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第三話 目覚めよ、女神 其の1

藤堂家の眠れる守護者「おばあちゃん」の意外な正体に

一同が仰天する中、更に急転のできごとが!


 さて。

  第三話 目覚めよ、女神


  其の1


 「おばあちゃん」こと、うら若き藤堂女史のベッドサイドで

固まったまま動けないでいる援護くん。

 一応というかちなみにというか、

なりんは聞いてみた。

「援護くん、今なにを考えてるところ?」

 固まったままの援護くんが話し出す。

「なりんちゃん、僕はこの藤堂さんのご容体次第で

意識を取り戻されたら僕が介護するつもりでいました。」

 ああ、そっち。そっちだよね、援護くんは。

 当然だ。 

「でも、その…、それを僕が担当するのは

やはり差し出がましいというか、その」

 冷や汗というか変な汗というか、顔中に浮かんでいる援護くん。

「僕には無理です。」

 言った!無理言ったよ無理って言ったよ!

 援護くんが!介護で!!

 援護くんが想定しているヤングケアラー介護は

子供が背負っている介護などを援護くんが直接代行することで

子供たちに本来の有意義な時間を与えることだ。

 基本ご老人や成人男女を介護対象として

想定している。

 でもだよ?

 介護対象が自分に恋するちっちゃい女の子でも

困るし、かといってつり合いの取れる年齢の

素敵な大人の女性でも、そうだねやり辛いよね。

 無理です。って即座に出てくれる援護くんで

よかった。

 あたしとデキてない、ってのも即座に出たけど。

 それは、「まだ」って意味だよね。そうよね!?援護くん!?


 それにしても。

援護くんの活動方針、めっちゃあてはまる子達がいるはずなのに

この藤堂さんは女の子と大人の美人さんって

なんでこんないくらなんでもなレアケースから当たるのかな。


 困って固まってる援護くんの前から、

かすれたか細い声がもれてきた。

「…誰?」

 途端にマサキが援護くんをガン!と

派手に押しのけてベッドに寄り、

「ばあちゃん!目さめたのか!?」

 更にそのマサキをるぅーが渾身の両手で押しのけ、

「おばあちゃん!起きたの!?おばあちゃん!!」

 と、必死で呼びかける。

「はるか…マサキ…ここは…」

「こ、ここは病院です。」

 マサキに突き飛ばされた鼻を抑えながら、援護くんが辛うじて答える。

「援護くん、鼻血!?」

 なりんが駆け寄りハンカチで援護くんの鼻を抑え、

援護くんもそのハンカチを受け取り自分で抑える。

「ありがとうございます、なりんちゃん。」

「そうだ、ナースコール」

「もう呼んだ。」

 見ればこりんが唖然顔あぜんがお

ナースコールのボタンを握りしめている。

 看護師が駆けつけ

「どうしましたか?藤堂さん!?あっ!先生~!!」

 と、また出てゆく。

 えっ誰かここにいるべきなのでは!?と

思う間もなく、

程なく医師と看護師らが到着した。

「関係者以外ご退室ください。」

 で、なりんこりん援護くんは廊下へ追い出された。

 病室からマサキが顔だけ出し、

「なりんぬ、すまほ出せ!」

 つい出すとあっというまに連絡交換の作業を終え、

「なりんぬ、そうるはまた改めてだ!

 今日はまたな!!」

 う、うん。うんうん。

 顔だけでがくがくと何度も頷くなりん。

「年長女子のアポ先をあっという間に獲得するとは」

 コミュ力こりんが妙なところに感心する。

「援護ン!!」

 もう一度マサキが顔を出す。

「鼻血ごめんな!」

 明るい謝罪もあったものだ。

「あ、いや、えと、そうですね。はい。」

「それから、」

 万感の溢れる目が潤んでいる。

「ありがとうな!大魔王!!」

「え!?」

「ばあちゃんを起こしてくれて!またな!!」

 大きく手を振って、病室に引っ込んだ。

「いや…僕は…。」

 今日ここで三人にできる事は残ってなさそうだ。

 というか、一件落着?

 いや、私はソウルハンガーを受け取る約束を、

既に済ませてしまっている。

 目を覚ました藤堂さんがいつから本調子になれるのかもまだ読めないし、

 マサキくん自身が「また改めて」の意向だ。

 おそらくは、私たちと藤堂さん一家との縁となりゆきは、まだ消えない。

 だとすると。あたしはいつかひと喰いギターに

魂を吊るされてしまうのだろうか。

 それはさておき。

 藤堂さん、本当に援護くんの魔力で目覚めたのかもね。

 ご容体ようだい、安泰でありますように。


「援護くん、鼻血は?」

「もう止まりました。顔を洗ってきますね。」

「うん。」

「ハンカチは…弁償で」

「いいよそんなの。」

「これはもうなので一旦我々もシマの病室へ

移りましょう。」

「そうだな。あたしらもまた挨拶して、

そんで帰るか。」

 こりんはなんだか疲れている。

 愛くるしい兄妹になりんの左利きに呪いのギターに、

昏睡状態の美女が目の前で蘇生する瞬間まで

「情報キャパ越えー。今日はもうなーんも無理。」

 ごもっともだ。

「僕は顔を洗ってきますので、

先に行っててください。」

「分かった。じゃああとでね。」

 島辺家の病室に再び来ると、のん

出てくるところだった。

「あら、皆で待っててくれてよかったのに。」

「お姉ちゃん、藤堂さんが甦った。」

「!?」

「藤堂さん、おばあちゃんじゃなくて若くてきれいな人だった。」

「綺麗で若々しいご婦人ってこと?」

「若々しいんじゃなくて、若いの。」

 のんも最初はなんだか呑み込めない様子だったが。

「…若い女性が、自分のことを兄妹に

おばあちゃんと呼ばせていたっていうこと?」

 のんは基本、頭も勘もいい。

 それでも、こうして状況を言われるまでは

事前に見透かせる真相ではなかったようだ。。

 そうだよなあ。

「うん。」

「圭吾くんは、自分の介護は出る幕なし?」

「はい。」

「介護や看護は必要だけど、自分が若い美人さんに対してするのは、それは無理?」

「まったくその通りです。」

「ふむ。そうよね。特に圭吾くんは。」

 腕組みからのあごにこぶしを当てるポーズで

しばし思考する、のん

「ギターは?」

「改めて受け取るっていう、約束だけ。」

「継続ね。わかった。」

 わかったってあのね、そんだけ?

 ソウルと直接関わるの私だからね。

「それでウチらは一旦帰ることになったから、シマちゃん達に挨拶を」

 早く帰りたいので、話を先に進めたいこりん。

「そうね。じゃあ私が伝言するんじゃなくて

皆も直接聞いて?」

「えっなんの話?」 

 あごうながされて病室に入るなりんとこりん。

「シマちゃん、あたし達そろそろ帰るね。」

 ベリ子が穏やかな笑みで応じる。

「今日はありがとうね。援護くん達のほうは

もういいの?」

「それがさ聞いてよベリ子さん!

 藤堂さんが復活したんだよ!!」

 こりんがたたみかける。

「え?目を覚ましたの?」

「そうなんだよ!うちらの目の前で!!

それで、若くて美人だったんだよ!!」。」

「そうなの!?」

 藤堂女史の世代については、こちらも認識の

ズレがあったらしい。

「よかったわねえ。それで、ご容体はどうなの?

 もう一件落着でいいのかしら。」

「どうなんだかなあ、どうだろ。

 で、なんか話があるって?」

「ええ。歩?」

 ベリ子が歩に話を振る。

「3人とも、一旦ベリィはいいから後夜祭の準備に入ってくれるか?」

 後夜祭とは、

3人のバンド「こりんTHEポーキュパイン」がデビューした「キャンプフェス」に

参加したアイドルカフェのイベントで

3人もゲスト出演者としてお呼ばれしているのだ。

「一旦いいってどういうこと?」

「ベリィは休業にするわ。再開するにしても、

歩が本調子に戻れてから。」

「それで、後夜祭に向けて一度会場の店に

行っておいてほしい。」

「情報キャパ越えだってのに。」

 こりんがこぼす。

 次は藤堂家へ、のはずだったポーキュパインのクエストは

なんだか枝分かれを始めたようだ。

 なりんもこりんも、これからこなすタスクを

頭の中で整理してみるも、なんだかごちゃごちゃして手間取った。

 ふとスマホをのぞいてみると

「まさき」で登録が済んでいる。

 しらんぷりは出来ないよなあ、これは。

 後夜祭は後夜祭で、

 ソウルハンガーはソウルハンガー。

 今のところこの2つに集約されるかな。

 あとはもう学校も始まるな。

この第三話は最初は一章のみで終えるつもりだったのですが

ひと晩寝かせて推敲を重ねたのち、もう少し膨らませることに

しました。

とはいえまたも書き溜めなしの、

プロットから本文書き下ろして移動!であります。

どうなりますやらね。


うら若き藤堂女史のフルネームは

これはまあ、もう。藤堂春菜さんですね。

これでモ娘。10期モチーフキャラが勢ぞろい。

 この中で唯一名前モチーフのみのあゆみんこと石田さんは

わりを喰ってますが(ここからヲタク早口)

男性役で主演した舞台「ファラオの墓・蛇王スネフェル」などもあるので

ここは色男役という事でひとつ。

ところで劇中の島辺歩しまべあゆみの元々のビジュアルイメージは

未定ではあったものの

漠然としたところでは江本祐さんや豊川悦治さんのような長身と輪郭

年齢は22前後、ここに新たに顔立ちは石田亜祐美さんの風合いを加えた、

愛嬌をたたえた甘めフェイスのイケメン、と決定しちゃいましょう!


 一方援護くんのルックスも未定といえば未定ですが これはまた改めて。

 ではまた。

 この物語が いつかあなたの眼にも、とまりますように。

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