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第二十二話 いつかの歩(あゆみ)

 帰る前に、なりんはあゆみに確かめることがあった。

「歩くん、ひとついい?」

「なんでも?」


 歩との語らいは なりん自身の身にも結び付けられる、

 まさにひとごとではない振り返りとなるようです。

 さて。


  第二十二話 いつかのあゆみ



 帰る前に、なりんはあゆみに確かめることがあった。

「歩くん、ひとついい?」

「なんでも?」

「マサキくんに後夜祭みせてくれたでしょ?

出費して。あれは、どういう本音から?」

「気になるかい?」

 ひるまず問いの言葉を重ねるなりん

「マサキは、あたしがエンドくんを歌うのを

観たがってはいなかった。なのに、なんで

それでも観るように背中を押したの?

 あたしが援護くんへのラブソングを歌う姿を

見せつけたかったわけではないよね、さすがに。」

 けっこうえぐるような問い方をした。

 歩は神妙にみえる顔で黙って聴いている。

「期待してくれてるの?将来性とか」

「ああ…まぁなあ。」

 あいまいな歩の答え。

「分かるものなの?まだ何もしてみせてないのに」

 なりんはつっこんで聞いてみた。

「いや、なんつうかさ。なりんちゃんと関わってゆくなら、

観ておいたほうが」

「それは前にも聞いたかな。」

「うん…。そうだな。もうひとつあるよ、理由は。」

 歩は目を伏せ、静かに微笑んで少しを置いた。

 今度は慎重に待つなりん。

「援護くんがマサキを助けるのは、マサキが

援護くんにとって、いつかの自分に重なるから

なんだろ?」

 そうだ。援護くんの人助けの動機は、救われなかったいつかの自分自身

つまり子供の頃の遠藤圭吾くんの代わりに、

自分が護り助ける、代償行為だいしょうこういだ。

「うん。」

 声にして答え、うなずくなりん。

「俺にとっても、そうなんだよ。

 俺はさ、事故での入院も長かったし、

転校前の学校では事故原因にされたまんまだ。

 次の学校でも誤解や噂はじわじわ寄って来てさ。

 寂しいかといや、寂しかったし、なにより

助けてくれ、って。思ってたよ。」

 胸を刺す歩の過去。そうだったね。知ってるのに、

またはなさせちゃった。

「だから、マサキがつらい思いをしないように

護ってやりたいと思うのも、いつかの俺のためなんだ。

 俺もそうなんだよ。動機は援護くんと一緒だ。 

 それに、たとえ俺一人では誰も護れる力もなくても

あの援護くんと力を合わせてなら

ひとつの兄妹くらい守り切ってやれるかも知れない。

 発作の持病のあるるぅーを春菜さんとマサキだけで

守り切ろうとしたら、結局マサキは自分の青春も

犠牲にするだろうさ。その上で、果たして守り切れるのか。」

 るぅーちゃん。そうか、マサキくんだけじゃないんだ。

「俺は、俺自身の救済のために、見て見ぬふりは

しないことにしたし、兄貴分てのもやってみたくて

それでお節介せっかいを焼いたりするのさ。」

 なりんは、音楽の面だけで考えかけていた自分に気付いた。

「マサキのドラムはさ、確かにまだ聴いたこともないからどうなるもんか分かんないよ?

 でもさ、挑戦くらいさせてやりたいじゃないか。

 万が一、モノにならなそうならそれはそれでさ

決着が早めにつくのも気が済んでいいだろ。」

 なりんは大いに、ゆっくりうなずいた。

 分かるものなの?なんて聞いたけど、そりゃ

分かんないよね。

 歩くんがマサキにやらせてあげたかったのは、

ドラムじゃなくて挑戦の方だったんだ。

「歩くん、やさしいんだ。」

「手術だって怖いからな、とくを積んどきたいじゃないか。」

「えっ」

神頼かみだのみの滑り込み、テストの前の

一夜漬けみたいなもんさ。」

 どっちなのよ、いったい。

「万が一。手術がうまくいかなくても、ああ、

俺はしぬまえに少年をひとり

憧れのガールフレンドのライブにご招待してやれた男だ、って

自分をほめてやりながら旅立てるじゃないか。」

「めったなこと言わないで。うまくいくよ、手術。」

「ああ。どうあれ、俺はやれることをやっておきたかったんだ。」 

 茶化したり本質を告げたり、歩の話術は

大人だ。よくもワルくも。

「あとは本当になりんちゃんたちのフェス出演だけだ。

 気がかりにするほど心配してないけど

あらためて、バッチリキメてくれよ?」

「約束する。」

「よし。これで万全だ。」

 ニッと笑顔になる歩。これはモテる。

 若くて大人な、色男の笑顔だ。

 なんで歩ガールズがこの気の多い男に

ライバルたちと横並びで愛着あいちゃくを続けるのか

なりんにも少しだけ分かる気がする。

 歩は彼女たち一人ひとりにとって

たとえ自身が一対一の関係になれないままでも、

かけがえのない、ワンアンドオンリーなんだ。

 でも…、せっかくだから、そこも確かめておくか。

「歩くん、それだけ?」

「ん?」

「心残りはもう残ってない?たとえば、

本命をひとりしぼって告白とか」

「ああ~、えっとね。みんな本命。」

 えぇ…。

「後悔のないように、生きてられるうちに

一度に一生分の恋をしているんだ。」

 なりんの魔力によるまでもなく、屈託くったくのない

歩の本音。

「なりんちゃんだってさ、援護くんのことも

マサキのことも両方好きなんだろ?」

 うっっ。

「あたしは…、援護くんのことは、今はもう」

「あきらめた?」

「…。」

「俺はさ。誰のこともあきらめないし切り捨てない。

 ありのままの俺をみせて、気が向いたら付き合いを

始めたり続けたりしてもらう。

 それで、こんな俺でかまわないと思ってくれたのが

今いるあの子たち、ってわけさ。」

「…、…」

 二の句が継げない。

 ガールズの気持ちが分かったのは本当に少しだけ

 なりんは、自分はこのひとには恋しないな。

と思った。

 そして、しばらく両天秤だった自分を棚から降ろして、

 もう本当に自分も一途いちずになる時と

改めて思いさだめた。


「援護くんの隣りに」実に三か月ぶりの再開です。

 前回までの快調快筆がまるでうそのような、ここから先は

苦しんでひねり出すような記述の連続です。それで、

こんなに時間がかかってしまいました。


 正直、この期に及んでまだ最後までは書きあがっておりません。

 ですので我らがかみこリーダーのラストステージまでには完結間に合いませんね。

 でもここで掲載再開しないともうタイミングがないので、見切り発車です。

 ここからのお話しは、後々書き直すこともあり得るものなので

 どうかこの儚さも含めてご鑑賞いただければ 幸いです。


 この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。

 それではまた改めて、よろしくお願いいたします!

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