な先輩が多いんだよね。留学生の先輩もシノブとカオシュンの二人いる。部員数はわたしを含めて八人と少ないが、多様性は抜群だ。

 そして、前期の試験でわかったのだが、新聞部は全員が学年で十位以内に入っているのだ。

 えへへ、うちの先輩たちって凄いよね。


「こんなところで身分を出したくはないが、仕方がない。それに、私は士官する予定はないから、これまでも騎士戦への出場は見合わせてきた。問題ないよ。ただし、それ以外の新聞部の活動は、皆に任せることになる。頼んだよ」

 キャメロンの言葉に、全員が「はい」と力強く返事をした。

「シノブは多分、団体戦に出ることになるだろう?」

「ああ。三十名だったら入るだろうな」

「ジェイソン、クインシー、カオシュンはどうだ?」

「僕は絶対ないですね。元々、魔力量もギリギリの文官志望ですし。クインシーはどう?」

 ジェイソンが即答した。

「私も、できれば出場したくないですね。シュバリエに入っている高等部の生徒でどの程度カバーできそうですか?」

 美術部兼任の芸術家肌のクインシーが、その白く細い指をこめかみに当てながら言った。

「十八人はいるだろう。女性騎士候補もいるからね。シノブのように、現在、シュバリエに所属していなくても、十分出場できそうなのが七~八名いるし、中等部二年のシュバリエ所属の中でも武官希望はそれなりにいるだろうから、大丈夫じゃないか」

 キャメロンの説明にほっとしたようだ。


「カオシュンはどうする?」

「新聞部に所属している段階で、武官希望じゃないですよね」

 カオシュンが苦笑した。

「武芸はそれなりに得意ですが、ディレクトラ大帝国の武芸とは流儀が全く違うので、団体戦になると難しいですね。応援に回りますよ」

「よし。そうなると、定例発表会当日に稼働できないのは、私とシノブの二人だな。来年のことも見据えて、高等部一年の二人に取材計画と当日の管理を任せるよ。とはいえ、クインシーは美術部もあるから、リーダーはジェイソンに頼もう。エスメラルダは二人のサポートをしながら、足りないところを指導してやってくれ。中等部のメンバーは、ジェイソンとクインシーの指示に従うこと。もちろん、私とシノブも当日までは新聞部の活動をしっかりやるからね」


 その後は、定例発表会までの事前取材の割り振りや、当日の役割分担を話し合った。

「しかし、何でまたバチスタ教国の枢機卿が定例発表会にかこつけて訪問するのかな」

 カオシュンが不思議そうに言った。そうそう、そこがわたしも知りたい。

 キャメロンはしばらく黙って考えてから言った。

「正直、わからない。今年の定例発表会は、いつもと違う。全員、気を引き締めていこう」


 そろそろお開きにしよう、ということになり、わたしが「ご馳走になったんで、わたしが片付けます」と言って、お皿やカップを水魔法で綺麗にして戸棚にしまっている間に、「ありがとう、お先に失礼するわね」とほとんどの部員が寮へ戻った。

 わたしが部室についているミニキッチンから戻ると、「部室の鍵があるから」と言うキャメロンと、「バチスタ教国についてどう調査するのがいいか」が気になるジェイソンだけが残っていた。


「すみません、待ってくれてたんですか?」

「いや、ジェイソンとも話すことがあったから気にしないで」

 キャメロンはにこり、と笑った。うん? なんか凄みがある?


「ところで、アウローラ嬢には聞きたいことがあったんだ」

 うん? キャメロンがわざわざ? なんだろう?

「まずは、君が連れて戻ったという猫のことなんだけどね」

 えーもうプーのことが、耳に入っていたんですか……高位貴族の人たちって、ホント凄いよね……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ