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102/114

102.誰か何か知りませんかー?

 わたしは暖かい服を着込んだ上から星読みのローブを羽織り、星占いのセットを持って、プーと一緒に天窓から屋根に上がった。


「おー寒い」

 冬の夜空は澄んでいるので、星読みをするにはうってつけだが、長時間いるのは厳しそうだ。

 わたしは占盤を取りだし、その前に座ると、しばらく考えた。

 自分のことは占えないが、お薦めの使い魔がいるのか聞いてみようか。

 あるいは、シロミミズクがこの近くにいるのか探してみるか。


 よし、そんな感じだね。

 空を見て、はと座を探した。今夜の空には、鳥の星座ははと座しかいない。シロミミズクとは相性悪そうだ。

 色とりどりの月長石を取りだして、星空を見上げながら、今日のおしゃべりに付き合ってくれそうな子は誰だろう、と思いながら占盤の上に投げた。

「ぎょしゃ まわる」

 ふむ。ぎょしゃ座が今日は綺麗に見えている。ちょっとお空を案内してくださいな。


 その日は、ぎょしゃ座のお兄さんの機嫌が良かったようだ。わたしは、彼の道案内で、星々を回りながら、使い魔のことを聞いて回った。

 ほとんどの星は何も情報を持っていなかったが、二つほどヒントとなるようなこぼれ話があった。


(いっかくじゅうさん、お元気?)

(おや、チビじゃないか。久しぶりだな)

(最近は、学院に通っているの)

(へえ。まだそんな歳かい)

(ねえ、今度使い魔を召喚しようと思うんだけど)

(昔は、わたしらの仲間も召喚されたもんだが、今時は流行らないからね)

(だれか詳しいヒトっている?)

(さてね。昔は竜の旦那の身内にもいたが、最近はとんと聞かないね)


 ぎょしゃ座は次の星へと移動していった。

 オリオン座はいつでも不機嫌そうで、マスターからの伝言でもないと話してくれない。今日もご自慢のベルトを磨きながら、知らんぷりだ。

 おうし座とおひつじ座は、どちらも興味がなさそう。

 しかし、その次のペガスス座は羽を広げて自慢げに話してくれた。


(おまえ、使い魔を呼ぶんだって?)

(うん)

(ペガススほど素晴らしい朋友はいないぞ。私なんぞ、勇者しか乗せたことがない)

(空も飛べるしね)

(陸でも空でも私たちほど華麗に翔るものはいない)

(でも、呼べるのかな)

(さあ。おまえたちの陸のことはわからぬ)

(残念)

(でも、空飛ぶものを呼びたければ、空の力を借りることだ)

(力を貸してくれるの?)

(私が? はっはっは)

 笑いながら走って行っちゃったよ。


 アンドロメダ座が気の毒そうな顔でこちらを見ている。彼女はいつも気に掛けてはくれるが、何も言わないんだよねー他に誰かいないかなあ。

 すると、その横からとかげ座がちょろっとこちらを見て言った。

(使い魔はおいしい魔力が好きなのさ)

 それだけ言うと、もう知らんぷりだった。


(そろそろ降りてかえりなさい。冷えてきた)

 ぎょしゃ座のお兄さんが馬車を停めてそう言った。

(ありがと。今日のお礼はこれ)

 わたしは、ポケットに入れておいたシルキーのクッキーを取りだした。

(おや、妖精のクッキーだね。何千年ぶりだろう)

 お兄さんは、ほくほく顔で受け取ると、そのまま去って行った。


「ふわー、冷えた冷えた」

「なにか聞けたかにゃ? ずっと黙って固まっているから、どうなったかと思ったにゃ」

 わたしの膝の上に座ったままでプーが少し心配そうに聞いてきた。

「うん。でも、寒いから、まずは部屋に戻ろう」


 急いで部屋に戻ってから、星読みで聞いた話をプーに伝えた。

「そういえば、おばあさんたちも、お供え物をしてたにゃ」

「どんなもの?」

「うーん……なんか、いろんなものだった。わしも、おばあさんに頼まれて、いろいろ拾ってきたにゃ」

「例えば?」

「瑪瑙のカケラとか、一番きれいなカラスの尾羽とか……森の奥の泉で光る石とかにゃん」

「いつも、プーがお散歩で拾っているようなもの?」

「あ、そういえばドラゴンを呼ぼうとしていたときは、古いドラゴンの鱗のカケラもあったにゃ」

「それはここでは見たことないね。でも、ミミズクの羽があれば、来るかもね」

「いろいろ集めてみるにゃ」

「ま、そうしようか」

「お菓子もにゃん」

「それは関係ないんじゃない?」

「おいしいにゃん」

「『おいしい魔力』って言ってたよ?」

「似てるにゃ?」

「……プーが食べたいだけじゃん。うう、お湯が沸いたから、お茶淹れるよ」

「お菓子もにゃん」

「……」


 一番大きなカップに温めたミルクとココアを入れたのを二つ用意した。

「おやつ、おやつ、おやつ」

 プーがテーブルを叩いて催促している。

「わかってる。今日は冷えたから、ジンジャークッキーがいいかな」

「ココアにマシュマロを入れるとおいしいらしいにゃん」

「誰がそんな贅沢を教えたの?」

「このあいだ、クラスで女の子たちが話してたにゃ」

 いろんな話をしっかり聞いているようだ。


「マシュマロは、ちょっとしかないから、一個だよ」

 満面の笑顔でココアのカップを差し出すもんだから、仕方がないね。

「明日は、わしがお茶を淹れるにゃ。このあいだ、こみみに挟んだレシピをためすにゃ」

「えー美味しいのかな」

「まかせるにゃ!」


 そんな話をしながらお茶を飲んだら、ようやく温まって、指も動くようになってきた。

 今日の星たちとの会話を記録してから、プーとこの先の相談をした。

「満月は明後日の夜だから、その日に召喚魔法をやってみよう」

「じゃあ、明日は宝ものを探す日にゃ」

「新聞部にも行かないといけないんだけどな」

「わし、独りでも大丈夫にゃ」

「そういうわけにはいかないよ」

「だいじょぶにゃん。収納魔法があるから、拾ったものも自分で持って帰れるにゃ」

「えー、魔法を使っているところを見られないでよ?」

「まかせるにゃ!」

 ちょっと心配だったが、明日は別行動をすることにした。時間がないからね。

「じゃあ、フクロウの羽とか、良さそうなお供え物を探してきてね」

 プーのお宝センサーに期待しようっと。

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